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一体全体貴方はどこの小デブなの!?
しおりを挟むしん、と静まり返った部屋の中で、2人はじっと見つめあっていた。
いつものように穏やかにアンバーを迎え入れたクリオラシュは、相変わらずの敬・語・で恭しくアンバーに挨拶をした。
ツキン、と心が痛むのを感じながらもアンバーは口を開く。
「今日は、お話があって参りました」
アンバーの放つ凛としたその声に、クリオラシュが僅かに目を見張ったように見えた。すぐに表情は元に戻ったので、アンバーの気のせいかもしれない。「勿論です」と声掛けに応じたクリオラシュは、あくまで穏やかにアンバーをカウチに誘った。
そして自分は向かいの椅子に腰掛ける。
「お話をお聞かせください」
しゃんと背を伸ばしそう言ったクリオラシュは、相変わらず優雅な物腰でそう呟いた。
どれだけの沈黙が流れただろうか。
俯いたアンバーは唇を震わせ、開きかけ、そして閉じた。
目の前の男は身じろぎもせずに姿勢良く座っている。
ちら、と視線を向けると凪いだ海のように澄んだ瞳がアンバーを捉えていた。いつまでも待ってくれそうなその表情は、時間経過と共に心配そうな面持ちに変化していく。
「アンバー様、もしご気分がよろしくないのでしたらまた日を改めて、」
クリオラシュの気遣う声掛けに、心を決め、
「こ、婚約解消をしまして、王家からは、少なくない額の慰謝料を頂けましたの!」
唐突にアンバーが声を上げた。
「は、はい」
アンバーの迫力にやや威圧されかけるクリオラシュ。
それを気にする余裕もなく、アンバーはしどろもどろになりながら言葉を続けた。
「王妃教育は、この国の成り立ちや、この国の名産や……、旦那様になるはずだった方が学ぶはずの王が必要とする知識もあって、今となっては全く役に立ちませんの!」
「そ、それは……、」
きっと、慰めてくれるに違いないクリオラシュの言葉を遮って、アンバーは諦めと共に告げた。
「だから、今の私は、『なにもない』のです」
「っ……!決してそんなことは、」
「ですから!」
声が跳ねた。
ーー恥ずかしい、とても恥ずかしい。そして少しだけ、怖い。
沸き起こった感情に気づかないふりをしてアンバーは言葉を続ける。
「平民に必要な知識など全く持ち合わせていないですし!使用人に世話を焼かれるのに慣れきっています、父や母に受け入れてもらえるかどうかもわかりません!ですが、それでも……ッ」
今度こそ取り繕えないほどに、驚いた表情をしたクリオラシュの姿が見える。いつも穏やかに細められていた、目を見開いた彼に、ざまあみなさい!と思いつつヤケクソになったアンバーは、最後まで勢いよく言い切った。
「こんな私でよろしければ、一緒に人生を歩んでいただけないでしょうか!」
沈黙が場に戻った。
以前と違うのは、クリオラシュの顔が唖然としたまま動かないことと、アンバーは、想いを告げた達成感、よりも羞恥心が勝り青褪めていることであった。
ーー私ったら、なんてことを言ってしまったのかしら!
そもそも、公爵の娘が平民に懸想するなんて!絶対に認められないことよね!?絶対に考えたくはないけど、クリオラシュ様がもし遊びだったとしたらきっと困惑するに決まってるわ!はいはい!どうせ私は、恋愛初心者のチョロい小娘ですわ!
悲嘆に暮れ、いじけ始めたアンバーの思考を止めたのはクリオラシュの言葉であった。
「…どうしましょう」
いかにも、口から漏れ出てしまった様子のその言葉は、アンバーにとっては悲劇であった。
「も、もしご迷惑でしたら」
「貴女がこんなにも熱烈な方だと思わず……。私としたことが流れを見誤るとは…。余裕を持ち過ぎてしまった」
音もなく立ち上がったクリオラシュは、アンバーの元へ歩み寄る。どこか雰囲気が変わったクリオラシュに、アンバーは微かな違和感を覚える。あっという間にカウチの隣に座った彼は、いつもの距離感に元通りしていた。
「あの。ええと。ヘイザムさ、」
「ラーシュ、とそう呼んでほしい。親しい者はそう呼ぶんだ」
そう告げ、くす、と笑う彼は明らかに小デブの冴えない男ではなかった。いや、体型は変わらないにしても、仕草や、物腰が何処か、ス・マ・ー・ト・になったというか。穏やかに細められるはずの瞳は、どこか鋭さを持ちアンバーを捉えて離さない。
つい、とアンバーに顔を近づけた男は口角を上品に上げた。
「アンバー、美しい君の虜になった哀れな私は、お許しを頂いた、と言うことでいいのだろうか?」
「…!?」
一方、形勢逆転、迫られる形になったアンバーは唖然としていた。頭の中ではハテナが浮かび、いつかの大混乱が乱舞しまくっていた。
だだだだ、誰ー!?
一体全体貴方はどこの小デブなの!?
