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学園3年目
「ス○ミー」理論 ~3教授と校長~
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ルースが熱を出したので暫く休む、と連絡があり、魔法棟弱小研究室たちは頭を抱えた。
魔石工学、魔生物研究、古代魔法の3教授は、旧魔法総合研究室に集まって作戦会議だ。
最初に口を開いたのはマグノリア教授。
古代魔法の研究室長である。
「出来れば、光属性の研究室にも声を掛けたいのですが…現状、我々が提示できる材料は無く…」
次に発言したのはネリネ教授。
魔石工学の研究室長だ。
「魔石の錬成に古代魔法…となれば、古代魔法研究室に力を貸さねばならんが、正直うちからも出せるものがない。光属性の魔道具を作るにしても、古代魔法頼みだし…申し訳無い」
その次に口を開いたのはビスカリア教授。
魔生物学の研究室長である。
「まあ、当然魔生物学にも提示できる旨味は…。
光魔法を使う魔生物は発見されていないのでね、何の話もないのです。
闇属性の魔生物を倒す場合にも、光魔法を使うことはないですしね…」
こんな時、ルースなら何か思いつくのだろうか…
いっそ、ルースを光属性魔法の研究室に派遣してしまえばそれが最も手っ取り早いのだが、たった14歳の子にあまりにも押し付けすぎではなかろうか。
そう、彼が寝込んでからというもの、3教授は完全に、すっかり心から反省していた。
猛省ともいう。
自分達がもう少し視野を広く物を考えていれば…。
そう、せめて我々、魔法棟4階の吹き溜まり、弱小研究室だけでも連携していれば…。
3教授が完全に沈黙したのを見て、おじいちゃん先生…校長であり前国王であり土属性改め魔法総合研究室長が悪い顔で提案した。
「いっそ、頭から取りに行くか」
「頭から?」
「属性魔法研究室で、一番大きいのは…火じゃろ」
「はあ…」
「しかし、火は…その、侯爵様ですよ?」
火だけではない。
各属性魔法の研究室長は全員、侯爵様である。
「私ら…子爵やら男爵やら、その…ですね…」
「気軽に話せるような身分ではないので…」
「学園で身分の話をするでない!そんな事言うとるから、属性魔法どもに負けるんじゃろ!!」
「校長は王族だからそんな事が言えるんですよ!」
マグノリア教授が声を荒らげる。
侯爵に対する態度と王族に対する態度が逆では?
とネリネ教授は思ったが、火の侯爵様が怖いのは自分も一緒、指摘して余計なことになるのは…。
だが、こういうところが彼に負担をかけたのでは?と思うと、もう、変わらなければいけない。
「そうだ、こっちには侯爵より偉い方がいる。
共闘しよう、そう我々は約束した」
同じことを考えたのか、ビスカリア教授も言う。
「そうだ、我々は、ひとつひとつは弱くても、集まれば大きな力になるはずだ」
小さな魚が群れることで大きな魚に対抗する。
魚ができるのに人間ができなくてどうする。
3教授と校長は作戦を考える。
「確か、火の研究室では、無詠唱発動に並々ならぬ熱意を持って研究していると…」
「それを餌に、何とかこちらへ引き込みましょう」
「少なくとも話を聞いて貰えたら良いのですが…
相当追い込まれている、と聞きます」
「そうじゃ、今のところうちの国で無詠唱で魔法を発動できるものが火属性だから、対抗心もあるんじゃろうが…上手くいっとらんらしいの」
おまけにその魔法師は元平民なのだ。
貴族は平民より優れているべきだと考える性質の人間には我慢ならない状況である。
「魔法の無詠唱発動に必要なのは…なんでしょうね」
「なんせ対象が1人しかおらんからのう…
いっそ呼んでくるか」
「卿のお仕事に差し障りが無ければ、是非」
「でもこの話、結局始まりは…」
ルースか。
「ならば帰って来るタイミングで仕掛けるか」
「いや、しかし…彼の負担になっては、」
「気にせんでもいい。
すでに熱は下がっておるそうじゃからな」
「えっ?」
「アルファードのやつが離さんだけじゃろ。
春休みに2人の時間を取ってやれなんだから、仕方なく休みの延長を許してやっただけじゃ」
「…はあ…」
殿下とルースの仲の良さは有名だ。
傍から見ていてその甘さに中てられるほど。
「甘~~い時間をたっぷり過ごさせてやった代わりに、キリキリ働いてもらうかのぉ…ふふふ」
校長の顔は完全に悪役だ。
王族ともなれば善と悪とを使い分ける…という。
やはりこの方は前国王なのだなと、3教授はそれぞれに認識を新たにした。
そして、
「いよいよ王族には逆らえない」
…と、心の中でルースに頭を下げたのだった。
+++++
次から定期更新にします!
