8 / 21
第一章:幸せな世界
第八話:副作用
しおりを挟む
――あの倉庫に落ちていた紙、それはゲンキが病気を無視して動けた理由と、その副作用について書いてあるものだった。
「副作用……」
――この紙によると、ゲンキが動けた理由、
それは、新薬『光』の開発の元になった成分を注射器を通して体内に直接注入したから。
この成分をそのまま取り入れれば、短期的に超人的な能力を得ることが出来るが、同時に猛毒が体を蝕む。
俺達が呑んだ薬は、その成分を色々な物質と調合して安全性が確認されたもの。
「――ミツキ、すぐにカノンさんに伝えるべきなんじゃないか?」
珍しくハルヒが難しそうな顔をする。
実際、俺もこの紙を見つけた時はすぐにそうするべきだと思った。しかし、
「……」
せっかく兄弟愛を取り戻したのだから、それを一瞬でぶち壊すようなことはしたくない。
「だって、それが本当なら……ゲンキは……」
この毒による副作用、それは、細胞の壊死。筋ジストロフィーを抱えているゲンキにとって細胞を再生させるのはなかなか難しい。徐々に体は蝕まれ、最後には心臓を支える筋肉さえ……、
「――なんとか出来ないのか?」
「無理だ」
俺は、キッパリと断言する。
「――まず、たぶんゲンキはこの副作用について知らない。それに、解毒出来るかもしれない差出人について全く書かれていない」
状況は絶望的、自力で解毒しようとしても、そこらの薬局で売っている薬ではまず解毒できない。救急車で病院に運ぼうにも……
「ここらへんには大きな病院がない……」
そこそこ都会な町並みにも関わらず、ここらにあるのは、小さな診療所のみ。救急車を待っている暇はない。
「――やっぱり、カノンさんに伝えるべきだ……」
無理だと思って、変な期待不安を抱かないように伝えなかった。しかし、
「ああ」
よくよく考えれば、たとえ水を差す形になっても、何も知らずに逝かれるよりは良いかもしれない。
俺は、携帯を取り出し、カノンに電話を掛ける。
「……」
「――どうしたのミツキ?」
カノンは直ぐに電話に出た、そして俺は、
「実は……」
恐る恐るカノンに事情を説明する。
「え……?」
その声とともに、携帯を床に落とす。そして、そのまま電話は切れた。
◇
「――嘘でしょ」
ミツキは言った、ゲンキの体の細胞はもうじき壊死すると。
嘘だと信じたい、けどアイツが嘘をつくはずが、理由がない。
「ゲンキ……!!」
私は思わずゲンキに抱きついた。
「どうした、姉ちゃん?」
すごい形相で抱きついてきた私に驚く、
「体、痛い所無い?」
「あぁ、もう大丈夫だって、体はもとに戻っちゃったみたいだけど、前と変わらないし、それに別に痛くなったりしてな……」
――言葉の途中、ゲンキは吐血した。コップ一杯に相当する量を一度に……、ゲンキは車椅子から崩れ落ち、
「――ん、んがぁあぁぁ!!」
あまりの苦しさに自分の首を強く握る。
「ゲンキ落ち着いて……!!」
私は、ゲンキの手を首から離し、呼吸しやすい姿勢にする。
「あぁぁぁぁ……!!!」
じっとしているのが辛いのか私が押さえつけようとすると、必死に抵抗した。
「っkldぁkぁ;l」
ゲンキは文字にならない様な奇声を上げ、更に暴れる。
「――さっきから何なの? カノン、お風呂沸かしたから入っちゃなさ……」
お風呂を沸かし、リビングに来たお母さんは思わず、持っていた洗濯物を落とす。
「――お母さん、お風呂のお湯を汲んできて……!!」
暴れるゲンキを押さえながらお母さんにそう指示する。
「……わ、わかったわ……」
顔を真っ青にし、一瞬思考が停止するも、お母さんは、浴室に走る。
「――汲んできたわ……」
桶いっぱいに入った水、それをさっきお母さんが落とした洗濯物に掛ける。
毒は、体温を高くしていれば回りを遅く出来ると聞いたことがある。
ゲンキの服を強引に破り、各関節にお湯で温まった洗濯物を挟む。
「これからどうすれば……」
応急処置をしたところで、解決はしない。
「――アイツらは……?」
というか、アイツらは何故知っていたのだろうか? 知っていたのに何で早く伝えてくれなかったのだろうか?
