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第一章 root近藤編
1番隊隊士の心を掴め!
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9月20日。朝日が登り始め、真っ暗闇の今日の街に光が満ちた。私は布団を抱きしめながら眠っていると、鳥の囀りが聞こえてくる。まだ眠っていた…体を転がしながら涎を垂らしていると、襖を叩く音が聞こえた。そっと襖を開けると目の前には中沢さんがいた。中沢琴。本来の歴史では新選組ではなく、新徴組に組みしているのだが、この「雷鳴」では三番隊の隊士として任務を行なっている。そんな彼女がここにいるのは紛れでもない。近藤さんの命令だ。彼女は私を目の前に頭を下げた。
「おはようございます。寺本あかり様…いえ、武田 観柳斎様」
武田観柳斎。私がこの新選組でそう名乗る事になった理由があった。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼昨日✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
戦いの後、私は晴れて沖田さんの所属する一番隊に配属になった。しかし実力重視の一番隊において、女がいる事を認めないものもいるだろう…そう考えた近藤さんは腕を組み、悩みを口にした。
「どうしたものか…」
土方はその姿を見て、男装するしかないだろうと提案した。しかし肝心の名前がない。あかり…どう考えても女らしい名前に頭を悩ませていた中、斎藤さんが名前を口にした。
「武田…」
一斉に斎藤に目がいく。武田と聞くと、私の頭の中に歴史上の人物。元五番隊隊長の名前が思い浮かんだ。
「武田観柳斎…!」
口を滑らせた途端。全員がお互いを見合わせ、吹き出し、笑い合った。沖田さんは子どもをあやすような優しい声で腹を抱えて笑う。
「君、そんな可愛い顔で、雄々しい名前を選んじゃったね」
私はその場にいる全員を見ては己のやった事を見直した。嘘だ…この展開、自分が観柳斎と改名したいと名乗っているようなものではないか…!慌てて言葉を重ねようとするも、幹部のみんなはお互いを見て言葉を交わしていく。永倉さんは腹を抱えながらこちらを見た。
「良いね、男らしくて隊士って感じがして」
私が弁解に言葉を挟もうとすると、原田さんに頭を撫でられながらからかわれる。
「へぇ、あんたって面白いなぁ、気に入った。今度島原に連れてってやるよ。“観柳斎“」
最悪だ…私の楽しみに待ち焦がれていた沖田ルート初日からまさかの観柳斎さんになると言うやらかしをしてしまった…本物の観柳斎がいたらどうすれば良いんだ…私が頭を悩ませるのを知りもしないで各々楽しそうに話している。近藤さんは私の肩に手を乗せては、頷きながら声を高らかに宣言をした。
「よし!今日から寺本あかり改ため、“武田観柳斎“と命名する。たけちゃんよろしくな!」
悪気のない純粋な笑みを向ける近藤さんに、冷や汗が流れ落ちる。顔を引き攣らせたながらため息が出た。確定で五番隊隊長に昇進が決まった…つまりは沖田さんの隊として活動できる日が限られる事がここで決まってしまった…内心平常ではない心を押し潰しながら笑みを向けた。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
そして今にあたる…女剣士同士仲良くなるだろうと言われた中沢琴さんは、ここの隊士としてのあり方や、女性隊士としての振る舞いを教えてくれることとなった。「雷鳴」オリジナルのシナリオでは主人公を助けたり、男同然の剣技で何度も攻略キャラを助けたイケメン女性なのだが…同じ「雷鳴」の主人公のはずなのに、彼女は私を見るなり不服そうにしている。微妙な空気感の中、恐る恐る声をかけてみた。
「おはようございます。琴さ…」
「隊内では中沢とお呼びください」
冷たくあしらう彼女に居心地の悪さを感じながらも言葉を続けた。
