嫌われドラゴンに転生しました~最恐邪竜が世界を癒す!?~

深田くれと

文字の大きさ
66 / 99

二人で語り合いたいです

しおりを挟む
「げっ!」

 明らかに魔物がしゃべっていた。
 しかも、『竜王』という単語を含んでいる。
 確実に正体がばれている。
 目の前で白きウーパールーパ―がルミルの手から抜け出して俺の顔を見上げる。
 その瞳には強い憧れ。

 待てぇい!
 もう少しボリューム落とせっ!
 声に込める魔力を落とせっ!
 ルミルに感づかれるっ!

『僕はウーパードラゴンのウーパーです』

 舌足らずの幼い声で能天気な自己紹介をするウーパーに、俺は慌てて腰を折って顔を近づける。
 そして、「かわいいなー、こいつ」などとぶつぶつ言いながら、耳がありそうと思われる部分に顔を近づけて、必殺の一言を小声で放つ。

『黙れ』
『――ひっ』
『俺がいいと言うまでしばらく黙っていろ。いいな』

 素早く顔を上下させたことを承諾の意思と受け取り、体を硬直させたウーパーを軽く一度撫でてやる。
 約束を破ればこの場で殺す――という意味で。
 続いて、何とか二人きりになれる言い訳を素早く考える。
 もしこの場にリィリかレネアーネがいればフォローしてもらえたかもしれないのに、肝心な時にいないんだから。

「いやー、ほんと可愛い目をしてる。……こいつを見てると俺の研究魂に火がついてしまったぞー。ちょっと二人で語り合いたいな」
「語り合う?」
「ち、ちがっ、違った。言い間違えた。そうだよなー。語り合えるはずないもんなー…………見つめ合いたくなった、の間違いだった」
「見つめ合う?」
「その通り! 気に入ったやつとは、つい見つめ合いたくなるんだ。どこか邪魔の入らない場所で二人で語り――いや、見つめ合いたい。今すぐに! ってことでちょっと部屋に連れていくから」
「ひどいことしない?」
「するかっ! ほんとちょっとだけ見つめ合ってくるだけ! 心配ない。だからルミルは散歩でもしてきてっ! 夜までしてきていいから! じゃあまた後でこいつ返すから!」
「あっ……」

 心配そうな表情のルミルを意図的に見ないようにして、俺はベッドの上で固まるウーパーの胴体をがしっと掴む。
『ぐえっ』と一瞬苦しげな声が聞こえた気がしたが、知らないふりだ。
 さっさと部屋に連れ込まなければ身の破滅が訪れる。
 二階へダッシュ!


 ***


『で、お前ウーパードラゴンって言ってたっけ? ……なにそれ?』

 ベッドに腰掛けた俺は、小さな机に置いた生き物と真正面から見つめ合う。

『初めまして、イハリス様。僕はウーパードラゴンです』

 さっき脅してしまったというのにこの生き物の声は弾んでいる。
 明らかに俺に対して良い印象を持っている。大変ありがたいことだ。
 が、場所はわきまえてほしい。

『だからそれが何なのって聞いてるの。お前ってドラゴンなの? トカゲなの?』
『もちろんドラゴンです。魔法も使えます』
『ほー。体小さいのにすごいのね』
『こう見えてもヴェルザード様の側近を任されていますので』
『ヴェルザード? 誰それ?』
『えっ!? ……さすがにそれは冗談きついです。イハリス様の次に強いと言われるヴェルザード様です。絶息竜――知らないはずがないです』
『そ、そうだったね…………もちろん知ってる。絶息竜ね……その名前聞いたの久しぶりだなー……ほんと……』

 絶息竜ヴェルザード?
 名前こわっ!
 邪竜よりよっぽど怖い。
 出会ったら死あるのみ、みたいな?
 俺の次に強いって言われるドラゴンとかマジやばいのでは? 呼吸するみたいにヴェルザードレールガンとか使えるドラゴンだろ?
 やばいぞ。これは生死の問題になる。
 何とか争いは回避しないと……。
 待て。このウーパー、ヴェルザードの側近をやってるって言ってなかったか?
 げっ、思いっきり脅迫してしまった。しかも乱暴に掴んでしまったぞ。
 今からでも下手に出た方がいいか?

『久しぶりですか? ほんの数十年前にイハリス様と戦いましたけど』

 もう戦っちゃってるのね。
 さらりと言ってるけど俺に恨みがあるとかじゃないだろうな?

