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13…こぼさず食べて
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しおりを挟む「美羽ちゃん?」
「雅樹さん、前に私がここに来た時から食器が使われてないっぽいんですけど、きちんと食べてます?」
振り返って見上げれば彼は情けなく「やれやれ」と笑い、
「忙しさとプレッシャーでゲーゲーのところに宇陀川さんの話が入って…食えてない」
と自分だけワイシャツのボタンを留める。
「これ洗ったの先々週とかですよ?どうやって生きてるんですか」
「大袈裟だな…元が少食なの。美羽ちゃんとのデートだったら喉を通るし燃費が良いんだよ」
「でも、クリームパン残ってるじゃないですか」
「宇陀川さんプラス美羽ちゃんとのケンカで…キャパオーバー、シャットダウンだよ、胃が仕事してくれないんだ」
「雅樹さん…」
何かのショックで食べられないなんて辛い経験が無いから分からない。
せめて彼にもう少し寄り添えば良かったと後悔が押し寄せる。
瞳が潤み出した私を逆に雅樹さんは心配して、
「栄養補助ゼリーとかで最低限の生活は出来てるから」
と努めて明るく振る舞った。
「すみません、雅樹さんのトラウマを知っていながら」
「いや、俺が嫌いだからって美羽ちゃんにもそれを共有させるのは人として違うから。それは俺がおかしかったの」
「これからきちんと食べられますか?」
「大丈夫だって…本当、俺、美羽ちゃんと居たら食べられるんだよ…あと、いつも言ってるけど量は入らなくても美羽ちゃんのもぐもぐしてんの見てたら腹いっぱいになるから…平気よ」
「……雅樹さん…!私、決めました!」
「え、なに?」
小動美羽、ここらで一丁女を見せようと立ち上がる。
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