「すみません中沢さん。すぐに支度してそちらに向かいますね」
私はそそくさと部屋に戻り、身支度を始めた。こんな感じで大丈夫なのだろうか…内心不安になりながら琴さんが待つ廊下まで足を踏み出した。足早に琴さんは調理場へと私を案内した。
「まず班によって生活当番が決まっています。炊事と巡視は分担されている為、前日から何に当たるか把握するようにしてください。今日は1番隊は朝ご飯と昼の巡視が当たっています。それ以外の時間は稽古や身を鍛えるが基本です」
いよいよ1番隊の沖田さんと稽古や炊事を一緒に出来る…そう思うと胸がワクワクした。自分の推しと今日から毎日身近に話せる……釜戸に薪をくべ、お釜に米をとぎ入れた。炎をつけようと周りを見渡すと、ゾロゾロと1番隊隊士達が集まってくる。
「おはようございます。本日から1番隊に所属する武田観柳斎と申します。よろしくお願いします」
隊士全員の前で頭を下げると、周りの隊士たちがくすくす笑いだした。野太い声で小さく嫌味が聞こえた。
「ちびの癖に新人が1番隊なんて務まるもんか」
主人公補正もモブには呆気なく通用せず、周りの者は余り快く思っていない様子だった。気まずい雰囲気の台所に沖田さんが入ってくる。
「おはよう。みんな炊事の準備は?」
清々しい笑みをみせ、こちらに歩み寄る。先程まで私をバカにしてきた隊士達も深々と頭を下げている。私が慌てて頭を下げると、沖田さんは私の肩を叩いた。
「武田くん、おはよ」
沖田さんの輝くような笑みに私は見とれた。拍子抜けした私は馬鹿みたいに間抜けな声を出した。
「おはようございます」
沖田さんはみんなに向き直る。
「紹介するね。武田観柳斎くん。近藤さんの名により、今日から1番隊隊士として行動を共にするよ。仲良くしてあげてね」
沖田さんの笑みにその場の隊士全員がこちらをみた。私が隊士達に笑みを向けると、1人の隊士は不服を漏らす。
「沖田さん、どうしてそんなチビがうちの隊に入れるんですか!俺たち1番隊は互いに実力を認め合うもの同士でしか信頼を置けません!」
信頼がないのはわかる。昨日きたばかりの新人が、実力重視の一番隊に配属されるのは意味がわからない…私も逆の立場なら不満を垂らすだろう。沖田さんは不満を吐く隊士に言葉をかけた。
「確かに僕も納得いっていないよ。この子の実力はあの一くんとほぼ互角だし、申し分ないくらいだとは思うよ」
斎藤さんと実力が互角と聞くと、その場にいた隊士たちは言葉を漏らす。しかし沖田さんの続く言葉に唾を飲んだ。
「ただここのメンバーと同様に、僕も信頼は置けてない…少なくとも背中を預ける中ではまだないよ」
突きつける現実に言葉を失うも、沖田さんは肩を叩いて微笑みかけた。
「でも、僕らは武士。互いの不満は互いの剣で認め合っていけば良いと思うな」
優しい言葉に心が絆された。それと共にプレッシャーも重なる。私の実力が重視されるとはいえ、剣を振るうのは斉藤さんとの決戦が初めてで、あれも主人公補正の賜物だと思っている。そんな私に真の剣の実力なんてあるはずがない。私の不安が伝わるのか、隊士たちも苦虫を潰した様なきまずい沸騰する味噌汁の出汁が静か水を溢れさせた。そんな不安を消し去るように後ろから陽気な声が響く。
「なんだー?お前たち、朝から辛気臭いなぁ」
後ろを振り向くと、太陽の様に明るい笑顔を向ける男が立っていた。近藤さんだ。近藤さんは私を庇う様に前に立った。腕を組み、にこやかに話しかけた。
「仲間思いなお前たちが仲間を疑うなんてらしくないぞ」
近藤さんの言葉を裂く様に一番隊の隊士たちが口を開く。
「お言葉ですが局長。武田さんの実力は凄いのは分かりますが、1番隊はお互いの信頼を大切に思う部隊です。相手のことを知らないのに信頼をおけと言うのは難しいと思います」
近藤さんは隊士の意見に少し考えた後、自分の腰にさした刀を抜き、見せた。
「なら戦うといい」
私は刀をまじかで見て、口を開いた。沖田さんは流石に驚いたのか首を横に振った。
「近藤さん、流石にそれはこの子が…」
