海の彼方のトティアス 〜船員さん、異世界へゆく。海に沈んだ世界で絆を育み生き抜く、普通の男の物語~

万年ぼんく

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第二章

第九八話 ロリコン? いいえ、クリスが好きなだけです

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 クジラを探し始めて二週間が経過していた。未だに潮吹きは観測されていない。

 メリッサに至ってはワッチ以外は露天風呂に入り浸るようになり、真面目に探しているのか至極怪しい。本人曰く、『船橋から一番見えにくい六時方向を監視するには浴場が一番良いのです! 当直時間外も鋭意探索に努めていますとも!』ということらしい。

 浴場には穂積考案、クリス製作の多種多様なお風呂グッズや健康器具が持ち込まれている。

 垢すり、ケロリン桶、ボディブラシ、まごの手、頭皮マッサージャー、美顔器、リクライニングチェア、ボンボンベッド、ぶら下がり健康器、足つぼマット、フラットベンチ、ダンベル、腹筋ローラー、レッグスライドマシン、バランスボール等々。

 これらの開発過程でクリスはゴムのように柔らかい衝撃吸収性能に優れたF素材を精製できるようになった。スーパーボールのように跳ねるほどの弾性があるので造れるものの幅が大きく広がった。

 F素材を使ったバランスボールは女性陣に大人気だ。

「うわわっ! なにこれ、ボヨンボヨンしてる! ――超楽しい!」
「ちょっとデリーさん! 遊んでるんなら交代してください! ホヅミさまがそれに座ってればウエストが細くなるって!」
「えっ!? これでぇ~? 噓でしょ?」
「足を床に付けちゃダメらしいです。毎日続ければ理想的なクビレが手に入るそうですよ!」
「これで足を離す……っと、とととっ! いやぁ~無理だわ」
「だから代わってください」
「チェスカ。もうちょっと待って。練習する!」
「ええ~。私はもうすぐ海水移送と塩結晶回収と昼食仕込みと雑用が~」

 一番苦労したのはダンベル。材料が木材であるため比重が軽くどうしてもサイズが大きくなる。そこで甲種材料をナノレベルまで細かく分解し、極限まで圧縮して結合させた密度の高い素材を試作してみた。結局、軽いという点は改善できず、海賊の足枷を分解した砂鉄からウエイト部分を造ることにした。

 ところが、この試作素材がとんでもない性能だった。スターキーの目玉が飛び出して戻らなかったほどだ。

 甲種G素材と名付けられたその純白の素材。重量は鉄の五分の一にして、強度は鉄の五倍だったのだ。

(たしか、ポスト炭素繊維としてそんな新素材があったような……? 材料は木だったような……? ダメだ。忘れた……)

 これでクリスの自衛能力開発にある程度の見込みが立った。甲種ナノ材料を持ち歩けば、形状を自在に変えられる強固な防壁をその場で造り出せるかもしれない。


**********


 船尾楼内――。

「これをクリス専用! 変幻自在の特殊兵装! 『ファンタスマゴリア』と命名する! その可能性は無限大っ! だっ!」
「はいっ……! ホヅミさま……! 『ふぁんたすまごりゃあ』をがんばって最適化……!」
「うんうん。とりあえず相当量を持ち歩かなければ意味がない。というわけで、まずは基本形態 Ver. AC (バージョン・アクティブ・クローク)の習熟から始めよう」

 穂積の厨二脳が爆発していた。しかし実際のところ、この『ファンタスマゴリア』は材料さえ手元にあれば非常に汎用性の高い能力である。相手を拘束するのも簡単だ。押し包んで甲種G素材に精製して固めてしまえばいい。

「えっと……できるだけいっぱい……。マントみたいに身に付ければいいんですか……?」
「うんうん。重過ぎても動きが鈍るから、しっかりとした防御形態が出来上がるまでは、ほどほどにした方がいいけどな」
「とりあえず……。持てるだけ持ってみます……」
「うんうん。限界を知っといた方がいいよねぇ…………って。――えっ?」

