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序
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とある路地裏の、とあるバー。落ち着いた雰囲気の、美味い酒と肴を出す居心地のいいバーだと有名なこのバーには、知る人ぞ知る裏の顔がある。バーの裏側に入れるのは、裏の主が直感で選んだ者だけ。それはスタッフにも、客にも言えることだった。
裏側勤務のスタッフは、バーのあるビルの一室を与えられ、そこで生活する。自由に外出することは認められていないが、ビルの中にスタッフ専用の様々な店舗があるためか、案外反発は少ない。
ある日の夕方、あるスタッフの部屋のドアがノックされた。
「レイ、今日は出番ですぜ」
軽薄に響く声で呼びかけられた男は、小さく息を吐いて了承の言葉を返す。かるい筋トレで汗ばんた身体で風呂場に向かう。
――今日も、か。
脱衣場で脱ぐようなものは、もとより身につけていない。
レイは、バーの裏側の従業員だ。金髪碧眼の、どこかの王子と言われても頷けるような美丈夫。程よく筋肉のある身体は、細く引き締まっている。いつもはこの後、バーの制服を着て店に出る。しかし。
レイは棚から小箱を出し、風呂場に入る。見慣れた内装に小さく息を吐いて、準備に必要なものを手にした。
身体を清めたレイは、ローションで後孔を解す。
「っふ、……んっ」
裏の主であるヤヒロに慣らされた身体。従順に快楽を拾い始めた場所を拡げ中を清める。
小箱を開けると、銀色に光る道具が二つ。その一つを手にし、そこにもローションを振りかける。
「っ、は、……ぁ」
ずぶり、とそれが、レイの後孔に飲み込まれる。根元まで押し込むと、後孔が宝石で飾られた。
「あとは……」
乱れた呼吸を整えながら、もう一つの器具を手にする。
「先に、こっちだったな……」
勃ち始めたペニスの先端。雫を垂らすそこと、手にした細い棒にローションを付け。
「っ、く……っ」
つぷり、つぷり。
自ら小さな孔を棒で拡げながら、ゆっくり差し込む。そこに走るのが痛みだけではないことに、レイは複雑な思いを抱きながら根元まで差し込む。
棒に繋がる輪でペニスと睾丸を戒め、小さな南京錠をかけた。
「っふ、は……っ」
身動ぎのたび、痛みと僅かな快感が身体を走る。勃起を封じられたペニスは、輪に沿って張り詰める。
身体についたローションを手早く洗い流して風呂から上がると、棚から衣装を取り出した。
男娼。
レイの立場を一言でいうなら、それだ。細く鍛えられた身体を薄手の衣装で飾り、淫らな踊りで客を誘惑する。その後、ヤヒロが選んだ一人と夜を過ごすのだ。
レイの舞台の日に選ばれるのは、男性ばかりだった。それは、ヤヒロが徹底的にそう仕込んだからで、レイ自身は女性の身体を知らないまま、男性に抱かれて淫らに啼いた。
今日も、見知らぬ誰かに抱かれるための支度を済ませ、肌の透ける衣装を纏う。
動けばふわりと揺れる布は、踊りには映える。ペニスを隠す布まで軽やかに揺れ、ちらりと見える貞操帯が何とも恥ずかしかった。
レイは長い髪を緩く括り、脱衣所を出る。
「準備は良さそうっすね。仕上げをして行きますよ」
いつの間に部屋に入っていたのか、ヤヒロの軽薄な声に促され、レイは髪をかきあげて首を差し出した。
ガチャリ。
そこに重い首輪が付けられ、南京錠が嵌る。長い鎖のついた枷を渡されたレイは、両足首にそれを付け、両手をヤヒロに出した。
そこにも、重い鎖で繋がれた枷が付けられた。
「じゃ、行くっすよ。今日はどんな風に犯されるか、楽しみっすね」
いっそ無邪気にヤヒロが笑う。ワイシャツとスラックスを身につけたヤヒロと、透ける布を纏うだけのレイ。伏せてしまいそうな顔を上げ、レイは真っ直ぐ前を向いて歩いた。
舞台の袖でレイは、ヤヒロに手渡された水を一杯飲む。その後白いガウンで身体を包まれ、鎖と南京錠で縛られる。
「じゃあ、出番が来るまで待機で。良さげな相手を見繕ってきやすから、しっかり誘惑するっすよ」
ぽんと乗せられた手。ぱたぱたと軽快に走り去るヤヒロを見送り、用意されている檻の中の椅子に座る。
――相変わらず悪趣味なことだ。
毎回、レイはこうして拘束された。この檻が舞台に運ばれ、ヤヒロに連れ出されて。この拘束を解く人が客になるかヤヒロになるかは、ヤヒロの気分次第だ。
レイは目を閉じ、出番を待つ。
それが本意でも不本意でも、レイの役目は変わらない。
