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暇な時間はすごく貴重です
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湖と街は目と鼻の先だ。
空をゴリラが、陸を骨とカピバラが進む。
それらを統率するのは、竜王と絶息竜とエルフと魚。
錚々たるメンツだ。
……多少締まらないが。
ほどなくして俺達は大きな鉄門の前に到着する。
朝日がとうとう山間から差し込んできた。
夜討ち朝駆けとは戦の常套句だが、今回はすでに相手が待っている形だ。
となれば……当然こういう事態も予想するべきだったのだ。
『レネアーネさん……門が閉まってるんだけど……』
『避難警報が発令されているので時間稼ぎとしては当然の策です。壊しましょう』
『えっ!?……この鉄の門を!?』
『そうですが……なるほどっ!この門の向こうで待ち受けている人間がいるとお考えなのですね?……ではそこら辺の外壁を破壊しますか?』
『いや……門にしとこっか』
後でダレースに怒られそうだなぁ、って考えてしまってついびびってしまった。
あいつは「建物をできるだけ壊さないように」って言ってたはず。
門はセーフだな。
『ここは竜王様の力をお見せになる場面では?』
レネアーネが俺の耳にふわりと浮かんで近付き、そんな耳打ちをしてきた。
彼女としては俺の良い場面を作ろうとしてくれているのだろう。
……激しく不要だが。
ちらりと背後を見る。
小さな体のヌーが三人一組となって木材を背負って後ろにずらっと並んでいる。
それらの隣にはがたいの良いゴリラが今か今かと待ち構えている。
熱い期待を乗せた眼差しがこれでもかと刺さる。
――やらないとダメっぽい。
『……よーしっ!じゃあ行くぞ!』
ゼロ距離で燃やしてやろうと考えたが、それは却下する。
間違って外壁を炎が伝ったら、街は炎の壁に囲まれてしまう。
溶けない氷魔法が使えてしまう以上、消えない炎だってあり得るのだから。
――ならば、ここは安心の肉弾戦。
俺の尾が唸りを上げて門に向かう。
空気を切り裂き、空間を蹂躙するパルチザンのドラゴンテール。
尖った三又が、鉄門を難なく貫通した。
素晴らしい威力だ。
岩でも鉄でも抵抗なく貫く槍――ゲイ・ボルグと呼んでもいいだろう。
『…………』
まあ、貫いただけですけどね。
『…………』
ご注文はみんながこの入口を通れるようにすることでしたっけ?
『…………竜王タックル!』
黒い巨体が侵入を阻もうとした鉄門をあえなく吹き飛ばす。
当然ながらまったく抵抗など感じない。
タンクローリーが障子に衝突するようなものだ。
――わはははは。貧弱ぅ、貧弱ぅ!
え?ゲイ・ボルグ?
そんな技使っていませんね。
最初からタックル一筋です。
『さあ、行くぞ!』
気を取り直して、ふわりと浮きあがり、外壁に足をかけて街を上から睥睨する。
ヴェルザードとウーパーも俺の隣にやってきた。
『作戦開始ぃぃぃぃぃ!!』
間髪入れずに魔物ボイスで開始の合図を放つ。
遠くには陣形を組む騎士が見えた。さすがに準備が早い。
ギルド員はまだ召集しきれずってところかな?
明け方だしね。
『少し人がいる』
『みたいだな。適当にあしらって建築場所を確保してくれる?』
『わかった』
『ウーパーもヴェルザードを頼むな』
『お任せを』
『じゃあ私は行く』
相変わらずのんびりした口調でヴェルザードとウーパーが先陣を切った。ヴェルザードが焦ることはないのだろうか。
続いて門の真下の入り口からどんどん魔物が侵入していく。
最初に戦闘ゴリラ隊、守られるように建築隊とヌー族運搬隊。
そして血気盛んなアンデッド……『やるぞー』とか『誰が一番狩れるか勝負だ』などという危険な声が届いているが大丈夫だろうか。
リィリ、頼むよ。
不安に駆られる俺の前に、一匹のデーモンゴリラが浮かび上がってきた。
ゴリマーだ。
『竜王様よ、結局あんたの家はどんな感じに作ればいいんだ?……家の設計図は貰ったんだが、こんなに質素でいいのか?』
ゴリマーはボロボロの紙を俺の前に広げる。
設計図らしき色々な数字が書かれた一度も見たことが無いものだ。
ちなみに、これを見てどんな家になるのかは俺にはさっぱりわからない。
『どこでこんなものを?』
『「鮮血」からもらったぞ』
『マジか……さすがだな』
レネアーネの有能ぶりに舌を巻く。
設計図などどこにあるのかすら知らないのに。
『で、どうなんだ?もっと歴史に残る感じの方がいいんじゃないのか?』
『…………ゴリマーがそうしたいのか?』
『べ、べつにそ、そういうわけじゃねーよ!勘違いすんな!俺は竜王様にふさわしい住まいをだな――』
『わかった、わかった……変なこと聞いた俺が悪かったって。じゃあ…………ゴリマーの考える家にしてくれ。グレートなやつで』
『……ちっ、ギリギリに注文変えやがって……グレートなやつだな。承知した』
早々に背中を見せたゴリマーが、ヴェルザードを目指してすごい速度で離れていく。
ゆったり飛ぶことを忘れているような慌てようだ。
ゴリラにもツンデレっているんだなぁ。
――ところでグレートで通じたのか?