 実証実験のため船尾楼には大量の材料が準備してあった。いくつものタライに溜められた真白の甲種ナノ材料は総重量二百キロはあるだろう。

 ナノ粒子の集合体はクリスが手を触れた箇所から小柄な身体を這い上がるように纏わりつき、一部は重力に逆らい浮き上がって羽衣のように周囲に漂っているようにも見える。すべての材料を制御下に置いたクリスはまるで天女のように美しかった。

「ありがたやありがたや……」

 思わず拝んでしまう穂積。

「ホヅミさま……。可愛い……?」
「うんうん。とっても可愛いし、綺麗だし、幻想的だ。クリスの真紅の瞳が良く映える」
「ごぶっぷっ! ぶしゅっ! ごきゅごきゅごきゅ……」
「……ちょっと噴いちゃったね」
「ゲンカイデス……!」
「あと二年だねぇ~」
「ホヅミさま……! あと一年半もないです……!」
「お互い頑張りましょう……」
「モウコレイジョウハ……。ゴウモンデスカ……?」
「……ちょっと考えさせて」
「いつでも……待ってるからね……?」

(ぐっはぁ――っ! クリスぅ――っ! たまらんっ! もういいかな!? EDだけど謝罪していいんじゃない!?)

 ロリコンであることは受け入れられないが、クリスのことは大好きだ。つまりコレは新たなるコンプレックス。

「俺はロリコンじゃない! ロリータが好きなわけではない! 俺はクリスを愛しているだけだ!」
「愛して……ごくっ! えへへへぇ~……ぎょぐん! ぐへへへぇ~……じょばば」
「クリスぅ~! 愛してるぞぉ~!」
「だばばばばばぁ……! ホジュミしゃまぁ~……んくっ! ……にょめにゃい! もう飲めにゃい……ぶっしゃぁっ!」

 次の瞬間、限界突破したクリスの『ふぁんたすまごりゃあ』が穂積に襲い掛かった。生き物のように全方位から纏わりついて拘束し、クリス自身もその中を滑るように移動して穂積に抱きつき接吻する。

「ぶっじゅうぅうううっ~! ぶしゅぶしゅしゅ!」

 大量のねっとりした甘い唾液が口内に注ぎ込まれて息をするのもしんどいが、それ以上にクリスの唾液が美味かった。思わず啜り上げて唇に吸い付いてしまう。

「ぶじゅぶじゅ! じゅぷびゅぴっ! じゅぴちゅ~! んんん~っ! ぱぁあ~っ! ぐぅへへへ――っ!」
「クリス? 動けない。マジで動けない。ってちょっと!? 服を分解しないで!?」
「ホヅミさま大丈夫です。あとでボクが造ります。それよりも今は邪魔ですっ! ぐっへぇ!」
「クリス!? さっきまでの可愛いクリスはどこ行った!? 目が光ってる! 怪しすぎる光を放ってるようっ!」
「大丈夫です。ちょっとだけ。先っちょだけですからぁ~っ! どうせ動けません。関節は固めてあります」

 早速に使いこなしているようだ。魔法も使えない穂積にはどうしようもない。

 見れば船楼内の各所の扉や出入口が真白の素材で固められて封鎖されている。誰も入っては来れないし、外観部分以外は補強済みなので簡単に破ることもできない。

(あっ。コレ詰んでる)

 クリスは自分の服もすべて分解して艶やかな白い肌を晒していた。白い粒子の渦に囲まれながら二人の肌が密着する。

「ホヅミさま……。お慕いしております……」
「クリス。俺も愛しているよ。でもレイプは良くないよ」
「いいえ……。ホヅミさま……。先生も言っていました……。コレは治療ですよ……」
「治療……」

 クリスが穂積の耳元で小さく甘く、愛しげに囁く。

「ホヅミさまは……『ふぁんたすまごりゃあ』で身動きできません……」
「クリス……」
「ですから……ボクに手を出すことも出来るわけありません……」
「それは……」
「大丈夫です……。少しマッサージするだけ……」
「でも……」
「ボク自身は傷ついたりしませんよ……? ホヅミさまをちょっとだけ……」
「……」
「気持ちよくするだけ……」
「――」

