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第四節 The Finisher Take
第127話 Unique Deceiver Ⅰ
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固有個体が「最上位種」と言われる所以は、その特異性にある。
固有個体は必ずしも、全ての魔獣の種に現れる可能性があるワケではないとされている。しかしそれは通説であり、根拠として確たる信用が置けるものは何もない。
一方で過去から現在に至るまで固有個体が発見されていない魔獣の種があるのもまた、事実だった。
拠って通説もまた、まかり通っている。
だが逆に複数の固有個体が発見されている魔獣の種も存在している。この場合は先天的な因子を持ってる可能性が高いとされている。
複数の先天的な固有個体が発見されている種に関して言えば、それだけ特異性のある能力や特徴的な身体能力を持つモノが「生まれ落ちる環境」ないし、「そうなるように進化の過程を辿った」という結論が導き出されている。
しかし一方でそのような環境に置かれていても、先天的な固有個体は早々現れるモノではない。頻度としては数年から10数年に一度、発見されるというのが統計的なデータだ。
拠ってその魔獣の種が王を求めるような状況になった時に限って、発生するのだろうとこれまで言われて来ていた。要約すれば種の保存の為だと言われているのである。
なので後天的に固有個体になる方が、統計的には頻度は高いかもしれない。しかしそれでも数年に1度くらいの頻度だ。
それ程までに固有個体の発生には時間が掛かる。何故ならば後天的、先天的を問わず自然界に於いて目立つという事は、依頼を受けたハンターに狩られる対象となるからだ。
仮に後天的に固有個体になり得る魔獣がいたとする。そのまま数年の間に力を付ければ固有個体になれたかもしれないが、その前に狩られてしまう可能性は高い。
その場合、それは固有個体として認識も認定もされない事になる。
即ち、固有個体級の力を持つまでハンター達に目を付けられない事。更に、固有個体級の力を付けるまで、弱肉強食の世界で生き残らなければならない事。
拠って過酷な生存競争の果てに、後天的な固有個体は存在を認められる事になるとも言い換えられるだろう。
しかし飽くまでもこれは後天的に固有個体になる魔獣の条件であって、先天的な固有個体は生まれながらにして王たる固有個体級の力を持っている。
しかし、その力が強いか弱いかはその後の成長に拠る。
後天的に固有個体に進化したモノは複数の異なる能力であったり、身体能力を最大限に伸ばした結果として、固有個体足り得る力を持つ。
一方で先天的に固有個体に進化したモノは、特異な能力や特異な身体能力を持つモノが多い。
拠って魔獣の弱肉強食という生態系相関図の、ほぼ底辺にいる「小鬼種」は先天的に固有個体に至る事が多い。しかし、小鬼種から発見される固有個体の数は他の種と比べて頭1つ多い。
本来であれば先天的な固有個体なので、発生確率は低いハズなのに……だ。従ってこれは小鬼種の繁殖力の高さが齎した結果と、結論付けられるようになった。
魔獣は個体の強さが強い程、繁殖力が低い。逆を言えば、個体が弱い種であればある程、繁殖力が高い事になる。種の保存の法則に関わる事から、これは正しい見解だろう。
その結果、先天的な因子が発現しやすくなるとさえ言われている。要するに「王を求めるような状況」というまやかしではなく、科学的に根拠を突き詰めればこちらが正解になるのは間違いが無い。
魔獣の中に於いて小鬼種は捕食する側では無く、捕食される側。従属させる側では無く、従属する側なのである。従って、後天的に固有個体への進化をするのは、ほぼ不可能な立ち位置にいる。
先天的に生まれ持った力に拠って、最初から固有個体級の力を有していない限り、小鬼種は固有個体には至れないのは道理と言えるだろう。
しかし今、クリスの前にいる固有個体は小鬼種でありながら、「後天的な固有個体」だったのである。
-・-・-・-・-・-・-