『……そ、そうだっけ? ……そうかー、あいつと戦ってからまだそれくらいだったかー……ど、どんな感じの戦いだったかなー?』
『記憶に残らないくらいなんですね。さすがは竜王様です。ヴェルザード様の側近としては複雑ですけど』
『そういうお世辞はいいって……で、どんな感じだったかな?』
『それはもう苛烈なものでした。あっ、僕からすればですよ? ヴェルザード様のフレアノヴァで山が吹き飛んでましたし』
『ほ、ほー……それは強烈すぎる……ね』
『イハリス様だって、湖を丸ごと蒸発させたじゃないですか』
『……そうだったかなー、あんま覚えてないなー』
『やっぱり大物です。あんな戦いでは満足できないんですね』
『も、もうこの話やめよっか……あんま楽しくないし……で、ウーパーはここに何しに来たわけ?』

 淀みなく会話していたウーパーの動きがぴたりと止まる。
 何か話しにくいことがあるのだろうか。

『ちょっと用事がありまして。お城に潜入しようとして強い人間の集団にやられたんです。でも休憩すれば次こそは……』
『何でお城に?』
『……僕の目的がそこだからです』
『ふーん。詳しく話す気ないみたいだけど、要はやられて逃げてきたってことだろ?』
『……』
『やめとけって。次は死ぬかもしれないぞ? 誰だって敵には容赦しないの知ってるだろ?』
『あの城に侵入しないとダメなんです』
『死ぬまでか?』
『情報さえ手に入ればいいんです』
『なら少しは様子伺ったりしたらどうなの? 今突っ込んでも警備も厳重でしょ?』
『ですが……』
『命の危険があるわけ? ……探し物か? 探し人か?』
『……人です』
『時間が経つとまずいの?』
『いえ……あの人を人間がどうこうできるわけがありません』
『ならまずは様子見ろって。うちに一人、国に出入りできそうな子もいるし』
『ほんとですかっ!?』
『うん』

 ちょっと待てよ。
 これって流していい情報だったか?
 普通にしゃべっちゃったけど、よく考えたらこいつのやってることってテロリスト同然では?
 ……国家転覆罪とか。
 クリニックにテロリストかくまっている場合はどうなんだ?
 まずいよね?
 でももう教えちゃった……ごめんなさい。
 せめてウーパーが侵入する時は俺も変装して被害出ないように頑張るから……国王様、許してください。
 邪竜に悪気はないんです。ほんと。

『まあ、当分ここにいたら? 顔見られたの?』
『変身してたんでそれは大丈夫ですけど、竜王様に迷惑がかかるのでは?』
『心配すんな。そんな小さな迷惑なら何でもない。うちにはもっと大いなる災いがいるから』
『大いなる災い……ですか?』
『うん。でも、いくつか約束もしてもらうぞ。この家も人間が出入りするからね。それと刃向ったらダメなやつらがいるから……』
『竜王様のことですね? もちろん約束します。ですが……』
『分かってるよ。情報が入れば欲しい、だろ? ギルドでもそれとなく聞いてやる。……そんで? どんな人間の情報だ?』
『人間ではないです。……欲しいのは、この国の守護竜の情報です』
『は?』

 守護竜なんているの?
 昔、俺がなろうとしてたポジションがあるの?


 ***


「よいしょっと」

 カウンターの上に、庭で余っていた木箱のフタを一つ乗せた。
 その上には厚めの毛布が敷いてある。
 何を隠そう、この上がウーパースペースだ。
 ちなみにルミルは本当に散歩にでも出かけたのか一階にはいない。
 ……よく分からない子です。

『寝床まで……助かります』
『遠慮すんな。食べ物はなんでもいいのか? 炭はいける?』
『炭ですか? ……魔力がふくまれてるなら大丈夫だと思いますけど……竜王様は炭をいつも食べているんですか?』
『そんなわけないだろ』

 両手で体を持って、毛布の中に優しく置く。
 今後のことを考えて、絶息竜ヴェルザードの側近に恩を売っておこう――そんないやしい算段もしております。
 ついでに、さらりとレネアーネの手作り料理も押し付けられないか確認しちゃいました。

『言ったとおり、この店には怖いリッチとエルフがいるから……そいつらには決して刃向うな』
『竜王様より凶暴な二人……わかりました。でもその方々とはしゃべってもいいんですよね?』
『いいぞ。ルミルっていうお前を運んできた子がいなければ構わん。それと……来た客への危害は厳禁だから』
『はい。じゃあしばらくここでお世話になります』

 こうして、クリニックに新たな住人が加わることになりました。
 カウンター横の四角いスペースで寝ているのでたまに声かけてあげてくださいね。
 たぶん、「キュー」って鳴くはずです。
 ……そう演技させとけば人気出るかなっていう邪竜の浅知恵です。
しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

処理中です...