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光る君の結婚
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今日は右大臣家六の君がいよいよ宮仕えに召される日か、、、
あれから結構な月日が経ったんだなあ。
朧月夜の君との密会がバレたあとはそれはもう大変だった。
右大臣から話を聞いた弘微殿の女御の怒りは凄まじく、火を吐きそうな勢いで罵りまくっていたらしい。
よりによってご自分の足元、弘微殿で東宮妃になろうかと期待を寄せていた六の君が盗まれたんだからな。
あれ以来目が笑ってない笑顔どころか、般若の表情しか見せなくなった女御だが、父親の右大臣には六の君を自分に嫁がせようか、と、歩み寄る姿勢も見られた。
右大臣にすればなんといっても私は帝の御子。
今さら時を戻せる訳でもなし、噂もとうに広まってしまった。
この際繋げられる縁があれば繋げておきたいといったところだろう。
自分としても、それならそれで身の安全にもつながるかとまんざらでもなかったが、そこで待ったをかけたのが東宮だった。
予め右大臣から六の君の入内を匂わせられていた東宮は、あの春の宴で六の君を見初めていたらしい。
私との浮名を承知の上で右大臣に入内を仄めかしたのだった。
右大臣は迷った末、弘微殿の女御の強い意見に押されるように六の君を東宮の元へ送る事にしたらしい。
女御にすれば殺したい程憎んでいる自分が一族と縁付くなど到底許せる事では無かったんだろう。
喜ばれた東宮だが、六の君と私の浮名が広まっていたため后としての入内は諦めれられ、窮余の策として、公の女官という立場の、内侍でのお召となったのだった。
自分にも流石に何らかの処分があるだろうと覚悟していたが、東宮からは何の処罰も下されなかった。
当然弘微殿の女御が異を唱えたらしいが、東宮が仰るには入内してからならともかく、東宮妃云々も正式に申し込んでいた訳でもない、噂にすぎなかった。
弟の方が先に、独身であった六の君と恋仲になっていたのだから仕方がない。
そも何の咎で責められようか、と。
これには女御も意見のしようもなく、当事者の東宮がそう思し召すならと、渋々ご承知なさったのだった。
東宮兄様ありがとう!
なんていい人だ。
サンキュー!
こうして朧月夜六の君は無事に宮中に迎えられた。
朧月夜の君には、本来なら東宮妃として華々しく入内される所が女官としてお仕えすることになり、心中いかばかりか、、、
申し訳ないと思っていたが、当の本人は結構ケロッとしたもんだ。
いざ女官として入宮してみると、后と違い宮中での自由がかなり効く。
しかも後ろ盾が右大臣で東宮のお覚えもめでたい、とあっては誰にも虐げられない。
実家での窮屈な生活から開放されて何とも楽しそうに過ごしている。
未だにチョイチョイ文は来るし、宮中で見かけると使いを寄越してくる始末。
東宮兄様も、ずいぶん進歩的な女人を見初めたもんだ。
まあともかく六の君と落ち着いてくれて何よりだった。
お幸せに。
そうそう自分の方も、この度めでたく裳着を迎えて成人となった若紫と正式な婚姻をし、これを期に父親の兵部卿宮とも親子の対面に漕ぎ着けた。
当時の事は適当にぼやかして、乳母とひっそり暮らしていた若紫を保護していたという体にした。
兵部卿も本音は引き取りたくなかった後ろめたい事情があったため、もちろん異議のあるはずもない。
逆に見捨てたと同然の娘のお陰で、帝の愛息が我が身と縁付いたのを幸運が舞い降りたと、大層な喜びようだった。
若紫は、紫の上と呼称を改め、二条の邸で北の方として、使用人達の取りまとめや各地の荘園管理、客のあしらいまでこなし、何かにつけ優しく心配りのあるとりなしで、周りの評判も非常に良い。
やはり藤壺様のお身内だけあって、美しい上に心様も優しく、非の打ち所のない女人に思える。
数年前は最高の権力を持たないと自身が保てないような気がしてどこか焦燥感があったが、最近では今が1番幸せなんじゃないかとすら思えてきた。