「おや♪キミに特別な力をあげようか?おやおや♬それで、仲間達を使役し群れを作るといい。まぁまぁ♩群れが大きくなったら、今までキミをバカにしてきた魔獣や人間達に仕返しさ。まぁまぁまぁまぁ♫積もりに積もった怨みを晴らせばいいさ」
1匹の脆弱な小鬼種はその口車に乗った。そして、その「特別な力」に因って、固有個体になったのだった。
「こ、これが、固有個体……なのか?」
「こ、此の身に勝てる相手……なのか?」
クリスは対峙した固有個体の姿に恐怖を覚えていた。それは見た目こそ矮小な小鬼種だった。中鬼種よりも遥かに小さく、普通の小鬼種よりも一回り小さい身体だった。
だが、その身体から放たれているプレッシャーは計り知れない。
あの炎龍ディオルギアを遥かに凌ぐ、重圧をその小さな身体から溢れさせているのだから。
クリスは身体の震えが止まらない。長剣を持つ手が震える。立っている脚が震える。腹筋が、背筋が、体幹にある全ての筋肉が震える。
そして、頭が震える。脳が震える……。
「勝てる相手では決して無い」と、そんな感情に身体が勝手に支配されていくようだった。そんな中でクリスは耐えて耐えて耐え忍んではいたが、繰り返し襲って来る負の感情には勝てず床に膝を付いてしまった。
そして更には意識が朦朧としていったのだった。
-・-・-・-・-・-・-
少女はᒪ字型の建物の6階に来ていた。そして6階を一通り見終えた一番奥の部屋にいる。少女とガルム達は、ここに至るまでに着々と死に掛けている生き残り達に止めを刺していった。
その結果、結界が示す数字は「8」まで減っていた。
「残りは3匹ね。一体どこに隠れているのかしら……ね?」
ひゅっ
「痛ッ?!なるほど、そこに隠れてたってワケね……。それに最後の最後に残ったのが、性悪妖精鬼種だったなんて、笑えないわ」
少女は違和感を覚えていた。そして違和感から解放する解答に気付いてしまったのだ。
その時、少女の身体に異変が疾走っていった。突如として左腕に鈍い痛みが疾走り、徐々に身体が痺れていく感触。これはどうやら麻痺系の毒を盛られたようだった。
少女は痺れを伴った自分の身体を強引に振り返らせていくと、振り返った先には3匹の「鬼」がいたのである。
固有個体は必ずしも、全ての魔獣の種に現れる可能性があるワケではないとされている。しかしそれは通説であり、根拠として確たる信用が置けるものは何もない。
一方で過去から現在に至るまで固有個体が発見されていない魔獣の種があるのもまた、事実だった。
拠って通説もまた、まかり通っている。
だが逆に複数の固有個体が発見されている魔獣の種も存在している。この場合は先天的な因子を持ってる可能性が高いとされている。
複数の先天的な固有個体が発見されている種に関して言えば、それだけ特異性のある能力や特徴的な身体能力を持つモノが「生まれ落ちる環境」ないし、「そうなるように進化の過程を辿った」という結論が導き出されている。
しかし一方でそのような環境に置かれていても、先天的な固有個体は早々現れるモノではない。頻度としては数年から10数年に一度、発見されるというのが統計的なデータだ。
拠ってその魔獣の種が王を求めるような状況になった時に限って、発生するのだろうとこれまで言われて来ていた。要約すれば種の保存の為だと言われているのである。
なので後天的に固有個体になる方が、統計的には頻度は高いかもしれない。しかしそれでも数年に1度くらいの頻度だ。
それ程までに固有個体の発生には時間が掛かる。何故ならば後天的、先天的を問わず自然界に於いて目立つという事は、依頼を受けたハンターに狩られる対象となるからだ。
仮に後天的に固有個体になり得る魔獣がいたとする。そのまま数年の間に力を付ければ固有個体になれたかもしれないが、その前に狩られてしまう可能性は高い。
その場合、それは固有個体として認識も認定もされない事になる。
即ち、固有個体級の力を持つまでハンター達に目を付けられない事。更に、固有個体級の力を付けるまで、弱肉強食の世界で生き残らなければならない事。
拠って過酷な生存競争の果てに、後天的な固有個体は存在を認められる事になるとも言い換えられるだろう。
