不思議なカレラ

酸化酸素

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第五節 The Towards Shining Take

第166話 Twinkle Container Ⅱ

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「あれ……ここは……?どうやらアイツの精神汚染じゃないみたいね?だって、身体が自由に動かないもの」
「ってか、この力の封印が解けてからも、ここって来れるんだ?封印中限定だと思ってたわ。——って、余裕綽々とはしてられないみたいね。はぁ……」

わたしの手を取りなさい」

「光のヒトガタ?アナタは何者なの?アナタの手を取れば、何が変わるというの?」
「その前にアタシの身体は……あれ?動くし!どうなってんの?」

わたしは「惑星ほしの意思」」
わたしの手を取れば御子みこの力は貴女のモノになります」
わたしの手を取りなさい」

「はぁ。御子みこの力ならもう、アタシは使えるわよ?それともなに?アタシが今使ってる力は実は「惑星ほし御子みこ」の力なんかじゃありません。……とか言うつもり?」

「はぁ。まったく。多少強引ですが、仕方がありませんね」

「えっ?ちょっと、何なに?キャラ変わってない?」

 少女は事もあろうに「惑星ほしの意思」を拒絶した。少女からすれば「なんか怪しい感じがしたから」とでも言いそうだが、そんなコトで「惑星ほしの意思」が食い下がるワケもなかった。
 拠って、少女と対話をする事を諦めた「惑星ほしの意思」は、多少強引な方法でも仕方ないと言わんばかりに、少女の中へと入りすり抜けていった。


「今の貴女が行使している力は……」



 少女は唐突に「ハッ」と目を覚ました。目を覚ました少女の目の前には「ソレ」の顔があった。
 「ソレ」は無抵抗になった少女を、少女が目覚めたので、間一髪と言わんばかりの光景だった。


「ひゃうぅッ!ね、寝込みを襲うなんて、どういうつもり?お姫様のお目覚めには1番見たくない顔なのよ、アンタのきっしょい顔わッ!」

どげしッ

「ぐぬおぉ」

ばっくんばっくん

「あぁ、心臓に悪過ぎるわ。ホントに口から心臓が出るって、あぁゆぅのを言うのね」

 「ソレ」からしたら「タイミング、仕事をするな!」だろうし、少女からすれば「タイミング、仕事が遅い!」かも知れない。だがこれは、余談でしかない。

 まぁそんなこんなで、その衝撃のタイミングに拠って少女の中から、「惑星ほしの意思」が最後に話してくれた内容は、すっかりどこかへ旅立っていったというのも事実だった……。



 少女は驚きと怒りに拠って、思いっきり「ソレ」の下顎を蹴り上げていた。先程のように掌で潰されていたり、握り締められていなかったコトが幸いだった。
 「ソレ」としては、摘むように持っていたのが災いだったと言えるだろう。


 強烈な蹴りを喰らった「ソレ」は体勢を崩しており、そのスキに少女は「ソレ」と一気に距離を取る事にした。


 少女は本当に驚きのあまり距離を取っても尚、心臓の鼓動は盛大に音を鳴らしていたが、少女としては周りに誰もいなくて良かったと思っていたというのは、言わなくても分かるだろう。


「でも、これでやっと分かったわ。そういう事だったのねッ!それが、本当の御子みこの力だったなんてね……。まぁでも、そーゆーワケだから、今度こそ全身全力全霊で終わりにしてあげるわッ!」

 ここに来て少女はようやく理解出来たと言える。「惑星ほし御子みこ」の力の本質を。目覚めの驚きで旅立ってしまった、「惑星ほしの意思」の話しの内容を思い出したから……と言うワケではなく、そもそもが勘違いだった事に、漸く気付かされたとでも言い換えられるような内容である。
 そう、全ては勘違いだったのだ。それは少女も然り、輝龍も然り……である。


 「惑星ほし御子みこ」の力は、意思のない創造主が使。従って、「魔」や「神」の力などは御子の力では無い。

 突如として目覚めた異質な力に対して、少女は
 いや、この場合は、と言うのが正解かもしれない。


 拠って「惑星ほし御子みこ」の事を知っていた、輝龍アールジュナーガ・ウィステリアルが諸悪の根源とも言えるかもしれないだろう。


 輝龍は、少女の中に眠る御子の力に反応していたが、少女の中にある「魔」と「神」の力を「惑星ほし御子みこ」の力だと勘違いしていた。
 要するにの一言でバッサリ斬り捨てられるかもしれない。


 一方で様々な勘違いやらすれ違いやらを孕んでいたこの闘いは、本来の「惑星ほし御子みこ」の力の発現はつげんで急速に流れが変わっていった。


 とは言え、「惑星ほし御子みこ」の力を使わずに互角に闘えていた少女は、やはりかなりのハイスペックだったという証明にはなるだろう。



 結論から言うと「惑星ほし御子みこ」の力の発現に最後に寄与したのは、輝龍が渡した「玉」が放ったあの光だった。


 輝龍は少女の「魔」と「神」の力を封印する際に、その力こそが「惑星ほし御子みこ」の力だと信じてしまっていた。
 それは輝龍自身が、その力の内容を知らなかった事が原因だ。しかし、少女の中に眠る力を「惑星ほし御子みこ」の力だと信じた結果、「玉」の力を使ってまで封印し、発現しないように手助けした。

