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1話 だってアクテゥールダカラ
1-1 とある大魔王サマの狂気
しおりを挟む「あがっ!!」
〈ボゴーン!!!〉
けたたましい音を上げ、(自称)勇者はアクテゥールに弾き飛ばされる。弾き飛ばすと言ってもアクテゥールにとってはただの回し蹴りだ。そう。アクテゥールにとっては。彼の回し蹴りは普通の種族にとっては、致命傷なのである。魔王は死ぬまでずっと交代し続けているのだが、その魔王の中で最高級の力をアクテゥールは持っているだ。
もちろん、勇者は魔王を倒すというのが定番だろう。大勇者になる為には、魔王を倒さなければならないのだ。無論、勇者は魔王に向かってくる。だが、大魔王ゼン・アクテゥールは強すぎてしまったのだ。歴代の魔王は倒されるか、寿命で死ぬかだったが、大体が倒されて交代してきた。だが、アクテゥールは全勝無敗!もう誰もが考えていた。「この大魔王ゼン・アクテゥールは寿命でと死なないのではないか。不死身なのではないだろうか。アクテゥールに勝てる奴はいない。」と。だが、このアクテゥールは後に事件を起こす。これが後の
ウォアル大魔法戦争である。
◇ ◇ ◇
「空気ってこんな気持ちイイもんだったんだな。」
魔王城から出ることさえなかったあの頃。こんなに空気を吸うのは何年ぶりだろうか。というより、自分自身何年魔王城にいたとか何歳だったとか覚えていない。途中で数えることも飽きてしまった。のんびりと空を眺めていると、涼しい風が数億人に一人しか生まれない黒いショートの髪の毛をゆらす。
小鳥が目の前を飛んでくる。「ピチチ」と声を鳴らしながら小さな羽根を必死に動かして頑張っていた。その姿を見ていると、沸々と嫉妬が湧き上がってくる。それは負の感情。自分の劣等感、嫌な過去、それが憎悪・嫉妬・殺意……数え切れない程の感情が胸を蛇のようにうねり、埋め尽くす。
「イイよなぁ?オマエはお気楽に生きれるんだからナァ?俺は羨ましいよ。オマエがねぇ。」
絶対に返事など小鳥は返さない。だが、小鳥に心境を叫ぶ。胸の中を。叫ばなければ気がすまなかったのかもしれない。小鳥は憎悪を抱かれている事などいざ知らず、アクセリアの肩に乗る。その小鳥は人懐っこく「ピチチー!」と頬にくっついてきて、可愛い。
アクセリアは肩に乗った小鳥を優しく掴み、ニコリと微笑むと「des is bird」とつぶやき小鳥は跡形もなく消え去った。残ったのはアクセリアの手に乗る死を表す血のみだ。
「ウクク………お気楽に生きてても死ぬのは一瞬ダナ?こんな苦しみ、苦しみの中に入らないのにナ。」
ポツリとつぶやく。それは彼の体験してきた過去。「それは苦しみじゃない。お前はもっと頑張れる。」頑張れほど自分を苦しめる言葉があっただろうか。忌々しい言葉だ。アイツが言った言葉でどれだけの人が苦しんできただろうか。
〈ガシガシがシ〉
ここまでネガティブになってはキリがないと、頭を擦り、今の現状を改めて考える。目の前には左の手のひらに乗った血。ニヤリとアクセリアは笑う。その姿はイタズラを思いついた子供みたいだ。
左の手のひらに乗っている血に向けて右手を向ける。そして精神を一点に集める感じで、さっきの小鳥の姿を思い出す。
「フゥ……我が力よ。彼を創造させたまえ。ーinfernoー」
アクセリアが呪文を唱えるとその血はあっという間に形を作り出し、さっきの小鳥の姿になった。「ピチチ?」とさっき起こったことが何事も無かったかのように、小鳥はこちらに顔を向ける。
これはアクセリアが「アクア・アクセリア」になってから使える様になった呪文だ。「ーinfernoー」死んだものを蘇生させられる。蘇生というより、新しい体を作りそれに記憶を引き継ぐという技だ。実際には生き返ってなどいない。ただ、数十年死んでから立っている人間などには使えない。魂は使いものにならないからだ。小鳥を恨めしそうに見つめ、そのお気楽さに呆れたようにため息をついた。
「やっぱり、お気楽ダナ。オマエ。まぁいいよ。実験は成功だ。この呪文は使えると言うことがわかった。それダケでも成果がでた。」
アクセリアは小鳥を手のひらからおろし、近くの木に置くとその場を去った。小鳥はアクセリアの姿が見えなくなるまで見つめていたがその後はどうしたかは、しらない。仲間のもとにでも帰ったのではないだろうか。
足は進む。アクセリアの故郷はここから近い。数十分もかからないくらいだろう。一歩一歩大地をかみしめ、歩んでいく。
「おやこぉーこぉーってイウの?やってやろうカナ。」
人間界で新しく知った事を親にみせてやろうと、心でワクワクしながら故郷へと進んでいった。
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