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すべては運次第
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――《散策》クリティカルが発生しました。
頭に直接鳴り響く音。
思わずため息が漏れた。
残響を振り払うように頭を振り、僕は小さな畑で振り上げたクワを放り投げた。
そして、深い森の中から、感じた気配に向かって、とぼとぼ歩き始めた。
***
目の前には、石でできた一本橋。
背後を追ってくるのは怒れるキンググリズリー。
カルエッタは息を切らせつつ、足を止めた。同時に、あとをついてくるランツが首を回して目を細めた。
完全に道を見失っていた。
勘を信じて進んできたものの、行く先がわからなくなった。
足を進めるほどに森は濃くなり、むせかえるほどの深緑の香りが鼻を刺激する。
ようやく森が開けると右手に天を衝くような塔が見えた。あれが最初に目指した目的地のはずだ。
随分奥まで来たらしい。
橋でつながれた峡谷を見やる。
目もくらむような高さだ。
遥か下で、鷲に似たモンスターが甲高い鳴き声をあげて飛び去った。深い霧で底は見えない。かすかに聞こえる水の音。下は川かもしれない。
目の前の橋はまだ新しい。
作られてから時間は経過してないだろう。だが、至る所にヒビがあり、左右には手すりもない。急ごしらえの雑なつくりだ。
けれど、道はここしかない。跳躍で対岸へ跳ぶのは無理だ。
かといって――
キンググリズリーの荒い呼吸が聞こえて、カルエッタは振り返った。
暗い紫色の体毛は針のように逆立ち、瞳孔のない青い目が輝いている。強い獣の臭いと、隙のない四足の構え。
完全に捕捉されていた。捕まれば殺されるだろう。
覚えたての魔法は効果がなかった。ランツの武器が折れたほどだ。
カルエッタは頭を悩ませる。ようやく目的地にやってきたのだ。
こんな場所でモンスターに襲われて死ぬわけにはいかない。
もう一度対岸をにらむ。
と、濃い木々をかきわけて、何かが現れた。
人間だった。
はねた茶髪に気の弱そうなたれ目の男。
猫背気味の体は、伸ばせばカルエッタよりずいぶん高いだろう。服装は深い緑色の作業着。
王国で有名なモンスターの討伐に長けた探索者には見えない。
全員の動きが止まった。
男はそれらを眺め、がっくり肩を落としてから、苦笑する。
「とりあえず、こっちまで走れるかい? うちの管轄はそこまでなんだよ」
男は囁くように言い、石橋の中央を指さした。
カルエッタとランツは駆けだした。
モンスターが我に返ったように追った。
「間違いなく、今日は厄日だな」
対岸で二人を待つ男は、意味のわからない言葉をつぶやくと、体の周囲に発光する魔力の塊を浮かべた。
カルエッタでも知っている魔法――E級魔法《魔法の乱矢》(ブリリアント・ショット)だ。速度と追尾性能にすぐれるが、牽制にしか使えない威力の低い魔法だ。
すでにD級魔法を試していたカルエッタは、心の内で「無駄です」とつぶやく。
頭上を、十本の光の矢が駆け抜けた。
轟音が響く。
「っ!?」
足元が揺れた。
男が狙ったのはキンググリズリーではなかった。
彼女たちが通り過ぎたあとの橋の中央を攻撃したのだ。
「急げ。落ちるぞ」
短い言葉が飛んだ。
カルエッタとランツは、全力で駆けた。
まるでそれくらいできるだろと言わんばかりの男が、微笑み交じりで二人を見つめていた。
「お疲れさん。僕はリーン=ナーグマン。よろしく」
気の抜けた声に呼応するように、キンググリズリーが吠えながら落ちていった。
頭に直接鳴り響く音。
思わずため息が漏れた。
残響を振り払うように頭を振り、僕は小さな畑で振り上げたクワを放り投げた。
そして、深い森の中から、感じた気配に向かって、とぼとぼ歩き始めた。
***
目の前には、石でできた一本橋。
背後を追ってくるのは怒れるキンググリズリー。
カルエッタは息を切らせつつ、足を止めた。同時に、あとをついてくるランツが首を回して目を細めた。
完全に道を見失っていた。
勘を信じて進んできたものの、行く先がわからなくなった。
足を進めるほどに森は濃くなり、むせかえるほどの深緑の香りが鼻を刺激する。
ようやく森が開けると右手に天を衝くような塔が見えた。あれが最初に目指した目的地のはずだ。
随分奥まで来たらしい。
橋でつながれた峡谷を見やる。
目もくらむような高さだ。
遥か下で、鷲に似たモンスターが甲高い鳴き声をあげて飛び去った。深い霧で底は見えない。かすかに聞こえる水の音。下は川かもしれない。
目の前の橋はまだ新しい。
作られてから時間は経過してないだろう。だが、至る所にヒビがあり、左右には手すりもない。急ごしらえの雑なつくりだ。
けれど、道はここしかない。跳躍で対岸へ跳ぶのは無理だ。
かといって――
キンググリズリーの荒い呼吸が聞こえて、カルエッタは振り返った。
暗い紫色の体毛は針のように逆立ち、瞳孔のない青い目が輝いている。強い獣の臭いと、隙のない四足の構え。
完全に捕捉されていた。捕まれば殺されるだろう。
覚えたての魔法は効果がなかった。ランツの武器が折れたほどだ。
カルエッタは頭を悩ませる。ようやく目的地にやってきたのだ。
こんな場所でモンスターに襲われて死ぬわけにはいかない。
もう一度対岸をにらむ。
と、濃い木々をかきわけて、何かが現れた。
人間だった。
はねた茶髪に気の弱そうなたれ目の男。
猫背気味の体は、伸ばせばカルエッタよりずいぶん高いだろう。服装は深い緑色の作業着。
王国で有名なモンスターの討伐に長けた探索者には見えない。
全員の動きが止まった。
男はそれらを眺め、がっくり肩を落としてから、苦笑する。
「とりあえず、こっちまで走れるかい? うちの管轄はそこまでなんだよ」
男は囁くように言い、石橋の中央を指さした。
カルエッタとランツは駆けだした。
モンスターが我に返ったように追った。
「間違いなく、今日は厄日だな」
対岸で二人を待つ男は、意味のわからない言葉をつぶやくと、体の周囲に発光する魔力の塊を浮かべた。
カルエッタでも知っている魔法――E級魔法《魔法の乱矢》(ブリリアント・ショット)だ。速度と追尾性能にすぐれるが、牽制にしか使えない威力の低い魔法だ。
すでにD級魔法を試していたカルエッタは、心の内で「無駄です」とつぶやく。
頭上を、十本の光の矢が駆け抜けた。
轟音が響く。
「っ!?」
足元が揺れた。
男が狙ったのはキンググリズリーではなかった。
彼女たちが通り過ぎたあとの橋の中央を攻撃したのだ。
「急げ。落ちるぞ」
短い言葉が飛んだ。
カルエッタとランツは、全力で駆けた。
まるでそれくらいできるだろと言わんばかりの男が、微笑み交じりで二人を見つめていた。
「お疲れさん。僕はリーン=ナーグマン。よろしく」
気の抜けた声に呼応するように、キンググリズリーが吠えながら落ちていった。
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