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第一章:幸せな世界
第十九話:お母様
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――謎施設の頂上に立っていた、ギセラのことを狙う女。激しい攻防の末、決着が着き、女は今ロープで俺に縛られている。
「――は、離せぇ……!!」
必死に抵抗し、縄を破ろうとする女。しかし、俺が縛ったのは日本古来から伝わる『海老責』という縛り方だった。両手を背中に固定し、片足と顔を縛る。生憎女は白衣の下にズボンを履いていたせいで下着は晒さなかった。
「抵抗しないほうが良いぞ……」
『海老責』は拷問に置いて使われ、一時間縛られ続ければ、体内に血が回らなくなり、それ以上になると死の可能性も出る。
「くそ!!」
女は俺に対し唾を吐き、今にも噛みつきそうな顔で俺を睨む。
「この豚野郎!! 鬼畜!! ど淫乱!! 死ねぇ……!!」
次々に浴びせられる罵詈雑言。
「――ッ!!」
そうこうして暴れている内に気持ち悪くなったのか、だるまのように地面に倒れ込んで、胃の中身を吐く。
「おい!! ふざけんぁ!! ”ギセラ”をかえへ!!」
「返せ?」
女はギセラを返せと言った。あんな凍えるような施設に、一人で、あんなふうに縛っていたのに……。
俺はそんなふざけたことを言う女に憤り、拳を握る。そして一発殴ってやろうと踏み出すと、
「――ミツキ?」
森の中逃げていたはずのギセラが木の陰から顔を出し、俺に声をかけた。
「ギセラ? 逃げてろって言っただろ!」
「ご、ごめんなさい……」
俺に怒鳴られ、シュンとしてしまったギセラはその木の陰に隠れてしまった。
「さて」
俺が女の方に振り返ると同時、滝のような雨と吹き荒れる暴風がこの森を襲う。
「俺はギセラをあんな目に合わせたお前を許さない。見つけるのが少しでも遅かったら完全に死んでた!! なのに、返せなんて……」
俺は再び拳を握り、大きな雷が空から落ちると同時に女の頬を殴った。
「――うぁ……」
女の体は木々が生い茂る森の中に飛ばされた。だるまのような体をしている女は森の斜面を下り、木々に次々と衝突する。そして、大きな木に思い切りぶつかって止まると、血だらけの女は、反動で緩んだロープを解き、
「――あーあ、良くもやってくれたわね……」
と言って、肩を回しながら立ち上がった。
「やば……」
怒りに身を任せていてそこまで考えが及んでいなかった。
「――形勢逆転ね……」
女が一歩踏み出すと、もう俺の目の前にいた。そして、俺の顔面に一発、足を払い、崩れた姿勢に膝蹴り、そのまま掴んで上空に投げて、空間を歪ませる手刀の斬撃を俺の腹部に喰らわせた。
「――ぐぁ」
腹を引き裂かれ、地面に勢いよく衝突した俺は、こみ上げてくる血を吐き、荒れる呼吸を正そうとする。
「さぁて、どうしようかしら? どう殺してあげようかしら?」
女は血で濡れた顔に手を置き、そのまま舐めると、俺の体をおもきり蹴った。
「―――」
言葉にならない声を上げ、吹き飛ばされる。
「ほら、ほら、泣け!! 喚け!!」
「――ッ!!」
普段味合わ無いような痛みが俺の体を駆け巡る。意識がもうろうとして、気を抜けばいつでも死に……
――その時だった。
「もう、やめて!!」
俺が一方的に殴られている光景を見ていられなくなったギセラが飛び出してきた。
「あぁ? ギセラお前、想像主たるこのDr, クアリ様に口答えするだぁ?」
女はギセラの方を見ると、見下すような顔でそう言い放った。
「創造主?」
珍しく緊張した顔のギセラはそっと首を傾げた。
「はぁ、そうだった。面倒くさいから記憶消してんだっけ……」
女はポケットに入っていたUSB端子を見てニヤついた。
「記憶取り戻されると面倒だから……っと」
そして、ギセラの記憶が入っていたであろう、USB端子を地面に叩きつけ、踵で踏みつけて粉々にした。
「――ぁ?」
意識が朦朧とする中、俺抗おうと、足を掴む。
「――っち!」
その手を思い切り踏みつけられ、手の骨が軋む。
「――あぁぁぁ!!」
そして、ギセラはそんな俺を守ろうと走り、一ミリも洗練されていないパンチを女の腹部にする。
