喫茶店の日常

黒歴史制作者

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喫茶店のある二十四時間section12

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「色々と言いたいことはあるけど、先に伝えなきゃいけないことだけ伝えるわ」
「何があったのかな。できれば管理人くらいと接触してくれているとありがたいんだけど」

  初瀬は感情を抑えこんだ淡々とした声で白夜に告げる。白夜は起き上がることはせずにそのままの体勢で会話をする。

「管理人とは接触したわ。これで正式に依頼として革命の者を殺せということになるわね。流石に寿命を越えて生きているのは他人に被害がいくとのことよ」
「納得できる様な事態だね。で、これで業務連絡は終わりと言うところかな」
「ええ、業務連絡は終わりよ」

  初瀬の本題はここからなのだろう。今までの感情の読めない目は何だったのかと聞きたくなる程、怒りのこもった目で白夜を睨む。

「白夜、さっきは何をしようとしていたのかしら?」
「初瀬ちゃんの蘇生だね。そこの少年が悲しんでいた様子だから仕方なく」

  白夜はそれを意に介さず隠すことなく告げる。その言葉に対して初瀬は舌打ちをする。

「私に蘇生をかける必要はないと言わなかったかしら? 約束したわよね。私に対して蘇生をかけるなって」
「約束は破るために存在するでしょ?」

  初瀬は怒っているが白夜はそれを反省する気もない様子でいる。まともに反省する気のない白夜に初瀬は閃光を打つ。それは直撃する手前で闇が展開されて防がれた様子だが、白夜は呆れた様に言う。

「危ないな。流石にそれを受けるのは嫌なんだけど」
「別に受けてもいいのではないかしら」

  当たれば傷つく様な閃光を飛ばしておいて薄情なことを初瀬は言う。全て闇に防がれている閃光に焦れたのだろう。

「珍しく敗北してないと思っていたけれど、そんなことはなかったわね。肉体的な方にならなかっただけじゃない」

  初瀬は死んでいたことを棚に上げて白夜に対して言う。そして、白夜の精神は蝕まれていたと断言する。必要のない代償をわざわざ受けようとしていた原因であろうことに触れる。

「あの霧はずっとあったからね。止めることはできなかったんだよ」

  白夜のそれは遠回しに影響を受けていたという肯定であった。

  唐突だが、自分は殺されて死んでも良いという癖に、他者に対して死ぬことは許さないという考え方がある。この考えは不死である者が陥りやすいものである。自分は死なないから殺されてもいいが、他の人は一回しかない生を謳歌して欲しいという願いかもしれない。
 さて質問になるが、この場には不死である者が何人いたのだろうか。

  閑話休題。

「あの邪神の能力、侵食じゃないのかしら?」
「断定してるよね。まあ、合ってるけど」

  初瀬は防がれていると知りつつ閃光を打つ。途中から今までのストレスを解消するためになっている様子だが。

「白夜からすれば相性が悪い方かしらね。吸収して同化したものの制御を取り返して逆に乗っ取るとか向こうの本分じゃないの」
「本当だよ。おかげで神社が物理的に壊れるのは防げなかったんだよね。流石に乗っ取られるのは困るから」

  白夜は溜息を吐きながら初瀬のセリフを肯定する。乗っ取られないぎりぎりとなると、どうしても物理的なものの効果は消せなかったのだろう。

「その能力はかなり厄介ね。神様の領域を侵すのに、これほど合った能力はないわ」
「それは確かに、そうとしかいえないかな。おかげで止めるのに一苦労だった」

  この神社が邪悪な者を呼び寄せる程度で、生成される程染まっていない。邪魔が入らなければこの神社は善良な神が存在することのできない空間になっていただろう。

  それが分かっているのか初瀬は能力を使用しなければいいと言ったことは言わない。

「納得したならこの攻撃止めてくれないかな」
「いいわよ。でも、次は約束を破らないでくれるかしらね。死なれると隠蔽が面倒なの」

  初瀬は満足したのか閃光を飛ばすのを止める。そして二人は正式に依頼となったことの厄介さが予測できたのだろう。初瀬も白夜もやる気はない様子だ。

「何でこんな依頼を私が受けなければいけないのかしらね。私は『公共機関』ではないのよ?」
「今回は『公共機関』を通している訳ではなかったからかな。流石に初瀬ちゃんが今回の切欠としか言えないんだよね」
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