満月にお願いをしてはいけない

コユメ

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美容室

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「あー!何でこんな事になってんだよ!」

外灯の無い道を歩きながら

「仕方無いだろ?ハルが道路沿いの美容室イヤって言うから!そもそもこんな住宅地に美容室あるわけないだろう、家ばっかだよ」

小声で睨まれ

「道路沿いは人の出入りがあるから嫌だっていってんだろ、ただでさえこんな服着てんのに!」

文句を言い合いながら歩いて居ると聖が急に止まった。

「うお!急に止まんなよ!」

聖が振り返って

「今のって美容室?」

俺も振り返って

「あったか?そんなの」

「たぶんあった」

聖が来た道を戻り始め俺も

「こんな家ばっかの所に、見間違えじゃねーの?」

と聖の後を付いて行くと確かに美容室らしき建物があったが明かりが落とされ店内は暗い

「なぁこれもう終わってね?」

「でも奥に明かりが付いてるから人は居そうだけど…」

だったらと店に入ろうとすると

「ちょっとハル何勝手に入ろうとしてるの?」

後ろから手を捕まれたが勝手にドアを開けるとカランと音をたてて中に入ったが俺達に気が付かなかったのか奥から話声が聞こえる。
複数の人の話声がする、どうすると聖を見ると俺の服を掴んで首を左右に振った。
俺はそれを無視して奥の部屋に近付くと、店長らしき人がスタッフ達に頭を下げて

「皆今までこのお店で頑張ってくれて、ありがとうこんな形でお店を閉じてしまうのはとても残念で申し訳ない」

するとスタッフの男が

「止めて下さい店長は悪く無いじゃないですか!悪いのはアイツなのに!」

「そうだ!店長のアイデアを盗って逃げてそれを発表するなんて!」

「………」

「そして店長が自分のアイデアを盗んだとか言いやがって!」

「お店まで、たたむことになちゃうなんて…うっ!」

「泣くな!辛いのは店長なんだぞ!」

「ごめんなさい…でも、こんな終わりかたなんて悔しくて…もっと皆と一緒にやっていたかったのに」

そこに居た皆同じ気持ちだったのか辛そうな顔だ。
俺は振り返って聖に首を振ると聖がため息を付いて俺の服を引っ張ったすると

「カチャン!」

と何に当たった。

「誰だ!」

奥から人が来てしまった。
もうどうにでもなれと

「ちょっといいか?」

声をかけると

「きゃ、泥棒!」

「違う!」

「だったら何だ店はもう閉まってる」

真っ暗の店内で言い合ってると

「どうしたんですか?」

と店長が話しかけて来た。
俺は

「あー、ちょっと髪をどうにかして欲しくて」

そう言うとスタッフの男が

「もう店は終わってる他の所に行ってくれ」

と言われ聖も

「ハル」

と呼ばれ無理かと帰ろうとすると

「別に良いですよ?」

振り返ると店長が

「どうぞ?」

すると他のスタッフ達が

「何言ってるんですか!」

「そうですよ!」

店長がニッコリと笑い

「折角来てくれたんです私は大丈夫それより」

と店長はポケットから財布を取り出し数枚のお札を抜き出して

「これで皆で美味しい物でも食べて下さい」

と一人の男に渡すと

「だったら店長も一緒に」

店長は首を振り

「今日は皆で行って来て私はまた今度」

と言うと男はしぶしぶ

「分かりました。今日の所は、でも次は絶対来てくださいよ?」

「うん、分かったありがとうね」

男がスタッフに

「皆行こう」

言うと、少し躊躇ってから

「…店長お先に失礼します」

頭を下げて店を出て行った。

「うん今日はありがとう、楽しんで来てね」

と全員が出て行くと

「さあ、こちらにどうぞ?」

と席に座ると聖も近くの椅子に座った。
店長は

「少し待ってくださいね」

とドアの鍵を閉めて店内の明かりをつけた。
そして明かりが外に出ないようにシェードを閉めてこっちに振り返って

「!」

ビックリした顔をした。
一瞬何だと思ったが聖が

「何か大変な時に来てしまったみたいで申し訳ないです。ほらハルも」

確かにと、頭を下げて

「あー、悪かった。」

「いやいや大丈夫ですよ!」

とニコニコと愛想良く

「それで今日はどうしますか?」

と聞かれ聖を見ると、聖は立ち上がって俺の背後に来て

「さっき人とぶつかってしまって、その時相手の服に髪の毛を巻き込んでしまったみたいで、ここなんですが…」

「えー、あっ!これですね!これは無理に引っ張りましたね!結構酷いですね…ここ」

と俺の頭を触った

「いって!触んな!いてーんだから!」

「あ、すいません!」

と謝られたが聖が

「良いんですよ、ハルが無理やり引っ張ったせいなんだから気にせず櫛でも何でも良いので分からなくしてください」

「おい!聖!」

聖に文句を言うと

「元々はハルのせいなんだから我慢しなよ」

「しかたねーだろ!あん時は!聖だって焦っていただろうが!」

「はぁ?焦ってません!」

と言い合ってると

「よし!これで良いかな?」

「え!」

「は?」

と店長の言葉で、はっとして見ると引っ張られて千切れた髪の毛が綺麗に結われていた。
いつの間に全然気が付かなかった!でも内心ホッとしつつ

「これで怒られないよな?」

と聖を見ると頷いた。
よし!と立ち上がると聖が急に

「しまった!」

嫌な予感がしたが

「どうしたんだ?」

と聞くと

「僕達お金持ってない!」

「何でだよ!」

「ロッカーに財布まで閉まっちゃった!」

「スマホは!」

「あー!ロッカーだ!」

「嘘だろ?」

恐る恐る店長を見ると店長はニコニコと

「お金は良いよ?」

内心やったーと思ったが、そうは問屋が卸さない案の定、聖が首を振り

「そう言う訳には行きません!」

やっぱりかと

「じゃあ、どうすんだよ!もう一度駅のロッカーに取りに行くのか?」

聖は俺を見て

「よし!店長さん僕達と一緒に来て貰っても良いですか?」

聖の言葉にポカンとして

「おい!それはまずいだろ!」

「だってそれしか方法がないんだから仕方無いだろ!僕達お金無いんだし、それにきちんとお金払わないと僕達泥棒だよ!絶対ダメ!」

「本当お金なんて良いんだよ?もうお店閉まっちゃてるし」

「店長もこういってるんだし!いいだろ!」

「ダメ!」

こうなったら何をいっても無駄だと諦めて

「ああ、もう分かったよ!」

本当に融通が聞かない

「それじゃ店長さん僕達と一緒に行きましょう!」

「アハハ、良いよ!行くよ!」

笑いながら了承した。
もう俺は知らん

「それじゃ!行くよハル!」

ため息をつきながらドアに向かうと

「所で、君達どこまで行くの?」

「ああ、公園の向こうのデカイ木の所だっけか?」

「うん、そう」

「だったら車の方が早いか…ちょっと車の鍵取ってくるね」

とカウンターから車の鍵を取りに行って

「じゃ行こうか」

と店の裏に止めてあった車の乗り込んだ。
俺達は車の後部座席に乗り

「何から何までありがとうございます。」

と聖が言うと店長は

「全然いいよ、今日は本当悲しい気持ちで今日が終わると思ってたのに…今とても楽しい事が嬉しい、ありがとうね」

そう言う店長の顔はスッキリした顔だった。
聖がこっそりと

「良かったのかな?」

俺も頷き

「いいんじねーの」

と返した。

「それじゃ!出発するね!」

と店長の言葉で車が走り出した。












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