光源氏の逆襲

東京ともりん

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光る君と雨夜の男子会

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 また曇天か、、。
 今日は父帝の御物忌に当たる日で、宿直当番のために夕刻から内裏に詰めている。

毎日遊んでいるように思われてるかもしれないが一応臣下の身。
近衛中将としてのお務めはおろそかにしていない。
そつなくこなさないと弘微殿のご実家、右大臣一派から何を言われるやら。
先日からの女人運不調でどっこも行く気が起きないしな。
 さて、お役の時間も過ぎたし宿直奏も無事終わった。
部屋で何か食べるか。
 
 自分は元服後、お祖母様に育てられていた二条の邸を自邸としていたが、父帝のはからいで母様の局部屋だった桐壺を内裏での自室として特別に頂いていた。
ふふんやっぱり父様の中では1番の愛息なんだな。
 
 雲行きは先程から怪しかったが部屋に戻った頃雨も降ってきた。
やはり降ってきたな。
簀子から雨空を見上げていると、袖で雨を避けながら頭の中将と左馬頭、藤式部丞らが庭を横切りこちらにかけて来る。
話の合ういつもの仲良しメンバーだ。
皆も宿直だったのか。
自分が居ると誰かに聞いて、つまらない宿直部屋で雑魚寝するよりはと雨の中渡って来たようだ。
退屈もしてたので丁度よいと招きあげ、酒と肴を運ばせた。
それぞれ官位は違うが三献まで巡り、後はくだけた場になる。

 ちなみにこの頃の酒はたいてい甘口で宮中では造酒司がつけられ、儀式や祭祀用の酒も造られていた。
御酒や醴酒、白酒や黒酒などあったが普段愛飲するのは澄んでてやや甘口の御酒だ。
暖かくして飲むことも多かったが、夏の暑い日には氷室から氷を取り寄せロックや水割りでも楽しめる。
宮中でなくとも寺社や上流貴族の邸宅にも酒殿があり自家用の酒が造られていた。
はては庶民の間でも簡単に造られる濁り酒などを楽しみ過ぎて大トラが続出。
飲酒の禁令が出されることもある程だった。
まあこの時代、酒飲む位しか楽しみもないし、しょうがないよなー。
 
 酒が回ると女の話になるのはいつの時代も変わらない。
頭の中将が女人の上中下について講釈していた。
 彼によると、身分が高すぎる女人は気が張り疲れるが、余りにも下々の女とは話も合いそうにない。
結局中くらいの家柄か、または位は低くとも財産のある受領の娘や、反対に落ちぶれた屋敷に美人の姫がひっそり暮らしているなど、ギャップがある程面白そうだとな。
 さっすが頭の中将勉強になるなあ。
ふむふむギャップ萌えね。 
覚えておこう。
 
 お勉強の後は酔った左馬頭が自分の失敗談を語り始めた。
 「いや私などは官位も大したことはなく、皆様と比べるのもお恥ずかしいのですが、、
ねんごろになった女が不細工でしたが豆々しく仕えてくれてましてね。料理や裁縫、その他申し分なく、行くと結構なもてなしをしてくれる女だったのです。」

「オイオイその様な話、昨日の夢でございって事はないよな?」

頭の中将がチャチャを入れ、皆がどっと吹き出した。
 
「ハハハ。それならもう一度寝直したいところですな。しかしヤキモチが凄うございまして、ある時ちょっとした他の女との手紙を見つけて泣くわ喚くわ。挙げ句落ち着かせようと肩に手をかけた私の指を噛む始末。これには私も腹を立ててもう二度と合う気はないと言い放ち邸を出てしまいました。が、しばらく後のあるみぞれのふる寒い日のこと。
結局その女の所しか行くあてもなく、少々気まずいと思いながら行ってみますと料理や酒も来るのが分かっていたかの様に整い、暖かい寝床も設えてましてね。
ところが本人は留守で、褥の上には手紙が一通。
手紙は私が他の女とも関係を絶ち、自分のみを大事にしてくれるならよりを戻す。との内容でしたが私にも意地があり、しばらく知らぬふりをしていました。
すると女は思い悩んだ挙げ句、病を患い身罷ってしまったのです。
今更ですが今でもあの女がいればと後悔しきりでして、意地も張りどころを間違えると取り返しがつかぬ事になりますな。」
 
 わかるわかるっ!ヤキモチの対処法って難しいよな、、と身につまされていると、頭の中将。
 
「そうですとも。実は私も後悔しきりの事がありましてね、、」
 
 おっ中将の失敗話か。
これは聴き逃がせないな。
と、面白半分で聞き始めたが段々笑えなくなってきた。

素直でおっとりした女を囲ってて女の子ができた?! 

正妻が脅したらしく、囲っていた屋敷から逃げ出してしまったらしい?!!

五条辺りということしか分からず、手を尽して探したが見つからなかっただと?!!

いやいやそれカンペキ夕顔でしょ?!
惟光んち五条だしっ!!
  と、とりあえず
・・・今は黙ってよっと。
 
 酔が吹っ飛んだな、、、
 
 雨がやんで空の下が薄明るくなってきた。もう夜明けか。
皆は気持ちよく酒がまわりご機嫌で寝ているが、自分は到底寝れそうにない。
エラい夜になったもんだ。
 
 小柴垣に咲いていた夕顔の花が、やけに思い出された。
 


 
 


 
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