アンバーはぽかん、と口を開けクリオラシュをガン見した。
「アンバー、本当に君は想像のつかないことばかりやって見せる」
耳元で息を吹きかけられ、アンバーは我に返ったと同時に、
「ひぁあ ぁあ♡♡♡」
予告なしに訪れた快楽に身を捩らせた。
ラーシュの唾液でしまった指は難無くアンバーの秘所に迎え入れられる。きゅ、きゅ、と秘所の蕾を摘み上げられると同時に、にゅる♡と指が撫で入れられる。
「!」
あれだけ身体を許したと思ったのに、指を挿れられることは初めてで、アンバーは無意識に身体を固くした。
「アンバー、怖くなった?すまない。びっくりさせちゃったね」
頬に口付けられ、そのまま唇を舌で舐め上げられる。
「ふ、」
息が漏れ、僅かに開いた口の中にラーシュの舌が入り込んでくる。歯列を撫で上げられる。すぐに舌を絡め取られた。
ちゅぽ♡ ちゅぽ♡ ちゅぽ♡
優しく舌を舐め上げられ、よしよし♡される。
肩の力が抜けると同時に、クリトリスがきゅ、と軽く摘み上げられた。
「んふ♡ ふぅ ぅ♡」
喘ぎ声がラーシュの口の中に消えていく。
堪えきれない声も、快楽も、そして受け入れられたことがわかり、心底安堵したこの気持ちも。
ーー何もかもを支配されている、
そんな気持ちになり下腹部がズクリ、と痺れた。
そんな気持ちを知ってか知らでか、男は悩ましげな視線を腕の中の娘に向ける。
「こうして、私ばかり翻弄されている。非常に嘆かわしい」
ぢゅくく♡ にゅる♡ にゅろろ♡ ちゅぷ♡
「あぁ♡ なんか♡ へ、ん♡♡」
ぞろりと中を撫でられる感覚。指を差し入れられた時は違和感ばかりがつのったはずのそこ。秘芯への刺激や、くちづけで与えられた快楽に、違和感はうやむやにされてしまったようで、だんだんと腰がゆらめき始めた。ゆるやかな快楽は、引いては返す波のように、さざめきながらアンバーを弄んだ。
翻弄しているのはどっちなのか。そう言ってやりたいのに、アンバーは鼻にかかったような、はしたない喘ぎ声しか出せなかった。
「あぁ、本当に夢のようだ。君にこうして触れられるなんて」
いつか聞いた台詞も、今のラーシュが言うと印象が全く違う。
一体彼はどうしてしまったのか。両脚をモジモジと擦り付けながら、アンバーは涙を滲ませた。
「あ、あのヘイザ、」
「ラーシュ」
「ら、ラーシュ様、え、と」
「君にそう呼んでもらえると、とても嬉しい」
にかーっと笑った彼も、アンバーの記憶に見当たらないもので。惚れた弱みなのか、飾り気のない彼にまでギュン、と心がときめく。く、くそー!!と思いながらも、アンバーは言葉をつづけようと口を開いた。
「いつもと……っ♡♡ ご様子が違ぁ…!ので、お加減…ひ、ぁ♡ よろしくないのか、ふぅ、♡♡ 気にな、る、からぁ♡」
ちょくちょく邪魔が入るため、肝心の意図が伝わったか謎であるが、なんとか言いたいことをアンバーは伝えた。
「……」
キョトンとした顔のラーシュは、黙り込んだ。
「……」
同時に指も止まったため、中途半端に盛り上げられたアンバーも、物足りない気持ちを押し隠して、ラーシュの次の言葉を待つ。
ラーシュはふぅ、と小さく息をつくとポツポツと語り始めた。
「私は、出生してすぐ、親と離されたんだ。…それから今まで兄弟のように接してくれた人以外、近しい人がいなくて……、要するに、こうして人に心配をされた経験が極端に少なくて……、その、だから、」
「すごく、新鮮な気持ちだ」
手で口を抑えたラーシュはどこか可愛らしく見え、更にアンバーの胸を壊しにかかる。
ーー可愛らしい!?成人男子、それも、小デブなのに!?
いつかのアンバーが叫んでいる気がする。が、そう思ってしまうのだから、しょうがない。アンバーはぽす、とラーシュの胸に顔を寄せた。
「貴方が私を安心させてくれたように、私も貴方のお役に立ちたいのです」
胸の中でポワポワとした気持ちが膨らんだ。恋愛小説に書いてあった甘やかな恋とは、少し違う、驚きが尽きなくて、少し切ない、とても穏やかな恋。
そんなアンバーを暖かく包み込んだ腕の持ち主は、僅かに心を震わせて呟いた。
「君は、本当に、なんて……!」
ぎゅ♡きゅきゅきゅう♡
「は♡♡ そ、んなの、ばっかりぃ!ーーーっいゃあ♡♡」
秘部をかき回され、お気に入りのところを摘まれ。
予告のない性急な攻めにアンバーはあっけなくイった。
いつもはこれでおしまいのはずなのに、アンバーの中に埋められた指が出て行く気配は一向にない。
アンバーがふわふわとした気持ちで、それでも制止しようと自らの手を伸ばした瞬間のことだった。
かりり♡
「ふはっ♡…ーーーっ♡♡♡!?」
信じられないような衝撃が走り、星が散る。
ビ、クゥと身体が震え、アンバーは未知の感覚に一気に覚醒した。
「…な、なに?、こ、れ、どうして」
後を追うようにじょわぁあ♡と秘所から愛液が漏れ出す。
まるでお漏らしをしたかのような惨状にアンバーは現状を把握できず、泣き出しそうになる。
ぱ、とラーシュを見上げる。
嫌われただろうか。こんな痴態を見せてしまうなんて!
今にも溢れそうなほどに盛り上がる涙を我慢した、アンバーが目にしたのは。
「アンバー、エロすぎ。本当に、たまらない…」
今まで見たことのないような凶悪な顔で嗤うラーシュの姿であった。
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