***
俺は外壁の上から規格外の視力を駆使して戦場を俯瞰する。
空中では現在ドラゴンナイト対ヴェルザードの熱戦が繰り広げられている。
追いかけておいでー……って感じにヴェルザードが跳び回りつつ、ウーパーが細いレーザー光線みたいな攻撃を明後日の方向にしかけるという緊迫感に欠けるものだが。
地上では驚くくらいに機敏な動きで冒険者を煙に巻きながらちょっかいをかけるリッチ軍団が大活躍だ。
正直なところ見縊ってました。
あいつらすげー。
ここに出てくる冒険者達だからそこそこ強いはずなのだが、まったく歯牙にもかけない。
ちゃんと指示を守って殺さずに戦ってくれているし。
それともずっと中央にいるリィリの指揮がうまいのだろうか。
ダレースがあれだけ顔を引きつらせるわけだ。本気で戦えば死人続出だろう。
少し離れた場所では家や店の柱が次々と立てられていく。
ゴリラにしてみれば木材が鉛筆くらいの軽さだろうか。まったく苦にもしていない。
襲われそうならリオに行ってもらうつもりだったが、さすがにあそこ周辺の守りは固い。
魔法を使えるデーモンゴリラが100匹以上で守っているのだ。近付けば確実にファイヤーボールの嵐だろう。
中で作業中の建築班とヌー族は安心だ。
『すべて順調だな。そう思うだろ?』
スムーズに流れる作業に安心しつつ、隣の人物に話を振った。
そして、ため息をつく。
隣には誰もいないのだ。
先ほどまでレネアーネとリオがいたのだが、リオは血が騒ぐと言って戦端が開かれると同時に離脱。
そしてエルフは勇者ティリエが早々に登場してしまったために予定を早めて出陣していった。
「もう少しこの素晴らしい眺めをご一緒したかったです」などと言いながら名残惜しそうな表情を見せる彼女を複雑な想いで見送ったところだ。
……この台本有りの演劇のどこが素晴らしいのか教えてほしい。
今からでもその台本に俺の活躍の場を加筆願いたい。
俺さ――――すごく暇なのぉぉぉぉっっ!
誰かケガ人連れて来いって。
首を長くして待ってるんだぞ。いや、比喩じゃなくてほんとに長いけど。
もうこの際、死体ギリギリのやつでもいいから。
竜王の回復魔法で一瞬のうちに治してみせるから、
安心して大ケガせんかい!
俺の活躍の場はいつくるのよ!?
『いつなの、イハリス!』
『……そんなこと僕に言われても……だいたい僕を起こす必要あった?いい気持ちで寝てたのに……』
『あまりに暇なもんで、話し相手が欲しくて……つい』
『ひどいよー、そんなのとばっちりだよ』
『ほらっ、あそこでヴェルザードが戦ってるぞ!大好きなヴェルザードだぞ!』
『…………あんなの戦いじゃないよ。飛んでるだけじゃん。ヴェルザードらしさがなんにも無いし』
『飛んでるだけじゃダメなんだ……意外とうるさいのね』
『…………僕のことはどうでもいいけど、カナタはそれ何を作ったの?』
『これか?…………旗だ』
『旗はわかるけど……なんで?』
外壁に立てかけられた四角い白地の布に赤の十字マークの大きな旗。
ケガ人が誰も来ないから忘れられているのかと焦って作ってみたのだ。
神技を用いてゼロから作ってみた。
ここに医療班がいますよー、ってアピールしたくてね。
意外と簡単にできるもんだ。
慣れれば何でも作れちゃいそう。
……ゴリラの服は神技で夜な夜な作るか。
『知らないのか?これが治療のマークなんだぞ』
『見たことないや。でもそんな物を作ってる暇があったらカナタも前線に出たら?』
呆れたような口調でイハリスは苦笑いした。
『……だってレネアーネに後方で待機って言われてるんだもん』
『そんなの後でごめんねって言えば済む話でしょ?』
『こんな無能な大将がでしゃばらない方がいいかなぁって思って』
『いつからそんなに卑屈になったの?カナタってレネアーネには全然頭が上がらないみたいだね』
『うるせー』
『…………ほんとうにカナタはあの大きな胸に弱いんだから』
『ぶっ――お、おま、おまえ突然なんてことを!?』
『冗談だよ。いつもからかわれてる仕返しをしただけさ』
『……今やらなくてもいいだろうに。…………おっ、ヌーが来たぞ?』
『ほんとだ。初のケガ人かな?良かったね、カナタ。出番が来たみたいじゃん。早く行ってあげなよ』
『おう』
撤退の合図は出していないにも関わらず一匹のヌーが走ってくる。
これは――本当に何かあったかもしれない。
俺の出番がとうとうきたな。
レネアーネには動くなと言われているが、これは仕方ない。うん。
頼られたからにはこの竜王様の力を振るうしかあるまい。
いざっ!
