皆平等に努力が報われる幸せな世界。

名前

文字の大きさ
21 / 21
第一章:幸せな世界

第二十一話:一通の手紙。

しおりを挟む
――ギセラが家に来てから三日経った朝。
朝刊をとりに家のポストに行くと、袋に包まれたいつもの新聞の他に、一通の手紙が入っていた。

「――え? 何これ」
 
 黒い袋に赤くびっしりと書かれた警告の文字。『最重要』『国家機密』だとか。

 俺はひとまず家に入って、朝食を母さんと作っていたギセラを連れて部屋に戻る。

「凄い手紙ですね……。って、もしかして、これって日本文化の一つ恋文というやつですか?」
 
 ギセラに手紙を見せると、目を輝かせ俺に詰め寄る。

「そ、そんなわけ無いだろう。こんな恋文があってたまるか……」

「そうですか……」

「……まぁ、とりあえず開けてみるぞ……」

 いつも以上に慎重に、高級そうなシールを剥がし、中に入っていた一枚の紙を取り出す。

「――開くぞ」
 
――招待状。あなた方の功績を称えるべく、表彰式を開くのでぜひご来場ください。

                         日本国内閣総理大臣より

「表彰式……? それに総理大臣って……」

 総理大臣とはゲンキの件で会ったことがある。
凛々しくその場にいるだけで周りの人を絶対の安心で包み込むような人物。そして、この国最強の人間。

「――ミツキさん。何か落ちましたよ?」

 じーっと眺めていると、中にあったもう一枚の紙がポロッと落ちた。

「ああ、悪い」

 ギセラから受け取って、目を通す。そこには明確な日時、招待するメンバー、などなど、詳細が事細かく書かれていた。

「ハルヒと、俺とカノンと、あと、ギセラ……?」

「私ですか?」

「ほら、ここに書いてある……」

「本当ですね……」

 ハルヒとカノンとは共に色んな敵を倒してきた。その功績が何故か評価され、今回の会に至ったのだろう。しかし、ギセラはつい最近まで日本から遠く離れた孤島にいた。この家に来てものの三日なのに、何で名前を知られているんだろう。

「ともかく、断るわけにはいかない。三日後に迎えが来るらしいから、それまで気長に待とう」

「そうですね」

 ただの俺達を祝う祝賀会だ。細かいことは気にしなくても大丈夫だろう。




                 ◇
「――お待たせ」

指定されたバスターミナルに着き、ギセラとベンチに腰掛けていると、向こうから妙に着飾り化粧までした、カノンが来た。

「カノンさん可愛いです……!!」

 そんなカノンを見て、ギセラは、目を輝かせる。

「そ、そう、ありがとう……」

 嬉しかったのか、顔を赤らめ、俯いてしまう。

「ぎ、ギセラも可愛いわよ……」

「本当ですか? ありがとうございます……!!」

 カノンの胸ぐらいの高さでぴょんぴょん跳ねるギセラをカノンはよしよしと撫でる。

「ミツキ、もしかしかしなくてもあんた、ギセラちゃんに手を出してないわよね?」

「あ、当たり前だろう……!!」

「キスはしてたのに……?」

「そ、それは……!!」

 まるでどっかの悪役令嬢の様に、人を見下す目と笑みを浮かべる。

「ミツキさん。私にはいつでも、手を出して大丈夫ですよ……」

 下を向いて、顔を赤らめながら、もじもじして言う。

「あ、あんた……!!」
 
 その言葉を聞いたカノンは軽蔑するような顔で後ずさっていった。

「――がははは、相変わらずお前らは仲良いな……」

 そうこうしている内にハルヒが来た。

「この状況でそう思うお前はどうかしている……」

「そうか? 俺はお前らお似合いだと思うぞ……」

 俺が否定すると、ハルヒは意外そうな顔をした。

「それは、どういう意味で」

 手に力を込め、返答次第では殴りかかろうと心に決めるカノン。

「意味も何も、その通り、友達として凄くお似合いだと思う」

「な、なら、まだいいわ……」

「おっ? そうか、良くわからんが良かった」

 (ハルヒ、お前は運が良かった。もし返答を間違えていれば……)

「――ミツキさん?」

 冷や汗をかき険しい顔をしている俺を心配したのかギセラが俺の服の袖をそっと掴み、尋ねてきた。

「あ、ああ。なんでもない……。それより……」

――政府が客人を迎えるときに使う特別なバスが来た。
 日本を思わせるような、茶色と緑の質素なデザイン。百人は乗れるであろう収容力。

「すげぇ……」

 自然と、そんな声が零れていた。

「――皆様、お乗りください……」

 プシュッと大きな音を上げて停車すると、中からいかにもな、タキシードを着た使用人らしき人が出てきた。

 
                   ◇

――バスに乗ってしばらく経った頃、

「……皆様、本日はお忙しい中お越しいただき誠にありがとうございました。自己紹介が遅れました。私は首相の秘書、Aでございます」

 例の使用人らしき人がマイクを使って、挨拶をした。

「A? それは名前ですか?」
 
 その人は自分の事を『A』と名乗った。それを疑問に思ったギセラは尋ねる。

「はい」

「本名ですか?」

「いいえ。一応本名は別でありますが、首相の秘書という立場上、個人情報を晒すわけにはいかないのです……」

「なるほど……!! カッコいいですね!!」

「カッコいいのですか?」

「はい……!!」

 またもや、ギセラは目を輝かせる。

「――ガハハハ、確かにな!! 二つ名ってカッコいいよな……!!」

 そして、俺の隣りにいたハルヒも、走行中にも関わらず席を経って、ギセラにグッドサインを送る。

「……さすが、ハルヒさん。分かってますね……!!」

「そうか? ガハハハ……!!」

「――すーわーれ!!」

 俺は、そんなハルヒの頭を掴み強引に座らせる。


「はっはは、元気があって良いですな……」


「……そういえばカノン。お前元気ないな。バスに乗ってから一言も喋ってないんじゃ……」

 ギセラの隣に座り、先程から頭を前の椅子に付けっきりのカノン。

「ぎ、ぎぼじわどぅい……」

 その顔は青白く、今にも、何かを吐きそうだった。

「酔ったのか……?」

「うぅぅ……」

「カノンさん袋をどうぞ……」

「ゔぁ、ありがとう……」


                      ◇

 

「――皆様、もうじき首相官邸が見えてきます」

 あれから一時間ほど経ち、町並みが鮮やかなものになってきた。

「「――おぉぉ!!」」

 夕方にも関わらず絶えず溢れかえる通行人。
そして、透き通るようなガラスが隅々まで張り巡らされた建物、首相官邸。
ここは、首相、内閣総理大臣の仕事場と自宅がある。

「では皆様お気を付けてお降りください」
しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

スパークノークス

お気に入りに登録しました~

2021.08.19 名前

ありがとうございます!! これからもご期待に添えるよう頑張ります!!

解除
花雨
2021.08.10 花雨

お気に入り登録しときますね♪

2021.08.11 名前

ありがとうございますご期待に添えるようがんばります!!

解除

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。