しかし飽くまでもこれは後天的に固有個体になる魔獣の条件であって、先天的な固有個体は生まれながらにして王たる固有個体級の力を持っている。
しかし、その力が強いか弱いかはその後の成長に拠る。
後天的に固有個体に進化したモノは複数の異なる能力であったり、身体能力を最大限に伸ばした結果として、固有個体足り得る力を持つ。
一方で先天的に固有個体に進化したモノは、特異な能力や特異な身体能力を持つモノが多い。
拠って魔獣の弱肉強食という生態系相関図の、ほぼ底辺にいる「小鬼種」は先天的に固有個体に至る事が多い。しかし、小鬼種から発見される固有個体の数は他の種と比べて頭1つ多い。
本来であれば先天的な固有個体なので、発生確率は低いハズなのに……だ。従ってこれは小鬼種の繁殖力の高さが齎した結果と、結論付けられるようになった。
魔獣は個体の強さが強い程、繁殖力が低い。逆を言えば、個体が弱い種であればある程、繁殖力が高い事になる。種の保存の法則に関わる事から、これは正しい見解だろう。
その結果、先天的な因子が発現しやすくなるとさえ言われている。要するに「王を求めるような状況」というまやかしではなく、科学的に根拠を突き詰めればこちらが正解になるのは間違いが無い。
魔獣の中に於いて小鬼種は捕食する側では無く、捕食される側。従属させる側では無く、従属する側なのである。従って、後天的に固有個体への進化をするのは、ほぼ不可能な立ち位置にいる。
先天的に生まれ持った力に拠って、最初から固有個体級の力を有していない限り、小鬼種は固有個体には至れないのは道理と言えるだろう。
しかし今、クリスの前にいる固有個体は小鬼種でありながら、「後天的な固有個体」だったのである。
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「おや♪キミに特別な力をあげようか?おやおや♬それで、仲間達を使役し群れを作るといい。まぁまぁ♩群れが大きくなったら、今までキミをバカにしてきた魔獣や人間達に仕返しさ。まぁまぁまぁまぁ♫積もりに積もった怨みを晴らせばいいさ」
1匹の脆弱な小鬼種はその口車に乗った。そして、その「特別な力」に因って、固有個体になったのだった。
「こ、これが、固有個体……なのか?」
「こ、此の身に勝てる相手……なのか?」
クリスは対峙した固有個体の姿に恐怖を覚えていた。それは見た目こそ矮小な小鬼種だった。中鬼種よりも遥かに小さく、普通の小鬼種よりも一回り小さい身体だった。
だが、その身体から放たれているプレッシャーは計り知れない。
あの炎龍ディオルギアを遥かに凌ぐ、重圧をその小さな身体から溢れさせているのだから。
クリスは身体の震えが止まらない。長剣を持つ手が震える。立っている脚が震える。腹筋が、背筋が、体幹にある全ての筋肉が震える。
そして、頭が震える。脳が震える……。
「勝てる相手では決して無い」と、そんな感情に身体が勝手に支配されていくようだった。そんな中でクリスは耐えて耐えて耐え忍んではいたが、繰り返し襲って来る負の感情には勝てず床に膝を付いてしまった。
そして更には意識が朦朧としていったのだった。
-・-・-・-・-・-・-
少女はᒪ字型の建物の6階に来ていた。そして6階を一通り見終えた一番奥の部屋にいる。少女とガルム達は、ここに至るまでに着々と死に掛けている生き残り達に止めを刺していった。
その結果、結界が示す数字は「8」まで減っていた。
「残りは3匹ね。一体どこに隠れているのかしら……ね?」
ひゅっ
「痛ッ?!なるほど、そこに隠れてたってワケね……。それに最後の最後に残ったのが、性悪妖精鬼種だったなんて、笑えないわ」
少女は違和感を覚えていた。そして違和感から解放する解答に気付いてしまったのだ。
その時、少女の身体に異変が疾走っていった。突如として左腕に鈍い痛みが疾走り、徐々に身体が痺れていく感触。これはどうやら麻痺系の毒を盛られたようだった。
少女は痺れを伴った自分の身体を強引に振り返らせていくと、振り返った先には3匹の「鬼」がいたのである。
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