口を挟む沖田さんに対し、近藤さんは言葉を重ねる。
「可哀想か?こいつもそんな生半可な気持ちでここにはきちゃいないさ。俺達みたいな変わりもんには、言葉を交わすより、刀で語る方がいいだろ?なぁ、お前ら」
1番隊の隊士達はお互いに目を合わせ、剣を向けてきた。
「武田殿。俺達があんたに信頼を置くためにも、ひとつ手合わせ願いたい。」
「おはようございます。寺本あかり様…いえ、武田 観柳斎様」
武田観柳斎。私がこの新選組でそう名乗る事になった理由があった。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼昨日✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
戦いの後、私は晴れて沖田さんの所属する一番隊に配属になった。しかし実力重視の一番隊において、女がいる事を認めないものもいるだろう…そう考えた近藤さんは腕を組み、悩みを口にした。
「どうしたものか…」
土方はその姿を見て、男装するしかないだろうと提案した。しかし肝心の名前がない。あかり…どう考えても女らしい名前に頭を悩ませていた中、斎藤さんが名前を口にした。
「武田…」
一斉に斎藤に目がいく。武田と聞くと、私の頭の中に歴史上の人物。元五番隊隊長の名前が思い浮かんだ。
「武田観柳斎…!」
口を滑らせた途端。全員がお互いを見合わせ、吹き出し、笑い合った。沖田さんは子どもをあやすような優しい声で腹を抱えて笑う。
「君、そんな可愛い顔で、雄々しい名前を選んじゃったね」
私はその場にいる全員を見ては己のやった事を見直した。嘘だ…この展開、自分が観柳斎と改名したいと名乗っているようなものではないか…!慌てて言葉を重ねようとするも、幹部のみんなはお互いを見て言葉を交わしていく。永倉さんは腹を抱えながらこちらを見た。
「良いね、男らしくて隊士って感じがして」
私が弁解に言葉を挟もうとすると、原田さんに頭を撫でられながらからかわれる。
「へぇ、あんたって面白いなぁ、気に入った。今度島原に連れてってやるよ。“観柳斎“」
最悪だ…私の楽しみに待ち焦がれていた沖田ルート初日からまさかの観柳斎さんになると言うやらかしをしてしまった…本物の観柳斎がいたらどうすれば良いんだ…私が頭を悩ませるのを知りもしないで各々楽しそうに話している。近藤さんは私の肩に手を乗せては、頷きながら声を高らかに宣言をした。
「よし!今日から寺本あかり改ため、“武田観柳斎“と命名する。たけちゃんよろしくな!」
悪気のない純粋な笑みを向ける近藤さんに、冷や汗が流れ落ちる。顔を引き攣らせたながらため息が出た。確定で五番隊隊長に昇進が決まった…つまりは沖田さんの隊として活動できる日が限られる事がここで決まってしまった…内心平常ではない心を押し潰しながら笑みを向けた。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
そして今にあたる…女剣士同士仲良くなるだろうと言われた中沢琴さんは、ここの隊士としてのあり方や、女性隊士としての振る舞いを教えてくれることとなった。「雷鳴」オリジナルのシナリオでは主人公を助けたり、男同然の剣技で何度も攻略キャラを助けたイケメン女性なのだが…同じ「雷鳴」の主人公のはずなのに、彼女は私を見るなり不服そうにしている。微妙な空気感の中、恐る恐る声をかけてみた。
「おはようございます。琴さ…」
「隊内では中沢とお呼びください」
冷たくあしらう彼女に居心地の悪さを感じながらも言葉を続けた。
「すみません中沢さん。すぐに支度してそちらに向かいますね」
私はそそくさと部屋に戻り、身支度を始めた。こんな感じで大丈夫なのだろうか…内心不安になりながら琴さんが待つ廊下まで足を踏み出した。足早に琴さんは調理場へと私を案内した。
「まず班によって生活当番が決まっています。炊事と巡視は分担されている為、前日から何に当たるか把握するようにしてください。今日は1番隊は朝ご飯と昼の巡視が当たっています。それ以外の時間は稽古や身を鍛えるが基本です」