このまま平穏に過ごせるなら、今のままで十分だ。
と、思っていた。
あれから結構な月日が経ったんだなあ。
朧月夜の君との密会がバレたあとはそれはもう大変だった。
右大臣から話を聞いた弘微殿の女御の怒りは凄まじく、火を吐きそうな勢いで罵りまくっていたらしい。
よりによってご自分の足元、弘微殿で東宮妃になろうかと期待を寄せていた六の君が盗まれたんだからな。
あれ以来目が笑ってない笑顔どころか、般若の表情しか見せなくなった女御だが、父親の右大臣には六の君を自分に嫁がせようか、と、歩み寄る姿勢も見られた。
右大臣にすればなんといっても私は帝の御子。
今さら時を戻せる訳でもなし、噂もとうに広まってしまった。
この際繋げられる縁があれば繋げておきたいといったところだろう。
自分としても、それならそれで身の安全にもつながるかとまんざらでもなかったが、そこで待ったをかけたのが東宮だった。
予め右大臣から六の君の入内を匂わせられていた東宮は、あの春の宴で六の君を見初めていたらしい。
私との浮名を承知の上で右大臣に入内を仄めかしたのだった。
右大臣は迷った末、弘微殿の女御の強い意見に押されるように六の君を東宮の元へ送る事にしたらしい。
女御にすれば殺したい程憎んでいる自分が一族と縁付くなど到底許せる事では無かったんだろう。
喜ばれた東宮だが、六の君と私の浮名が広まっていたため后としての入内は諦めれられ、窮余の策として、公の女官という立場の、内侍でのお召となったのだった。
自分にも流石に何らかの処分があるだろうと覚悟していたが、東宮からは何の処罰も下されなかった。
当然弘微殿の女御が異を唱えたらしいが、東宮が仰るには入内してからならともかく、東宮妃云々も正式に申し込んでいた訳でもない、噂にすぎなかった。
弟の方が先に、独身であった六の君と恋仲になっていたのだから仕方がない。
そも何の咎で責められようか、と。
これには女御も意見のしようもなく、当事者の東宮がそう思し召すならと、渋々ご承知なさったのだった。
東宮兄様ありがとう!
なんていい人だ。
サンキュー!
こうして朧月夜六の君は無事に宮中に迎えられた。
朧月夜の君には、本来なら東宮妃として華々しく入内される所が女官としてお仕えすることになり、心中いかばかりか、、、
申し訳ないと思っていたが、当の本人は結構ケロッとしたもんだ。
いざ女官として入宮してみると、后と違い宮中での自由がかなり効く。
しかも後ろ盾が右大臣で東宮のお覚えもめでたい、とあっては誰にも虐げられない。
実家での窮屈な生活から開放されて何とも楽しそうに過ごしている。
未だにチョイチョイ文は来るし、宮中で見かけると使いを寄越してくる始末。
東宮兄様も、ずいぶん進歩的な女人を見初めたもんだ。
まあともかく六の君と落ち着いてくれて何よりだった。
お幸せに。
そうそう自分の方も、この度めでたく裳着を迎えて成人となった若紫と正式な婚姻をし、これを期に父親の兵部卿宮とも親子の対面に漕ぎ着けた。
当時の事は適当にぼやかして、乳母とひっそり暮らしていた若紫を保護していたという体にした。
兵部卿も本音は引き取りたくなかった後ろめたい事情があったため、もちろん異議のあるはずもない。
逆に見捨てたと同然の娘のお陰で、帝の愛息が我が身と縁付いたのを幸運が舞い降りたと、大層な喜びようだった。
若紫は、紫の上と呼称を改め、二条の邸で北の方として、使用人達の取りまとめや各地の荘園管理、客のあしらいまでこなし、何かにつけ優しく心配りのあるとりなしで、周りの評判も非常に良い。
やはり藤壺様のお身内だけあって、美しい上に心様も優しく、非の打ち所のない女人に思える。
数年前は最高の権力を持たないと自身が保てないような気がしてどこか焦燥感があったが、最近では今が1番幸せなんじゃないかとすら思えてきた。
このまま平穏に過ごせるなら、今のままで十分だ。
と、思っていた。
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