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しおりを挟む「えっ、え⁉︎」
「片付けて、車返したら…二人になれる所、行こう」
「えっ⁉︎あ、うん、えあ、」
車の外は雑踏が騒がしく、すぐそこに人の話し声が聞こえる。
外からしゃがんだ和樹の姿は見えないが、真綾からは外の石床や歩く人の足が見える。
たくさんの人に囲まれて、でもここには二人きり。
萩原家でもいつも他の誰かは在宅しているし、車の中でしか二人きりになったことが無い。
家でもなく、車でもない、二人きりになれる場所…真綾の思考が追いついて、ひゅうと腹が引き締まる。
「体調悪いか?」
「そういうんじゃないけど、あ、うん…今日だとは思わず…」
「よし、」
ゴニョゴニョと言い訳をする真綾を尻目に和樹は慣れた手つきでサクサクと車内を片付ける。
売上金の精算を済ませて、営業に関わる作業を説明しては真綾も手伝った。
「やることいっぱいあるんだね」
「まぁな……よし、腹減ったろ?まだ売ってる店あるから食いに行こう」
イベント終了後の撤収時間にならねばキッチンカーを会場から出せないので、残り時間は他のブースを回って買い食いなどを楽しんだ。
「萩原くん、そちらは?」
会う人会う人に真綾の存在を尋ねられ、和樹はその都度
「ん、今度、俺の奥さんになるんだ。真綾、挨拶しな」
と正直に答える。
「こ、こんにちは!真綾です、よろしくお願いします!」
「可愛いお嫁さんね」
「あひゃ、あひゃひゃ…」
営業中のシャキシャキした姿はどこへやら、人見知りと緊張で真綾はガチガチになっていた。
「変に行動力があったり、動けなかったり、真綾は面白いのな」
「…テンションで動いてるのかも」
「俺ん家を探し当てて来たりしたのは、すごい行動力だったよ」
「名刺に住所書いてあったじゃん!…そりゃ、恩返ししたいって目標があったからさぁ…」
感情の起伏があるのだから行動にムラがあるのは当然で、和樹はそれも含めて真綾に面白みとおかしみを感じる。
そして原動力となった自分への恋心と恩義の気持ち、そこを昇華させてやらねばなとブンブン肩を回す。
「よし、あとは主催側の挨拶聞いて、解散だから。真綾は車に戻っときな」
「うん」
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