風切山キャンプ場は本日も開拓中 〜妖怪達と作るキャンプ場開業奮闘記〜

古道 庵

文字の大きさ
77 / 94

10-6

しおりを挟む
「康平、とりあえず掘ってみたけどどう?」
「うん、いいんじゃないッスか? 俺も感覚的な部分になるんで自信無いッスけど」
掘り終えた溝を見ながら尋ねると何とも曖昧な答えが返ってくる。
まあ水道屋じゃないんで、と苦笑するのでそれもそうかと思い直す。

「じゃあ早速水を流して……」
「待った! このまま水流すと土を削っちゃうんで駄目ッス! 下が土砂だらけになっちゃいまスよ」
「そうなの?」
「そうッス。水の力舐めちゃいけないッスよ」
「それに護岸の必要もあるかな。水を吸ったら簡単に崩れちゃうよ」

後ろを着いてきていた壬生さんも会話に混じる。
今日は匠を除いた三人で来ているのだ。匠は現在里帰り中である。

それにしてもゴガン? とは何の事だろうか。

「まさかリョースケ君、これで完成だと思ってたんスか」
「いや、まあ……なんか石入れたりとかはした方が風情はあるよな?」
首を傾げていた俺を見て、康平が半目になりながら大きく溜息。

「あのねえ、リョースケ君。溝の縁……端っこの所思いっきり踏んでみてよ」
「やだよ、崩れるだろ」
穴掘りをしている時踏み抜いて、崩れて溝に落ちたのは何度か経験済みだ。その度に転げ落ちて泥だらけになっていた。

「それッスよ。お客さんが踏んだら危ないっしょ?」
そりゃそうだと納得する。なるべく早く作業が終わればと思い、これでほぼ完成だと勝手に考えていた。

「でもよ、そうなるとどうしたらいいんだ?」
「ある程度の川なら堤防を作るよね。ほら、店の近くの川みたいに」
「ああ―……でもあんな広くないですし」
「俺の考えッスけど、型枠組んでコンクリ流して固める方が崩れる心配はしなくていいッスね」
「うーむ……」

コンクリートを川沿いに流すのは少しばかり抵抗があった。

「底の部分からU字になるように固めちゃえば、水路としてはバッチリッスね!」
「……なんかさ、それだと風情が無いと言うか……なんかドブ川みたいに見えない?」
「流れる水が綺麗ならドブじゃないっしょ」
「えー……」

言っている事は分かるしそれが確実なのも分かる。しかし、心の中では納得できていなかった。折角この綺麗な自然の中にあるので、不愛想なものにはしたくないという拒否感があるのだ。

「まあ、涼介君の言いたい事も分かるけどね。理想の川の像があるんじゃない?」
「あ、そうです! 俺的には、自然に出来たような感じにしたいというか……」
流石は壬生さん、助け舟を出してくれたので遠慮なくそれに乗る。

「ユンボで掘った時点で自然の川じゃないッスよリョースケ君。我儘っつーかなんつーか……」
「でも道端の排水溝みたいな感じにはしたくないんだよ。できればさ」
「分かったッス分かったッス! ちょっと考えましょ」
鬱陶しそうに腕を振り、そして考え込む表情を浮かべる康平。壬生さんを見ると苦笑いしている。

「……よし、それじゃあ川底はなるべく思い岩や石を詰めていきましょ。水で流されないようにガッシリ組んで」
「おお、急にやる気」
「俺だって言いたい事は分かるッスよ」
そう言いながら木の枝を広い、図を描き始める。

「こんな感じで下流側から敷き詰めていって、カッチリ動かないように組むのはどうっスか?」
「うん、下から上に向かえば確かに動かないかもね」
「岩関係なら今まで穴掘りした時に出てきた石が山ほど転がってるんで。磐裂に頼んで魍魎達に手伝ってもらえばきっと難しくないかも」

「よし、川底はクリア。あとは……」
「護岸ッスね。こっちも石組みしようとしたら膨大な量が必要になるッス」
「だよねえ……廃材になってる木を丸太にしてさ、こうやって杭を打っていけば?」
今度は壬生さんが地面に図を描く。横向きの長い木の所々に、細い棒を縦に記していく。

「これも結構大変だと思うッスよ。川幅狭くなっちゃうからもっと広げる必要あるし、木はいずれ腐るんで」
「ダメか」
「やってもいいけど定期的に直してく必要はあるッスね。水流した後だと手間じゃないッスか?」
「そこはさ、上流の泉に水門を作ろうよ。メンテしたり掃除したりするのに水止めなきゃいけないし」
「止めても水が溢れるッスよ?」
「パイプでバイパスを作る。どの道洗い場やトイレ、管理棟の為にこの水使うんでしょ? 上から下まで繋いじゃおうよ」
「……」

康平と壬生さんの間で交わされる会話にまるでついていけない。そもそも二人の言っている事が理解できなかった。

「そッスね……それでいきましょうか。でも護岸は?」
「うーん……土固めただけじゃ全然弱いからねえ」
「土、コンクリ、石、木……後は、川とかで思い浮かぶのは植物の根を利用して固めるのはあるよね。堤防とか」
「おお、それは思いつかなかったッス。でも、即効性はないッスよねえ」

