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第一章:幸せな世界
第十四話:無双……
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――学校にいた生徒先生を糸に閉じ込めた男。男の攻撃は次第に勢いを増し、
「ほらほら、どうしたぁ!?」
狂ったような笑みを浮かべながら俺達に歩み寄る男。もはやこの食堂に糸のない足場はほとんどない。
食堂の扉に飛び、人がいなそうな道を使って、逃げる。
「……体育館か」
行き着いたのは校舎外れにある体育館。
「どうする? あいつにボールでも投げつけるか?」
体育館の中央で男と対峙している最中、ハルヒがおかしなことを言った。
「ふざけている場合じゃないだろ」
そんなハルヒを俺に俺は突っ込む。
「待って!!」
瞬間、カノンが何か閃いたのか大声を上げる。
「カッコの良い作戦ではないんだけどね……」
カノンは自分の口元に耳を近づけるように手招きし、俺とハルヒが耳を近づけると、自分の考えた作戦を俺達にひそひそと説明した。
「……なかなかややこしいな……」
ハルヒはカノンの言ったことが難しかったのか、首をかしげる。
「うーんとね、ハルヒはミツキとただボールで遊んでれば良いの」
「扱い雑だな……」
「わかったぜ……!!」
「わかるのかよ……!!」
「善は急げだ、早速準備するぞ……!!」
そう言うとハルヒは目の前で今にも攻撃を仕掛けてきそうな男の存在を忘れているのかと言わんばかりの軽快なステップで、倉庫にボールを取りに行った。
「うまくいくか?」
「絶対……」
不安な俺はカノンにそう尋ねた。しかし、カノンの顔は自身に満ち溢れていて、気持ち赤くなっていた。
「――取ってきたぞ……!!」
大量のかごを持って、ハルヒが走ってくる。
「じゃあ、配置について……」
カノンのその言葉と同時に、俺は男の背後に移動した。
「――中当て開始……!!」
今回、カノンが考えた作戦を説明すると、まず俺とハルヒで男を逃げる役とした中当てをする。中当てとは、決められた範囲の中で外からの攻撃をひたすら避けるという遊び。俺達の投げる豪速球を防ぐために男は必ず自分の周りに糸を展開する。そして気を取られているうちに、カノンが糸に着火する。男は糸がタンパク質からできていると言った。カノン曰くタンパク質に火をくべると固まるらしい。
「ようやく、準備が整ったか……待ちくたびれたぞ……」
律儀に待ってくれた男は、屈伸やら蹴伸びやらをすると、俺に急接近してきた。
「いくぞ……」
初手から全開で投げる。
「うぉ、お!!」
前のめりに迫ってきた男は急に迫ってきた豪速球を反射的に糸を出して防ぐ。
「――今度はこっちか……!!」
ハルヒは糸に当たり跳ね返ったボールを空中で即座にキャッチし、男に再び投げつける。
「くそ、ただでさえここは風通しがよくて糸を出しにくのに……姑息な真似を……」
「ミツキ!! 二個に増やすぞ……!!」
ボール籠からもう一つ取り出し、大声で叫ぶ。
「――ちょ、おまっ……」
ボールが二つに増えたことで、同時に二つのボールを防がなくてはならなくなった。
「――ハルヒ……!! まだまだ増やそうぜ……!!」
「じゃあ、十個で……!!」
手いっぱいにボールを持ち、それらを順番に投げつける。
「待ってくれぇぇぇ……!!」
四方八方から絶える暇もなく襲ってくるボール全てに反応するのは不可能。男は最高純度の糸で体を覆い、迫りくるボールの猛攻を防ぐ。
「――掛かった……」
――瞬間、火を手に持ったカノンが飛び出してきて、男を覆う糸に着火した。
炎は糸の上を物凄いスピードで駆け巡り、ピキピキという音とともにすぐに固まってしまった。
「出せぇ……!!」
男を守る最高純度の糸は、男を生き埋めにする最高純度の牢獄に変化してしまった。
必死に抵抗し、なんとか糸を破壊しようと試みるが、糸はびくともしない。
「熱いぃ……!!」
炎自体はすでに消えたものの、残った熱で男は蒸し焼き状態になっていた。
「お疲れ……」
隣を見ると、なぜか下着姿のカノンがいた。
「あ、あぁぁ……お疲れ」
手を掲げハイタッチをしようとしてくるが、思わず別のところに意識が行ってしまった。
「――お疲れぇ……!!」
手を伸ばしハイタッチをしようとすると、突然、ハルヒが後ろから突っかかってきた。
その弾みで、俺の手はカノンの手でなく別のところにハイタッチしてしまった。
「あ、すみません……」
「消え失せろぉぉ……!!」
顔を真っ赤に染めたカノンはその勢いで俺に強烈なアッパーを喰らわせた。
(けっこう大きかったです……)
俺は床に顔面から落ち、痛みに悶絶し転がりまわる。
「なあ、なんでカノンは下着なんだ?」
「あぁ、それはね、着火のためにブラウスを使っちゃったのよ……ブラウスに多く含まれるポリエステルはよく燃えるから……」
「なるほどな……!!」
手をポンと叩いて納得したような素振りを見せる。
「…………」
「ねえ、あんたは気にならないの?」
「何が?」
「いや、その、私、同級生の女で下着だから……」
「それが? 女の下着なら姉ちゃんの見てたからな」
「そ、そう……」
どう見ても本心から言っているハルヒを見て、カノンは自分だけ盛り上がっていたのかと恥ずかしい気持ちになる。
(ラブコメ主人公ですか……?)
