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第四節 The Finisher Take
第115話 Unscrupulous Tester Ⅴ
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「どうやら、クリスはクリスなりに自分の限界を超えられたみたいね!」
「限界を超えるってどういう事?これ、ただのハンター試験だよね?ただの試験で限界超えさせる必要あんの?」
「うっ。そ、それはそこよッ!ク、クリスにはこれから神奈川国の公安を背負って立つハンターになってもらいたいじゃない?それならば必要な試練と言えるわっ!並のハンター程度じゃこのアタシが面倒を見る価値がないもの!」
じとーっ
「へぇ。それで?」
「う、うっさいわね!なんでアタシの事をそんなジト目で見てるワケ?生意気よウィルのクセに!」
ばこんッ
「痛ててて。ところで、そんなほいほい限界突破させるようなアイテムなんてあるワケ?」
「そ、そうね。アタシもてっきりマユツバだったけど……。クリスが今、手に持っているお守りは龍人族に伝わる「宝」の1つらしいの」
「でもって、それに使われている素材が本当にいるかどうかすら怪しい、最上位の古龍種の「光龍」で、お守りの保有者はそれから加護が受けられるって物らしいのよ。それだけで怪しさ大爆発でしょ?」
「へぇ、流石に詳しいね。龍人族のきゅ・う・せ・い・しゅ・さ・ま・ッ。にひひ」
「一言多いわよッ」
ばこんッ
「だけどその加護の受け方がこれまた微妙なのよ。詳しくはよく分かんないんだけど……」
「でもでも、今のクリスを見る限りだと、「無事に限界を超えられた」って言われても納得出来るじゃない?あんなに強くなったんだしッ!これも全部アタシのお陰よね?」
「どーだか?どうせ怪しそうでマユツバだからアタシじゃなくてクリスにあげれば~とか言ったんじゃないの?」
「うっ。そ、そんなコト言ってないしッ!そんな言い方してないしッ!」
「あっ、本当に言ってたんだ?うわぁ、龍人族可哀想~。うわぁ、村の救世主様に村の宝をせっかくあげようとしてたのに、うわぁ、哀れ~。うわぁ、うわぁ。引くわぁ、うわぁ」
「う、うっさいわねッ!」
「まぁまぁ、いいんじゃない?別に。済んだことだし、いいんじゃない?別に。まぁ、この話しはクリスには聞かせられないけどね?いいんじゃない?別にぃ?」
「くっ。ウィルのくせに。ウィルのくせにぃ~。キーーーッ!」
「ところでそれにしてもあのコやっぱりやるねぇ!結構、いいタイムなんじゃない、これ?見てみなよ」
「確かにそうね。ここの公安の記録なら、5本の指に入るかもしれないわねッ!それに、この試験の討伐難易度はSランク相当だから補正値が入って……って、あれ?そしたら、アタシの時より上のタイムになる……んじゃないの?」
「よし、ほどけたッ!じゃ、じゃあ、後は宜しくッ!じゃあね~。今度研究に協力して欲しいからクリスに宜しくって言っといて~」
「あ……、逃げられた。ウィルのヤツぅ」
だんだんッ
少女は地団駄を踏みながら、ウィルがいた場所を睨み付けていた。そしてその一方で、クリスが無事に実技試験をクリア出来た事を素直に喜べないでいた。
単純に言えば喜ばしい事だと言えるし嬉しいのだが、素直には喜べなかった。
遣る瀬無い怒りと、行き場の無い怒りが少女の中に渦巻いていた。
更には晴らしどころの無い怒りと、八つ当たりの出来る相手がいないこの状況で1人取り残され、わなわなと震えていた。
「ウィルのアホんだらーーーーーーーーッ!」
ウィルが逃げた後で、少女は泣く泣くトレーニングルームの解除キーを押した。
クリスは突如としてブラックアウトした「世界」に驚いたが、「そんなモンなのだろう」と達観していた事から取り乱す事無く素直に受け入れられていた。
クリスの視界に広がる実り豊かそうな世界は、急速に元に戻っていく。
色とりどりの世界は物寂しいモノトーンの世界へと戻されていく。
