うつ病のウシ

うつ病のウシ

　うつ病になって、会社を辞めた。

　きっかけは、色々とあった。

　直属の上司を見るたびに胃痛や頭痛、吐き気の症状が出だしたりとか。
　職場へのバスに乗っただけでお腹が痛くなったりとか。
　ご飯を食べても、味が感じられなくなったりとか。

　その時期は、家庭面でもトラブルがあった。
　家族同士の衝突で、いつ我が家が「家庭内殺人」になるやもしれぬ状態だった。
　
　自分にとって、安心して過ごせる場所がどこにもなかった。

　その後、おれの症状は日に日に悪化し、精神科主治医の意見もあって退職することになった。

◆

　それから数年の時が経つ。
　この間、病状が良くなって社会復帰もしたけど、入社後しばらくして体調を崩し、結局また退職するサイクルが続いている。

　理由はもちろん、自分の甘えによるところが大きいのだと思う。
　でも、なぜこうも「社会一般的な暮らし」ができないのかと悲観的になってしまう。
　社会生活がまともに送れない自分が、まるで「劣等種」という刻印を押されているような気がしてならない。

◆

　ある日、仲の良い友人と話していたところ、こう言われた。

『ウシ君はさ、焦りすぎなんだと思うよ。そんなに自分を追い詰めなくていいじゃん。マイペースに生きようよ』

　焦りすぎ。
　追い詰めている。
　マイペースに生きる。

　これらの単語が、自分の胸にすーっと染み込んでくるように感じられた。
　そうか、自分は焦っていたんだな。追い詰めていたんだな。マイペースじゃなかったんだな。

　友達の言葉によって、自分の現状を客観的に見つめ直すことができた。
　本当にありがとう。

◆

　それからおれは「焦らない、追い詰めない、マイペース」を大切にして、毎日を生きている。
　今では逆に、マイペース過ぎる生き方になってしまったのかもしれないけど。
　でも、これからの人生も、周りに左右されず自分が思った通りに生きていきたいと思っている。