「邪魔」
しかし、女に通ずるはずもなく、当たる前に蹴られ、元の位置まで吹き飛ばされてしまった。
「――あぁぁぁ!!」
膝がすりむけ血が出る、しかしそれが何故かすぐに塞がって、再び立ち上がり、女のもとに走る。
「本当に厄介な子だわ!!」
「や、やめて……!!」
女はギセラの髪を掴み、宙へ持ち上げると、一発、二発と、顔にビンタを喰らわせた。
「ははは!! どんどん治っていくぞ!!」
叩かれ赤くなった箇所が次の瞬間には何もなかったことになっている。
「でもな、いくら治るとは言え、死ねば同じなんだよ……!!」
ギセラの傷を治す謎の力。女はそんなギセラの力は死ねば意味がないと言い。そのまま空中にギセラを打ち上げると、女も飛び、地面に思い切り叩きつけようとした。
が、
「――おっと、殺しちゃだめだったわね……」
空中から地面へ叩きつける直前女は何かが脳裏に過ぎったのか、攻撃の手を止め、意識のないギセラを抱え込む。
「――ったく、良いところだったのに……まぁ、あの男さっさと殺して帰るか」
女は一度地面にギセラを寝かせ、俺に歩み寄る。
「一発で殺ってあげる」
雨に濡れ、ずぶ濡れの女は今日一番に手刀を尖らせ、微笑み、俺に振るおうとする。しかし、
――瞬間、女の胸部に大きな穴が空いた。
完全に心臓を射抜いていて、助からない。女はなんの言葉を上げるでもなく、ただその場に倒れ込んだ。
「はぁはぁ……やりました」
地を這い、体だけを起こして女に手を伸ばしていたのはギセラ。
「――ミツキさん!!」
何やら様子が変なギセラは起き上がると、俺の元へ駆け寄ってきた。
「今直します!!」
そういうと、ギセラは俺の傷口に手をかざす。すると、そこから眩い光が映えてきて……
俺の傷をどんどん塞いでいった。
「あ、あぁ……」
傷口が塞がれ、やっとまともに口を開くことが出来た俺は、目の前で俺を一心に見つめているギセラを見る。
「どういうことだ? 何でこの女が……?」
目の前にはさっきまで俺達を追い込んでいたはずの女の死体があった。
まず俺は戦えなかったし、ギセラも同じはず。しかし、では誰が……
「私が殺りました。私がお母様の心臓を貫きその命を止めました」
大雨のせいでホントかどうかはわからないが、ギセラの目からは大粒の涙が流れていた。
「お前その口調……」
子供のように無邪気で、礼儀もないやつだったギセラが今は、おしとやかで、礼儀正しい言葉遣いの女性に変わっていた。
「私、記憶を取り戻したんです……」
女が俺の方に向き返えり、止めを刺そうとした時、ふと手を伸ばすと、そこには女が破壊したUSB端子の残骸があった。ギセラはそれらをすべて口に入れて、飲み込むと、自分の知らない色んなことが浮かび上がってきた。そして、目の前で恩人を殺そうとしているのはギセラを作った母親だと分かった。そこから先はあまり覚えていないが、気がつくと、手から刃を出現させて、お母様の胸を貫いていた。
「そうか……」
見慣れない仕草に、聞き慣れない声。どこか腑に落ちない感じで俺はギセラを見つめる。
◇
――しばらく時が経ち、女、Dr,クアリを埋葬した俺達は雨止みを待って、あの謎施設の影で色んな話をしていた。
「そんなことが本当に行われているのか……?」
色んな話を聞いていく中で一番印象に残ったのはこれだった。
「はい。まごうことなき事実です……」
この世界にはDr,クアリや蜘蛛男が所属している組織があり、その施設は、色んな貧しい子どもたちを集め、あの新薬『光』の亜種とも言える薬『闇』を飲ませ、強制的に一日に三度死んでしまうようなトレーニングを毎日やらせ、レベルを上げて、組織の兵器にするということを行っていた。そしてギセラもその中のひとり。
「レベルは?」
「六十です」
「高いな……」
俺とカノン、ハルヒは皆五十ジャスト。最近は伸び悩んでいて、本当にキツイトレーニングをやってもなかなかレベルが上がらない。なのに、俺達がやっている以上のことを耐え、六十に到達したギセラは……
「まぁ、なるほど、事情は分かった。その組織はいつか俺達で潰すし、お前と同じ境遇の子もきっと助ける」
ギセラの頭に手をポンと置き、優しくそう囁く。
