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第一章:幸せな世界
第十三話:復讐
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――あの男を倒した翌日、俺は学校へ行くため、駅前にハルヒとカノンと待ち合わせをしていた。
「――ごめーん」
始業五分前というギリギリな時間でやって来たカノン。走って出た汗のせいでブラウスが濡れている。
「遅いぞ……」
ハルヒは腰に手を当て、高笑いしながらカノンに言うと、あっ、と言わんばかりに顔が急に青くなり、
「――なぁ、今日って、一組のあいさつ当番の日じゃね?」
あの学校では、あいさつを通して礼節を学ぶだか何とかで毎日クラスごとに交代で校門に立ち、登校してくる人達を時間まで永遠と迎えると言う行事がある。そして今日は一組の番。当番のクラスはいつもより早く来て他の生徒の投稿を見届ける必要がある。
「―――」
俺だけで無くカノンも忘れていたようで、一緒に顔を青ざめる。
「い、いくぞ……!!」
◇
――校門前。
「――着いた……!!」
どの道当番の遅刻は免れない、しかし急いで来て、校門に経っているはずの先生に頭を下げようとすると、
「ごめんな……さい……?」
俺達の投稿時間が遅すぎたのか、校門に同じクラスの奴らの姿が無かった。
「ラッキ……!! 最悪の事態は……」
ほぅ、と甲高い声を上げ胸を撫で下ろすハルヒ。確かに、大勢に囲まれる中、外にいる怖い生徒指導の先生から説教を受ける必要はなくなったのかもしれない。どのみち担任に怒られるだろうけど……
――そうこうしている内に始業のチャイムが鳴った。
急いで階段を登り、教室のドアをばんっ、と勢いよく開ける。
「遅くなりました……」
全力疾走の疲れからか、気まずい緊張感からか、自然と手を膝に置き肩を震わせ、恐る恐る教壇に立っている先生の顔を見る。
「嘘?」
そう声を上げたのはカノン。見ると、教室全体が蜘蛛の糸のようなもので覆われていて、生徒含め先生もその糸の中に閉じ込められていた。
「ミツキ、こっちもだ……」
同じように二組と三組も、蜘蛛の糸のようなもので教室全体が覆われていた。
「一体何が……?」
かなり強く殴ってもびくともしない糸。中に声を掛けてみるが返答はない。そのことから氷の同様に外面だけを覆っているのではなく、中まで覆われているのかもしれない。
「うぁ、こっちはネバネバしてる……」
テカテカした真新しい糸を触ったカノンがそう零す。指をくっつけたり、離したりすると伸びてまとわりついてくる。
「何か、不思議な匂い……」
カノンは指についた糸もとい、粘液を顔に近づけ匂いを嗅ぐと、顔をしかめ思わずそう零す。
「まだ固まっていない所もあるってことはこれをやった元凶はこの近くにいるのかもしれない……」
廊下には糸が無かったことと、大規模すぎる量の糸から、自然の大蜘蛛がやったとは到底考えられない。
"人為的に作られた謎兵器"と考えるのがしっくり来る。
「手分けして探しましょう……!!」
◇
上級生の教室や、職員室、部活動の部室に至るまで隅々探したがそれらしき人物がいなかった。
「いねぇ……な」
心当たりは全て探し尽くしたはずだ。なのにそれらしき痕跡はない。分かったのは、蜘蛛の糸があるのは人がいたところだけ。音楽室や美術室には糸が一片も無かった。
「――電話だ……」
携帯を見ると、差出人の欄にハルヒと書かれていた。
「見つけたか……!?」
「あぁ、もちろん」
この流れを何回やったか、捜し物をする時はいつもこのパターンだ。俺とカノンが意気込んで探して、ハルヒから電話が掛かってきて見つかる。
「場所は?」
「――食堂」
「わかった……今行く!! って……大丈夫か?」
電話の先からは交戦しているのか、物が破壊される音が響く。
「ああ……大丈夫だ!!」
俺は、カノンに『見つけた。場所は食堂』とメールを送り、食堂へ向かって走り出す。
◇
――食堂の大きな扉を蹴破り、中を見渡す。すると、ハルヒが対峙していた男に向かって蹴りを放っていた。
「その程度か?」
男はハルヒの蹴りが当たる直前、体から糸のようなものを出した。そしてその糸は男を守るように配置された。
「うぁっ―――」
見ると、ハルヒの足に大量の糸が纏わりついて身動きが取れなくなっていた。
「――終わりだ……」
男はそう言うと、体から再び糸を出して剣を作ると、ハルヒに近づき糸が纏わりついていて不自由なハルヒの足をその剣で切り落とそうとした。
「――ハルヒ……!!『風斬』……!!」
「――っち」
切り落とす直前俺が放った『風斬』によって男は後方へ飛び退る。