まさか、可愛そうだからとか……? そんな理由でゲンキが助かるかもしれなかった時間を無駄にした?
「……ふざけないでよ……!!」
五分も経ったのにも関わらずこない。
「がlkjfj:あ」あ:」
――そうこうしている内にも、毒はどんどん体を巡る。
「――薬持ってきたぞ……!!」
――その時、体中ボロボロになったハルヒとミツキが現れた。
「――薬?」
「ああ、病院でもらってきた……!!」
見るとミツキは手に薬箱を持っていた。
「説明してる暇はない、カノンこれを飲ませろ……!!」
ミツキは薬箱の中から粒状の薬を取り出し、私に投げた。
「――飲んでくれない……」
口に入れようとしても暴れてしまう。やっとのことで口に入れても、飲み込めず吐き出してしまう。
「ん、ぅぅん……」
私は、薬を自分の口の中で噛み砕いて細かくし、直接口移しする。
「――イタっ……」
奥の方へ舌をを入れると、苦しいのか噛んできた。私は、それを耐えながら、更に奥へと舌を入れる。
「はぁ……」
なんとか飲ませることは出来た。後はこの薬が効くかどうか……。
「この薬は、あの総理大臣お墨付きだ。絶対大丈夫……」
「あぁ……!! これでもう大丈夫だ……!!」
ミツキとハルヒは自慢げに胸を張る。
総理大臣? 何でそんな名前がここに……?
――瞬間、ゲンキは大人しくなった。
「――死んでないわよね……!?」
さっきと比較出来ないほどの大人しさに私は思わず疑いの目を向ける。
「――ぐー、ぐー……」
「え?」
私はゲンキの胸に耳を当てると、ちゃんと心臓が脈打っていた。それに、今の音はいびきだ。
「よ、かった……」
急に肩の力が抜け、その場に崩れ落ちる。
「いやー、悪かったな、見つけてすぐ伝えなくて……」
「本当よ……」
「まぁ、一件落着ってことで良いじゃないか……!!」
すぐに教えてくれなかったミツキを睨んでいると、ハルヒがパンと手を叩きまとめた。
「そういえば、本当に疑問なんだけど、総理大臣って……?」
総理大臣といえば、女の身にも関わらず、屈強な軍人も容易く葬ってしまうと言われる。レベルは当然ランキング一位。
「さっきそこで会ったんだ……」
◇
「あぁ……!! どうすれば……!!!」
分からない。どうすれば、どうやったら助けられるんだ?
「――そんなの決まっている。『願うこと』だ……!!」
後ろから突然刺す声。
「――あなたは?」
黒髪に整った顔立ち、高身で筋肉質な体、その人は、一滴の曇りの無いその目で俺を見つめる。
「私はこの国の総理大臣だ」
「ミツキ、これは本物だぞ……!!」
ハルヒは目を輝かせる。
「まじかよ……」
この人の国民支持率は常に八十パーセントを超える。そんなすごい人が何故ここへ?