許せない。二つの学校の件を含め、色んな人を無残にも殺していくその組織が。
俺は、雨に濡れることもいとわず立ち上がりあの謎施設の頂上に登ると、空に向かって宣言する。
「待ってろよ!! 『白|《ビアンカ》』!! いつか俺がお前らをぶっ潰してやる……!!」
その声に呼応するかのように雨は勢いを増し、目の前に大きな黄色の閃光が走る。
◇
――雨がやみ、すっかりと晴れた。
「ギセラ、お前家族とかいるのか?」
「いません」
「そうか……」
事件も解決し、そろそろ皆が心配するだろうと思った俺は帰るためイカダを組んでいた。
そしてその最中、俺はギセラにそう問いかけると、『いないと』返ってきた。
「ならさ、俺と一緒に来ない?」
家は一部屋空いているし、それに一人にしてはおけない。
「良いんですか……?」
「ああ」
「で、ではお世話になります……」
よそよそしく、縮こまりながらそう言ったギセラは俺に歩み寄り、
「……な!」
ダイビングハグをお見舞いしてきた。
「大好きです……ずっと一緒です……」
妙に甲高く震える声で、俺の耳元にそう囁いた。
「あぁもちろん。ずっと一緒だ……」
俺はよしよしとギセラの頭を撫でると、
「まぁ俺は年上か同級生好きだけどな?」
半分冗談でギセラにそう言い放った。まぁ妹がいる俺は、なかなか年下に恋愛感情は抱けない。
「ひどいです……!!」
ギセラはそれを聞いて、ちょっと怒ったのか、ポカポカと叩いてきた。
「痛い!! ポカポカが痛い!! やめ、ちょ、やめてください……!!」
俺より高レベルなギセラのポカポカは普通の人の全力パンチぐらいの威力があった。
これは、下手なことは出来ない。殺される……。
「よし!! じゃあ、イカダさっさと作って俺んちに行こうぜ!!」
「あっ!! 話を逸して!! わ、わかりましたよ……」
どこか腑に落ちなさそうにしながらも、近くに落ちていた浮きそうな丸太を二、三本持ち、紐で括り付けた。
「――よし、完成!!」
なかなか良いのが出来た。大きな船体にサイドを覆ってバランスを取るペットボトル。疲れた時用の帆に大量の食べ物と飲水。
準備は満タン。目標は日本。
「行くぞ……」
イカダを力いっぱい押して飛び乗る。なかなかの安定感、これは日本まで楽勝で行けそうだ。
「
「――は、離せぇ……!!」
必死に抵抗し、縄を破ろうとする女。しかし、俺が縛ったのは日本古来から伝わる『海老責』という縛り方だった。両手を背中に固定し、片足と顔を縛る。生憎女は白衣の下にズボンを履いていたせいで下着は晒さなかった。
「抵抗しないほうが良いぞ……」
『海老責』は拷問に置いて使われ、一時間縛られ続ければ、体内に血が回らなくなり、それ以上になると死の可能性も出る。
「くそ!!」
女は俺に対し唾を吐き、今にも噛みつきそうな顔で俺を睨む。
「この豚野郎!! 鬼畜!! ど淫乱!! 死ねぇ……!!」
次々に浴びせられる罵詈雑言。
「――ッ!!」
そうこうして暴れている内に気持ち悪くなったのか、だるまのように地面に倒れ込んで、胃の中身を吐く。
「おい!! ふざけんぁ!! ”ギセラ”をかえへ!!」
「返せ?」
女はギセラを返せと言った。あんな凍えるような施設に、一人で、あんなふうに縛っていたのに……。
俺はそんなふざけたことを言う女に憤り、拳を握る。そして一発殴ってやろうと踏み出すと、
「――ミツキ?」
森の中逃げていたはずのギセラが木の陰から顔を出し、俺に声をかけた。
「ギセラ? 逃げてろって言っただろ!」
「ご、ごめんなさい……」
俺に怒鳴られ、シュンとしてしまったギセラはその木の陰に隠れてしまった。
「さて」
俺が女の方に振り返ると同時、滝のような雨と吹き荒れる暴風がこの森を襲う。
「俺はギセラをあんな目に合わせたお前を許さない。見つけるのが少しでも遅かったら完全に死んでた!! なのに、返せなんて……」
俺は再び拳を握り、大きな雷が空から落ちると同時に女の頬を殴った。
「――うぁ……」
女の体は木々が生い茂る森の中に飛ばされた。だるまのような体をしている女は森の斜面を下り、木々に次々と衝突する。そして、大きな木に思い切りぶつかって止まると、血だらけの女は、反動で緩んだロープを解き、
「――あーあ、良くもやってくれたわね……」
