血塗られた桃太郎

ushiraku

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はじまり

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 むかし、むかし。

 あるところにおじいさんと、おばあさんが住んでいました。

 おじいさんは山へ芝刈りに。
 おばあさんは川へ洗濯に行きました。



「ふー、今日の洗濯はもう終わりかねぇ。疲れたわ」

 おばあさんが一仕事終え休憩していたところに、何かまんまるとしたものが流れてきました。
 目を凝らしてよく見ると、それは大きな桃でした。

「なんと大きな桃!このまま流されて行くのはもったいない。とりあえず、家に持って帰ろうかねぇ」

 おばあさんは流れてきた桃をお腹に抱え、家に持って帰りました。



 おばあさんが家に着いた頃、ちょうどおじいさんも山から帰ってきました。

「おい、ばあさん。なんじゃその大きな桃は!?」
「わたしも分からんのじゃけど、川で洗濯しとったら流れてきたんね」

 二人とも驚きを隠せませんでしたが、とりあえず家の中へと運び込みました。

「この桃、どうするや?」
「そりゃ決まっとろうもん。食べるじゃろ」

 この時代、甘い食べものというのはとても貴重なものでした。今でいうスイーツなど、もちろんありません。
 お腹を空かせたおじいさんとおばあさんは、桃を食べることにしました。

「ふんっ!」

 おばあさんが渾身の力を込めて鉈を振り下ろすと、桃がパカっと綺麗に真っ二つに割れました。

 すると、中から大きな赤ん坊が出てきたのです。

「おっとたまげた!」

 二人は驚きました。

 赤ん坊もまた、目をまん丸にして驚きました。

「え? もしかして、どこかの家の子か?」

 おじいさんは赤ん坊に話しかけましたが、もちろん返答はありません。赤ん坊はまだ言葉を話せませんから。

「うーん、この辺に子連れの家とか無いはずや。捨て子じゃないと思うけどねぇ」

 おばあさんは記憶を巡らせましたが、思い当たる節がありませんでした。

「……そうか。と、とりあえずじゃ。今日はこの子を泊めおくとして、明日また近所の家をあたってみようかの」

 二人の意見は合致し、この赤ん坊を保護することにしました。
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