「月が綺麗ですね」そう言った君の方には何も見えなかった

夢川渡

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好きだ
とか
愛している
とか
7歳にしてもう聞き飽きていた。


愛する人などいないし,人から過剰な愛など受けたことも受け入れたこともない。


なのになんでなんだろう。


今日も図書室で本を漁る。



_ピリッ

「ぁっ、痛っ…」


紙で指を切ってしまったみたいだ。



…。

__みたいだ??



何故なのだろう,いつからか自分の感覚や自分成すこと全てを‘他人事’のように思えてしまうようになった。




「嗚呼…つまらないな」

「何がつまらないんだい?」


えっ?
「ど、何方…?」

「通りすがりの騎士ですよ」




そうか通りすがりの…

「って、なわけあるかい!」


「ふふ、面白いねぇ君は」
「何故?」


「何故って…まるで,自分のことのように感じていないから…?かな、多分」



「…多分」

なんか響く言葉だった


「多分ね!本当,失礼なことを言ったかもしれないな!すまない!」


「…いいわね、多分って」
「え?」


「私も使うわ,多分!」




そう,私は
多分私じゃない
多分一人の人格ではない
多分人を愛していない


多分リアナ・セレンではない



「面白いね,リアナ嬢は」
「そう?」



そうして,私の‘多分’な日常が始まった。

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