と言って、肩を回しながら立ち上がった。
「やば……」
怒りに身を任せていてそこまで考えが及んでいなかった。
「――形勢逆転ね……」
女が一歩踏み出すと、もう俺の目の前にいた。そして、俺の顔面に一発、足を払い、崩れた姿勢に膝蹴り、そのまま掴んで上空に投げて、空間を歪ませる手刀の斬撃を俺の腹部に喰らわせた。
「――ぐぁ」
腹を引き裂かれ、地面に勢いよく衝突した俺は、こみ上げてくる血を吐き、荒れる呼吸を正そうとする。
「さぁて、どうしようかしら? どう殺してあげようかしら?」
女は血で濡れた顔に手を置き、そのまま舐めると、俺の体をおもきり蹴った。
「―――」
言葉にならない声を上げ、吹き飛ばされる。
「ほら、ほら、泣け!! 喚け!!」
「――ッ!!」
普段味合わ無いような痛みが俺の体を駆け巡る。意識がもうろうとして、気を抜けばいつでも死に……
――その時だった。
「もう、やめて!!」
俺が一方的に殴られている光景を見ていられなくなったギセラが飛び出してきた。
「あぁ? ギセラお前、想像主たるこのDr, クアリ様に口答えするだぁ?」
女はギセラの方を見ると、見下すような顔でそう言い放った。
「創造主?」
珍しく緊張した顔のギセラはそっと首を傾げた。
「はぁ、そうだった。面倒くさいから記憶消してんだっけ……」
女はポケットに入っていたUSB端子を見てニヤついた。
「記憶取り戻されると面倒だから……っと」
そして、ギセラの記憶が入っていたであろう、USB端子を地面に叩きつけ、踵で踏みつけて粉々にした。
「――ぁ?」
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「――っち!」
その手を思い切り踏みつけられ、手の骨が軋む。
「――あぁぁぁ!!」
そして、ギセラはそんな俺を守ろうと走り、一ミリも洗練されていないパンチを女の腹部にする。
「邪魔」
しかし、女に通ずるはずもなく、当たる前に蹴られ、元の位置まで吹き飛ばされてしまった。
「――あぁぁぁ!!」
膝がすりむけ血が出る、しかしそれが何故かすぐに塞がって、再び立ち上がり、女のもとに走る。
「本当に厄介な子だわ!!」
「や、やめて……!!」
女はギセラの髪を掴み、宙へ持ち上げると、一発、二発と、顔にビンタを喰らわせた。
「ははは!! どんどん治っていくぞ!!」
叩かれ赤くなった箇所が次の瞬間には何もなかったことになっている。
「でもな、いくら治るとは言え、死ねば同じなんだよ……!!」
ギセラの傷を治す謎の力。女はそんなギセラの力は死ねば意味がないと言い。そのまま空中にギセラを打ち上げると、女も飛び、地面に思い切り叩きつけようとした。
が、
「――おっと、殺しちゃだめだったわね……」
空中から地面へ叩きつける直前女は何かが脳裏に過ぎったのか、攻撃の手を止め、意識のないギセラを抱え込む。
「――ったく、良いところだったのに……まぁ、あの男さっさと殺して帰るか」
女は一度地面にギセラを寝かせ、俺に歩み寄る。
「一発で殺ってあげる」
雨に濡れ、ずぶ濡れの女は今日一番に手刀を尖らせ、微笑み、俺に振るおうとする。しかし、
――瞬間、女の胸部に大きな穴が空いた。
完全に心臓を射抜いていて、助からない。女はなんの言葉を上げるでもなく、ただその場に倒れ込んだ。
「はぁはぁ……やりました」
地を這い、体だけを起こして女に手を伸ばしていたのはギセラ。
「――ミツキさん!!」
何やら様子が変なギセラは起き上がると、俺の元へ駆け寄ってきた。
「今直します!!」
そういうと、ギセラは俺の傷口に手をかざす。すると、そこから眩い光が映えてきて……
俺の傷をどんどん塞いでいった。
「あ、あぁ……」
傷口が塞がれ、やっとまともに口を開くことが出来た俺は、目の前で俺を一心に見つめているギセラを見る。
「どういうことだ? 何でこの女が……?」
目の前にはさっきまで俺達を追い込んでいたはずの女の死体があった。
まず俺は戦えなかったし、ギセラも同じはず。しかし、では誰が……
「私が殺りました。私がお母様の心臓を貫きその命を止めました」
大雨のせいでホントかどうかはわからないが、ギセラの目からは大粒の涙が流れていた。