いよいよ1番隊の沖田さんと稽古や炊事を一緒に出来る…そう思うと胸がワクワクした。自分の推しと今日から毎日身近に話せる……釜戸に薪をくべ、お釜に米をとぎ入れた。炎をつけようと周りを見渡すと、ゾロゾロと1番隊隊士達が集まってくる。
「おはようございます。本日から1番隊に所属する武田観柳斎と申します。よろしくお願いします」
隊士全員の前で頭を下げると、周りの隊士たちがくすくす笑いだした。野太い声で小さく嫌味が聞こえた。
「ちびの癖に新人が1番隊なんて務まるもんか」
主人公補正もモブには呆気なく通用せず、周りの者は余り快く思っていない様子だった。気まずい雰囲気の台所に沖田さんが入ってくる。
「おはよう。みんな炊事の準備は?」
清々しい笑みをみせ、こちらに歩み寄る。先程まで私をバカにしてきた隊士達も深々と頭を下げている。私が慌てて頭を下げると、沖田さんは私の肩を叩いた。
「武田くん、おはよ」
沖田さんの輝くような笑みに私は見とれた。拍子抜けした私は馬鹿みたいに間抜けな声を出した。
「おはようございます」
沖田さんはみんなに向き直る。
「紹介するね。武田観柳斎くん。近藤さんの名により、今日から1番隊隊士として行動を共にするよ。仲良くしてあげてね」
沖田さんの笑みにその場の隊士全員がこちらをみた。私が隊士達に笑みを向けると、1人の隊士は不服を漏らす。
「沖田さん、どうしてそんなチビがうちの隊に入れるんですか!俺たち1番隊は互いに実力を認め合うもの同士でしか信頼を置けません!」
信頼がないのはわかる。昨日きたばかりの新人が、実力重視の一番隊に配属されるのは意味がわからない…私も逆の立場なら不満を垂らすだろう。沖田さんは不満を吐く隊士に言葉をかけた。
「確かに僕も納得いっていないよ。この子の実力はあの一くんとほぼ互角だし、申し分ないくらいだとは思うよ」
斎藤さんと実力が互角と聞くと、その場にいた隊士たちは言葉を漏らす。しかし沖田さんの続く言葉に唾を飲んだ。
「ただここのメンバーと同様に、僕も信頼は置けてない…少なくとも背中を預ける中ではまだないよ」
突きつける現実に言葉を失うも、沖田さんは肩を叩いて微笑みかけた。
「でも、僕らは武士。互いの不満は互いの剣で認め合っていけば良いと思うな」
優しい言葉に心が絆された。それと共にプレッシャーも重なる。私の実力が重視されるとはいえ、剣を振るうのは斉藤さんとの決戦が初めてで、あれも主人公補正の賜物だと思っている。そんな私に真の剣の実力なんてあるはずがない。私の不安が伝わるのか、隊士たちも苦虫を潰した様なきまずい沸騰する味噌汁の出汁が静か水を溢れさせた。そんな不安を消し去るように後ろから陽気な声が響く。
「なんだー?お前たち、朝から辛気臭いなぁ」
後ろを振り向くと、太陽の様に明るい笑顔を向ける男が立っていた。近藤さんだ。近藤さんは私を庇う様に前に立った。腕を組み、にこやかに話しかけた。
「仲間思いなお前たちが仲間を疑うなんてらしくないぞ」
近藤さんの言葉を裂く様に一番隊の隊士たちが口を開く。
「お言葉ですが局長。武田さんの実力は凄いのは分かりますが、1番隊はお互いの信頼を大切に思う部隊です。相手のことを知らないのに信頼をおけと言うのは難しいと思います」
近藤さんは隊士の意見に少し考えた後、自分の腰にさした刀を抜き、見せた。
「なら戦うといい」
私は刀をまじかで見て、口を開いた。沖田さんは流石に驚いたのか首を横に振った。
「近藤さん、流石にそれはこの子が…」
口を挟む沖田さんに対し、近藤さんは言葉を重ねる。
「可哀想か?こいつもそんな生半可な気持ちでここにはきちゃいないさ。俺達みたいな変わりもんには、言葉を交わすより、刀で語る方がいいだろ?なぁ、お前ら」
1番隊の隊士達はお互いに目を合わせ、剣を向けてきた。
「武田殿。俺達があんたに信頼を置くためにも、ひとつ手合わせ願いたい。」
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