俺は急いでハルヒのもとに走り、ハルヒを取り巻いていた糸を手刀で断ち切る。
「――どうやら、俺の餌が増えたみたいだな……」
黒髪黒衣から見える筋肉質な体、身長はさほど高くなく、平均的だ。しかし何よりも目にとまるは男の右手だった。たとえどんな障害や怪我を患っていたと説明されても納得できないような異形の手。血管が浮き出て、覆う皮膚が剥けて丸出しになっている。
「すぐに食ってやる……」
男はそう低く呟くと、右手を掲げ、糸を出してきた。
「教えてやろう。この糸は俺の体のタンパク質から出来ている。故に時間が経てば、固まる。お前らのクラスメイトさん方もな……」
不敵な笑みを浮かべ糸を俺たちの上空に展開する。そして、魚を捕まえるネットのように、
「『風斬』」
糸を切って、男から距離を取る。次々と伸びてくる白い手。男は自分の体のタンパク質から糸が出来ていると言ったが、目の前の糸は人一人のタンパク質ではどう考えてもまかなえない。たとえ高レベル者でも細胞の絶対数はさほど変わらない。
「ミツキきりないぞ……」
切っても切っても、無尽蔵に伸びてくる。
「ほらほら、どうした……!!!」
そう言うとより一層攻撃の手を強め、雨のような量の糸を放ってきた。
「大丈夫?」
と、その時カノンが来た。
「ああ、ナイスタイミング……」
――三人で、密集し、連携して『防核』を展開して何とか防ぐ。
「ねぇ、ミツキ……」
「な、なんだ……手短に頼む……」
腕に力を込め必死に攻撃を防いでいると、カノンが不意に尋ねてきた。
「さっき、何故か教室の皆を覆っている糸が紫色に光っていたの……」
「それが?」
「それが、何かを吸収するように、糸から光の粒が出てきて、あの男に元に行っているみたいで……」
「――なるほど……!!」
やっと合点がいった。あの男があんな大量な糸を展開できた理由。それは、この学校の生徒や先生から吸収していたから。
「待てよ、それって早く倒さないとまずくね……?」
何故こんな事をしたのかと理由を聞きたい。しかし、流暢にしていれば、俺らがアイツに捕食されるか、戦いが長引いて相手の燃料切れで勝っても、この学校の全ての先生生徒が干からびて死ぬことになる。
「……というわけだから、ずっとこのままではいられない」
カノンとハルヒに俺の推測を話すとすぐに信じてくれた。
「行くぞ……!!」
『防核』を解除し、バラバラに部屋の隅に飛ぶ。
「ほう、気づいたか……」
俺たちの行動を見て思わず感嘆の声を零す。
「なら、もっとやらねえとな……!!」
「――ごめーん」
始業五分前というギリギリな時間でやって来たカノン。走って出た汗のせいでブラウスが濡れている。
「遅いぞ……」
ハルヒは腰に手を当て、高笑いしながらカノンに言うと、あっ、と言わんばかりに顔が急に青くなり、
「――なぁ、今日って、一組のあいさつ当番の日じゃね?」
あの学校では、あいさつを通して礼節を学ぶだか何とかで毎日クラスごとに交代で校門に立ち、登校してくる人達を時間まで永遠と迎えると言う行事がある。そして今日は一組の番。当番のクラスはいつもより早く来て他の生徒の投稿を見届ける必要がある。
「―――」
俺だけで無くカノンも忘れていたようで、一緒に顔を青ざめる。
「い、いくぞ……!!」
◇
――校門前。
「――着いた……!!」
どの道当番の遅刻は免れない、しかし急いで来て、校門に経っているはずの先生に頭を下げようとすると、
「ごめんな……さい……?」
俺達の投稿時間が遅すぎたのか、校門に同じクラスの奴らの姿が無かった。
「ラッキ……!! 最悪の事態は……」
ほぅ、と甲高い声を上げ胸を撫で下ろすハルヒ。確かに、大勢に囲まれる中、外にいる怖い生徒指導の先生から説教を受ける必要はなくなったのかもしれない。どのみち担任に怒られるだろうけど……
――そうこうしている内に始業のチャイムが鳴った。
急いで階段を登り、教室のドアをばんっ、と勢いよく開ける。
「遅くなりました……」
全力疾走の疲れからか、気まずい緊張感からか、自然と手を膝に置き肩を震わせ、恐る恐る教壇に立っている先生の顔を見る。
「嘘?」
そう声を上げたのはカノン。見ると、教室全体が蜘蛛の糸のようなもので覆われていて、生徒含め先生もその糸の中に閉じ込められていた。
「ミツキ、こっちもだ……」
同じように二組と三組も、蜘蛛の糸のようなもので教室全体が覆われていた。
「一体何が……?」
かなり強く殴ってもびくともしない糸。中に声を掛けてみるが返答はない。そのことから氷の同様に外面だけを覆っているのではなく、中まで覆われているのかもしれない。
「うぁ、こっちはネバネバしてる……」
テカテカした真新しい糸を触ったカノンがそう零す。指をくっつけたり、離したりすると伸びてまとわりついてくる。
