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いきましょうか、坊ちゃま
夢の中か、生と死の狭間か
しおりを挟むモートン坊ちゃまにめちゃくちゃにヤられた俺は、気が付いたら真っ白な空間にひとり佇んでいた。
「どこだ、ここ」
どこだか分からないけど、この世にある場所でないことは分かる。
と言う事は、まさか腹上死……
いや、この場合は腹下死?
「……なんてこった」
ま、ゲーム本編始まってんだもんな。
いつ死んでもおかしくないっちゃおかしくない、か……
死に方が想定外だっただけで。
「……俺、また生まれ変われるかなぁ」
まだ、満足できるぐらい生きてないもん。
シーラになる前だって、火事で……ん?
「……き、佐々木~!」
遠くから誰かがやってきた。
その影はずんずんと近づいて、顔が見えるようになり、ついには漫才ができる距離までやってきた。
だから俺はボケた。
「え……だれ?」
「おま、何忘れてんだよ!」
近付いてきたそいつは、裏拳でツッコミを入れた。
まあ、上手くはない。
だって高校の文化祭で1回やった事があるだけだもの。
そう、近づいてきたこいつと。
「はっはっは、冗談だよ!
台木、久しぶり!!」
「ほんと、久しぶり……この姿では」
「えっ、どういう事」
「ああ、俺も転生したからさ」
そういって元相方で親友の台木は申し訳なさそうに笑った。
ちくしょう、俺が体張って、部屋の外へ逃がしたってのに……!
「しょうがねぇよ、ボロアパートだったもん」
「え、どういう事?」
「佐々木が俺を玄関から出してくれただろ?けど、非常階段が崩落して……それで」
「……そっか、痛い思いさせてすまん」
「そんなの、佐々木だって熱くて苦しかっただろ」
「うーん……あんまり覚えてない、正直」
多分、焼死するより先に一酸化炭素中毒で死んだと思う。
気が付いたら転生してたレベルだから。
「ところで台木、ここ、どこよ」
「何だよ、細かいな」
「いや細かくはねぇだろ!
俺、モートン坊ちゃまにヤリ殺されたんじゃねえかって気が気じゃねえんだけど」
「ああ……まあ、そうね。
正直、すまんかった」
何故か台木がちょっと申し訳無さげにそう言った。
けど、俺がこの世界に転生したのは台木のせいじゃないし……
「あいつ、俺の生まれ変わりなんだ」
「は?」
違った。
そして、俺の考えてる事と全然違う、とんでもない事を台木は言い始めた。
「あ、でも、あいつに前世の記憶は無いんだ。
ただ、佐々木を好きだっていう気持ちだけはあったみたいで」
「……ん?」
「死んでから言うのも、何だけどさ。
俺、お前の事好きだったんだ。
あのゲームを紹介したのも、お前が男同士のセックスに興味もってくれないかなって思ったからで」
「えええええ」
「はは、やっぱりね」
台木の発言に俺は驚き、台木はあからさまにがっくりしながら言った。
「俺、すげぇアピールしてるのにさ、いっこも気付かないんだもんな……」
「……アピール?」
「そう、狭い一緒に風呂入ったりさ、同じベッドで寝たりさ、お前がゲームしてるとき後ろからハグしたりさ」
「えっ?」
「お前……やっぱ人との距離感、よく分かんなかったんだな」
「……うん、ごめん」
俺は、家族から放置されて育った。
兄貴たちが優秀だったから、俺は余分にできた金食い虫だった。
親との思い出といえば、女の子だったら良かったのにと散々言われた事と、家族がどっかへお呼ばれした日の留守番で「お前はその辺にあるものを食ってろ」と言われたから食卓の上にあった食パンを食ったら激ギレされた事ぐらいだ。
保育園でも小学校でも、先生たちがみんな俺と兄貴を比較して、怒るし。
他所の親も、俺の事「出がらし」って笑うし。
それであだ名が「デガラシ」になったって、俺以外は全員楽しそうだった。
いらない子だった。
誰からも必要とされなかった。
家族とも他人とも遠くて、友だちが分からず育って……
そんな俺を拾ってくれたのが、台木だった。
台木の親御さんは、息子と下の名前が同じっていうただそれだけの縁で、お風呂に入れてくれたり、あったかいご飯を食べさせてくれたりした。
台木は親友で、台木の両親は恩人。
だから、台木の「親友なんだからこれぐらい普通だ」っていう言葉を、疑うなんて考えられなかった。
「俺、もっと早く、気付けば良かった」
「ううん、それにつけ込んでた俺も悪いから」
「つけこんでたの?」
「うん、俺の話を疑わないで、何でも受け入れちゃう佐々木が、かわいかったから」
「……そっか」
俺は、台木に言われて家族を捨てた。
あんなの要らないだろ、って言われて、その通りだなって思ったから。
それで高校から一人暮らしを始めた。
「俺、さ。
佐々木の事、囲いたかったんだ。
もう他人とのかかわりは捨てさせて、俺とだけ一緒にいればいいと思った。
お前のまわりにいるやつらは、全員頭おかしかった。
お前を虐めて楽しんで、説教してやったって悦に入って、クソ野郎ばっかだった」
「……けど、一緒に住む場所探してくれて、バイトも探してくれた」
俺は台木のスマホで、初心者でもOKでまかないがあるっていう居酒屋を探し当てた。
最高の職場だった。
バイト先の人は俺を兄貴と比較して怒らなかった。
給料日には、今月もありがとう、って言って、明細をもらった。
「囲うにしちゃ、自由にさせすぎじゃね」
「そうだな、実際には出来なかった。
俺にはお前を養う金が無かったし……
バイトでこういう事があったとか、誰から褒められたとか、そういうのを楽しそうに話すお前を見てたら、バイトを取り上げるなんて出来なかった」
「……そっか」
台木は、俺を大事に思ってくれてた。
だから自分の欲を我慢して、毎日のように遊びに来るだけにした……
ん?
「まさか、坊ちゃまが毎日家に訪ねてきてたのって、その影響?」
「いや記憶は無いんだから違うと思うけど」
「……そうか」
たしかに、こんな事魂に刻んでたら怖いよな。
「でもさ、俺も台木の事、好きだったよ」
「えっ」
「たくさんハグしてくれて、いっぱい遊んでくれた。いっぱい話もして、飯も食って、俺に普通を教えてくれた。
やりたい事のそばには台木がいて、優しく見守ってくれてた」
「……別に、ケツみてただけだ」
「はは、下手な照れ隠しだなぁ」
俺は、台木の事がすきだって証明するために、台木にキスした。
そしたら、急に目の前が明るくなって……!!
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