トリプル・トラブル

四色美美

文字の大きさ
11 / 18

クリスマスイブは

しおりを挟む
 二学期が終わるとすぐに来るイベント。
クリスマスが其処まで迫っていた。


クリスマスって何?

イエス・キリストの誕生日?

でも、クリスチャンの方々は違うと言っているらしい。

だけど聖書にも書かれていないそうだ。

解っているのは、大天使ガブリエルがマリアに伝えたとされる救世主の受胎告知の日。

それから逆算したのか判らないが、ある行事の日となされたのだ。


それはイタリアの太陽の復活祭。
それが起源なのはどうやら間違いないらしい。

つまり冬至ってこと。
日本だと十二月二十二日。
あれっ、確かクリスマスは二十四日のはずなのに……

まあ固いことは抜きで、一年のうちで一番夜が短いからたとえその後寒い冬でも嬉しいらしい。

太陽が徐々に日差しを延ばしていく日になることが。


ローマ時代にキリスト教を広める目的で、この日が選ばれたそうだ。
布教は困難をきわめる。
だからその地域の行事と合体したようだ。


キリストの本当の誕生日はどうやら十月辺りらしい。
でも、生まれよりも亡くなった日の方が重要なのだそうだ。


つまり十三日の金曜日ってことになるのだろうか?




 恋人達は、愛の証を求めて翻弄する。
例の三人も例外ではなかった。

ホテルのディナーの後、スイートルームをリザーブしたかった。

でも、そんな余裕も度胸も無い三人。
まして正樹を抜きにして、このラブバトルに決着なんてつけられないから。


それで結局、何時もの通り家で過ごすことになる。

美紀の手料理で、家族水入らずで……
でも、公平をきすために正樹の発案で、大も仲間に加わることになった。


正樹は既に……
諦めていた。
いくら美紀が好きでも、珠希の代わりにしてはいけないと思っていたのだ。
だからそんな提案をしたのだった。

正樹は大に賭けていた。

大と美紀の結婚。
本当は、それが一番だと思っていたのだった。




 珠希直伝の料理がローテーブルに並ぶ。

襖も開け放たれていた。

珠希の仏間であるこの部屋は、夫婦が年老いた時の寝室用だった。
珠希は其処まで考えていたのだった。
まさか自分の居処になるなんて思いもよらなかったはずなのだ。


珠希も一緒に輪の中に入ってほしいと願って美紀は戸を外したのだった。


陰膳も何時ものように用意した。


「これ何?」
何も知らない大が聞く。


「ママの分だよ」
秀樹と直樹がハモる。


「流石双子だ」
大はそう言った後寡黙になった。


(――原因はこれか?)
そう思った。


大は、五年前に亡くなった珠希のことを詳しくは知らない。
でも美紀の心に魂に深い傷を負わせているのではないかと感じていたのだ。




 「可哀想だとは思わないのか?」
大は二人の部屋に入ってすぐに切り出した。


「俺達の母親代わりだって言うことか?」
秀樹の質問に大はただ頷いた。
でも本当の意味は違っていた。


「美紀は知っているんだと思うんだ」

秀樹はそう前置きしながら、珠希のラケットが美紀の手元に残った経緯を語り始めた。


「そうか。親父さんは、それほど奥さんを愛していたのか」
大は辛そうに呟いた。

美紀がどんなに正樹を愛してても、報われるはずがない。

そう感じだのだった。


でも秀樹には、その言葉は聞こえなかった。




 どうやら大は察したようだ。
この家に住み着いた、珠希の存在に。

それは亡霊ではない。
それぞれの心の中に、思い出と言う足かせになって。


『ねえ、あんた達。美紀ちゃんが誰を好きなのか知ってて言ってる訳?』

沙耶の言葉が何を意味しているのか気付いたのは、その後の正樹の行動からだった。

あのおどおどした正樹の態度は、美紀を本当は愛している意思表示ではなかったのだろうか?

