大魔導師と賢者

河内 祐

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「“秋明菊の大魔導師”エメル・サフィスです。よろしくお願いします」

僕はそう挨拶をしてペコリと頭も下げる。
お辞儀の対象は僕と同じように最後まで残っていた人たちにだ。

「よっよよよろよろろろしくおねがします!」
「ふーん♪よろしく♪」
「……しくです」
「こちらこそよろしくお願いします」

上から順次に。
発言が挙動不審になってしまっている人は先ほど、挙手をして今回の作戦から降りようとした人だ。身長は低めで髪は薄桃色であった。

「わたわたたしは“杏の大魔導師”ラクク・バートンです」

最後にはキリッとした顔をしようとしていたが、どう見てもあれだ、震えているチワワのようだった。

「今度は♪ボクかな♪」

次に自己紹介をし始めたのはやけに顎と鼻が長いタイプの人だった。髪は金髪で反るようにして上にぐんと伸びている。

「ボクは“ 葛かずらの大魔導師”♪ルカン5世……ッサ♪」

一泊置いてからこちらに振り返るようにして、一体どこにしまっていたのかローブから大量のバラをばら撒いていた。
まぁおそらく魔法なんだろうが、

「このボクが♪いるからには♪「“曼陀羅華の大魔導師”ロコ……トランペルトです」
「ちょっと♪⁉︎」

ルカンさんの話を遮るようにして、今度は先ほど声が小さくて少し聞きづらい人が答えた。
声は若さ特有のハリがあるのだが、どこか声がカスカスで、口には皮のマスクがしてあった。
猫背になっていたがこの中で一番背が高く、髪はくしゃくしゃで黒色だ。

「……」
「おや?ついに私の出番ですかな?」

トランペルトさんがチラリと最後の人に視線をやり、その視線を受けて、最後の人も自己紹介を始めた。

「“千日紅せんにちこうの大魔導師”コウヤ・カワカミです。みなさまどうぞよろしくお願いします」 

最後の人は一番この中で年が上だった。もしかすると今回の中で一番年上かもしれない。髪はオールバックの白髪で、綺麗に髭も整えていた。

「“千日紅せんにちこう”って確か15人の隠者と敵対しながらも、ボコボコにしたあの……!」

バートンさんがカワカミさんの名前を聞き指を指し、びっくりしたような表情で目をまんまるにしていた。

「「「‼︎」」」

それを聞き、僕たちも驚く。
隠者は大魔導師、賢者を剥奪された危険人物たちそれらに対抗どころか圧倒する人間いるとは。

「もう少し……かっいい伝わり方がいいですねぇ……」

すこし、頬を赤らめて恥ずかしそうにカワカミさんが答える。

「しかし、私の記憶が正しければ皆さんにもそういった記録があるはずですよ」

そう言ってカワカミさんが周囲を一瞥する。

「クララ・バートンさん確かあなたはタケ村にて行われていた隠者とその取り巻きによるサバトを壊滅させておりましたね」
「‼︎知ってたんですか?」

びっくりして口を隠すように押さえていたが細々とした声で聞いてきた。

「情報にはしっかりと目を通しておきたい手技でして」

そう言って今度はルカン5世の顔を見る。

「おっ♫次はボクかな♪輝かしいボクの功績だ♪あなただけの口では足りな「ルカン5世さんは隠者による違法魔法植物の培養や違法魔法生物の繁殖を防止、それぞれの生物の殲滅を行っていましたね」」
「最後まで聞いて欲しか「それは失礼しました」話を聞いているかね♪」

言う内容を途中で止められたら困ったような顔で、櫛に髪を通して整えていた。

「トランペルトさんは最近、隠者による散布された毒魔法の消毒とそれらにかかってしまった人の治療、それに何より3名による毒を扱う隠者を圧倒したと記憶していますな」
「……」

ペコリと背を曲げたまま頭を下げる。
その動きでカワカミさんが言っている事が事実だと伺えた。

「そして、最後にエメル・サフィスさん」

そして僕に視線を向ける。それに合わせて班員全員の視線がこちらに向いた。

「あなたは賢者と協力して隠者1人の逮捕に至ってますね。そして隠者主導のテロ組織の壊滅作戦の参加が4回、その際に逃走した隠者5人を瞬時に壊滅」
「よく知ってますね」
「私もいたんですよ」

ふふふとカワカミさんが笑う。

「私が確認したところ今回招集された方のほとんどが過去に隠者と戦ったもの、もしくは高い戦闘力を持って危険生物の対処にあたることがあった方達ですね」
「そう言う事だよ!」

そう言ってナナミヤさんが顔を出す。

「今回の作戦は戦闘になる可能性が高いです!能力を見て戦えるメンツを用意しました!」

そう言ってえっへんと胸を張る。

「では私も自己紹介を“文月の仙人”その名を」
「「「「「結構です」」」」」

「なんでじゃ!」




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