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鬼ヶ島
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しばらく行くと、鬼ヶ島が見えてきました。
「あれが鬼ヶ島に違いないわん!鬼の匂いがプンプンするわん!」
吠える犬が見ている先には、禍々しい形をした島がありました。
◆
鬼ヶ島に着くと、お城の門の前に大きな鬼が立っていました。
「どうする? とりあえず牽制しとく?」
「賛成!」
桃太郎の提案に、全員が賛成。
桃太郎は大きな石をつかむと、鬼に向かって投げました。
猿は素早く門に登り、鍵を開けます。
キジは鬼の目をつつきました。
「痛っ!痛っ!やめてくれ!うわー、大将ー!」
そういうと、鬼はお城の中に逃げていきました。
すると、お城から沢山の鬼が出てきて、ついに大きな鬼が現れました。
「このクソどもが!オレ様がぶっ殺してやるわ!」
大きな鬼は、金棒を振り回しながらそう言い放ちました。
「あんたが大将か?」
そう言うと同時に、桃太郎は素早く鬼の懐に入り込んで、
「村に来て、随分と悪さをしてくれたな!くらえ、おれの拳!」
と、渾身のパンチを繰り出しました。
しかし、鬼は微動だに動かず、全く反応をしません。
「あ? 今何かしたか?」
「え?」
鬼は左手で桃太郎をつかみ、右手を大きく振り上げました。
次の瞬間、ミシミシという鈍い音が体内で鳴り響き、それと同時に桃太郎は門の前まで吹っ飛ばされました。
「パンチってのはな、こうやるんだよ。小僧」
「……ガハっ」
桃太郎は蹲った体勢から、身動きが取れません。
鬼は構わず、桃太郎の近くに向かってきます。
「威勢がいい割には、随分と弱いんだな。ま、そういう命知らずなやつ嫌いじゃないけどよ」
「く……」
「そういえば、お前はここには一人で来たのかい?」
鬼は桃太郎の前で屈み、問いました。
「……は? 何バカなこと言ってやがる。仲間と一緒に来たにきまってるだろ!」
「仲間ぁ? どんなやつらだい?」
「犬、猿、キジだ。大切な仲間さ!」
「そうかい? そんなやつらは、ここにはいないけどねぇ?」
鬼は城の方を振り返りました。つられて、桃太郎も城の方を見ました
「ほらな?」
「なん……」
城の前には、犬も猿もキジの姿が見あたりませんでした。
しかし、そこには大量の血痕と臓物が撒き散らされています。
「あ、そっか。オレ達が食ったからいないのか!がっはっは!」
桃太郎は、目の前の光景を受け入れられることができません。
「いやー、オレ達腹ペコだからよ。何でも食っちまうんだよ」
唖然とする桃太郎をよそに、鬼は話を続けます。
「お、お前のその腰の袋。美味しそうな匂いがするな。よこせ!」
「やめろ!くっ……」
抵抗する桃太郎を難なく押さえつけ、鬼は袋を手にしました。
「ほう、美味しそうな団子じゃねえか。どれ、食ってやろう」
鬼は袋の中の団子を、全て頬張りました。
しかし、ほんの数秒も経たないうちに、
「う…うぇ!くそまず!くそまずいぞ!!」
鬼は口に入れた団子を全て吐き捨て、何度も何度もそう叫びました。
「誰だ? こんなクソまずい団子を作るのはよ? 今から殺しにいこう。行くぞ、野郎ども!」
「わかりやした!大将を怒らせた恨み、晴らしてみせやしょう!」
城の中の鬼達は興奮した様子で、武装をし始めています。
大将鬼もまた準備を整えようとしました。
「あれ? 金棒は? おい、お前ら。おれの金棒知らねえか?」
「いえ、見てませんね。誰か、大将の金棒知らねえか?」
大将鬼も、それ以外の鬼も金棒を探しますが、どこにも見当たりません。
『グオオオオオオン!』
突如として、除夜の鐘のような大きな金属音が鳴り響きました。
「何の音だ? 新手の敵襲か? 面白い、返り討ちにしてやろう。おい、手下ども!迎え撃つぞ!」
大将鬼は、血気盛んに声を荒げました。
しかし、手下の鬼達は微動だにしません。それどころか、青ざめた表情で大将鬼を見ています。
「お前ら、どうした? 戦いだぞ? もっと雄叫びを上げろよ!」
それでも手下の鬼達は、誰一人として動きませんでした。
「おい!お前ら!いい加減にしろよ!ぶん殴るぞ!!」
「……い、いえ。大将。ひ、膝が」
「ああ? 膝がなんだ? お前達、敵にビビって膝震えてんのか?」