大にはそれが切なく映ったのだった。
正樹は大の父親より五歳も若い。
体だって鍛えているから、ビシッと決まってカッコいい。
でも、親友・秀樹と直樹にとっては間違いなく親父なのだ。


子供と親が三つ巴のバトルを繰り広げる……

今まで美紀の父親だった正樹と、兄弟だった秀樹と直樹。

きっと美紀も苦しいはずだと思った。

でも、この争いに決着を付けるために今此処に自分がいるのではないかと思ってもいた。




 (――あの花火大会の日に初めて知ったんだ。美紀ちゃんがお父さんさんを愛していることを)

そう言ってやりたかった。
でも口を瞑った。

大だって辛い。
でも、この二人はもっと辛いはずだった。

それでも大は思っていた。
一番脈があるのは自分ではないかと。

幾ら美紀が戸籍上の父が好きでも、正樹は受け入れるはずがないと思っていたからだった。
まして、兄弟として育ってきた二人を愛せはしないと考えていた。


「俺やっぱり美紀ちゃんのこと好きだわ」
大がしみじみと言う。


「俺だって、大好きなんだ!」
拳を握り締めて、辛そうに二人が言った。


「流石に双子だ。以心伝心ってとこか?」


「だから尚更辛いんだ」

そう……
二人ともそれぞれの気持ちが解るだけに思い悩んでいたのだった。




 愛する正樹から珠希を奪った事故。
そのキッカケを作ったラケット探し。
美紀は苦しみ抜いて……
それでも正樹を愛し、珠希を感じている。

美紀にとって長尾家は、正樹同様に生き地獄なのではないのかと思った。


大は美紀を其処から救い出すために正樹から大役を任されたと思っていた。


それでも、それだけに、自分の本当の気持ちなんて言える訳がない。

大は美紀と同じ屋根の下にいながら、何にも出来ない自分に腹を立てていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

「やはり鍛えることは、大切だな」

イチイ アキラ
恋愛
「こんなブスと結婚なんていやだ!」  その日、一つのお見合いがあった。  ヤロール伯爵家の三男、ライアンと。  クラレンス辺境伯家の跡取り娘、リューゼットの。  そして互いに挨拶を交わすその場にて。  ライアンが開幕早々、ぶちかましたのであった。  けれども……――。 「そうか。私も貴様のような生っ白くてか弱そうな、女みたいな顔の屑はごめんだ。気が合うな」

手を伸ばした先にいるのは誰ですか~愛しくて切なくて…憎らしいほど愛してる~【完結】

まぁ
恋愛
ワイン、ホテルの企画業務など大人の仕事、そして大人に切り離せない恋愛と… 「Ninagawa Queen's Hotel」 若きホテル王 蜷川朱鷺  妹     蜷川美鳥 人気美容家 佐井友理奈 「オークワイナリー」 国内ワイナリー最大手創業者一族 柏木龍之介 血縁関係のない兄妹と、その周辺の何角関係…? 華やかな人々が繰り広げる、フィクションです。

冷徹公爵の誤解された花嫁

柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。 冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。 一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。

ドリンクバーさえあれば、私たちは無限に語れるのです。

藍沢咲良
恋愛
同じ中学校だった澄麗、英、碧、梨愛はあることがきっかけで再会し、定期的に集まって近況報告をしている。 集まるときには常にドリンクバーがある。飲み物とつまむ物さえあれば、私達は無限に語り合える。 器用に見えて器用じゃない、仕事や恋愛に人付き合いに苦労する私達。 転んでも擦りむいても前を向いて歩けるのは、この時間があるから。 〜main cast〜 ・如月 澄麗(Kisaragi Sumire) 表紙右から二番目 age.26 ・山吹 英(Yamabuki Hana) 表紙左から二番目 age.26 ・葉月 碧(Haduki Midori) 表紙一番右 age.26 ・早乙女 梨愛(Saotome Ria) 表紙一番左 age.26 ※作中の地名、団体名は架空のものです。 ※この作品はエブリスタ、小説家になろうでも連載しています。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

【完】はしたないですけど言わせてください……ざまぁみろ!

咲貴
恋愛
招かれてもいないお茶会に現れた妹。 あぁ、貴女が着ているドレスは……。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

処理中です...