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いかせないよ、シーラ (坊ちゃま視点)
大人なシーラ、子どもな僕ら
キースがクリムト兄様のところへ報告へ行く、というので僕とシーラも付いて行った。
シーラが兄上の部屋を独特なリズムで3回ノックすると、扉が開いた。
「やあシーラ、お早う……」
兄上は、僕たちを見て驚いた。
特にキースが戻って来てる事に。
驚いて声の出ない兄上に、シーラが静かに告げた。
「クリムト様、お客様で御座います」
「あ、ああ、……どうぞ」
朝からいきなりの来客で動揺したままの兄上が、僕とキースを部屋の中へ招いた。
「お戻りに、なられたのですね」
「ああ、戻った。
メイヤードの街も、元通り……まあ、荒れてきた街を放置してた町長の首は挿げ替えて、高過ぎる宿泊料金を取ってた宿屋は廃業、仕事しない冒険者とランクを偽ってた冒険者はまとめて炭鉱送りにして、いつまでもくだらない噂を根拠に正義と称して虐めを繰り返してた馬鹿も追放したから、少々人が減ったがな」
キースは一気にそれだけ喋ると、黙った。
そして、大きなため息をついた。
色々大変だったんだろう……
だから、全部燃やせばいいって言ったのに。
けど、僕もさすがにそんな事言えないし、兄上もどう言っていいか分からないみたいで、部屋には沈黙が流れた。
「……」
でも、そんな中シーラが静かに口を開いた。
「アレイス公爵令息様。
メイヤードの住人として、厚く御礼申し上げます」
そうして、深々とキースに頭を下げた。
シーラは一番の被害者で、そんな必要ないのに。
だからなのか、キースはシーラに言った。
「では俺もアレイス家の人間として、メイヤードの異常事態を放置した事を謝罪しよう。
町長の報告を鵜呑みにし、巡視にも出ていなかった。
アレイス家の職務怠慢だ……申し訳ない」
「そのお言葉、他の住民の方々にお伝えしても宜しいですか?」
「ああ……俺の言葉として、なら」
「かしこまりました」
シーラは、町長たちがどうなったのか聞かなかった。
この国で公爵の不興を買う事の意味が分かっているから……だと、思う。
シーラは、僕や兄上よりずっと大人なんだ。
兄上がぽそりと言った。
「……強いね、シーラは」
「いえいえ、本当に強かったら馬車停で倒れたりしませんよ!平々凡々というやつです」
「いや、お前はすごいよ。
うちの騎士が言ってた。
畑の作物を踏み荒らさないで魔物を倒すのがこんなに難しいとは、ってな」
やっぱり、あの騎士はシーラが受けてあげてた依頼をやったらしい。
で、シーラよりうまくやれなかった……
当然だ!
シーラは畑に出て来る魔物にとても詳しいし、畑を農家さんがどれだけ大事にしてるかも知ってる。
ちょっと剣の腕がたつからって、調子に乗ってた奴には良い薬になっただろう。
だけど、シーラはそんな野郎の事まで擁護してあげるらしい。
「受けた時期が悪かったんじゃないですか?
冬ごもりの準備で、魔物たちも見境が無くなってますからね」
「……分かった、そう伝えとく」
シーラはその返答を聞いて、にっこり笑った。
そして言った。
「ああもうこんな時間だ!
アレイス様も、早くご準備なさらないと。
モートン様、アレイス様をお部屋までお送り頂けますでしょうか?」
「あ、……うん」
「それでは、後ほど教室でお会いしましょう。
さ、クリムト様も急いで」
そうして、僕とキースは兄上の部屋から追い出された。
***
「……で、首尾は」
「勿論、いつでも使える。
マジナイも、ノロイも」
兄上に追い出された僕とキースは、誰にも聞かれないように遮音魔法を張って話す。
この「セイなる呪い」は、禁じられた魔法の一つだ。
マジナイ、の方はまだしも……
「呪い?」
「ああ、四六時中欲情しっぱなしになる呪い」
「……どうなんの、それ」
「飲み食いも寝るのも忘れてオナりまくって死ぬ」
「怖っ!!」
最後に人を殺める呪い。
それは、ヒト相手にかけてはいけない呪い……
本来、牛や馬の繁殖に使うための呪いらしくて、解呪の方法もちゃんと乗ってたけどね。
「……なあ、それもしかして」
「うん、そう」
「解けないの?」
「なんで?死ねばいいじゃん別に」
「いや監獄の風紀が乱れるから止めて欲しいんだが」
「そうなの?じゃあ止めとく」
キースが困るんじゃ仕方ない。
こいつとは他人な気がしないし……
あ。
「そう言えば、キースんとこの騎士……
一緒にダンジョンに行った、あいつだけど」
「ああ、今回の事で気になる事があってな。
……側近から外した」
「そうなの?」
「ああ……どうも一般民を見下す癖がついたようで、畑の事も謝ろうとしないしな。
まあクビでも良いんだけど、俺って寛大だからさ」
子どもの時から自分についてくれた騎士だから、少しはね……とキースは言った。
まあ、大事な部下ではあったんだろうな。
「うん、良い判断だと思う。
理想のキース様像が強すぎて引いたし」
「は?そんな事があったのか?」
「うん」
ダンジョンで何があったか、細かい事は後で言おう。
「で、いつにするの」
「うーん、そうだなぁ……」
「決め切らないなら、また後で話す?」
「ああ、そうしよう。
放課後、俺の部屋に来てくれ」
「分かった」
僕とキースは本格的に計画を練るため、また放課後集まる事になった。
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