 拠って封印の解ける時が「惑星の御子」の力が解放される時だとのだ。

 だからこそ、少女が封印を解いた時に「惑星の御子」の力が解放されたと思い込んでいた。また一方で、輝龍は「玉」を渡さない選択肢もあったハズだ。

 まぁ、「託されたモノ」で「授ける義務がある」と言っていたので、その選択肢は選ばれなかったと思うが、あの時渡していなければ、今頃少女は腹の中に収まっているのは間違いないだろう。
 それこそデッドエンドと言うヤツだ。


 結果として、様々な勘違いと偶然に拠って、少女は「惑星ほし御子みこ」の力を使えるようになったワケだが、それを本人が素直に喜べるかは別として、結果オーライと言う一言で纏めておこう。



 抑止力としての「惑星ほし御子みこ」の力とは、意思のない創造主の「根源」そのものである。
 それは即ち、宿主しゅくしゅとして成立する為の要素を取り入れる内包するコトであり、言い換えればその惑星内に於ける全ての生命力の搾取さくしゅと言える。


 植物、動物を始め、惑星内には様々な生物が溢れ返っている。それらの生物、ウイルスやプランクトンから人間や魔獣に至るまでの、多種多様な生けとし生ける全てのモノ達の生命力を強制搾取するのが、「惑星ほし御子みこ」のであり、負の感情を大元のエネルギーとして搾取している「ソレ」とは対になる力だ。

 だからこそ、「ソレ」が単体で臨んでも勝てる相手では決してなかった。故に「ソレ」は教訓からマナを取り込み、力を蓄えた。
 それでやっと互角に闘えるようになった。

 更には「惑星融合ゆうごう」という反則チート級の力である「魔法」の行使に拠って、御子を退けるという快挙を成し遂げる事すら過去に於いてはしてみせた。


 ——だが、今回は違う。


 当初は前回以上の力を蓄え、瞬時に次元を渡る力すらも手に入れ、惑星ほし御子みこと互角かそれ以上に圧倒する力を有していた。
 しかし蓄えた力も少女の身の内に、蓄えた力を削られる事になった。

 更には分身体を破壊された後の戦略の見誤りや、少女に固執し過ぎた事から負のスパイラルに陥り、今や窮地に立たされていると言っても過言ではない——。



 ——少女は自身の中に溢れてくる力を感じていた。そして、その1つ1つが何の力なのかも感じ取る事が出来た。


 マムの力、暖かく厳しい力。
 ドクの力、偏屈へんくつだけど、頼もしい力。
 爺の力、優しくて生命力と気力に溢れる力。
 サラの力、レミの力、リュウカの力、ミトラの力、ウィルの力、そして、キリクの力……。


 様々な生けとし生けるモノの生命力という名の「力」を、その身に吸い上げ、少女は渾身の一撃を「ソレ」に向かって放つべく構えていった。


「ありがどう、みんな。みんなの力、大切に使わせてもらうね。みんなの力でアタシは必ず「ソレ」を倒して、2度と虚無の禍殃アンノウンで傷付く人がいない世界を創るッ!!」
「覚悟しなさいッ!名も無き神よッ!!」

終焉蕃神サイクルブレーカ!!!!」

 一条の光が少女から「ソレ」に向かって一直線に疾走はしっていく。
 放たれた光はその直線上にある全てを巻き込み消滅させていく。
 「ソレ」は惑星に対して「根」すら下ろせず、次元を渡る事も出来ずに、消滅させられていく。


 こうして「ソレ」は断末魔の叫びすら上げる事すら許されず、一条の光のほうきとなって、宇宙の果てに向かって流されていった。



 後には流星の如く光が散っていくだけだった。そしてその余韻は長く長く続いていた。


「終わったぁ……。あぁ、でももうダメ。そろそろ限界ね。力を分けてもらったから、みんなにお礼言いたかったけど、アタシはそろそろ限界……みた……い」
「ごめんね、ちゃんと生きて帰れたら……ありがと……するから……。あぁ、死にたく……ない……なぁ」

 ここが草原なら、柔らかな草に気持ち良く背中を預けられたかもしれない。
 ここが雪山なら、雪の冷たさが生きている実感を分け与えてくれただろう。

 でもここは、地球と宇宙の狭間で、微かに地球の重力に空間だ。
 普通の人間が生身で来られる場所ではないし、背中を預けられるのは僅かな大気のみであって、生の実感よりは死の実感しか与えてもらえない。


 少女は少しずつ地球の引力に引き寄せられながらも脱力感に身を投じる事しか出来ず、疲れ切った身体にはそれが唯一の快楽だった。


「へぇ♪アレを倒して仕舞われるなんて。へぇへぇ♫凄いですねぇ……」
「まぁ♪それならそれで。まぁまぁ♬楽しい物語はまた紡げばいいでしょう……」

 少女の耳には朧気ながら声が聞こえた気がした。
 少女の瞳には朧気ながら怪しげな男の姿が映っていた。


 だが、今の少女は地球の引力に身を任せていたので、何もする気が起きなかった。
 そのままアストラルは重力に、だけだ。



 半神フィジクス半魔キャンセラーを解放出来る残り時間は、あとって数分。現状で取れる唯一の行動は、高度約100000mからの自由落下のみだ。

 半神フィジクス半魔キャンセラーの姿でなければ、大気との摩擦で燃え尽きてしまう事になるだろう。然しながら少女にはもう既に、気力も体力も残されていない。
 だから少女は大地に到着するまで、力の維持が出来ないかもしれない可能性を残しながらも、その引力に引かれて墜ちて行くしか出来ない。
 そもそも、行き着く先が大地ではなく、海かもしれないが気にするコトでは既にない。


 拠って為すがままに地球に引っ張られていったのである。
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