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真実
第10話 魔法
しおりを挟む怒りで白い肌を真っ赤に染めるリリアに、ヨウォンは戸惑う。その横で、憤慨した様子の義母はいい加減我慢ならなくなったのか、言い聞かせるようにリリアの前に仁王立ちした。
「あなたは、少し調子に乗りすぎているようだわ。私がどれだけ愛情を注いでも、あなたは私に反抗するばかりで言うことを聞きもしないし、暴れるばかり。一体、亡くなったあなたのお母様はどんな教育を施しておられたのかしら」
声音は幾分穏やかなようだったが、その表情は憤怒に歪んだ悪鬼そのもの。取り繕うように身につけられた美しい仮面が落ちて粉々に砕かれ、真の顔が現れたようだった。
母を馬鹿にされたリリアは、しかしそんな義母の顔を見ても戸惑うことなく、怒りを顕に反論する。元々、この女の本性など、リリアにはお見通しだったのだ。
「少なくとも、あなたのような母親が施す教育よりはましな教育を受けてきたわ!他人の男を奪うことしか能のない女にならずにすんだもの!」
言い放ったその言葉に、義母の怒りも頂点に達したのだろう。振り上げられた手に、リリアは痛みを覚悟する。
しかし──……。
「やめなさい!!」
意外にも義母の行為に声を荒らげたのはリリアの父、ヨウォンだった。
そして振り上げられた手を掴んでいたのは──……。
「……ジル?」
リリアのか細い声に、ジルは反応しない。しかしその手は間違いなく義母の細い手首を握っていた。
「な、なにを……」
義母は戸惑うようにジルを見た後、状況を理解したのか、顔を赤くする。愛する夫が先妻の娘を庇うような発言をしたこと。そして愛娘が憎たらしい先妻の娘から奪った男が、自分の行動を阻んだこと。
すべてが許せなかった。
「離しなさい!!」
義母の金切り声に、ジルは答えない。そして義母の腕を決して離そうとはしなかった。
なにか、様子が可笑しい。
リリアが怪訝に思ったその時。驚くべき現象が起きた。
「……ひっ……ひ、あぁ」
義母の腕が、枯れ枝のように干からびていく。徐々に、徐々に、茶色く変色し、細くなっていく。腐った老木のような腕だ。そして変化は腕だけではなく、全身に広がっていた。リリアの母に似ていた容貌はいまや見る影もなく。隈が濃く、両の目は窪み、頬は垂れて……その風貌はまさしく。
まさしく、童話でよく見る魔女そのもの──……。
「お……お母さま……?」
ミラの声が裏返る。先程まで若々しさを保っていた己の母のあまりの変わりように本人かどうか聞かずにはおれなかったのだろう。
しかし、その問いかけに義母は答えない。いや、答えることができないだけかもしれなかった。
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