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第三節 邂逅
第192話 招待状
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「お邪魔するわね」
「き、キサマはッ?!」
「何故、キサマがここにいる!!」
この場所はルミネの父親であるアスモデウスの居城、ルネサージュ城。そしてその玉座に座るアスモデウスの目の前に、少女は現れたのだった。
「お久しぶりね、アスモデウスさん。覚えていてくれて何よりだわ」
「くっ。ところで何用か?キサマの顔など我は見たくもない。だが、陛下の御子である以上、蔑ろには出来ん」
「用件だけは聞いてやるから、さっさと立ち去れ」
「城は元通りになったのかしら?」
「なん…だと!?何故それを!そうか、ルミナンテだな?!アイツめどこに行ったかと思いきや、人間界に逃げたのだな!!」
アスモデウスの表情は固く、声には緊張が奔っていた。しかし少女の言葉は更にアスモデウスの心を揺さぶり、その表情を醜く歪めていった。
それは「好色」の名が泣くほどにまで歪められた、狂気に他ならなかった。
「相変わらず察しがいいわね?」
「ルミネはアタシが暫く預かるから、構わないでね。探すのも禁止。追い掛けるのも禁止。連れ戻そうとするのも禁止。これは父様と話し合って決めた事だから、魔王からの命令だと思ってね」
「反すればどうなるかは、分かるわよね?」
少女はにこやかに言の葉を紡いでいくが、その目は笑ってなどいない。そして、その表情とは裏腹に言の葉の圧力は強い。
「だけど、そんな一方的じゃ流石に可哀想だから「この命令を完遂するなら褒美を与える」ってコトにしてもらえるように父様には進言しといてあげたわ」
「アタシが伝えに来たのはそれだけよ。それじゃ、またねッ!」
少女は、アスモデウスと話している間、常にディグラスをも余裕で超える程の魔力を解放していた。
更に付け加えると、威圧感全開でアスモデウスに紡いでいた。
だから当然、アスモデウスはその「威圧」に屈服する以外の選択肢は残されていなかった。
少女は「魔界」での用事を全て終えると再び魔族化して人間界に戻ってきた。そんなに長い時間「魔界」に滞在していたつもりはなかったが、既に深夜になっている様子だ。
少女としてはカッコがカッコなので、サラやレミに見られては非常にマズいと思っていた。
だから日が昇り始めていなかったのは僥倖だった。
少女は魔族化を解き、元の姿に戻ると屋敷の中に入ろうと扉に手を掛けたが、そこで少女は視線を感じたのだった。
「誰かが見てる?屋敷の敷地内に入って来られるってコトは魔獣じゃないわよね?」
「こんな時間に誰かしら?」
少女は自分に向けられている「奇妙な視線」が凄く気になった。だから屋敷の中へと入る事を止めると、自分の事を見ている者の元へと向かってみる事にしたのだ。
「確かにここら辺から視線を感じたんだけどなぁ」
「誰もいないわねぇ?まぁ、こんな時間に他人様の私有地内にいるのは大抵ヤバいヤツだとおっ!?」
「殺気?!」
突如として殺気を感じた少女は、反射的に身体を捻り放たれた「殺気」を躱した。
少女の視線は殺気を放った「主」を見据えていく。
「ほう、大した身のこなしだな。放ったのは「殺気」だけとは言えど、それすらも「躱す」とはな」
「で、アナタはアタシに一体何の用なのかしら?」
「用も無く殺気を飛ばしたかっただけ…なんてコトはないわよね?」
少女は突如として殺気を向けられた事への苛立ちを抑えながらも、殺気の主に対して冷静に言の葉を投げていく。ただ、この先の展開次第では戦闘も辞さないが、極力避けたい気持ちはあった。
「それにしても何だろう?この変な違和感は。この男の格好が変なだけでなくて、存在自体がなんかこう、希薄な感じがする」