「何か、不思議な匂い……」
カノンは指についた糸もとい、粘液を顔に近づけ匂いを嗅ぐと、顔をしかめ思わずそう零す。
「まだ固まっていない所もあるってことはこれをやった元凶はこの近くにいるのかもしれない……」
廊下には糸が無かったことと、大規模すぎる量の糸から、自然の大蜘蛛がやったとは到底考えられない。
"人為的に作られた謎兵器"と考えるのがしっくり来る。
「手分けして探しましょう……!!」
◇
上級生の教室や、職員室、部活動の部室に至るまで隅々探したがそれらしき人物がいなかった。
「いねぇ……な」
心当たりは全て探し尽くしたはずだ。なのにそれらしき痕跡はない。分かったのは、蜘蛛の糸があるのは人がいたところだけ。音楽室や美術室には糸が一片も無かった。
「――電話だ……」
携帯を見ると、差出人の欄にハルヒと書かれていた。
「見つけたか……!?」
「あぁ、もちろん」
この流れを何回やったか、捜し物をする時はいつもこのパターンだ。俺とカノンが意気込んで探して、ハルヒから電話が掛かってきて見つかる。
「場所は?」
「――食堂」
「わかった……今行く!! って……大丈夫か?」
電話の先からは交戦しているのか、物が破壊される音が響く。
「ああ……大丈夫だ!!」
俺は、カノンに『見つけた。場所は食堂』とメールを送り、食堂へ向かって走り出す。
◇
――食堂の大きな扉を蹴破り、中を見渡す。すると、ハルヒが対峙していた男に向かって蹴りを放っていた。
「その程度か?」
男はハルヒの蹴りが当たる直前、体から糸のようなものを出した。そしてその糸は男を守るように配置された。
「うぁっ―――」
見ると、ハルヒの足に大量の糸が纏わりついて身動きが取れなくなっていた。
「――終わりだ……」
男はそう言うと、体から再び糸を出して剣を作ると、ハルヒに近づき糸が纏わりついていて不自由なハルヒの足をその剣で切り落とそうとした。
「――ハルヒ……!!『風斬』……!!」
「――っち」
切り落とす直前俺が放った『風斬』によって男は後方へ飛び退る。
俺は急いでハルヒのもとに走り、ハルヒを取り巻いていた糸を手刀で断ち切る。
「――どうやら、俺の餌が増えたみたいだな……」
黒髪黒衣から見える筋肉質な体、身長はさほど高くなく、平均的だ。しかし何よりも目にとまるは男の右手だった。たとえどんな障害や怪我を患っていたと説明されても納得できないような異形の手。血管が浮き出て、覆う皮膚が剥けて丸出しになっている。
「すぐに食ってやる……」
男はそう低く呟くと、右手を掲げ、糸を出してきた。
「教えてやろう。この糸は俺の体のタンパク質から出来ている。故に時間が経てば、固まる。お前らのクラスメイトさん方もな……」
不敵な笑みを浮かべ糸を俺たちの上空に展開する。そして、魚を捕まえるネットのように、
「『風斬』」
糸を切って、男から距離を取る。次々と伸びてくる白い手。男は自分の体のタンパク質から糸が出来ていると言ったが、目の前の糸は人一人のタンパク質ではどう考えてもまかなえない。たとえ高レベル者でも細胞の絶対数はさほど変わらない。
「ミツキきりないぞ……」
切っても切っても、無尽蔵に伸びてくる。
「ほらほら、どうした……!!!」
そう言うとより一層攻撃の手を強め、雨のような量の糸を放ってきた。
「大丈夫?」
と、その時カノンが来た。
「ああ、ナイスタイミング……」
――三人で、密集し、連携して『防核』を展開して何とか防ぐ。
「ねぇ、ミツキ……」
「な、なんだ……手短に頼む……」
腕に力を込め必死に攻撃を防いでいると、カノンが不意に尋ねてきた。
「さっき、何故か教室の皆を覆っている糸が紫色に光っていたの……」
「それが?」
「それが、何かを吸収するように、糸から光の粒が出てきて、あの男に元に行っているみたいで……」
「――なるほど……!!」
やっと合点がいった。あの男があんな大量な糸を展開できた理由。それは、この学校の生徒や先生から吸収していたから。
「待てよ、それって早く倒さないとまずくね……?」
何故こんな事をしたのかと理由を聞きたい。しかし、流暢にしていれば、俺らがアイツに捕食されるか、戦いが長引いて相手の燃料切れで勝っても、この学校の全ての先生生徒が干からびて死ぬことになる。
「……というわけだから、ずっとこのままではいられない」
カノンとハルヒに俺の推測を話すとすぐに信じてくれた。
「行くぞ……!!」
『防核』を解除し、バラバラに部屋の隅に飛ぶ。
「ほう、気づいたか……」
俺たちの行動を見て思わず感嘆の声を零す。
「なら、もっとやらねえとな……!!」
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