「何でここに……?」
「あぁ、日課の日本一周ランニングの途中でな……」
「日本一周!?」
「ああ」
スーツで? と思ったが、この総理大臣ならやりかねない。
やることが規格外だ……
「して、困っていたようだが……?」
まるで何かを見透かしているかのように手を顎に当て俺に問う。
「実は……」
初対面で言うのはなかなか気がひけるものだが、この人は違った。居るだけで絶対の安心を相手に施す程のオーラ、俺は、一部始終を話した。
「なるほど。恐らく奴らの仕業だな……」
「奴ら?」
「まぁ、それはおいおい話すとして、三十秒待て……」
――瞬間、総理大臣の姿が消えた。
「ミツキ、あの人は本当にすごい人だな……!!」
またもやハルヒは目を輝かせる。
「確かにあの人は凄かった」
神聖さすら感じる……。
「――で、三十秒待てって言ってたけど……」
――三十秒経った瞬間、総理大臣は俺の目の前に立っていた。
「ほら、これを受け取れ……」
渡されたのは、小さな薬箱。
「この中の薬をその少年に飲ませろ。そうすれば治る」
真摯な目で俺を見つめ、熱のこもった声で、優しく言う。
「じゃあ、また」
そう言うと、どこかへ消えてしまった。
◇
「――と、言うことだ……」
俺は総理大臣との事をカノンに説明した。
「にわかには信じがたいけど……」
少し引きつったような顔をし、苦笑いをする。
「――おーい!! 目覚めたぞー!!」
ゲンキを見ていたハルヒが手をこちらに大きく振ってそう叫ぶ。
「――姉ちゃん?」
ハルヒに支えられてゆっくりと起き上がったゲンキは目覚めるやいなや、姉を呼ぶ。
「良かった……!!」
カノンは、ゲンキの元気な姿を見て、安堵し、抱きつこうとする。
「――姉ちゃん、俺にキスしたでしょう……?」
その言葉に抱きつこうと歩いていたカノンの足が止まる。
「え? いや、その……」
言い訳しようにも出来ず、慌てふためく。
「あぁ。お姉ちゃんはゲンキに結構レベルの高いキスをしていたぞ」
俺はカノンをからかう様に告げる。
「――ぐぁ……」
からかわれ顔が真っ赤になったカノンは俺に蹴りをお見舞いした。
「ミツキ、やるな……」
何に感心したのか、ハルヒは俺を称賛する。
「ゲンキ、あれはね……」
カノンはゲンキに目線に合わせ、真摯に弁明しようとする。
「――分かってる。俺を助けるためだろ?」
「ええ」
「『ありがとう』」
ゲンキは精一杯の笑顔で、カノンにそう言った。
「――ゲンキ、そろそろ良いか?」
俺はカノンに蹴られた頬を押さえながら、ゲンキに近づく。
「――はい分かっています」
聞かなくてはいけない。あんな事になったのかを……
「副作用……」
――この紙によると、ゲンキが動けた理由、
それは、新薬『光』の開発の元になった成分を注射器を通して体内に直接注入したから。
この成分をそのまま取り入れれば、短期的に超人的な能力を得ることが出来るが、同時に猛毒が体を蝕む。
俺達が呑んだ薬は、その成分を色々な物質と調合して安全性が確認されたもの。
「――ミツキ、すぐにカノンさんに伝えるべきなんじゃないか?」
珍しくハルヒが難しそうな顔をする。
実際、俺もこの紙を見つけた時はすぐにそうするべきだと思った。しかし、
「……」
せっかく兄弟愛を取り戻したのだから、それを一瞬でぶち壊すようなことはしたくない。
「だって、それが本当なら……ゲンキは……」
この毒による副作用、それは、細胞の壊死。筋ジストロフィーを抱えているゲンキにとって細胞を再生させるのはなかなか難しい。徐々に体は蝕まれ、最後には心臓を支える筋肉さえ……、
「――なんとか出来ないのか?」
「無理だ」
俺は、キッパリと断言する。
「――まず、たぶんゲンキはこの副作用について知らない。それに、解毒出来るかもしれない差出人について全く書かれていない」
状況は絶望的、自力で解毒しようとしても、そこらの薬局で売っている薬ではまず解毒できない。救急車で病院に運ぼうにも……