「上手く表現出来ないのが癪だけど……」
確かに男の格好は変だった。嘗ての「日本」と言う国の「和装」と呼ばれる物よりも、遥か昔の装束を纏っている。
頭の左右には「ちょんまげ」のようなモノがそれぞれ付いているし、着ている服装も乳白色をベースにした色合いで、特徴的な袴は脛のあたりで縛られている。
服装は乳白色で地味目だが、帯や身に着けている装飾品は色とりどりでとてもカラフルだ。
現代では一切お目に掛からなくなった、独特な雰囲気を持つファッションに身を包んでいたのだった。
そして、その男の放つ「存在感」は確かに感じる事が出来るのだが、「存在」自体が希薄と言うか…、影が薄いと言うか…、言葉ではとにかく表現し辛い。今が深夜だから影が無いのは当たり前とかそんなツッコミが欲しいワケじゃ決してない。
だから一言で片付けてしまえば、「まぁ、なんかいるな~」くらいの感じが適切なのかもしれない。
「お前に招待状を持って来た。受け取れ」
「招待状?」
「受け取れ」
「ねぇ、あのさ、これギャップが激しくない?その格好で、この封書ってなんなの?なんでこんなに可愛らしいの?ぷぷっ」
「……」
「それで、アタシはここでコレを読んだ方がいいのかしら?」
「それはお前に任せる。だが、返答は後日聞きに来る」
それだけを言い残して希薄な男は消えていった。少女は手元の封書に目を落としたが、やはりどれだけ見ても可愛らしい封書に違いはない。
ハートマークの封蝋がしてあり、「招待状」の文字も無骨そうな先程の男からは想像も出来ないくらいに丸文字で可愛かった。
月明かりは空に無く、星の明かりが疎らに照らしている。手紙を読むには暗過ぎるだろう。
少女はそんな可愛らしい封書を持ったまま屋敷に向かっていった。
「あぁ、やっぱりダメ!ギャップがあり過ぎて、笑いが抑えられない!あはははっえへっえへっふふふふふ。もう、なんなのよ、アレ。ぎゃははははは」
深夜に大声で笑うのは宜しくないと思うが、少女の大爆笑に対してクレームは一切入らなかったと言うのは余談である。
「き、キサマはッ?!」
「何故、キサマがここにいる!!」
この場所はルミネの父親であるアスモデウスの居城、ルネサージュ城。そしてその玉座に座るアスモデウスの目の前に、少女は現れたのだった。
「お久しぶりね、アスモデウスさん。覚えていてくれて何よりだわ」
「くっ。ところで何用か?キサマの顔など我は見たくもない。だが、陛下の御子である以上、蔑ろには出来ん」
「用件だけは聞いてやるから、さっさと立ち去れ」
「城は元通りになったのかしら?」
「なん…だと!?何故それを!そうか、ルミナンテだな?!アイツめどこに行ったかと思いきや、人間界に逃げたのだな!!」
アスモデウスの表情は固く、声には緊張が奔っていた。しかし少女の言葉は更にアスモデウスの心を揺さぶり、その表情を醜く歪めていった。
それは「好色」の名が泣くほどにまで歪められた、狂気に他ならなかった。
「相変わらず察しがいいわね?」
「ルミネはアタシが暫く預かるから、構わないでね。探すのも禁止。追い掛けるのも禁止。連れ戻そうとするのも禁止。これは父様と話し合って決めた事だから、魔王からの命令だと思ってね」
「反すればどうなるかは、分かるわよね?」
少女はにこやかに言の葉を紡いでいくが、その目は笑ってなどいない。そして、その表情とは裏腹に言の葉の圧力は強い。
「だけど、そんな一方的じゃ流石に可哀想だから「この命令を完遂するなら褒美を与える」ってコトにしてもらえるように父様には進言しといてあげたわ」
「アタシが伝えに来たのはそれだけよ。それじゃ、またねッ!」
少女は、アスモデウスと話している間、常にディグラスをも余裕で超える程の魔力を解放していた。
更に付け加えると、威圧感全開でアスモデウスに紡いでいた。
だから当然、アスモデウスはその「威圧」に屈服する以外の選択肢は残されていなかった。
