海の彼方のトティアス 〜船員さん、異世界へゆく。海に沈んだ世界で絆を育み生き抜く、普通の男の物語~

万年ぼんく

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第二章

第七八話 男心? 摩訶不思議です

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 翌朝、ビクトリア号は曳船からもやいを解き、港町オプシーに向けて抜錨した。

 海象は穏やかに凪ぎ、晴れ渡る青空が広がる。順風満帆を絵に描いたような爽やかさに満ち、北への針路を取って航行していた。


 同、船長執務室――。

 応接テーブルを囲む四人が、陰鬱な空気を漂わせていた。

 横並びに座る穂積とビクトリアの正面に腰を下ろしているのは、ゼクシィ、クリスの二名である。

 昨晩の悲劇は既に全乗組員の知るところとなっていた。

 憂鬱な朝食の席で、強引に空気を変えようとしたビクトリアが快活にぶっちゃけたのだ。

「いやぁ~! ホヅミっ! 昨晩は残念な結果になったが、まぁ、男なら誰でもあることだ! たぶん、大丈夫だろ! きっと、そのうちに良くなる! カァーカカカカっ!」

 即座に事態を見抜いたゼクシィはメンバーを緊急招集し、船長室で四者面談と相成ったのである。

 メリッサは凄い形相で参加を打診してきたが、まだ候補の段階である上、非常にセンシティブな議題なのでお引き取りいただいた。

 二人の怒りに満ちた視線がビクトリアに突き刺さる。

「リア姉……」
「船長……」
「うっ……」
「「何してくれてんだ!」」
「ち、違うんだよぅ~。ビクトリアは悪くないよぅ~。俺が悪いんだ…………はぁ」

 穂積は弱々しい声でビクトリアを弁護するが、火に油を注ぐことにしかならない。

 二人とも激怒していた。

 穂積がEDになってしまったことは、この際、仕方がないかもしれない。ビクトリアも言ったとおり、誰にでも起こり得ることだ。

 しかし、アフターケアがあまりにも酷すぎる。

「リア姉。なぜ、あの場で、あんなことを言ったの?」
「ホヅミさまを傷つけるなら、船長でも許しません……」
「ち、違う! 違うぞ! オレはただ、気分を変えようとしてだなぁ……。こういうのは気持ちの問題だろ?」

 まったく分かっていない義姉にゼクシィの額に青筋が浮かぶ。

「……昨晩、ホヅミンに何を言った?」
「オ、オレだってホヅミを励まそうと頑張ったんだ! 小ちゃくなったナニを咥えて一生懸命に……」
「船長……。そういうこと言わない……」
「イザという時にしょげたんだ! しょうがな「リア姉っ!」い……だろう……」
「船長……。もう喋らないでください……」

 クリスもしっかりと正しい理解をしているようだ。元々、性奴隷としての教育を施されていた上、最近はチェスカから様々な手練手管を吸収している。事この分野において、ビクトリアは足元にも及ばなくなっていた。

 二人はビクトリアのデリカシーの無さに呆れ返っていた。もはや、是非も無し。この女に任せていては、穂積は一生立ち直れないだろう。

「リア姉。ホヅミンのことは私に任せてもらう」
「なぁ!? ダ、ダメだ! ゆ、許さんぞぅ!」
「リア姉に男性のメンタルケアが出来るのか?」
「船長……。無闇にしゃぶればいいものじゃない……」
「クリス。今はそれ以前の問題だ。まずはホヅミンの心を癒すところから始めなくては」
「先生……。もちろん分かってます……。ホヅミさまは傷ついてる……」
「オレだって! そんなつもりは! オレだってぇ~!」

 お前には無理だと言われて、ビクトリアは半泣きで抗弁するが相手にしてもらえない。

「リア姉自身がトリガーになっている可能性もある」
「女に付けられた心の傷は、女にしか癒せない……。同じ人には無理……。幸いなことに、ホヅミさまにはボクがいる……」
「クリスぅ? それは私の役目だ。子供の出る幕じゃない」

 二人はビクトリアを無視して駆け引きに入った。ここで穂積のナニを復活させた女になれば、そのアドバンテージは計り知れない。

「じゃあ……先生……。二人で癒しましょう……」
「二人で?」
「先生が心を……。ボクが体を癒すんです……」
「いい加減にしろ。このエロガキ」
「いいんですか……? 教えますよ……? いろいろと……」
「なんだって? ちょっと詳しく……」

 クリスは分の悪さを感じていた。

 穂積は何としても、自分には手を出さないつもりではないか、と気づき始めていた。

 しかし、このままで放置するわけにもいかない。近い将来、チャンスが回ってきた時には、取り返しのつかないことになっているかもしれないのだ。

 そこで、ゼクシィの肉体を利用して、間接的に穂積の精力回復に努めることにした。ゼクシィには恩を売ってビクトリアを抑えてもらう。

 最終的に穂積を籠絡し、独占出来れば勝ちなのだ。性技では誰にも負けるつもりはなかった。

「ひそひそ……」
「ほうほう。それは……!」
「ごにょごにょ……」
「な、なんてことを思いつくんだ……!」
「先生のおっぱいなら……ああやって……こうすれば……」
「くひっ……! くひぁっ……!」

 クリスが恐ろしいことを考えているとはつゆ知らず、ゼクシィは大興奮でその手を取った。

「クリスっ! 協力してホヅミンを癒そう!」
「はい……。先生……せいぜい役に……じゃない……。先生……! 一緒に頑張りましょう……!」

 ガッチリ握手を交わす側室と妾。正妻は完全に置いてけぼりになっていた。

「頼むぅ! 聞いてくれ! 途中までは本当に上手くいってたんだ! もう少し! あと少しで入るってところで! 突然、変なことが起きたんだぁ。なぁ? ホヅミぃ~? 変だったよなぁ?」

