とあるウシのマイスペック研究日誌

ushiraku

文字の大きさ
1 / 8

日誌のはじまり

しおりを挟む
2022年1月1日。

年末年始、おれは自分の過去を振り返ってみた。

36年間分全てを振り返るほどの余裕がなかったので、とりあえず18年間分を紙に書き出した。

この18年間分というのは、おれが社会人になってから今に至るまでの時間だ。

おれは、去年から『18ヶ月後に就職する』という目標に向かって自己理解を進めている。

そして、今年の秋頃にはその18ヶ月目を迎える。

タイムリミットは刻々と迫ってきている。

しかし、今のところ焦りはない。

やることをちゃんとやっていれば、結果はついてくると思っているからだ。

いや、少し嘘をついた。焦りはある(笑)。

でも、だからといって暴挙に出て就職先を安易に決めたくないし、これからの長い人生を考えて、今時間に余裕があるうちに自己理解を深めたいと思っている。



おれは、20代半ばに「双極性障害」という病気にかかった。

この病気は、いわば「メンタルを不安定にする病気」だ。

メンタルには、二つの側面がある。


一つは、ポジティブな側面。

簡単にいうと、松岡修造さんみたいな感じだ。

とにかく明るくて情熱的な性質をもっている。

なので、周りからは「元気で明るい性格」だと認識されてしまう。ポジティブ=善のような感じだ。

もう一つは、ネガティブな側面。芸人のヒロシさんみたいな感じだ。

とにかく暗くて卑屈で、何に対しても悲観的な性質をもっている。

なので、何か落ち込んだことがあったとき、「死にたい」と考えてしまいがちである。

周りからも「暗くて嫌な性格」だと認識されやすい。ネガティブ=悪。


人間は誰しもこの二つの性質を持っていて、適切なタイミングで微細に変化している。

誰しも明るくなるときもあれば、落ち込むこともある。

それが正常だ。

しかし、双極性障害の当事者は、このポジとネガの波が半端なく急上昇・急下降している。

それはまるで、ジェットコースターのような波形だ。

また、このポジとネガの波を自分ではコントロールできない。

何の前触れもなく超ポジになったり、超ネガになったりする。

超ポジになったときは、多額のお金を一瞬で使い切ってしまったり、三日三晩ほぼ寝なくても作業に没頭できる。

しかし、気分も一気に明るくなるため、一見「元気」になったように見える。躁状態であることを、周りからは気づかれにくい。

超ネガになったときは、布団から出られないほどに寝込んだり、常に自分を責めてしまったりして希死念慮や自傷行為に走りがちだ。周りからは気づかれやすい。

自分でこの波をコントロールできないため、自身も家族も周囲の人も、全員疲れ切ってしまう。



まあ、ここまでは色んなサイトや本に書かれていたり、YouTubeでも見聞きする情報だ。

精神科医および当事者たちが語っている。

しかし、これらの情報・体験談はあくまでも「双極性障害=病気」と見做してのものだ。

ウシであるおれは、一旦この「病気としての双極性障害」という捉え方を捨ててみようと思う。

そして、新たに『スペック(特殊能力)』として、自分の特質を定義づけしたい。

双極性障害ではなく『ダブルマインド(双極の心)』というネーミングはどうだろうか。

100人に1人の患者ではなく、100人に1人の『スペックホルダー』と捉えるのはどうだろうか。

病人として認知するよりも、何となく気分が前向きになる気がするのは、おれだけだろうか(笑)。

ダブルマインドには、二つの特性がある。


一つ目は、ハイマインドだ。この状態になると、強いリーダーシップを発揮したり、一般人では怯むような物事にも果敢にチャレンジする行動力が備わる。

人当たりもよく、誰からも好印象を抱かれる。


二つ目は、ローマインド。どんな些細なことも見逃さない目を持ち、リスクを最小限に抑えた思考ができる。神経質な性質なので周囲からは浮いてしまうが、高い集中力をキープすることが可能だ。


この二つのマインドを、自由自在に使いこなせるようになれば、今よりも人生が生きやすくなると思う。

まるで車のギアを切り替えるみたいに、スマホの電源を入れるみたいに。

しかし、現実問題としてはなかなか難しいと思う。

なぜなら、現状ではこの「ギアが切り替わる瞬間」がわからないからだ。

なので、おれはこれまでの過去を振り返ることによって『自分がギアチェンジした瞬間』を見つけたいと思う。

そして、それらの瞬間を拾い集め、共通点化したい。

もし、共通点化できれば、ギアチェンジの前兆や対策などが分かるようになるとおもう。

そうなると、マインドの波に振り回されず、逆に使いこなすことができるのではないかと考えている。

この日誌は「生きやすい自分を見つける」ための研究日誌なのだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

処理中です...