「ここらへんには大きな病院がない……」
そこそこ都会な町並みにも関わらず、ここらにあるのは、小さな診療所のみ。救急車を待っている暇はない。
「――やっぱり、カノンさんに伝えるべきだ……」
無理だと思って、変な期待不安を抱かないように伝えなかった。しかし、
「ああ」
よくよく考えれば、たとえ水を差す形になっても、何も知らずに逝かれるよりは良いかもしれない。
俺は、携帯を取り出し、カノンに電話を掛ける。
「……」
「――どうしたのミツキ?」
カノンは直ぐに電話に出た、そして俺は、
「実は……」
恐る恐るカノンに事情を説明する。
「え……?」
その声とともに、携帯を床に落とす。そして、そのまま電話は切れた。
◇
「――嘘でしょ」
ミツキは言った、ゲンキの体の細胞はもうじき壊死すると。
嘘だと信じたい、けどアイツが嘘をつくはずが、理由がない。
「ゲンキ……!!」
私は思わずゲンキに抱きついた。
「どうした、姉ちゃん?」
すごい形相で抱きついてきた私に驚く、
「体、痛い所無い?」
「あぁ、もう大丈夫だって、体はもとに戻っちゃったみたいだけど、前と変わらないし、それに別に痛くなったりしてな……」
――言葉の途中、ゲンキは吐血した。コップ一杯に相当する量を一度に……、ゲンキは車椅子から崩れ落ち、
「――ん、んがぁあぁぁ!!」
あまりの苦しさに自分の首を強く握る。
「ゲンキ落ち着いて……!!」
私は、ゲンキの手を首から離し、呼吸しやすい姿勢にする。
「あぁぁぁぁ……!!!」
じっとしているのが辛いのか私が押さえつけようとすると、必死に抵抗した。
「っkldぁkぁ;l」
ゲンキは文字にならない様な奇声を上げ、更に暴れる。
「――さっきから何なの? カノン、お風呂沸かしたから入っちゃなさ……」
お風呂を沸かし、リビングに来たお母さんは思わず、持っていた洗濯物を落とす。
「――お母さん、お風呂のお湯を汲んできて……!!」
暴れるゲンキを押さえながらお母さんにそう指示する。
「……わ、わかったわ……」
顔を真っ青にし、一瞬思考が停止するも、お母さんは、浴室に走る。
「――汲んできたわ……」
桶いっぱいに入った水、それをさっきお母さんが落とした洗濯物に掛ける。
毒は、体温を高くしていれば回りを遅く出来ると聞いたことがある。
ゲンキの服を強引に破り、各関節にお湯で温まった洗濯物を挟む。
「これからどうすれば……」
応急処置をしたところで、解決はしない。
「――アイツらは……?」
というか、アイツらは何故知っていたのだろうか? 知っていたのに何で早く伝えてくれなかったのだろうか?
まさか、可愛そうだからとか……? そんな理由でゲンキが助かるかもしれなかった時間を無駄にした?
「……ふざけないでよ……!!」
五分も経ったのにも関わらずこない。
「がlkjfj:あ」あ:」
――そうこうしている内にも、毒はどんどん体を巡る。
「――薬持ってきたぞ……!!」
――その時、体中ボロボロになったハルヒとミツキが現れた。
「――薬?」
「ああ、病院でもらってきた……!!」
見るとミツキは手に薬箱を持っていた。
「説明してる暇はない、カノンこれを飲ませろ……!!」
ミツキは薬箱の中から粒状の薬を取り出し、私に投げた。
「――飲んでくれない……」
口に入れようとしても暴れてしまう。やっとのことで口に入れても、飲み込めず吐き出してしまう。
「ん、ぅぅん……」
私は、薬を自分の口の中で噛み砕いて細かくし、直接口移しする。
「――イタっ……」
奥の方へ舌をを入れると、苦しいのか噛んできた。私は、それを耐えながら、更に奥へと舌を入れる。
「はぁ……」
なんとか飲ませることは出来た。後はこの薬が効くかどうか……。
「この薬は、あの総理大臣お墨付きだ。絶対大丈夫……」
「あぁ……!! これでもう大丈夫だ……!!」
ミツキとハルヒは自慢げに胸を張る。
総理大臣? 何でそんな名前がここに……?