『そんなに慌ててどうした?』
地面に颯爽と舞い降りた俺は、小さなヌーに話しかける。
明らかに子供のヌーだ。
少し緊張気味に見えるのが可愛らしい。
『……広場に男が来たヌー』
『強いやつか?』
『ゴリモンドさんは弱すぎるって言ってたヌ』
『弱すぎる?』
『そうヌー』
『民間人……か?けど、避難しているはずじゃなかったっけ?』
『とにかく、ゴリモンドさんが困ってるヌー。竜王様を呼んで欲しいって言われてるヌー』
『お、おう……じゃあ行くか。背中乗れよ』
『ヌぅっ!?』
目を白黒させるヌーに翼の先を下ろして登れるようにしてやる。
遠慮がちな視線と、好奇心がせめぎ合った結果…………子供のヌーは乗る方を選択した。
とても嬉しそうだ。
軽いステップであっという間に背中に乗る。
『竜王様の背中……すごく大きいヌー。みんなに自慢できるヌー』
『そうだろ、そうだろ?ふははははは』
『愛の伝道師はやっぱり愛にあふれるドラゴンなのヌー。お父さんが言ってた通りヌ』
『愛の?…………君のお父さんといつか話をしないとダメだヌー』
『ヌー?竜王様も真似っ子するヌ?』
空をゴリラが、陸を骨とカピバラが進む。
それらを統率するのは、竜王と絶息竜とエルフと魚。
錚々たるメンツだ。
……多少締まらないが。
ほどなくして俺達は大きな鉄門の前に到着する。
朝日がとうとう山間から差し込んできた。
夜討ち朝駆けとは戦の常套句だが、今回はすでに相手が待っている形だ。
となれば……当然こういう事態も予想するべきだったのだ。
『レネアーネさん……門が閉まってるんだけど……』
『避難警報が発令されているので時間稼ぎとしては当然の策です。壊しましょう』
『えっ!?……この鉄の門を!?』
『そうですが……なるほどっ!この門の向こうで待ち受けている人間がいるとお考えなのですね?……ではそこら辺の外壁を破壊しますか?』
『いや……門にしとこっか』
後でダレースに怒られそうだなぁ、って考えてしまってついびびってしまった。
あいつは「建物をできるだけ壊さないように」って言ってたはず。
門はセーフだな。
『ここは竜王様の力をお見せになる場面では?』
レネアーネが俺の耳にふわりと浮かんで近付き、そんな耳打ちをしてきた。
彼女としては俺の良い場面を作ろうとしてくれているのだろう。
……激しく不要だが。
ちらりと背後を見る。
小さな体のヌーが三人一組となって木材を背負って後ろにずらっと並んでいる。
それらの隣にはがたいの良いゴリラが今か今かと待ち構えている。
熱い期待を乗せた眼差しがこれでもかと刺さる。
――やらないとダメっぽい。
『……よーしっ!じゃあ行くぞ!』
ゼロ距離で燃やしてやろうと考えたが、それは却下する。
間違って外壁を炎が伝ったら、街は炎の壁に囲まれてしまう。
溶けない氷魔法が使えてしまう以上、消えない炎だってあり得るのだから。
――ならば、ここは安心の肉弾戦。
俺の尾が唸りを上げて門に向かう。
空気を切り裂き、空間を蹂躙するパルチザンのドラゴンテール。
尖った三又が、鉄門を難なく貫通した。
素晴らしい威力だ。
岩でも鉄でも抵抗なく貫く槍――ゲイ・ボルグと呼んでもいいだろう。
『…………』
まあ、貫いただけですけどね。
『…………』
ご注文はみんながこの入口を通れるようにすることでしたっけ?
