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いかせないよ、シーラ (坊ちゃま視点)
少し遠くのダンジョン
しおりを挟む「ここがそのダンジョンか……」
少し遠くのダンジョンには、近くに大きな宿が建っていて、そこで冒険に必要なものを買い足せるようになっていた。
メイヤードより少しお高いけど、お金に困ってないから問題ない。
それに魔石やドロップアイテムの買取もやってるみたいだしね。
僕はまずダンジョンの地図を買った。
「このダンジョンは複雑で、かなり大きい。
この地図も、あてにはならないから気をつけて」
「分かりました、ありがとう」
この地図に、足りない分を書き足していけばいい。
僕らは早速、ダンジョンに潜ってみることにした。
***
「……キース様がお探しの物は、出ませんか」
「ええ、この階層では無いようです」
最初に潜った日から、数日が経った。
ここまでの階層は全部、虱潰しに歩いた。
地図に無い道や空間も書き出しながら進んで、進んで……。
「地図によると、あと5つ階層があるようです」
「そうですか……。
一旦戻って、食料を調達し、装備を修繕して来なければなりませんね」
「ええ、悔しいですが……」
1つ1つが、広い。
階層と階層の移動だけならすぐだけど、その周りに広大な迷路が広がってるって感じで……。
1つの階層を全踏破するのに、2日ぐらいかかる。
ここまで7つの階層を調べて来たから……
「……戻るのにそれほど時間は掛かりませんが」
「それでも1日は見ておかないと……」
勿論、途中途中に魔物だって出る。
層が深くなると、魔物だって強くなる。
その代わり、魔石は大きくなるし、魔物が落とす金額も多くなるし、貴重な素材もあるし……
宝箱の中身も、豪華になっていく。
「防御力を上げる指輪に、幸運を呼ぶ指輪……」
「書は出てきませんね」
「頑張りましょう、まだまだ奥がある」
そうして僕らは何度も外へ戻っては、魔石やドロップアイテムを換金してそれを食料に変え、武器防具の修繕費に充て……
「明日は1日、宿でしっかり休みましょう」
「そうですね、ぶっ続けで潜ってるし……」
そうして、目的の物が見つからない焦りを抑えつつ、慎重に、慎重に……
「おい……あそこ」
「オークの群れか……ダイキ殿、呪いを」
「うん、どうか《皆が気づかれませんように》
《皆が音もなく静かに、近づけますように》」
「……では、行きます」
騎士たちがそろそろと近づく。
そして、いきなり一番大きなオークの首を獲る。
周りの小さいのは慌てふためく……
そしてまた一匹を狩り、二匹目を狩り、三匹目……
「気づかれました!」
「離れて!魔法を喰らわせる!」
「頼みます!!」
「雷蛇!」
僕は雷を放ち、残りの奴らを動けなくする。
動けなくなった奴らに、騎士たちがとどめを刺す。
「……それにしても、お強いですね」
「メイヤード最寄りのダンジョンで大分鍛えましたから」
あそこにはシーラと二人だけで、何度も潜った。
シーラが魔物の事を教えてくれて、魔法も無駄打ちする事なくて、何より暗がりでは手を繋いで……。
「……今まで一緒に依頼を受けていた人が、魔物の弱点の見抜き方を教えてくれたので。
だから効果的な魔法が撃てるんです」
「それはまた、素晴らしい師ですね」
「ええ、そうなんです。
僕がダンジョンで活躍できるのも、その人のおかげ……なのに」
最近、愚痴ばかり溢してたからかな。
つい愚痴っぽい事を彼らにも言ってしまう。
「周りには、その人がどれほどすごいのか、見えてなくて。
僕の事利用してるとか、寄生してるとか、酷いのになると、言う事を聞くように虐待して育てた、とか」
「虐待?」
「……僕が10歳の頃から、一緒で。
僕のこと育ててくれて、魔法書まで買ってくれて……自分の装備なんか、ずっとほったらかしで」
貴族じゃなきゃ買えないような、高い本を3冊も買ってくれた。
剣だって、たった一回買い替えただけ。
鎧だって、革の胸当て一つだけ。
小さな依頼をたくさん、たくさん受けて、街のご老人たちや農家の人たちからいっぱい感謝されて……
なのに、そいつは言った。
「虐待は、されていないと?」
ああ、こいつも何か吹き込まれたんだ。
あのギルドには、新人を見たらすぐにシーラの悪口を聞かせるクズが常駐してるから。
だから僕ははっきりと言った。
「されてなんかいません!
ずっと優しかった……人に迷惑をかけちゃいけません、とか、いきなり飛び出しちゃいけません、とか、死んではいけません……とか、そういう事は怒られましたけど、殴ったり詰ったりする事なんか無かった」
「……それは」
それでも何か言いたそうにする男の言葉なんか聞きたくなかった。だから僕は一気に問い詰めた。
「あなたもそれを虐待だと言いますか?
子どもが危険な事をしようとしているのを止めるのが、虐待だと思う方ですか?
一歩間違えれば死ぬ、冒険とはそういうものだと教えるのが、虐待だと?」
「いえ、それは……」
やつらが言う「虐待」は、単なる躾だ。
刃物を持つ時、火を使う時、注意する事の何が虐待なのか教えて欲しい。
「恩着せがましく『魔法書を買ってやった』なんて言われた事も無いし『学校へ通わせてやった』と言われた事もないし、服を買ってやった、靴を買ってやったと言われた事だってない。
ただ僕の才能を伸ばしてやりたいと思ってくれた事が、恩着せがましい行為でしょうか」
「……いえ」
「あのギルドで何を吹き込まれたのか知りませんけど、彼の事を少しでも悪く考える人間は全部僕の敵です。
これ以上ササキの事を疑うなら、僕はパーティーから出て行きます。
一人でもやれますから」
「あ……!」
僕はもう、それ以上彼の言葉を聞きたく無かった。
だから、彼らを置き去りにしてさっさとダンジョンを出る事にした。
彼らは僕の後ろを必死で着いてきてたけど……
そこから魔物が出てこようが、僕は彼らに呪いをかける事もしなかったし、頼る事もしなかった。
僕一人で魔物を殺して、殺しまくって……
宿へ帰って、部屋に閉じこもった。
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