「お前その口調……」
子供のように無邪気で、礼儀もないやつだったギセラが今は、おしとやかで、礼儀正しい言葉遣いの女性に変わっていた。
「私、記憶を取り戻したんです……」
女が俺の方に向き返えり、止めを刺そうとした時、ふと手を伸ばすと、そこには女が破壊したUSB端子の残骸があった。ギセラはそれらをすべて口に入れて、飲み込むと、自分の知らない色んなことが浮かび上がってきた。そして、目の前で恩人を殺そうとしているのはギセラを作った母親だと分かった。そこから先はあまり覚えていないが、気がつくと、手から刃を出現させて、お母様の胸を貫いていた。
「そうか……」
見慣れない仕草に、聞き慣れない声。どこか腑に落ちない感じで俺はギセラを見つめる。
◇
――しばらく時が経ち、女、Dr,クアリを埋葬した俺達は雨止みを待って、あの謎施設の影で色んな話をしていた。
「そんなことが本当に行われているのか……?」
色んな話を聞いていく中で一番印象に残ったのはこれだった。
「はい。まごうことなき事実です……」
この世界にはDr,クアリや蜘蛛男が所属している組織があり、その施設は、色んな貧しい子どもたちを集め、あの新薬『光』の亜種とも言える薬『闇』を飲ませ、強制的に一日に三度死んでしまうようなトレーニングを毎日やらせ、レベルを上げて、組織の兵器にするということを行っていた。そしてギセラもその中のひとり。
「レベルは?」
「六十です」
「高いな……」
俺とカノン、ハルヒは皆五十ジャスト。最近は伸び悩んでいて、本当にキツイトレーニングをやってもなかなかレベルが上がらない。なのに、俺達がやっている以上のことを耐え、六十に到達したギセラは……
「まぁ、なるほど、事情は分かった。その組織はいつか俺達で潰すし、お前と同じ境遇の子もきっと助ける」
ギセラの頭に手をポンと置き、優しくそう囁く。
許せない。二つの学校の件を含め、色んな人を無残にも殺していくその組織が。
俺は、雨に濡れることもいとわず立ち上がりあの謎施設の頂上に登ると、空に向かって宣言する。
「待ってろよ!! 『白|《ビアンカ》』!! いつか俺がお前らをぶっ潰してやる……!!」
その声に呼応するかのように雨は勢いを増し、目の前に大きな黄色の閃光が走る。
◇
――雨がやみ、すっかりと晴れた。
「ギセラ、お前家族とかいるのか?」
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事件も解決し、そろそろ皆が心配するだろうと思った俺は帰るためイカダを組んでいた。
そしてその最中、俺はギセラにそう問いかけると、『いないと』返ってきた。
「ならさ、俺と一緒に来ない?」
家は一部屋空いているし、それに一人にしてはおけない。
「良いんですか……?」
「ああ」
「で、ではお世話になります……」
よそよそしく、縮こまりながらそう言ったギセラは俺に歩み寄り、
「……な!」
ダイビングハグをお見舞いしてきた。
「大好きです……ずっと一緒です……」
妙に甲高く震える声で、俺の耳元にそう囁いた。
「あぁもちろん。ずっと一緒だ……」
俺はよしよしとギセラの頭を撫でると、
「まぁ俺は年上か同級生好きだけどな?」
半分冗談でギセラにそう言い放った。まぁ妹がいる俺は、なかなか年下に恋愛感情は抱けない。
「ひどいです……!!」
ギセラはそれを聞いて、ちょっと怒ったのか、ポカポカと叩いてきた。
「痛い!! ポカポカが痛い!! やめ、ちょ、やめてください……!!」
俺より高レベルなギセラのポカポカは普通の人の全力パンチぐらいの威力があった。
これは、下手なことは出来ない。殺される……。
「よし!! じゃあ、イカダさっさと作って俺んちに行こうぜ!!」
「あっ!! 話を逸して!! わ、わかりましたよ……」
どこか腑に落ちなさそうにしながらも、近くに落ちていた浮きそうな丸太を二、三本持ち、紐で括り付けた。
「――よし、完成!!」
なかなか良いのが出来た。大きな船体にサイドを覆ってバランスを取るペットボトル。疲れた時用の帆に大量の食べ物と飲水。
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