皆平等に努力が報われる幸せな世界。

名前

文字の大きさ
12 / 21
第一章:幸せな世界

第十二話:あの方……

しおりを挟む
――転校初日、俺達は食堂で飯を食っていた。すると、鉄バットなど、凶器を持った集団が突然やって来て俺達に喧嘩を売った。

「――落ち着け……」

 カノンは自分の大切な友達がボスらしき男によって苦しめられたことに激怒し、この、ナイフより鋭利な手刀で首を打とうとした。当たれば完全に首が飛び、この男は死ぬ。そうすればカノンは殺人犯としてこの学校にいられないかもしれない。が、当たる直前、それを感知したハルヒがカノンの手を掴んで止めた。

「ご、ごめん……」

 正気に戻ったのか手の力を抜き、はぁとため息をつく。

「まぁ、そういう時も、あるさ……!! 俺だって同じ立場だったら同じこと絶対にしてた……」

 ハルヒはカノンの肩に手をポンと置き、ガハハと高らかに笑う。


「――さて……」

 俺の目の前でみっともなく涙を流し、許してもらえるように懇願するあの男。さっきの高圧的なカリスマ感とは打って変わっている。

「やめてくれぇ……!!」

 俺が歩み寄ると、手足をバタつかせて後方へ後ずさっていく。

「やめない」

 俺は男の胸ぐらを掴み、顔を近づけそう囁く。

「くそぉ!!」

 男はまだ抵抗するのか、俺の顔を爪で引っ掻いてきた。俺はそれを悠々と避け、男を見下ろすと……

「俺らを襲った理由を話せ……」

「……断る」

 胸ぐらを掴み、空中に吊るし上げる。

「話せ」

 理由を聞かなくては話が始まらない。

「分かった、だから離してくれ……」

 結構な力で胸部を締めたため男は口からはよだれが出ていた。

「きったねぇ……」

 手によだれがつくのが嫌な俺は、男を乱暴に地面に叩きつけると、

「俺達がお前らを襲った理由……それは、あの席に座ったからだ……」

 この広い講堂の中で唯一ある石のテーブル。男が言うには俺とハルヒがあそこに座ったのが悪かったらしい。

「あそこは、俺達の縄張り……あんな目立つ席に座ってくるやつは只者じゃねぇ……"レベル"も大層高いはずだ……」

 確かにあんな目立つ席に座るのは只者じゃないのかもしれない。今の世界でそんな尖ったことが出来るのはレベルがそれなりにある人か余程のバカだけだろう。

「お前もレベル上げが目的か……?」

 いつも襲ってくるゴロツキもそんな事を言っていた。こういう輩含め、道から外れた奴らはやたらとレベルに執着し、人を襲う。

「ああ」

 男は弱々しく首を縦に振り肯定した。

「俺は、あの方にそう命令されて……」

 ヤケになったのか突然高らかに笑いだした。

「あの方?」

「あぁ、この学校の……」

――瞬間、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

「ミツキ、戻らないとやばいぞ……!!」

 向こうでカノンと話していたハルヒが来た。

「そうだな。話はまた後で聞く……」

「あぁ」

 俺は男にそう言うと、教室へ急いだ。

「次、何だ?」

 ゴロツキの相手をしていて、完全に時間を忘れていた。

「次は体育よ……!!」

「了」

 この学校の体育は男女別に行われる。今日は、男子が外で野球、女子が体育館でバレーだ。

「ありがとうございました……」

 カノンと分かれる直前、カノンにお姫様抱っこされていた友達は微笑みながら俺を見てそう言った。




                         ◇


「まず、ボールの感覚を掴むためにキャッチボールを行う。二人一組のペアを作れ……」

 タンクトップを着た、いかにも強そうな体育教師がそう言うと、皆それぞれペアを作り始めた。


「ミツキやるかー!!」

「おう」

 
 俺はハルヒとキャッチボールをすることになった。距離を取り、まずは俺から軽く投げ始める。

「……」
 
 俺は同時にあの男が言っていた『あの方』の存在について考えていた。
総理大臣が前にポロッと言っていた、『奴ら』と、カノンの弟のゲンキをひどい目に合わせた『謎の男』に関係しているのだろうか? そういう集団や宗教がバックにはあるのかもしれないが、言えるのはせっかく常人には耐え難い努力をして、やっとのことでレベルを上げたのに……なんで、そんな悪い方に使うのだろうか。努力して結果が出たら嬉しい。人を貶めたいという気持ちよりも、人を幸せにしたいという熱い気持ちが湧いてくるはず……なのに……


「おぉ、さすが野球部だな……」
 
 皆の出来具合を確認するため巡回していた先生は、野球部二人のキャッチボールを見て感嘆の声を零す。
何度投げても、ブレないコース。百キロを超える球速。パンパンと次々にグローブを叩いた音がグラウンドに響く。


「な、何ぃ!?」

 他の所を巡回していると、先程の野球部より凄い奴らがいた。

「玉が見えない」

 まるで、某バトル漫画の空中戦闘シーンのようにボールを受け止めた時の音と振動だけが伝わった。

「百五十、百八十、いや、二百はくだらない」

 しかも、片方は下を向いてよそ見をして、投げるフォームも腰の入ってない手投げ。

「ミツキ!! そろそろ上げるぞ……!!」

「了」

 なかなか考えがまとまらず悩んでいた俺は、ひとまず気分転換として野球に集中することにした。

「……」

 先生は目の前の光景に言葉を失っていた。それは、周りの生徒も同じで皆こちらを注目している。

「何だあれぇ……!!」

 俺とハルヒは意図せず空間を切り裂き、『風斬』と同じ様な風の刃を出現させた。
それらはグラウンドを切り裂き、クレーターを作った。

「なかなか楽しいな……!!」

 投げていると、この感覚が癖になる。限界まで、早く、強く投げたい……

「――辞めろぉ…………!!!」

 そして、俺とハルヒのキャッチボールはそんな先生の怒号で終わりを迎えた。

 俺とハルヒのレベルは同率で五十。五十ともなれば結構な高レベルで、筋力なども、常人とは比べ物にならない。
確かに努力すればレベルが上がり結果が出るのだったら、毎日きついトレーニングをしている野球部含め運動部員は結構なレベルに達しているはずだと思う。しかし、それは間違いでレベルというのは一上げるだけでも、死んでしまうと思うぐらいきついことをしなければならない。だから、世の中の大半の人はレベルを一も上げられない。だからいくら、運動部員とは言え例外ではない。











 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...