「どこかの誰かさんもハルヒぐらい良い子だったら良かったのに……」
「それって……もしかして……」
「もしかしなくてもあんたよ」
「すみません……」
顎を押さえなんとか立ち上がっていたが、その言葉を受けて再び床に崩れ落ちる。
「――おーい、俺を忘れるな……!!」
「あ、完全に忘れていた」
摂氏千度を超える灼熱の中で蒸し焼き状態になっている男は、完全に忘れられていることに気づいて叫んだ。
「じゃあ、肩まで浸かって百秒までは頑張ってください……」
「ふざけるなぁ……!!」
確かに早く倒さないとクラスメイトは助けられない。しかし、元気な状態で出てこられると逃げられたり体制を取り戻されたりと色々困ってしまう。だから合理的に考えて、弱ってから出したほうが時間がかからない。
「あああああああああああああああ」
男は言葉にならない声を次々と上げる。
「ねえ、ミツキ、なんか可愛そうになってきたんだけど……」
「確かに」
「ほらほら、どうしたぁ!?」
狂ったような笑みを浮かべながら俺達に歩み寄る男。もはやこの食堂に糸のない足場はほとんどない。
食堂の扉に飛び、人がいなそうな道を使って、逃げる。
「……体育館か」
行き着いたのは校舎外れにある体育館。
「どうする? あいつにボールでも投げつけるか?」
体育館の中央で男と対峙している最中、ハルヒがおかしなことを言った。
「ふざけている場合じゃないだろ」
そんなハルヒを俺に俺は突っ込む。
「待って!!」
瞬間、カノンが何か閃いたのか大声を上げる。
「カッコの良い作戦ではないんだけどね……」
カノンは自分の口元に耳を近づけるように手招きし、俺とハルヒが耳を近づけると、自分の考えた作戦を俺達にひそひそと説明した。
「……なかなかややこしいな……」
ハルヒはカノンの言ったことが難しかったのか、首をかしげる。
「うーんとね、ハルヒはミツキとただボールで遊んでれば良いの」
「扱い雑だな……」
「わかったぜ……!!」
「わかるのかよ……!!」
「善は急げだ、早速準備するぞ……!!」
そう言うとハルヒは目の前で今にも攻撃を仕掛けてきそうな男の存在を忘れているのかと言わんばかりの軽快なステップで、倉庫にボールを取りに行った。
「うまくいくか?」
「絶対……」
不安な俺はカノンにそう尋ねた。しかし、カノンの顔は自身に満ち溢れていて、気持ち赤くなっていた。
「――取ってきたぞ……!!」
大量のかごを持って、ハルヒが走ってくる。
「じゃあ、配置について……」
カノンのその言葉と同時に、俺は男の背後に移動した。
「――中当て開始……!!」
今回、カノンが考えた作戦を説明すると、まず俺とハルヒで男を逃げる役とした中当てをする。中当てとは、決められた範囲の中で外からの攻撃をひたすら避けるという遊び。俺達の投げる豪速球を防ぐために男は必ず自分の周りに糸を展開する。そして気を取られているうちに、カノンが糸に着火する。男は糸がタンパク質からできていると言った。カノン曰くタンパク質に火をくべると固まるらしい。
「ようやく、準備が整ったか……待ちくたびれたぞ……」
律儀に待ってくれた男は、屈伸やら蹴伸びやらをすると、俺に急接近してきた。
「いくぞ……」
初手から全開で投げる。
「うぉ、お!!」
前のめりに迫ってきた男は急に迫ってきた豪速球を反射的に糸を出して防ぐ。
「――今度はこっちか……!!」
ハルヒは糸に当たり跳ね返ったボールを空中で即座にキャッチし、男に再び投げつける。
「くそ、ただでさえここは風通しがよくて糸を出しにくのに……姑息な真似を……」