少女は「魔界」での用事を全て終えると再び魔族化して人間界に戻ってきた。そんなに長い時間「魔界」に滞在していたつもりはなかったが、既に深夜になっている様子だ。
少女としてはカッコがカッコなので、サラやレミに見られては非常にマズいと思っていた。
だから日が昇り始めていなかったのは僥倖だった。
少女は魔族化を解き、元の姿に戻ると屋敷の中に入ろうと扉に手を掛けたが、そこで少女は視線を感じたのだった。
「誰かが見てる?屋敷の敷地内に入って来られるってコトは魔獣じゃないわよね?」
「こんな時間に誰かしら?」
少女は自分に向けられている「奇妙な視線」が凄く気になった。だから屋敷の中へと入る事を止めると、自分の事を見ている者の元へと向かってみる事にしたのだ。
「確かにここら辺から視線を感じたんだけどなぁ」
「誰もいないわねぇ?まぁ、こんな時間に他人様の私有地内にいるのは大抵ヤバいヤツだとおっ!?」
「殺気?!」
突如として殺気を感じた少女は、反射的に身体を捻り放たれた「殺気」を躱した。
少女の視線は殺気を放った「主」を見据えていく。
「ほう、大した身のこなしだな。放ったのは「殺気」だけとは言えど、それすらも「躱す」とはな」
「で、アナタはアタシに一体何の用なのかしら?」
「用も無く殺気を飛ばしたかっただけ…なんてコトはないわよね?」
少女は突如として殺気を向けられた事への苛立ちを抑えながらも、殺気の主に対して冷静に言の葉を投げていく。ただ、この先の展開次第では戦闘も辞さないが、極力避けたい気持ちはあった。
「それにしても何だろう?この変な違和感は。この男の格好が変なだけでなくて、存在自体がなんかこう、希薄な感じがする」
「上手く表現出来ないのが癪だけど……」
確かに男の格好は変だった。嘗ての「日本」と言う国の「和装」と呼ばれる物よりも、遥か昔の装束を纏っている。
頭の左右には「ちょんまげ」のようなモノがそれぞれ付いているし、着ている服装も乳白色をベースにした色合いで、特徴的な袴は脛のあたりで縛られている。
服装は乳白色で地味目だが、帯や身に着けている装飾品は色とりどりでとてもカラフルだ。
現代では一切お目に掛からなくなった、独特な雰囲気を持つファッションに身を包んでいたのだった。
そして、その男の放つ「存在感」は確かに感じる事が出来るのだが、「存在」自体が希薄と言うか…、影が薄いと言うか…、言葉ではとにかく表現し辛い。今が深夜だから影が無いのは当たり前とかそんなツッコミが欲しいワケじゃ決してない。
だから一言で片付けてしまえば、「まぁ、なんかいるな~」くらいの感じが適切なのかもしれない。
「お前に招待状を持って来た。受け取れ」
「招待状?」
「受け取れ」
「ねぇ、あのさ、これギャップが激しくない?その格好で、この封書ってなんなの?なんでこんなに可愛らしいの?ぷぷっ」
「……」
「それで、アタシはここでコレを読んだ方がいいのかしら?」
「それはお前に任せる。だが、返答は後日聞きに来る」
それだけを言い残して希薄な男は消えていった。少女は手元の封書に目を落としたが、やはりどれだけ見ても可愛らしい封書に違いはない。
ハートマークの封蝋がしてあり、「招待状」の文字も無骨そうな先程の男からは想像も出来ないくらいに丸文字で可愛かった。
月明かりは空に無く、星の明かりが疎らに照らしている。手紙を読むには暗過ぎるだろう。
少女はそんな可愛らしい封書を持ったまま屋敷に向かっていった。
「あぁ、やっぱりダメ!ギャップがあり過ぎて、笑いが抑えられない!あはははっえへっえへっふふふふふ。もう、なんなのよ、アレ。ぎゃははははは」
深夜に大声で笑うのは宜しくないと思うが、少女の大爆笑に対してクレームは一切入らなかったと言うのは余談である。
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