『…………竜王タックル!』
黒い巨体が侵入を阻もうとした鉄門をあえなく吹き飛ばす。
当然ながらまったく抵抗など感じない。
タンクローリーが障子に衝突するようなものだ。
――わはははは。貧弱ぅ、貧弱ぅ!
え?ゲイ・ボルグ?
そんな技使っていませんね。
最初からタックル一筋です。
『さあ、行くぞ!』
気を取り直して、ふわりと浮きあがり、外壁に足をかけて街を上から睥睨する。
ヴェルザードとウーパーも俺の隣にやってきた。
『作戦開始ぃぃぃぃぃ!!』
間髪入れずに魔物ボイスで開始の合図を放つ。
遠くには陣形を組む騎士が見えた。さすがに準備が早い。
ギルド員はまだ召集しきれずってところかな?
明け方だしね。
『少し人がいる』
『みたいだな。適当にあしらって建築場所を確保してくれる?』
『わかった』
『ウーパーもヴェルザードを頼むな』
『お任せを』
『じゃあ私は行く』
相変わらずのんびりした口調でヴェルザードとウーパーが先陣を切った。ヴェルザードが焦ることはないのだろうか。
続いて門の真下の入り口からどんどん魔物が侵入していく。
最初に戦闘ゴリラ隊、守られるように建築隊とヌー族運搬隊。
そして血気盛んなアンデッド……『やるぞー』とか『誰が一番狩れるか勝負だ』などという危険な声が届いているが大丈夫だろうか。
リィリ、頼むよ。
不安に駆られる俺の前に、一匹のデーモンゴリラが浮かび上がってきた。
ゴリマーだ。
『竜王様よ、結局あんたの家はどんな感じに作ればいいんだ?……家の設計図は貰ったんだが、こんなに質素でいいのか?』
ゴリマーはボロボロの紙を俺の前に広げる。
設計図らしき色々な数字が書かれた一度も見たことが無いものだ。
ちなみに、これを見てどんな家になるのかは俺にはさっぱりわからない。
『どこでこんなものを?』
『「鮮血」からもらったぞ』
『マジか……さすがだな』
レネアーネの有能ぶりに舌を巻く。
設計図などどこにあるのかすら知らないのに。
『で、どうなんだ?もっと歴史に残る感じの方がいいんじゃないのか?』
『…………ゴリマーがそうしたいのか?』
『べ、べつにそ、そういうわけじゃねーよ!勘違いすんな!俺は竜王様にふさわしい住まいをだな――』
『わかった、わかった……変なこと聞いた俺が悪かったって。じゃあ…………ゴリマーの考える家にしてくれ。グレートなやつで』
『……ちっ、ギリギリに注文変えやがって……グレートなやつだな。承知した』
早々に背中を見せたゴリマーが、ヴェルザードを目指してすごい速度で離れていく。
ゆったり飛ぶことを忘れているような慌てようだ。
ゴリラにもツンデレっているんだなぁ。
――ところでグレートで通じたのか?
***
俺は外壁の上から規格外の視力を駆使して戦場を俯瞰する。
空中では現在ドラゴンナイト対ヴェルザードの熱戦が繰り広げられている。
追いかけておいでー……って感じにヴェルザードが跳び回りつつ、ウーパーが細いレーザー光線みたいな攻撃を明後日の方向にしかけるという緊迫感に欠けるものだが。
地上では驚くくらいに機敏な動きで冒険者を煙に巻きながらちょっかいをかけるリッチ軍団が大活躍だ。
正直なところ見縊ってました。
あいつらすげー。
ここに出てくる冒険者達だからそこそこ強いはずなのだが、まったく歯牙にもかけない。
ちゃんと指示を守って殺さずに戦ってくれているし。
それともずっと中央にいるリィリの指揮がうまいのだろうか。
ダレースがあれだけ顔を引きつらせるわけだ。本気で戦えば死人続出だろう。
少し離れた場所では家や店の柱が次々と立てられていく。
ゴリラにしてみれば木材が鉛筆くらいの軽さだろうか。まったく苦にもしていない。
襲われそうならリオに行ってもらうつもりだったが、さすがにあそこ周辺の守りは固い。
魔法を使えるデーモンゴリラが100匹以上で守っているのだ。近付けば確実にファイヤーボールの嵐だろう。
中で作業中の建築班とヌー族は安心だ。
『すべて順調だな。そう思うだろ?』
スムーズに流れる作業に安心しつつ、隣の人物に話を振った。
そして、ため息をつく。
隣には誰もいないのだ。
先ほどまでレネアーネとリオがいたのだが、リオは血が騒ぐと言って戦端が開かれると同時に離脱。
そしてエルフは勇者ティリエが早々に登場してしまったために予定を早めて出陣していった。
「もう少しこの素晴らしい眺めをご一緒したかったです」などと言いながら名残惜しそうな表情を見せる彼女を複雑な想いで見送ったところだ。
……この台本有りの演劇のどこが素晴らしいのか教えてほしい。
今からでもその台本に俺の活躍の場を加筆願いたい。
俺さ――――すごく暇なのぉぉぉぉっっ!
