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想いは箱の中に3
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エレベーターの乗客が一気に降りていく。
(…………スバル……)
立派だな、と亮は思った。
スバルは十八才。
成人に満たない青年が、俺の言葉少ない励ましに笑顔で応えてくれている。
(逆に気を使わせてしまったかな…)
嬉しさと、少し悔しい気持ちが合わさって亮も目を細めた。
「牧野さんバイバイ」
「明日、ちゃんと起こしてね」
スバルは急に大人びた顔で亮を見つめながら、エレベーターを降りていった。
(……アイツ…妙に)
スバルの色気のこもった眼差しに亮は少し驚いたが、すぐさま彼がモデルとしての自負が芽生えつつあるのだと納得した。
大勢が降りて軽くなった箱の天井を見つめて今後の仕事の段取りを思い出す。
亮も今日は帰る予定だが、リサーチでブランド店などをみて回るのもいいだろう。モデル業界に携わる現場の人間として、自分もなめられないようなセンスと知識が必要となってくる。
がらんとしたエレベーターは一層静かだ。けれども、四方八方囲まれたこの空間は相変わらず窮屈に思えた。
「……牧野?」
「…?」
エレベーターには自分一人だけだと、思っていた亮は驚いて振り向く。
「…牧野…だよな…」
状況を理解するのに少し時間がかかった。 そして、目の前の信じがたい光景で自分の脈が速くなるのを感じた。
(……!……もしかして………)
(……!)
(……!?)
似ている声と整った面影。
亮は夢の続きを見ているような錯覚に陥った。
(……高瀬…!?)
振り向いた先に立っているビジネススーツ姿の男は憧れを抱いたかつての同級生、高瀬優璃(ゆうり)だった。
亮の担当するモデルたちに引けをとらない細身のきれいな体格と顔立ち。変わらない大きな切れ長の瞳…。
(……高瀬…なんでここに…)
亮はいまだに声を発せられずにいた。
驚きすぎて声の出し方を忘れたのかもしれない。
「牧野…」
続けて高瀬の声が聞こえる。
「牧野…お前……」
(…………スバル……)
立派だな、と亮は思った。
スバルは十八才。
成人に満たない青年が、俺の言葉少ない励ましに笑顔で応えてくれている。
(逆に気を使わせてしまったかな…)
嬉しさと、少し悔しい気持ちが合わさって亮も目を細めた。
「牧野さんバイバイ」
「明日、ちゃんと起こしてね」
スバルは急に大人びた顔で亮を見つめながら、エレベーターを降りていった。
(……アイツ…妙に)
スバルの色気のこもった眼差しに亮は少し驚いたが、すぐさま彼がモデルとしての自負が芽生えつつあるのだと納得した。
大勢が降りて軽くなった箱の天井を見つめて今後の仕事の段取りを思い出す。
亮も今日は帰る予定だが、リサーチでブランド店などをみて回るのもいいだろう。モデル業界に携わる現場の人間として、自分もなめられないようなセンスと知識が必要となってくる。
がらんとしたエレベーターは一層静かだ。けれども、四方八方囲まれたこの空間は相変わらず窮屈に思えた。
「……牧野?」
「…?」
エレベーターには自分一人だけだと、思っていた亮は驚いて振り向く。
「…牧野…だよな…」
状況を理解するのに少し時間がかかった。 そして、目の前の信じがたい光景で自分の脈が速くなるのを感じた。
(……!……もしかして………)
(……!)
(……!?)
似ている声と整った面影。
亮は夢の続きを見ているような錯覚に陥った。
(……高瀬…!?)
振り向いた先に立っているビジネススーツ姿の男は憧れを抱いたかつての同級生、高瀬優璃(ゆうり)だった。
亮の担当するモデルたちに引けをとらない細身のきれいな体格と顔立ち。変わらない大きな切れ長の瞳…。
(……高瀬…なんでここに…)
亮はいまだに声を発せられずにいた。
驚きすぎて声の出し方を忘れたのかもしれない。
「牧野…」
続けて高瀬の声が聞こえる。
「牧野…お前……」
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