うーむ、と二人で唸り始めるので軽く手を叩く。

「とりあえずは今日できる事やりませんか? 今の話だと今日の作業は」
「まずはパイプ用の穴を掘らなきゃね」
「あとは泉も拡張しておきたいッスね。もう少し深く掘らないと駄目な気するッス」
「小川の方は石敷きは始めても大丈夫か?」
「そっちは始めてオッケーッス!」
「よし、それじゃあ俺は磐裂達と石敷きの作業、壬生さんと康平は穴掘りの方担当してもらってもいい?」
「了解ッス」
「いいよ。あ、でも石敷きの方、スタートは三人でやろっか。やり方を考えた方が良いと思うし」
「助かります……!」

確かにいきなり俺一人でやるのには不安がある。その点、土木の経験者である二人の考えが聞ければ心強い事この上ない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】うだつが上がらない底辺冒険者だったオッサンは命を燃やして強くなる

邪代夜叉(ヤシロヤシャ)
ファンタジー
まだ遅くない。 オッサンにだって、未来がある。 底辺から這い上がる冒険譚?! 辺鄙の小さな村に生まれた少年トーマは、幼い頃にゴブリン退治で村に訪れていた冒険者に憧れ、いつか自らも偉大な冒険者となることを誓い、十五歳で村を飛び出した。 しかし現実は厳しかった。 十数年の時は流れてオッサンとなり、その間、大きな成果を残せず“とんまのトーマ”と不名誉なあだ名を陰で囁かれ、やがて採取や配達といった雑用依頼ばかりこなす、うだつの上がらない底辺冒険者生活を続けていた。 そんなある日、荷車の護衛の依頼を受けたトーマは――

妖精の森の、日常のおはなし。

華衣
ファンタジー
 気づいたら、知らない森の中に居た僕。火事に巻き込まれて死んだはずだけど、これってもしかして転生した?  でも、なにかがおかしい。まわりの物が全部大きすぎるのだ! 草も、石も、花も、僕の体より大きい。巨人の国に来てしまったのかと思ったけど、よく見たら、僕の方が縮んでいるらしい。  あれ、身体が軽い。ん!?背中から羽が生えてる!? 「僕、妖精になってるー!?」  これは、妖精になった僕の、ただの日常の物語である。 ・毎日18時投稿、たまに休みます。 ・お気に入り&♡ありがとうございます!

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが日常に溶け込んだ世界――。 平凡な会社員の風間は、身に覚えのない情報流出の責任を押しつけられ、会社をクビにされてしまう。さらに、親友だと思っていた男に婚約者を奪われ、婚約も破棄。すべてが嫌になった風間は自暴自棄のまま山へ向かい、そこで人々に見捨てられた“放置ダンジョン”を見つける。 どこか自分と重なるものを感じた風間は、そのダンジョンに住み着くことを決意。ところが奥には、愛らしいモンスターたちがひっそり暮らしていた――。思いがけず彼らに懐かれた風間は、さまざまなモンスターと共にダンジョンでのスローライフを満喫していくことになる。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!

楠ノ木雫
恋愛
 朝目が覚めたら、自分の隣に知らない男が寝ていた。  テレシアは、男爵令嬢でありつつも騎士団員の道を選び日々精進していた。 「お前との婚約は破棄だ」  ある日王城で開かれたガーデンパーティーの警備中婚約者に婚約破棄を言い出された。テレシアは承諾したが、それを目撃していた先輩方が見かねて城下町に連れていきお酒を奢った。そのせいでテレシアはべろんべろんに酔っ払い、次の日ベッドに一糸まとわぬ姿の自分と知らない男性が横たわっていた。朝の鍛錬の時間が迫っていたため眠っていた男性を放置して鍛錬場に向かったのだが、ちらりと見えた男性の服の一枚。それ、もしかして超エリート騎士団である近衛騎士団の制服では……!? ※他の投稿サイトにも掲載しています。 ※この作品は短編を新たに作り直しました。設定などが変わっている部分があります。(旧題:無慈悲な悪魔の騎士団長に迫られて困ってます!〜下っ端騎士団員(男爵令嬢)クビの危機!〜)

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

俺、異世界で置き去りにされました!?

星宮歌
恋愛
学校からの帰宅途中、俺は、突如として現れた魔法陣によって、異世界へと召喚される。 ……なぜか、女の姿で。 魔王を討伐すると言い張る、男ども、プラス、一人の女。 何が何だか分からないままに脅されて、俺は、女の演技をしながら魔王討伐の旅に付き添い……魔王を討伐した直後、その場に置き去りにされるのだった。 片翼シリーズ第三弾。 今回の舞台は、ヴァイラン魔国です。 転性ものですよ~。 そして、この作品だけでも読めるようになっております。 それでは、どうぞ!

処理中です...