誰かケガ人連れて来いって。
首を長くして待ってるんだぞ。いや、比喩じゃなくてほんとに長いけど。
もうこの際、死体ギリギリのやつでもいいから。
竜王の回復魔法で一瞬のうちに治してみせるから、
安心して大ケガせんかい!
俺の活躍の場はいつくるのよ!?
『いつなの、イハリス!』
『……そんなこと僕に言われても……だいたい僕を起こす必要あった?いい気持ちで寝てたのに……』
『あまりに暇なもんで、話し相手が欲しくて……つい』
『ひどいよー、そんなのとばっちりだよ』
『ほらっ、あそこでヴェルザードが戦ってるぞ!大好きなヴェルザードだぞ!』
『…………あんなの戦いじゃないよ。飛んでるだけじゃん。ヴェルザードらしさがなんにも無いし』
『飛んでるだけじゃダメなんだ……意外とうるさいのね』
『…………僕のことはどうでもいいけど、カナタはそれ何を作ったの?』
『これか?…………旗だ』
『旗はわかるけど……なんで?』
外壁に立てかけられた四角い白地の布に赤の十字マークの大きな旗。
ケガ人が誰も来ないから忘れられているのかと焦って作ってみたのだ。
神技を用いてゼロから作ってみた。
ここに医療班がいますよー、ってアピールしたくてね。
意外と簡単にできるもんだ。
慣れれば何でも作れちゃいそう。
……ゴリラの服は神技で夜な夜な作るか。
『知らないのか?これが治療のマークなんだぞ』
『見たことないや。でもそんな物を作ってる暇があったらカナタも前線に出たら?』
呆れたような口調でイハリスは苦笑いした。
『……だってレネアーネに後方で待機って言われてるんだもん』
『そんなの後でごめんねって言えば済む話でしょ?』
『こんな無能な大将がでしゃばらない方がいいかなぁって思って』
『いつからそんなに卑屈になったの?カナタってレネアーネには全然頭が上がらないみたいだね』
『うるせー』
『…………ほんとうにカナタはあの大きな胸に弱いんだから』
『ぶっ――お、おま、おまえ突然なんてことを!?』
『冗談だよ。いつもからかわれてる仕返しをしただけさ』
『……今やらなくてもいいだろうに。…………おっ、ヌーが来たぞ?』
『ほんとだ。初のケガ人かな?良かったね、カナタ。出番が来たみたいじゃん。早く行ってあげなよ』
『おう』
撤退の合図は出していないにも関わらず一匹のヌーが走ってくる。
これは――本当に何かあったかもしれない。
俺の出番がとうとうきたな。
レネアーネには動くなと言われているが、これは仕方ない。うん。
頼られたからにはこの竜王様の力を振るうしかあるまい。
いざっ!
『そんなに慌ててどうした?』
地面に颯爽と舞い降りた俺は、小さなヌーに話しかける。
明らかに子供のヌーだ。
少し緊張気味に見えるのが可愛らしい。
『……広場に男が来たヌー』
『強いやつか?』
『ゴリモンドさんは弱すぎるって言ってたヌ』
『弱すぎる?』
『そうヌー』
『民間人……か?けど、避難しているはずじゃなかったっけ?』
『とにかく、ゴリモンドさんが困ってるヌー。竜王様を呼んで欲しいって言われてるヌー』
『お、おう……じゃあ行くか。背中乗れよ』
『ヌぅっ!?』
目を白黒させるヌーに翼の先を下ろして登れるようにしてやる。
遠慮がちな視線と、好奇心がせめぎ合った結果…………子供のヌーは乗る方を選択した。
とても嬉しそうだ。
軽いステップであっという間に背中に乗る。
『竜王様の背中……すごく大きいヌー。みんなに自慢できるヌー』
『そうだろ、そうだろ?ふははははは』
『愛の伝道師はやっぱり愛にあふれるドラゴンなのヌー。お父さんが言ってた通りヌ』
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