こうして再び灯りが点いた時には、クリスが入った時と同じ状況に戻っていた。
『クリス、お疲れ様。ハンター試験の実技試験はこれで終了よ。そこから出て来ていいわよ』
『良かった。これで終わりなんだな?まだまだ続くのなら此の身はもうとっくに限界だったから助かった』
少女の声がスピーカ越しに部屋に響いていく。クリスは少女の声に、ちょっとした違和感を感じていた。
然しながらそこは気にしない事にして部屋から出て行くことにしたのだった。
これは、後日談だ。
あの日の一件以来、少女の事を機敏に察知して避けるようにして逃げ回っていたウィルは、ついに少女に身柄を拘束されていた。
少女は悪手と知りながらも身柄確保に向けて、貪欲なまでに作戦を練っていたからだ。まぁ、どんな悪手かは想像にお任せするのだが、ウィルが好きなモノを想像すれば容易に発想出来るだろう。
こうしてウィルの身柄を拘束する事に成功した少女は、クリスが行ったハンター試験の実技試験と全く同じ内容の設定にするようにウィルに迫った。
ウィルは逃げ切れないと判断した事から、それを渋々と承諾し、少女はトレーニングルームに身を投じていった。
少女は開始早々に性悪妖精種達を、ウージーの斉射で瞬殺した。そして次に出て来た二足翼竜種達を、「豪炎の型」を使って滅多斬りにして瞬殺した。
最後に出て来る予定の小型の炎龍には、先に詠唱を終わらせておいた概念魔術を使って封殺し、完膚無きまでにボコボコにしていった。
拠って何も危うい所など何1つないままに討伐し終えたのである。
全ての討伐を終えた少女の表情はとても健やかな笑顔だった——。
当然の事ながらこのレコードタイムは最速だった。←当たり前の事
当たり前だがこのレコードタイムは参考記録とされた。←当然の事
少女は自己顕示欲と自己満足の塊とも言える、最速のレコードタイムを出した事で大変に満足していた。
の・だ・が、更に後日この記録は別の人間に抜かれる事になる。
更に付け加えれば少女が行った反則行為は抜きで……。
飽くまでもこの後日談は余談だ。これは何事に於いても「オンリーワン」でありたいと願う少女が、そこにいたという、ただそれだけの話しである。
「限界を超えるってどういう事?これ、ただのハンター試験だよね?ただの試験で限界超えさせる必要あんの?」
「うっ。そ、それはそこよッ!ク、クリスにはこれから神奈川国の公安を背負って立つハンターになってもらいたいじゃない?それならば必要な試練と言えるわっ!並のハンター程度じゃこのアタシが面倒を見る価値がないもの!」
じとーっ
「へぇ。それで?」
「う、うっさいわね!なんでアタシの事をそんなジト目で見てるワケ?生意気よウィルのクセに!」
ばこんッ
「痛ててて。ところで、そんなほいほい限界突破させるようなアイテムなんてあるワケ?」
「そ、そうね。アタシもてっきりマユツバだったけど……。クリスが今、手に持っているお守りは龍人族に伝わる「宝」の1つらしいの」
「でもって、それに使われている素材が本当にいるかどうかすら怪しい、最上位の古龍種の「光龍」で、お守りの保有者はそれから加護が受けられるって物らしいのよ。それだけで怪しさ大爆発でしょ?」
「へぇ、流石に詳しいね。龍人族のきゅ・う・せ・い・しゅ・さ・ま・ッ。にひひ」
「一言多いわよッ」
ばこんッ
「だけどその加護の受け方がこれまた微妙なのよ。詳しくはよく分かんないんだけど……」
「でもでも、今のクリスを見る限りだと、「無事に限界を超えられた」って言われても納得出来るじゃない?あんなに強くなったんだしッ!これも全部アタシのお陰よね?」
「どーだか?どうせ怪しそうでマユツバだからアタシじゃなくてクリスにあげれば~とか言ったんじゃないの?」
「うっ。そ、そんなコト言ってないしッ!そんな言い方してないしッ!」
「あっ、本当に言ってたんだ?うわぁ、龍人族可哀想~。うわぁ、村の救世主様に村の宝をせっかくあげようとしてたのに、うわぁ、哀れ~。うわぁ、うわぁ。引くわぁ、うわぁ」
「う、うっさいわねッ!」