「……そ、そうじゃなくて。その。大将の膝が……」
「オレ様の膝? それがどうしたっていうんだ……よ?」
大将鬼は、手下鬼の目線を辿りました。
すると、その先にあったのは、
「ぎゃあああああああああああ!オレの膝が!オレの膝が!」
骨が剥き出しになった、大将鬼の右膝でした。
「結構、軽いんだな。この金棒」
「お、おま……」
先ほどまで蹲っていた桃太郎が、鬼の金棒を手に、大将鬼の後方に立っています。
さらに、桃太郎は金棒をもう一度振りかぶって、
『グオオオオオオオオオオオン!』
鬼の左膝を粉々に砕きました。
両膝を粉々に叩き折られた大将鬼は、文字通り、膝から崩れ落ちました。
大将鬼は、あまりの痛みに声すら挙げられません。
「じゃ、次は」
『グオオオオオオオオオオオオオン!』
「はい、次」
『グオオオオオオオオオオオオオン!』
「こっちもだな」
『グオオオオオオオオオオオオオン!』
「あ、ここも」
『グオオオオオオオオオオオオオオン!』
「逆にここもか」
『グオオオオオオオオオオオオオオン!』
◆
どれだけの時間が経ったことでしょう。
とうとう大将鬼は、全ての関節を粉々に潰され、微動だに動くことすらできなくなりました。
「……た、たす……」
顎関節すら潰されてしまったため、大将鬼はまともに話すこともできません。
消え入りそうな呼吸の音だけが、彼の口元から漏れ出てきます。
「ま、別にいいんだけどさ。仲間が殺され、きび団子をバカにされたのもさ」
桃太郎は金棒をヒュンヒュンと振り回しながら、言葉を続けます。
「村のために鬼退治するとか、どうでも良かったんだよね。だって、元々ここを占拠するつもりだったんだから」
「……なん……で」
「いやー、あの村退屈だったんだよね。だからさ、鬼ヶ島をおれが占拠してさ、逆に村を襲う側にまわった方が楽しいじゃん」
笑いながら話を進める桃太郎の目には、もう光が灯っていません。
「というわけで、今日からおれがこの鬼ヶ島の大将ということで。今までご苦労様でした。さよなら」
振り下ろした金棒を最後に、大将鬼はもうぴくりとも動かなくなりました。
「手下鬼のお前らもさ、こういう風になりたい? なりたいやつはこっちに来てくれる?」
桃太郎の問いには、誰も答えません。
答えないことこそが、彼らの答えでした。
◆
大将鬼の返り血を浴びた桃太郎は、川で顔を洗うことにしました。
その水面に映る桃太郎の顔は、まるで鬼のような形相でした。
「あれが鬼ヶ島に違いないわん!鬼の匂いがプンプンするわん!」
吠える犬が見ている先には、禍々しい形をした島がありました。
◆
鬼ヶ島に着くと、お城の門の前に大きな鬼が立っていました。
「どうする? とりあえず牽制しとく?」
「賛成!」
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桃太郎は大きな石をつかむと、鬼に向かって投げました。
猿は素早く門に登り、鍵を開けます。
キジは鬼の目をつつきました。
「痛っ!痛っ!やめてくれ!うわー、大将ー!」
そういうと、鬼はお城の中に逃げていきました。
すると、お城から沢山の鬼が出てきて、ついに大きな鬼が現れました。
「このクソどもが!オレ様がぶっ殺してやるわ!」
大きな鬼は、金棒を振り回しながらそう言い放ちました。
「あんたが大将か?」
そう言うと同時に、桃太郎は素早く鬼の懐に入り込んで、
「村に来て、随分と悪さをしてくれたな!くらえ、おれの拳!」
と、渾身のパンチを繰り出しました。
しかし、鬼は微動だに動かず、全く反応をしません。
「あ? 今何かしたか?」
「え?」
鬼は左手で桃太郎をつかみ、右手を大きく振り上げました。
次の瞬間、ミシミシという鈍い音が体内で鳴り響き、それと同時に桃太郎は門の前まで吹っ飛ばされました。
「パンチってのはな、こうやるんだよ。小僧」
「……ガハっ」
桃太郎は蹲った体勢から、身動きが取れません。
鬼は構わず、桃太郎の近くに向かってきます。
「威勢がいい割には、随分と弱いんだな。ま、そういう命知らずなやつ嫌いじゃないけどよ」
「く……」
「そういえば、お前はここには一人で来たのかい?」
鬼は桃太郎の前で屈み、問いました。
「……は? 何バカなこと言ってやがる。仲間と一緒に来たにきまってるだろ!」
「仲間ぁ? どんなやつらだい?」