――踊り、後は抱かれるだけだ。何度も繰り返されたこの行為に、慣れることはないけれど。
それぞれがそれぞれの想いを抱いて、今日も変わらず幕が開いた。
裏側勤務のスタッフは、バーのあるビルの一室を与えられ、そこで生活する。自由に外出することは認められていないが、ビルの中にスタッフ専用の様々な店舗があるためか、案外反発は少ない。
ある日の夕方、あるスタッフの部屋のドアがノックされた。
「レイ、今日は出番ですぜ」
軽薄に響く声で呼びかけられた男は、小さく息を吐いて了承の言葉を返す。かるい筋トレで汗ばんた身体で風呂場に向かう。
――今日も、か。
脱衣場で脱ぐようなものは、もとより身につけていない。
レイは、バーの裏側の従業員だ。金髪碧眼の、どこかの王子と言われても頷けるような美丈夫。程よく筋肉のある身体は、細く引き締まっている。いつもはこの後、バーの制服を着て店に出る。しかし。
レイは棚から小箱を出し、風呂場に入る。見慣れた内装に小さく息を吐いて、準備に必要なものを手にした。
身体を清めたレイは、ローションで後孔を解す。
「っふ、……んっ」
裏の主であるヤヒロに慣らされた身体。従順に快楽を拾い始めた場所を拡げ中を清める。
小箱を開けると、銀色に光る道具が二つ。その一つを手にし、そこにもローションを振りかける。
「っ、は、……ぁ」
ずぶり、とそれが、レイの後孔に飲み込まれる。根元まで押し込むと、後孔が宝石で飾られた。
「あとは……」
乱れた呼吸を整えながら、もう一つの器具を手にする。
「先に、こっちだったな……」
勃ち始めたペニスの先端。雫を垂らすそこと、手にした細い棒にローションを付け。
「っ、く……っ」
つぷり、つぷり。
自ら小さな孔を棒で拡げながら、ゆっくり差し込む。そこに走るのが痛みだけではないことに、レイは複雑な思いを抱きながら根元まで差し込む。
棒に繋がる輪でペニスと睾丸を戒め、小さな南京錠をかけた。
「っふ、は……っ」
身動ぎのたび、痛みと僅かな快感が身体を走る。勃起を封じられたペニスは、輪に沿って張り詰める。
身体についたローションを手早く洗い流して風呂から上がると、棚から衣装を取り出した。
男娼。
レイの立場を一言でいうなら、それだ。細く鍛えられた身体を薄手の衣装で飾り、淫らな踊りで客を誘惑する。その後、ヤヒロが選んだ一人と夜を過ごすのだ。
レイの舞台の日に選ばれるのは、男性ばかりだった。それは、ヤヒロが徹底的にそう仕込んだからで、レイ自身は女性の身体を知らないまま、男性に抱かれて淫らに啼いた。
今日も、見知らぬ誰かに抱かれるための支度を済ませ、肌の透ける衣装を纏う。
動けばふわりと揺れる布は、踊りには映える。ペニスを隠す布まで軽やかに揺れ、ちらりと見える貞操帯が何とも恥ずかしかった。
レイは長い髪を緩く括り、脱衣所を出る。
「準備は良さそうっすね。仕上げをして行きますよ」
いつの間に部屋に入っていたのか、ヤヒロの軽薄な声に促され、レイは髪をかきあげて首を差し出した。
ガチャリ。
そこに重い首輪が付けられ、南京錠が嵌る。長い鎖のついた枷を渡されたレイは、両足首にそれを付け、両手をヤヒロに出した。
そこにも、重い鎖で繋がれた枷が付けられた。
「じゃ、行くっすよ。今日はどんな風に犯されるか、楽しみっすね」
いっそ無邪気にヤヒロが笑う。ワイシャツとスラックスを身につけたヤヒロと、透ける布を纏うだけのレイ。伏せてしまいそうな顔を上げ、レイは真っ直ぐ前を向いて歩いた。
舞台の袖でレイは、ヤヒロに手渡された水を一杯飲む。その後白いガウンで身体を包まれ、鎖と南京錠で縛られる。
「じゃあ、出番が来るまで待機で。良さげな相手を見繕ってきやすから、しっかり誘惑するっすよ」
ぽんと乗せられた手。ぱたぱたと軽快に走り去るヤヒロを見送り、用意されている檻の中の椅子に座る。
――相変わらず悪趣味なことだ。
毎回、レイはこうして拘束された。この檻が舞台に運ばれ、ヤヒロに連れ出されて。この拘束を解く人が客になるかヤヒロになるかは、ヤヒロの気分次第だ。
レイは目を閉じ、出番を待つ。
それが本意でも不本意でも、レイの役目は変わらない。
――踊り、後は抱かれるだけだ。何度も繰り返されたこの行為に、慣れることはないけれど。
それぞれがそれぞれの想いを抱いて、今日も変わらず幕が開いた。
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