「まぁまぁ、いいんじゃない?別に。済んだことだし、いいんじゃない?別に。まぁ、この話しはクリスには聞かせられないけどね?いいんじゃない?別にぃ?」
「くっ。ウィルのくせに。ウィルのくせにぃ~。キーーーッ!」
「ところでそれにしてもあのコやっぱりやるねぇ!結構、いいタイムなんじゃない、これ?見てみなよ」
「確かにそうね。ここの公安の記録なら、5本の指に入るかもしれないわねッ!それに、この試験の討伐難易度はSランク相当だから補正値が入って……って、あれ?そしたら、アタシの時より上のタイムになる……んじゃないの?」
「よし、ほどけたッ!じゃ、じゃあ、後は宜しくッ!じゃあね~。今度研究に協力して欲しいからクリスに宜しくって言っといて~」
「あ……、逃げられた。ウィルのヤツぅ」
だんだんッ
少女は地団駄を踏みながら、ウィルがいた場所を睨み付けていた。そしてその一方で、クリスが無事に実技試験をクリア出来た事を素直に喜べないでいた。
単純に言えば喜ばしい事だと言えるし嬉しいのだが、素直には喜べなかった。
遣る瀬無い怒りと、行き場の無い怒りが少女の中に渦巻いていた。
更には晴らしどころの無い怒りと、八つ当たりの出来る相手がいないこの状況で1人取り残され、わなわなと震えていた。
「ウィルのアホんだらーーーーーーーーッ!」
ウィルが逃げた後で、少女は泣く泣くトレーニングルームの解除キーを押した。
クリスは突如としてブラックアウトした「世界」に驚いたが、「そんなモンなのだろう」と達観していた事から取り乱す事無く素直に受け入れられていた。
クリスの視界に広がる実り豊かそうな世界は、急速に元に戻っていく。
色とりどりの世界は物寂しいモノトーンの世界へと戻されていく。
こうして再び灯りが点いた時には、クリスが入った時と同じ状況に戻っていた。
『クリス、お疲れ様。ハンター試験の実技試験はこれで終了よ。そこから出て来ていいわよ』
『良かった。これで終わりなんだな?まだまだ続くのなら此の身はもうとっくに限界だったから助かった』
少女の声がスピーカ越しに部屋に響いていく。クリスは少女の声に、ちょっとした違和感を感じていた。
然しながらそこは気にしない事にして部屋から出て行くことにしたのだった。
これは、後日談だ。
あの日の一件以来、少女の事を機敏に察知して避けるようにして逃げ回っていたウィルは、ついに少女に身柄を拘束されていた。
少女は悪手と知りながらも身柄確保に向けて、貪欲なまでに作戦を練っていたからだ。まぁ、どんな悪手かは想像にお任せするのだが、ウィルが好きなモノを想像すれば容易に発想出来るだろう。
こうしてウィルの身柄を拘束する事に成功した少女は、クリスが行ったハンター試験の実技試験と全く同じ内容の設定にするようにウィルに迫った。
ウィルは逃げ切れないと判断した事から、それを渋々と承諾し、少女はトレーニングルームに身を投じていった。
少女は開始早々に性悪妖精種達を、ウージーの斉射で瞬殺した。そして次に出て来た二足翼竜種達を、「豪炎の型」を使って滅多斬りにして瞬殺した。
最後に出て来る予定の小型の炎龍には、先に詠唱を終わらせておいた概念魔術を使って封殺し、完膚無きまでにボコボコにしていった。
拠って何も危うい所など何1つないままに討伐し終えたのである。
全ての討伐を終えた少女の表情はとても健やかな笑顔だった——。
当然の事ながらこのレコードタイムは最速だった。←当たり前の事
当たり前だがこのレコードタイムは参考記録とされた。←当然の事
少女は自己顕示欲と自己満足の塊とも言える、最速のレコードタイムを出した事で大変に満足していた。
の・だ・が、更に後日この記録は別の人間に抜かれる事になる。
更に付け加えれば少女が行った反則行為は抜きで……。
飽くまでもこの後日談は余談だ。これは何事に於いても「オンリーワン」でありたいと願う少女が、そこにいたという、ただそれだけの話しである。
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