 穂積は目を閉じてクリスの『ふぁんたすまごりゃあ』に身を任せた。

 以後、『ファンタスマゴリア』と『ふぁんたすまごりゃあ』は本質的に同じものでも、二人の間では全く別の意味を持つものとなる。

 『ふぁんたすまごりゃあ』は羽衣に包み込まれるように心地よかった。程よく空気を含んで暖かく、クリスの冷たい肌とのギャップもたまらない。

 あらゆるアクロバティックな体位変換を可能とする白い羽衣に抱かれて、クリスは身体中を這い回りチェスカ直伝超絶技巧を繰り出し続けた。最中はひと時も拘束を解いてくれなかった。少しの抵抗も許さず一方的に快楽を刻み込んでくる。

 クリスは宣言通り自らを傷つけることはしなかった。そのことに少しだけ安心した自分が許せない。一線は超えていないというだけで、それ以外のすべてを以ってクリスは奉仕してくれた。

 この世にあるのが不思議なくらいの圧倒的な快感とクリスの献身的な愛情を感じておいて、それでも反応できない自分自身に心を抉られ、静かに涙が頬を伝って落ちる。

 汗だくになったクリスが薄っすらと菩薩のような微笑みを浮かべ、ススっと肢体を滑らせ目の前まで移動してきて涙をぴちゃぴちゃ舐め取る。

 小さなクリスに抱き締められながら『ふぁんたすまごりゃあ』に包まれていると安心する。EDの不安が消えていく。

 暖かい揺り籠の中、幼い少女に抱かれて、甘やかな眠りに落ちていく。

 クリスは最後まで、拘束を解いてはくれなかった。

「ありがとう」
「えへへ……」

 EDだからと逃げている場合ではない。

 クリスの思いに答えなければEDよりも最低だ。


**********


 クリスとひと眠りしてから船尾楼を出る。服は元通りに戻っていた。

煙管服つなぎじゃなくて良かった。ビクトリアを悲しませるところだ)

 クリスは『ファンタスマゴリア』を纏ったままだ。甲板はそれなりに風があるのだが、ナノ粒子は飛散することなくフヨフヨとクリスに寄り添っている。

「クリス。それ全部で二百キロ以上はあったと思うけど、一体どうやって?」
「ボクが身につけているように見えてますか……?」
「うんうん。そう見えるけど違うの?」
「身体に触れているのは一部だけです……。ほとんど重さは感じません……」

 一見、着用しているように見せているだけで、実際には足元の床面で材料の自重を支えているという。自分の動きに合わせて全体の分子を操作し追従させているだけだとか。

「すごいな~。パッと見た感じだと、真っ白の裾の長いドレスみたいに見えるぞ。ちょっと巫女服を意識してる?」
「はい……。巫女服のままだと体積が足りないので……。裾と袖を伸ばして襟を立てて、手元と足元、首元を隠してます……」
「うんうん。とてもいい。可愛いよ。それだけあれば材料も足りるだろうし」
「えへへ……。動かすだけならもっといっぱい……。でも、これ以上は服じゃなくなっちゃいます……」
「別に積極的に戦う必要はないんだ。クリスは専守防衛を前提でいこうか」
「せんしゅぼうえい……?」
「……こういう漢字ね。たぶん『ファンタスマゴリア』は守りに秀でた能力だ。そして不用意に攻めてきた相手をカウンターで封殺できる」
「専守防衛……。なるほど……。接近してきたら絡めて固めるだけですね……」
「そうそう。遠距離から攻めてくる相手には甲種G素材の防壁を造って対応可能だ。手元にある材料を上手くやり繰りして防御とカウンターを絡めていけば、複数の相手にも対応できるようになると思う。クリスは発動速度も速いからな」
「えへへ……。楽しみです……。いろいろと考えるのが……」

 クリスはきっと強くなる。心は既に十分に強い。魔法も生産特化で戦闘スタイルが決まっていないだけだ。最近は身体も少しずつ成長している気がする。

 ただし、一つだけ注意しておかなければならない。

「クリス。分かってると思うけど……」
「はい……。D素材でも長くはもたないかも……です……」
「甲種G素材も同じだ。普通の木よりマシだとは思うけどな」
「ナノ粒子の状態だったら一瞬……」

 結局のところ『ファンタスマゴリア』は木材由来の材料である。


「「熱量魔法からは逃げの一手!」」


 燃えない木材を造りたいが、穂積の知識には無かった。

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