――瞬間、ゲンキは大人しくなった。
「――死んでないわよね……!?」
さっきと比較出来ないほどの大人しさに私は思わず疑いの目を向ける。
「――ぐー、ぐー……」
「え?」
私はゲンキの胸に耳を当てると、ちゃんと心臓が脈打っていた。それに、今の音はいびきだ。
「よ、かった……」
急に肩の力が抜け、その場に崩れ落ちる。
「いやー、悪かったな、見つけてすぐ伝えなくて……」
「本当よ……」
「まぁ、一件落着ってことで良いじゃないか……!!」
すぐに教えてくれなかったミツキを睨んでいると、ハルヒがパンと手を叩きまとめた。
「そういえば、本当に疑問なんだけど、総理大臣って……?」
総理大臣といえば、女の身にも関わらず、屈強な軍人も容易く葬ってしまうと言われる。レベルは当然ランキング一位。
「さっきそこで会ったんだ……」
◇
「あぁ……!! どうすれば……!!!」
分からない。どうすれば、どうやったら助けられるんだ?
「――そんなの決まっている。『願うこと』だ……!!」
後ろから突然刺す声。
「――あなたは?」
黒髪に整った顔立ち、高身で筋肉質な体、その人は、一滴の曇りの無いその目で俺を見つめる。
「私はこの国の総理大臣だ」
「ミツキ、これは本物だぞ……!!」
ハルヒは目を輝かせる。
「まじかよ……」
この人の国民支持率は常に八十パーセントを超える。そんなすごい人が何故ここへ?
「何でここに……?」
「あぁ、日課の日本一周ランニングの途中でな……」
「日本一周!?」
「ああ」
スーツで? と思ったが、この総理大臣ならやりかねない。
やることが規格外だ……
「して、困っていたようだが……?」
まるで何かを見透かしているかのように手を顎に当て俺に問う。
「実は……」
初対面で言うのはなかなか気がひけるものだが、この人は違った。居るだけで絶対の安心を相手に施す程のオーラ、俺は、一部始終を話した。
「なるほど。恐らく奴らの仕業だな……」
「奴ら?」
「まぁ、それはおいおい話すとして、三十秒待て……」
――瞬間、総理大臣の姿が消えた。
「ミツキ、あの人は本当にすごい人だな……!!」
またもやハルヒは目を輝かせる。
「確かにあの人は凄かった」
神聖さすら感じる……。
「――で、三十秒待てって言ってたけど……」
――三十秒経った瞬間、総理大臣は俺の目の前に立っていた。
「ほら、これを受け取れ……」
渡されたのは、小さな薬箱。
「この中の薬をその少年に飲ませろ。そうすれば治る」
真摯な目で俺を見つめ、熱のこもった声で、優しく言う。
「じゃあ、また」
そう言うと、どこかへ消えてしまった。
◇
「――と、言うことだ……」
俺は総理大臣との事をカノンに説明した。
「にわかには信じがたいけど……」
少し引きつったような顔をし、苦笑いをする。
「――おーい!! 目覚めたぞー!!」
ゲンキを見ていたハルヒが手をこちらに大きく振ってそう叫ぶ。
「――姉ちゃん?」
ハルヒに支えられてゆっくりと起き上がったゲンキは目覚めるやいなや、姉を呼ぶ。
「良かった……!!」
カノンは、ゲンキの元気な姿を見て、安堵し、抱きつこうとする。
「――姉ちゃん、俺にキスしたでしょう……?」
その言葉に抱きつこうと歩いていたカノンの足が止まる。
「え? いや、その……」
言い訳しようにも出来ず、慌てふためく。
「あぁ。お姉ちゃんはゲンキに結構レベルの高いキスをしていたぞ」
俺はカノンをからかう様に告げる。
「――ぐぁ……」
からかわれ顔が真っ赤になったカノンは俺に蹴りをお見舞いした。
「ミツキ、やるな……」
何に感心したのか、ハルヒは俺を称賛する。
「ゲンキ、あれはね……」
カノンはゲンキに目線に合わせ、真摯に弁明しようとする。
「――分かってる。俺を助けるためだろ?」
「ええ」
「『ありがとう』」
ゲンキは精一杯の笑顔で、カノンにそう言った。
「――ゲンキ、そろそろ良いか?」
俺はカノンに蹴られた頬を押さえながら、ゲンキに近づく。
「――はい分かっています」
聞かなくてはいけない。あんな事になったのかを……
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~
夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。
全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった!
ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。
一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。
落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる