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哀しき女の性
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保管してあったゴールドスカルのペンダントヘッド。
俺は又、木暮敦士の意識と向き合うことになる。
「あっ!?」
俺は思わず声を上げた。
デパートの従業員用エレベーターの鏡に、帽子を目深に被った女性が映っていた。
男性だと思い込んでいたストーカーは女性が男性に変装したものだったのだ。
鋭い目を鏡に向けていながら、泣いていたのだ。
でもそれは目の前にいるMAIさんではなかった。
「この人は犯人じやない!!」
俺は思わず言った。
(もしかしたら彼女を犯人に仕立て上げるためにあの美容院を使ったのか? 完全犯罪を狙った誰かが企てて……)
ゴールドスカルのペンダントヘッドは、MAIさんが犯人ではないと俺に告げていた。
確かに、木暮敦士の頭をスキンヘッドにしたのはMAIさんだった。
それはマネージャーへの抵抗のためだったのではないのだろうか。
木暮敦士はストーカー被害が深刻化したら、ロックなど辞めてもいいとMAIさんに打ち明けていたからだ。
全てはMAIさんを守るためだった。
自分のせいで、彼女を危険な目に合わせたくなかったのだ。
又介護ヘルパーとして働けばいい。
木暮敦士はそう思っていたのだった。
「すいません遅くなりまして。木暮を殺したの犯人が逮捕されたと聞きまして……」
そう言いながら、木暮敦士の元マネージャーだと名乗る人が警察関係者を伴って入って来た。
「デパートで変死した木暮敦士さんの事件の関係者ですが、今回の被害者の当日の行動を知る方でもありましたのでお呼び致しました」
小部屋にいた刑事が少し首を傾げながら言った。
罪を犯したと思える容疑者の沢山いる拘置所の中だから、厳重なのだ。
勝手に入ってくることなど出来なかったのだ。
いくら殺されたロック歌手のマネジャーだったとしても……
勿論俺とは初対面のはずだった。
でも、何処かで会った人だった。
俺がじろじろ見ているのが気にくわないのか、その人は俺を睨み付けていた。
俺はますます、解らなくなっていた。
確かに何処かで見た顔だった。
(ボンドー原っぱの時のように思い出せねー!!)
俺は焦っていた。
(ん!? ボンドー原っぱ!? あー、あれだ。あの人だ!!)
「刑事さん、この人が木暮の兄貴を殺したの真犯人です!!」
俺は大声で叫んでいた。
さっき垣間見たゴールドスカルの意識。
鏡に映ったストーカーを俺は男性だと思い込んでいた。それが僅かな仕草で女性だと知り得たばかりだった。
それは女性が男装した姿だった。
そしてその女性は俺の目の前にいるマネージャーだったのだ。
木暮敦士はこの人を男性だと思い込んでいたのだった。
今はノーメイクだ。
でも目が同じだったのだ。
従業員用エレベーターの鏡に、慌てている彼女の姿がはっきりと写っていたのだった。
それはさっき俺を睨み付けた目、そのものだったのだ。
女は化粧一つで化けると言う。
それは、このマネージャーのことではないのだろうか?
常に一緒にいるマネージャーをMAIさんのストーカーだと木暮の兄貴は思ったんだ。
普通なら解るはずだ。
俺は単純にそう思った。
でも何故か気が付かなかった。
それはきっと、木暮には死神としての顔を見せていないからなのだろう。
彼女は恋しい人を手に入れるためには殺人さえも犯す、死神なのだろうと俺は思った。
俺はMAIさんに謝りたくて警察に面談することを頼んだ。
俺の思い込みによって、犯人扱いされてしまったからだった。
案内された場所は一階の階段側にある小部屋だった。
俺は其処で再びみずほのコンパクトの力を借りることにした。
「あのペンダントヘッドは私が買ってしまっておいた物に間違いありません」
MAIさんはまずそう言った。
きっと刑事からそのペンダントから無実が証明されたと聞かされていたのでらないのだろうか?
マネージャーには木暮敦士の才能を見出だしたのは自分だ。と言う思いがある。
売り込みに次ぐ売り込みで、木暮敦士をやっとメジャーデビューさせてやった自負もある。
ただのマネージャーで終わりたくなかったのだ。
マネージャーは木暮敦士に心血を注ぎ込んだ。
木暮敦士の甘いルックスと張りのあるボイスは、ファンの心をくすぐった。
でもそれはあくまでも仕事だった。
木暮敦士は決してMAIさんを裏切ったりしなかった。
でもそれはマネージャーを苛立たせた。
マネージャーは何時の間にか木暮敦士を愛してしまったのだった。
そんな時にMAIさんの妊娠が発覚する。
マネージャーは嫉妬に狂い、男装をしてストーカーになりすました。
そして胎児共々始末しようとしてMAIさんを階段から突き落としたのだ。
見る間に真っ赤に染まるMAIさん。
MAIさんはその時流産してしまったのだった。
MAIさんは流れた二人の愛の結晶を掌に乗せた。
小さな胎児。
それは握り拳程度だった。
(えっ、握り拳? あのゴールドスカルのペンダントヘッドと同じ大きさか?)
それと同時に、女子会潜入時の衝撃を思い出していた。
俺はMAIさんの苦しみが少しだけ解ったような気がしていた。
MAIさんは遂にそれを愛しそうに掌に乗せたのだ。
我が子が戻ってきた。
MAIさんはそう思ったのだ。
刑事立ち会いの元、俺は又ゴールドスカルのペンダントヘッドを手にしていた。
木暮敦士の本当の気持ちを妻であったMAIさんに伝えるためだった。
本当は俺だって怖い。
でもそれをすることが、霊感を持った者の務めだと思ったんだ。
そのためにみずほがコンパクトを指し示してくれたのだと思ったのだ。
あの白い霊が、本当にみずほだったのかは証明は出来ないけど……
みずほが屋上の隅に追い詰められ、自殺を装って殺された時。
俺は確かにみずほの白い影を見た。
その影が、このコンパクトの在りかを教えてくれたんだ。
中を開けてみて驚いた。
鏡の面に口紅で《死ね》とかかれていたからだ。
俺の霊感はあの時に覚醒されたのだ。
あまりにもおぞましい光景だったから……
恋人のみずほさえ助けられなかった俺が何を言っても言い訳にしかならないけど……
俺はMAIさんに木暮敦士の意思をありのままに伝えた。
でも最後にどうしても言いたかったことがあった。
それはあのペンダントヘッドに木暮敦士の霊が憑依したのは、ストーカーから妻を守りたい一心だったことだ。
「MAIさんのために、首だけになりながら木暮の兄貴は戦ったのです」
俺はやっと言えた。
「もしかしたらMAIさんは原田学さんの携帯に画像が保存されていたことを知らなかったのではないですか?」
「事件解決のヒントになったことは刑事さんから聞いていますが……」
「多分、原田学さんの携帯を使っての盗み撮りだと思います。木暮敦士さんの携帯のアルバムに入っていた画像とは何となく違うと思いました」
「どう言うことですか?」
「きっと悪戯目的を兼ねたSOSですね。だからわざと名刺に保存したのだと思います。木暮敦士さんの携帯にあったアルバム保存が見当たらないから……」
「彼らしい……」
彼女は泣いていた。
「きっとMAIさんのストーカーのことで、身に危険を感じでいたのではないでしょうか?」
「そうかも知れませんね。私が幼馴染みなんて嘘を言ったから……」
「木暮敦士さんはストーカーを男性だと思っていたようです」
「私もそう思っていました。まさかマネージャーとは?」
「でも本当は感じていたのでは?」
俺はあえて悪戯な質問をした。
彼女は頷いた。
「薄々ですが……。私達が結婚していることを公表したくないのはマネージャーでは? なんて……辛いですね」
「MAIさんは優しいのですね。木暮の兄貴が惚れるはずだ」
「いいえ、優しいなんて……。こう見えて欠講意地っ張りなんですよ」
「あっ、だからスキンヘッドか? 『新曲アピールするライブなら、もっとファンサービスしなくちゃね』ってヘアーメイクアーチストの妻にスキンヘッドを頼んだ時そう言わた。って木暮の兄貴が言ってましたね」
「本当に見えたのですね。私のは本当はファンサービスではなかったの。マネージャーに抵抗しようとしたの。その結果が……」
木暮敦士の最期の姿を思い出したのか、彼女は嗚咽を漏らした。
俺は彼女の肩にそっと手を置いた。
「ねえ、違っていたらごめんね。もしかしたらあの時の?」
彼女の言葉は、女装して行った女子会を指していると思って指を唇に立てた。
「やっぱり」
彼女はやっと笑ってくれた。
「あの時MAIさんのお腹に触って震えました。ゴールドスカルのペンダントヘッドと流れた胎児の大きさが一緒だったから……」
「だから、『あっ、あっー!?』だった訳だ」
MAIさんの発言で、大きな声を張り上げて男に戻っていたシーンを思い出し苦笑いをした。
あの時お腹に触った時感じた、ぽっかり空いた其処は何を持って来ても埋まらないだろう。
それでも新しい彼に埋めてもらいたいと思った。
「悲しい記憶ですね」
「そうよ。だから買ってしまったの。木暮の妻である限り、こうゆうことは又あると思ってね」
「もしかしたら自分への戒めですか? あっ、すいません。話しは変わりますが、あのことは内緒にしておいてくださいませんか?」
「ええ、良いわよ。でも一つだけ条件があるの。ねえ、あの時君の隣にいた可愛い子を紹介してくれたらね」
「えっ、木暮をですか!?」
「えっ、木暮って。えっー!? もしかしたらあの娘悠哉君?」
「すいません。もうさせませんので忘れてやってください」
頷きながら俺は言った。
「もしかしたら記憶から消せと?」
「そうしていただきましたら幸いです」
「そんな勿体無い」
「勿体無い?」
「そりゃ、そうでしょ。義理の弟なのよ。たっぷり可愛がって、時々眺めていたいわ」
彼女は含み笑いをしながら俺を見た。
「もし、何だったら……」
「何だったら?」
「ううん、何でもない。解ったわ。そのかわり、私の隣で可愛いカッコしてくれたらね。だって君って、霊感の強い探偵でしかも女装させたら天下一品だもの。弟と一緒に可愛がってあげる」
MAIさんは語尾を微かに上げて微笑んだ。
「うえー、やぶへびだった」
俺は意気消沈した。
MAIさんの彼はマネージャーからスキンヘッドを勧められた。
ゴールドスカルのペンダントヘッドも託された。
『彼女の気持ちを確かめるには、これをするのが一番よ』
そう言ってたそうだ。
俺は又、木暮敦士の意識と向き合うことになる。
「あっ!?」
俺は思わず声を上げた。
デパートの従業員用エレベーターの鏡に、帽子を目深に被った女性が映っていた。
男性だと思い込んでいたストーカーは女性が男性に変装したものだったのだ。
鋭い目を鏡に向けていながら、泣いていたのだ。
でもそれは目の前にいるMAIさんではなかった。
「この人は犯人じやない!!」
俺は思わず言った。
(もしかしたら彼女を犯人に仕立て上げるためにあの美容院を使ったのか? 完全犯罪を狙った誰かが企てて……)
ゴールドスカルのペンダントヘッドは、MAIさんが犯人ではないと俺に告げていた。
確かに、木暮敦士の頭をスキンヘッドにしたのはMAIさんだった。
それはマネージャーへの抵抗のためだったのではないのだろうか。
木暮敦士はストーカー被害が深刻化したら、ロックなど辞めてもいいとMAIさんに打ち明けていたからだ。
全てはMAIさんを守るためだった。
自分のせいで、彼女を危険な目に合わせたくなかったのだ。
又介護ヘルパーとして働けばいい。
木暮敦士はそう思っていたのだった。
「すいません遅くなりまして。木暮を殺したの犯人が逮捕されたと聞きまして……」
そう言いながら、木暮敦士の元マネージャーだと名乗る人が警察関係者を伴って入って来た。
「デパートで変死した木暮敦士さんの事件の関係者ですが、今回の被害者の当日の行動を知る方でもありましたのでお呼び致しました」
小部屋にいた刑事が少し首を傾げながら言った。
罪を犯したと思える容疑者の沢山いる拘置所の中だから、厳重なのだ。
勝手に入ってくることなど出来なかったのだ。
いくら殺されたロック歌手のマネジャーだったとしても……
勿論俺とは初対面のはずだった。
でも、何処かで会った人だった。
俺がじろじろ見ているのが気にくわないのか、その人は俺を睨み付けていた。
俺はますます、解らなくなっていた。
確かに何処かで見た顔だった。
(ボンドー原っぱの時のように思い出せねー!!)
俺は焦っていた。
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「刑事さん、この人が木暮の兄貴を殺したの真犯人です!!」
俺は大声で叫んでいた。
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それは女性が男装した姿だった。
そしてその女性は俺の目の前にいるマネージャーだったのだ。
木暮敦士はこの人を男性だと思い込んでいたのだった。
今はノーメイクだ。
でも目が同じだったのだ。
従業員用エレベーターの鏡に、慌てている彼女の姿がはっきりと写っていたのだった。
それはさっき俺を睨み付けた目、そのものだったのだ。
女は化粧一つで化けると言う。
それは、このマネージャーのことではないのだろうか?
常に一緒にいるマネージャーをMAIさんのストーカーだと木暮の兄貴は思ったんだ。
普通なら解るはずだ。
俺は単純にそう思った。
でも何故か気が付かなかった。
それはきっと、木暮には死神としての顔を見せていないからなのだろう。
彼女は恋しい人を手に入れるためには殺人さえも犯す、死神なのだろうと俺は思った。
俺はMAIさんに謝りたくて警察に面談することを頼んだ。
俺の思い込みによって、犯人扱いされてしまったからだった。
案内された場所は一階の階段側にある小部屋だった。
俺は其処で再びみずほのコンパクトの力を借りることにした。
「あのペンダントヘッドは私が買ってしまっておいた物に間違いありません」
MAIさんはまずそう言った。
きっと刑事からそのペンダントから無実が証明されたと聞かされていたのでらないのだろうか?
マネージャーには木暮敦士の才能を見出だしたのは自分だ。と言う思いがある。
売り込みに次ぐ売り込みで、木暮敦士をやっとメジャーデビューさせてやった自負もある。
ただのマネージャーで終わりたくなかったのだ。
マネージャーは木暮敦士に心血を注ぎ込んだ。
木暮敦士の甘いルックスと張りのあるボイスは、ファンの心をくすぐった。
でもそれはあくまでも仕事だった。
木暮敦士は決してMAIさんを裏切ったりしなかった。
でもそれはマネージャーを苛立たせた。
マネージャーは何時の間にか木暮敦士を愛してしまったのだった。
そんな時にMAIさんの妊娠が発覚する。
マネージャーは嫉妬に狂い、男装をしてストーカーになりすました。
そして胎児共々始末しようとしてMAIさんを階段から突き落としたのだ。
見る間に真っ赤に染まるMAIさん。
MAIさんはその時流産してしまったのだった。
MAIさんは流れた二人の愛の結晶を掌に乗せた。
小さな胎児。
それは握り拳程度だった。
(えっ、握り拳? あのゴールドスカルのペンダントヘッドと同じ大きさか?)
それと同時に、女子会潜入時の衝撃を思い出していた。
俺はMAIさんの苦しみが少しだけ解ったような気がしていた。
MAIさんは遂にそれを愛しそうに掌に乗せたのだ。
我が子が戻ってきた。
MAIさんはそう思ったのだ。
刑事立ち会いの元、俺は又ゴールドスカルのペンダントヘッドを手にしていた。
木暮敦士の本当の気持ちを妻であったMAIさんに伝えるためだった。
本当は俺だって怖い。
でもそれをすることが、霊感を持った者の務めだと思ったんだ。
そのためにみずほがコンパクトを指し示してくれたのだと思ったのだ。
あの白い霊が、本当にみずほだったのかは証明は出来ないけど……
みずほが屋上の隅に追い詰められ、自殺を装って殺された時。
俺は確かにみずほの白い影を見た。
その影が、このコンパクトの在りかを教えてくれたんだ。
中を開けてみて驚いた。
鏡の面に口紅で《死ね》とかかれていたからだ。
俺の霊感はあの時に覚醒されたのだ。
あまりにもおぞましい光景だったから……
恋人のみずほさえ助けられなかった俺が何を言っても言い訳にしかならないけど……
俺はMAIさんに木暮敦士の意思をありのままに伝えた。
でも最後にどうしても言いたかったことがあった。
それはあのペンダントヘッドに木暮敦士の霊が憑依したのは、ストーカーから妻を守りたい一心だったことだ。
「MAIさんのために、首だけになりながら木暮の兄貴は戦ったのです」
俺はやっと言えた。
「もしかしたらMAIさんは原田学さんの携帯に画像が保存されていたことを知らなかったのではないですか?」
「事件解決のヒントになったことは刑事さんから聞いていますが……」
「多分、原田学さんの携帯を使っての盗み撮りだと思います。木暮敦士さんの携帯のアルバムに入っていた画像とは何となく違うと思いました」
「どう言うことですか?」
「きっと悪戯目的を兼ねたSOSですね。だからわざと名刺に保存したのだと思います。木暮敦士さんの携帯にあったアルバム保存が見当たらないから……」
「彼らしい……」
彼女は泣いていた。
「きっとMAIさんのストーカーのことで、身に危険を感じでいたのではないでしょうか?」
「そうかも知れませんね。私が幼馴染みなんて嘘を言ったから……」
「木暮敦士さんはストーカーを男性だと思っていたようです」
「私もそう思っていました。まさかマネージャーとは?」
「でも本当は感じていたのでは?」
俺はあえて悪戯な質問をした。
彼女は頷いた。
「薄々ですが……。私達が結婚していることを公表したくないのはマネージャーでは? なんて……辛いですね」
「MAIさんは優しいのですね。木暮の兄貴が惚れるはずだ」
「いいえ、優しいなんて……。こう見えて欠講意地っ張りなんですよ」
「あっ、だからスキンヘッドか? 『新曲アピールするライブなら、もっとファンサービスしなくちゃね』ってヘアーメイクアーチストの妻にスキンヘッドを頼んだ時そう言わた。って木暮の兄貴が言ってましたね」
「本当に見えたのですね。私のは本当はファンサービスではなかったの。マネージャーに抵抗しようとしたの。その結果が……」
木暮敦士の最期の姿を思い出したのか、彼女は嗚咽を漏らした。
俺は彼女の肩にそっと手を置いた。
「ねえ、違っていたらごめんね。もしかしたらあの時の?」
彼女の言葉は、女装して行った女子会を指していると思って指を唇に立てた。
「やっぱり」
彼女はやっと笑ってくれた。
「あの時MAIさんのお腹に触って震えました。ゴールドスカルのペンダントヘッドと流れた胎児の大きさが一緒だったから……」
「だから、『あっ、あっー!?』だった訳だ」
MAIさんの発言で、大きな声を張り上げて男に戻っていたシーンを思い出し苦笑いをした。
あの時お腹に触った時感じた、ぽっかり空いた其処は何を持って来ても埋まらないだろう。
それでも新しい彼に埋めてもらいたいと思った。
「悲しい記憶ですね」
「そうよ。だから買ってしまったの。木暮の妻である限り、こうゆうことは又あると思ってね」
「もしかしたら自分への戒めですか? あっ、すいません。話しは変わりますが、あのことは内緒にしておいてくださいませんか?」
「ええ、良いわよ。でも一つだけ条件があるの。ねえ、あの時君の隣にいた可愛い子を紹介してくれたらね」
「えっ、木暮をですか!?」
「えっ、木暮って。えっー!? もしかしたらあの娘悠哉君?」
「すいません。もうさせませんので忘れてやってください」
頷きながら俺は言った。
「もしかしたら記憶から消せと?」
「そうしていただきましたら幸いです」
「そんな勿体無い」
「勿体無い?」
「そりゃ、そうでしょ。義理の弟なのよ。たっぷり可愛がって、時々眺めていたいわ」
彼女は含み笑いをしながら俺を見た。
「もし、何だったら……」
「何だったら?」
「ううん、何でもない。解ったわ。そのかわり、私の隣で可愛いカッコしてくれたらね。だって君って、霊感の強い探偵でしかも女装させたら天下一品だもの。弟と一緒に可愛がってあげる」
MAIさんは語尾を微かに上げて微笑んだ。
「うえー、やぶへびだった」
俺は意気消沈した。
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『彼女の気持ちを確かめるには、これをするのが一番よ』
そう言ってたそうだ。
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