「ミツキ!! 二個に増やすぞ……!!」
ボール籠からもう一つ取り出し、大声で叫ぶ。
「――ちょ、おまっ……」
ボールが二つに増えたことで、同時に二つのボールを防がなくてはならなくなった。
「――ハルヒ……!! まだまだ増やそうぜ……!!」
「じゃあ、十個で……!!」
手いっぱいにボールを持ち、それらを順番に投げつける。
「待ってくれぇぇぇ……!!」
四方八方から絶える暇もなく襲ってくるボール全てに反応するのは不可能。男は最高純度の糸で体を覆い、迫りくるボールの猛攻を防ぐ。
「――掛かった……」
――瞬間、火を手に持ったカノンが飛び出してきて、男を覆う糸に着火した。
炎は糸の上を物凄いスピードで駆け巡り、ピキピキという音とともにすぐに固まってしまった。
「出せぇ……!!」
男を守る最高純度の糸は、男を生き埋めにする最高純度の牢獄に変化してしまった。
必死に抵抗し、なんとか糸を破壊しようと試みるが、糸はびくともしない。
「熱いぃ……!!」
炎自体はすでに消えたものの、残った熱で男は蒸し焼き状態になっていた。
「お疲れ……」
隣を見ると、なぜか下着姿のカノンがいた。
「あ、あぁぁ……お疲れ」
手を掲げハイタッチをしようとしてくるが、思わず別のところに意識が行ってしまった。
「――お疲れぇ……!!」
手を伸ばしハイタッチをしようとすると、突然、ハルヒが後ろから突っかかってきた。
その弾みで、俺の手はカノンの手でなく別のところにハイタッチしてしまった。
「あ、すみません……」
「消え失せろぉぉ……!!」
顔を真っ赤に染めたカノンはその勢いで俺に強烈なアッパーを喰らわせた。
(けっこう大きかったです……)
俺は床に顔面から落ち、痛みに悶絶し転がりまわる。
「なあ、なんでカノンは下着なんだ?」
「あぁ、それはね、着火のためにブラウスを使っちゃったのよ……ブラウスに多く含まれるポリエステルはよく燃えるから……」
「なるほどな……!!」
手をポンと叩いて納得したような素振りを見せる。
「…………」
「ねえ、あんたは気にならないの?」
「何が?」
「いや、その、私、同級生の女で下着だから……」
「それが? 女の下着なら姉ちゃんの見てたからな」
「そ、そう……」
どう見ても本心から言っているハルヒを見て、カノンは自分だけ盛り上がっていたのかと恥ずかしい気持ちになる。
(ラブコメ主人公ですか……?)
「どこかの誰かさんもハルヒぐらい良い子だったら良かったのに……」
「それって……もしかして……」
「もしかしなくてもあんたよ」
「すみません……」
顎を押さえなんとか立ち上がっていたが、その言葉を受けて再び床に崩れ落ちる。
「――おーい、俺を忘れるな……!!」
「あ、完全に忘れていた」
摂氏千度を超える灼熱の中で蒸し焼き状態になっている男は、完全に忘れられていることに気づいて叫んだ。
「じゃあ、肩まで浸かって百秒までは頑張ってください……」
「ふざけるなぁ……!!」
確かに早く倒さないとクラスメイトは助けられない。しかし、元気な状態で出てこられると逃げられたり体制を取り戻されたりと色々困ってしまう。だから合理的に考えて、弱ってから出したほうが時間がかからない。
「あああああああああああああああ」
男は言葉にならない声を次々と上げる。
「ねえ、ミツキ、なんか可愛そうになってきたんだけど……」
「確かに」
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