 全泣きに入りかけているビクトリアが可哀想で、自分が不甲斐なくて仕方ない穂積は、ゼクシィとクリスに相も変わらず自虐的に証言する。

「二人ともぉ~。ビクトリアの言っていることは本当なんだぁ~。ここぞって時に、変な歪みが俺の粗末なモノを覆ったんだぁ~。もしかしたら……俺が異世界人だからダメなのかも……。やっぱり俺のせいだ……。ゴメンよ……。ビクトリアに恥をかかせてしまった……はぁ」

 ビクトリアに釣られて穂積も半泣きになる。

「ホ、ホヅミぃ~。そんなことない! お前は頑張ったぁ! 頑張って気持ちよくしてくれたんだぁ!」
「ビクトリアを愛してる。なのに、愛してる人の前で、イザって時に役に立たない愚息だ……。俺はダメな男なんだ……。もしかしたら男じゃないのかも……はぁ」
「ホヅミぃ~!」
「ビクトリアぁ~!」

 がっちり抱き合い傷を舐め合う二人。

「「しくしくしくしく……」」
「「…………」」

 さめざめと泣いている男女を、冷めた目で見る二人の女。

「やっぱりリア姉じゃダメだ。私たちに任せてもらおう」
「船長じゃ、ホヅミさまと一緒に落ちてくだけです……」
「頼むからチャンスをくれ。なんかの間違いだ」
「……なら、何があったのか、ちゃんと話して」
「わ、わかった。話す。話すから、信じてくれ」

 ビクトリアは昨晩のクライマックスで起こった謎の怪奇現象を事細かに二人に話して聞かせた。

 随所に穂積の心をえぐる表現が挟まれる度にゼクシィが怒鳴り、クリスが辛辣な一言を浴びせて、脱線しながらも何とか語り終えた。

「股間を覆った歪みねぇ……」
「チンプンカンプンです……」
「本当なんだ。もう少しで入りそうだったのに……」
「本当なんでふ……ひっく。信じてくらはい……ううっ」

 あの時、確かに起こった異変。その直後から穂積のEDは始まったのだ。

「ホヅミンは、その時に体に違和感を感じたのね?」
「はい。ゼクシィ先生ぇ~。助けてください……なんかの病気です、きっとぉ~」
「だから、EDかしら」

(イソラぁ~。言語理解ぃ~)

 魔女も苦笑いしか浮かばないだろう。ちゃんと翻訳しているんだもの。

「おい。その病気は薬かなんか無いのかぁ? 不治の病じゃないんだろう?」
「はぁ。リア姉ぇ~。多くの症例が精神的なものかしら。男性の性の悩みは難しいのよ。女以上にデリケートなの」
「そっとしておいてあげなきゃいけないのに……。船長は食堂で……。最低です……」
「ホヅミぃ。すまん……。まさか、そんな病気とは思わなんだ……」
「俺が悪いんだ……。魔法も使えない能無しのくせに……。もう、ナニも出来なくなった……。ハーレムとか、バカな妄想を抱いたバチが当たったんだぁ……」

 どこまでも沈んでいく穂積に女たちの同情が集まる。男とは、モノが勃たなくなっただけで、こんなにも落ち込んでしまうものなのかと、三人とも動揺を隠せなかった。

 特に、不能の現場に居合わせたビクトリアの自責と後悔の念は半端ではない。自分が至らなかったせいで、愛する男を深く傷つけてしまったことに、遅ればせながら気が付き、両手で顔を覆ってうずくまる。

「ビクトリア。ゼクシィ。クリス。すまないが、俺は真性の役立たずになってしまった……。こんな奴が、アルローの為になる筈がない……」
「ホヅミぃ! そんなことはない! お前はオレにとって唯一無二の男だ!」
「ホヅミン! 大丈夫かしら? ゼクシィが必ず勃ち上がらせてみせるから!」
「ホヅミさま……! すべてをボクに……! お任せいただければ……!」

 穂積は涙を拭いて立ち上がる。ナニは勃ち上がらないが、涙をこらえて立った。

「三人とも、どうもありがとう。だけど、俺は決めたよ……」

 怪訝な顔をする一人一人に、薄っすらと悲しそうに笑いかけると、一旦、目を閉じる。

 深呼吸を一つ挟んで目を見開き、男一匹、断固たる決意を明かす。

「俺は、みんなと別れて、オプシーで、ビクトリア号を下りる!」
「「「…………えっ!?」」」

 これには女が慌てた。まさか、そこまで思い詰めているとは思いもしなかった。必死になって声を掛ける。

「ダメだぁ~! ホヅミぃ! やめろぉ~、行かないでくれぇ~。オレにはお前しかいないんだぁ~」
「ホ、ホヅミン!? さすがに思い詰め過ぎてるわ! それにEDと下船は関係ないかしら!?」
「ホズミさまが下船するなら……! ボクも付いていきます……!」

 ビクトリアは泣いて縋った。ゼクシィは珍しくたしなめた。クリスは大穴狙いに出た。

「いいや、ダメだ! このままでは俺がみんなを不幸にしてしまう! それだけはダメなんだぁ!」

 EDを契機として、心のダークサイドを掘り下げてしまった穂積。掘って掘って掘り抜けて、逆方向に貫通して何かの境界を突破してしまったらしい。

「三人とも。いつまでも愛している。それだけは、どうか忘れないでいてくれ。お別れだ……」

 愛あるが故に、別れの選択をした穂積。自分のEDに彼女たちを巻き込むわけにはいかない。

 一度はGigoloを目指した男に残されたなけなしの誇り。最後の引き際ぐらいは、エレガントに飾ろうと、そう思ったのだ。

 穂積の迷走はしばらく続く。

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