満月にお願いをしてはいけない

コユメ

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撮影

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 公園の奥にある森の入り口で丹下さんが何度も心配そうにスマホを確認している

「どうしたんだろう?電話しても繋がらないし…何かあったのかな」

 丹下さんが何度も連絡してるのに、一向に連絡が来ない!
もう約束の時間から30分経っているのに遅刻の連絡すらないのは、どうなってんだ!
僕は内心あんなに綺麗で感動したのに、こんなに時間にルーズだったなんてガッカリだ。
 今日手伝うなんて言うんじゃなかったと思っていると遠くから

「オーイ!」

と走ってくる3人の姿に僕は一言、言ってやろうと前に出ると丹下さんがポツリと

「あれ?一人多い?」

と首を傾げている
僕は丹下さんに

「え?何言ってるんですか?ハルと聖君と月湖さんの3人じゃないんですか?」
 どこがおかしいのかと丹下さんに言うと丹下さんがびっくりした顔で

「え?ハル君は月…」

「月?」

僕が聞き返すと丹下さんがしまったという顔で

「え?あ!そっか!何でもないよ!で、でも今日ハル君用事があるって言ってた様な?」

「え?そうなんですか?僕はてっきりあのガキも手伝ってもらうんだと思ってました。」

 前に当日の撮影の話をしていた時に聖君と話していたから僕は2人も手伝うと思っていたが違ったらしい
それにしても丹下さんの何とも歯切れの悪い言い方だなと思ってると、丹下さんが3人に向かって