「犬、猿、キジだ。大切な仲間さ!」
「そうかい? そんなやつらは、ここにはいないけどねぇ?」
鬼は城の方を振り返りました。つられて、桃太郎も城の方を見ました
「ほらな?」
「なん……」
城の前には、犬も猿もキジの姿が見あたりませんでした。
しかし、そこには大量の血痕と臓物が撒き散らされています。
「あ、そっか。オレ達が食ったからいないのか!がっはっは!」
桃太郎は、目の前の光景を受け入れられることができません。
「いやー、オレ達腹ペコだからよ。何でも食っちまうんだよ」
唖然とする桃太郎をよそに、鬼は話を続けます。
「お、お前のその腰の袋。美味しそうな匂いがするな。よこせ!」
「やめろ!くっ……」
抵抗する桃太郎を難なく押さえつけ、鬼は袋を手にしました。
「ほう、美味しそうな団子じゃねえか。どれ、食ってやろう」
鬼は袋の中の団子を、全て頬張りました。
しかし、ほんの数秒も経たないうちに、
「う…うぇ!くそまず!くそまずいぞ!!」
鬼は口に入れた団子を全て吐き捨て、何度も何度もそう叫びました。
「誰だ? こんなクソまずい団子を作るのはよ? 今から殺しにいこう。行くぞ、野郎ども!」
「わかりやした!大将を怒らせた恨み、晴らしてみせやしょう!」
城の中の鬼達は興奮した様子で、武装をし始めています。
大将鬼もまた準備を整えようとしました。
「あれ? 金棒は? おい、お前ら。おれの金棒知らねえか?」
「いえ、見てませんね。誰か、大将の金棒知らねえか?」
大将鬼も、それ以外の鬼も金棒を探しますが、どこにも見当たりません。
『グオオオオオオン!』
突如として、除夜の鐘のような大きな金属音が鳴り響きました。
「何の音だ? 新手の敵襲か? 面白い、返り討ちにしてやろう。おい、手下ども!迎え撃つぞ!」
大将鬼は、血気盛んに声を荒げました。
しかし、手下の鬼達は微動だにしません。それどころか、青ざめた表情で大将鬼を見ています。
「お前ら、どうした? 戦いだぞ? もっと雄叫びを上げろよ!」
それでも手下の鬼達は、誰一人として動きませんでした。
「おい!お前ら!いい加減にしろよ!ぶん殴るぞ!!」
「……い、いえ。大将。ひ、膝が」
「ああ? 膝がなんだ? お前達、敵にビビって膝震えてんのか?」
「……そ、そうじゃなくて。その。大将の膝が……」
「オレ様の膝? それがどうしたっていうんだ……よ?」
大将鬼は、手下鬼の目線を辿りました。
すると、その先にあったのは、
「ぎゃあああああああああああ!オレの膝が!オレの膝が!」
骨が剥き出しになった、大将鬼の右膝でした。
「結構、軽いんだな。この金棒」
「お、おま……」
先ほどまで蹲っていた桃太郎が、鬼の金棒を手に、大将鬼の後方に立っています。
さらに、桃太郎は金棒をもう一度振りかぶって、
『グオオオオオオオオオオオン!』
鬼の左膝を粉々に砕きました。
両膝を粉々に叩き折られた大将鬼は、文字通り、膝から崩れ落ちました。
大将鬼は、あまりの痛みに声すら挙げられません。
「じゃ、次は」
『グオオオオオオオオオオオオオン!』
「はい、次」
『グオオオオオオオオオオオオオン!』
「こっちもだな」
『グオオオオオオオオオオオオオン!』
「あ、ここも」
『グオオオオオオオオオオオオオオン!』
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◆
どれだけの時間が経ったことでしょう。
とうとう大将鬼は、全ての関節を粉々に潰され、微動だに動くことすらできなくなりました。
「……た、たす……」
顎関節すら潰されてしまったため、大将鬼はまともに話すこともできません。
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桃太郎は金棒をヒュンヒュンと振り回しながら、言葉を続けます。
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振り下ろした金棒を最後に、大将鬼はもうぴくりとも動かなくなりました。
「手下鬼のお前らもさ、こういう風になりたい? なりたいやつはこっちに来てくれる?」
桃太郎の問いには、誰も答えません。
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