“彼”

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13.呼び方

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あれ以来、お互い他に用事がなければ、放課後は駿二の家で会うようになっていた。

この日も同じように駿二の部屋で二人で話している時だった。


「なぁ、そろそろその“東さん”っての止めん?」

「え、だって東さんでしょ?」

「いや、そうじゃなくて。付き合ってるんだから、下の名前で良くない?」

「あ、そっか。じゃあなんて呼ぶ?」

「礼が好きなのでいいよ。」

「う~ん…じゃあ駿くん?」

「それは友達とかと一緒だろ?できれば違う方がいい。」

「う~ん…難しい…」


優柔不断な私はなかなか決められなかった。
悩みに悩んでいると、しびれを切らした駿二が、一番ハードルの高い呼び方に強制的に決めてしまった。


「よし、じゃあ駿二で!」

「えぇ!?呼び捨ては無理!」

「いいじゃん♪呼び捨てって特別っぽいだろ?家族くらいしか呼ばないし。はい、決まり~。」

「…わかった。」


そう言って決まったものの、私は恥ずかしくてなかなか名前で呼べなかった。
ねえねえとか、そっちは…とかで誤魔化していたら、やっぱり気づかれた。


「なんで呼んでくれんの?」

「だって慣れなくて…」

「俺は何回でも呼べるよ。礼。礼。礼。」

「そりゃそっちは最初から名前で呼んでるからでしょ!」

「あ、ほらまた。今チャンスだったのに。礼、呼んで。」

「…無理。」

「…ハァ。そんな呼びたくない?」


一気に空気が悪くなった。
私が悪いのもわかっていた。
呼びたくないとかじゃない。
なんとか私の気持ちをわかってもらおうと必死で説明した。






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