「オーイこっちだよ!」

 と丹下さんが手を振ると、

「遅れてすいません!はぁはぁ!」

「何で走るんだよ!聖!」

「はぁはぁ!ごほっ!久しぶりに走ったよ!はぁ!」

 息を切らせながら聖君と月湖と知らない男が膝に手を置いて息を整えていた。
そんな3人に僕は

「おい!遅れるのなら連絡ぐらいしろよ!それと何で電話出ないんだよ!心配させんなよ!」

 イライラと言うと丹下さんが

「そうだよ、2人共一体何があったの?とても心配したんだよ?」

 丹下が聞くと聖が申し訳なさそうに

「すいません!僕が持ってたスマホが荷物と一緒にロッカーに閉まっちゃって…」

 
そう言うと丹下さんが

「ああ、なる程ね、それで電話出れなかったんだね、私てっきり何か事件でもあったのかと…心配したよ、でも何もなくて良かったよ。ね?久米田君も凄く心配してたから」

 え?と久米田を見ると顔を真っ赤にして

「は?何言ってるんですか丹下さん!僕は心配なんか全然してませんよ!そんな事より!早く撮影しましょ!」

 と慌てて機材を取りに行ってしまった。

「それで一体何があったの?」

 と丹下が聖に聞くと聖がため息をつきながら、

「いや…ちょっと…説明するには色々ありまして…」

聖が口を濁すと丹下が

「そうなんだ。それでさっきから気になってたんだけど、そちらの方はどちら様かな?」

 丹下の言葉に店長がにこやかに

「あの、私、里見直也と言います。」

「…里見さんですか?」

「はい、実は私美容師でして」

「ほう?美容師…それで?」

「はい、それで…」

と説明しようとするのを

「ちょっと!待ってください!」

聖が止めた。

そして里見に向かい

「里見さんでしたっけ?」

と言うと丹下がビックリした顔で

「え?2人とも知り合いじゃないの?」

と不思議そうに聞かれ、聖がこれまであった事を簡単に説明すると丹下が

「ああ、なる程ね、里見さんでしたよね」

「え?はい!」

「この子達を助けて頂きありがとうございます。」

頭をさげると聖が丹下に申し訳なさそうに

「あの丹下さん…それで僕達お金を払おうにも財布がロッカーに入ってて…」

と言うと丹下が頷き

「うん、良いよ払うよ、それでいくらになりますか?」

と言うと里見が首を振り

「あの、お金はいりません」

すると久米田がいつの間にか機材を持ちながら

「それは駄目ですよ!」

その言葉に丹下も

「うん、そうです。こんなに月湖を綺麗にしてもらったのにそれは駄目ですよ里見さん」

「でも本当にいいんです。」

「いやでも…」

と押し問答してる2人に俺は

「なぁ?そんな事より早く撮影しなくて良いのか?」

俺の言葉に丹下も久米田もハッとして

「ああ!早く言えよ!丹下さん早く!」

「ああ!うん!」

とバタバタとセッティングし始めた。
そして丹下が

「月湖!ほら始めるよ!」

呆れながら聖と里見を見ると聖が疲れた顔で

「…僕達はここで見学させてもらうから」

と近くにあった椅子に2人が座った。
俺が口を開こうとすると丹下が

「月湖ここ!早く!」

丹下の声に俺は渋々ライトの下に立った。
そこからはバタバタと撮影が始まった。
色々な写真を撮り、あっという間に時間が過ぎ

「はい、終了!皆お疲れ様ー!」

と丹下の言葉にハッとした。
撮影の余韻でぼうっとしてると聖が

「はい、これお疲れ様」

と温かいお茶を差し出して来た。

「ああ」

俺はそれを受け取り
一口飲んでホッとしてると里見が

「いやー!凄い綺麗だった!こういう撮影を見るの初めてだけど!感動するんだね!」

と言うと今度は丹下と久米田の所に走って行き何か話をしてる、ひとしきり2人と話してどうするんだろうと見てると何故か丹下と久米田と一緒に機材を片付け出した。

「?」

と思ってると丹下が

「おーい、2人も手伝ってー!」

声がして聖が伸びをして

「うーん!それじゃ片付けようか…」

と俺の飲みかけのコップを取って残りを飲み干した。

「それ俺の!」

「いいじゃん!」

あっけらかんとする聖を睨みながら

「ところで俺この格好でやるのか?」

「似合ってるよ?」

「そう言う事じゃねーよ!もういい!」

と機材を片付けている里見に

「おい!何であんたも片付けしてるんだよ?」

と聞くと里見がキョトンとした顔で

「え?大変そうだったから手伝ってるんだよ」

丹下を見るとニコニコして

「いやね?手伝って下さるって言うから、それに里見さんには、きちんとお礼をしたいからちょうどいいかって」

「お礼なんて別に…」

「いえいえ、いけません!きちんとお話をさせて下さいお時間は取らせませんので!この子達がお世話になってるのにこのままなんて駄目です!」

押しの強い丹下に里見も

「分かりました。」

と言うと

「それで、これから何かご予定とかありますか?」

丹下が聞くと里見は何かを思い出したかの様な一瞬暗い顔をしたが顔を振り

「いいえ、大丈夫です。何も無いです。」

と答えた。
きっと閉店した店の事を思い出したんだろうと思ったが口には出さなかった。

「そうですか!なら私達と一緒に私の家まで着いて来て貰ってもいいですか?」

「…はい、ご一緒させて下さい」

「それは良かった!それじゃ早く片付けて帰ろう!」

丹下の言葉に皆黙々と機材を車に詰め込んで俺達は最初と同じように里見の車で丹下のアパートまで行く事になった。
車の中で何度も

「ハル君綺麗だったねー」

「うんうん、分かります!綺麗でしたよね!」

里見と聖の話し声に、俺はだんだんウトウトしていた。

「ほら、ハル起きて!」

聖に揺り起こされて目を開けて

「…もう着いたのか?」

「そうだよ起きてよ」

うーんと伸びをして車から降りると丹下達は既に車から機材を一階の部屋に収めていた。
あくびをしながら聖に寄りかかると聖も疲れてるのかあくびをした。

「ふわあ、流石に疲れたね…僕も眠い」

「ああ」

と答えると聖が

「丹下さん!僕達疲れて眠いので部屋に戻ってもいいですか?」

丹下が

「え?もう寝ちゃうの?…うん、そっかその方が良いか…いいよ、お休み、あ、里見さん車こっちに停めていいですよ」

「あ、はい!」

と里見が車に乗り込もうとするのを聖が

「里見さん、今日はありがとうございます、ほらハルもお礼」

俺はくっつきそうなまぶたを開けて

「今日は悪かったな…」

と言うと、里見は苦笑しながら

「いいよ、こちらこそありがとう」

その言葉に?だったが、もう眠くて聖に支えられながら部屋に戻った。














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