魔石工学、魔生物研究、古代魔法の3教授は、旧魔法総合研究室に集まって作戦会議だ。
最初に口を開いたのはマグノリア教授。
古代魔法の研究室長である。
「出来れば、光属性の研究室にも声を掛けたいのですが…現状、我々が提示できる材料は無く…」
次に発言したのはネリネ教授。
魔石工学の研究室長だ。
「魔石の錬成に古代魔法…となれば、古代魔法研究室に力を貸さねばならんが、正直うちからも出せるものがない。光属性の魔道具を作るにしても、古代魔法頼みだし…申し訳無い」
その次に口を開いたのはビスカリア教授。
魔生物学の研究室長である。
「まあ、当然魔生物学にも提示できる旨味は…。
光魔法を使う魔生物は発見されていないのでね、何の話もないのです。
闇属性の魔生物を倒す場合にも、光魔法を使うことはないですしね…」
こんな時、ルースなら何か思いつくのだろうか…
いっそ、ルースを光属性魔法の研究室に派遣してしまえばそれが最も手っ取り早いのだが、たった14歳の子にあまりにも押し付けすぎではなかろうか。
そう、彼が寝込んでからというもの、3教授は完全に、すっかり心から反省していた。
猛省ともいう。
自分達がもう少し視野を広く物を考えていれば…。
そう、せめて我々、魔法棟4階の吹き溜まり、弱小研究室だけでも連携していれば…。
3教授が完全に沈黙したのを見て、おじいちゃん先生…校長であり前国王であり土属性改め魔法総合研究室長が悪い顔で提案した。
「いっそ、頭から取りに行くか」
「頭から?」
「属性魔法研究室で、一番大きいのは…火じゃろ」
「はあ…」
「しかし、火は…その、侯爵様ですよ?」
火だけではない。
各属性魔法の研究室長は全員、侯爵様である。
「私ら…子爵やら男爵やら、その…ですね…」
「気軽に話せるような身分ではないので…」
「学園で身分の話をするでない!そんな事言うとるから、属性魔法どもに負けるんじゃろ!!」
「校長は王族だからそんな事が言えるんですよ!」
マグノリア教授が声を荒らげる。
侯爵に対する態度と王族に対する態度が逆では?
とネリネ教授は思ったが、火の侯爵様が怖いのは自分も一緒、指摘して余計なことになるのは…。
だが、こういうところが彼に負担をかけたのでは?と思うと、もう、変わらなければいけない。
「そうだ、こっちには侯爵より偉い方がいる。
共闘しよう、そう我々は約束した」
同じことを考えたのか、ビスカリア教授も言う。
「そうだ、我々は、ひとつひとつは弱くても、集まれば大きな力になるはずだ」
小さな魚が群れることで大きな魚に対抗する。
魚ができるのに人間ができなくてどうする。
3教授と校長は作戦を考える。
「確か、火の研究室では、無詠唱発動に並々ならぬ熱意を持って研究していると…」
「それを餌に、何とかこちらへ引き込みましょう」
「少なくとも話を聞いて貰えたら良いのですが…
相当追い込まれている、と聞きます」
「そうじゃ、今のところうちの国で無詠唱で魔法を発動できるものが火属性だから、対抗心もあるんじゃろうが…上手くいっとらんらしいの」
おまけにその魔法師は元平民なのだ。
貴族は平民より優れているべきだと考える性質の人間には我慢ならない状況である。
「魔法の無詠唱発動に必要なのは…なんでしょうね」
「なんせ対象が1人しかおらんからのう…
いっそ呼んでくるか」
「卿のお仕事に差し障りが無ければ、是非」
「でもこの話、結局始まりは…」
ルースか。
「ならば帰って来るタイミングで仕掛けるか」
「いや、しかし…彼の負担になっては、」
「気にせんでもいい。
すでに熱は下がっておるそうじゃからな」
「えっ?」
「アルファードのやつが離さんだけじゃろ。
春休みに2人の時間を取ってやれなんだから、仕方なく休みの延長を許してやっただけじゃ」
「…はあ…」
殿下とルースの仲の良さは有名だ。
傍から見ていてその甘さに中てられるほど。
「甘~~い時間をたっぷり過ごさせてやった代わりに、キリキリ働いてもらうかのぉ…ふふふ」
校長の顔は完全に悪役だ。
王族ともなれば善と悪とを使い分ける…という。
やはりこの方は前国王なのだなと、3教授はそれぞれに認識を新たにした。
そして、
「いよいよ王族には逆らえない」
…と、心の中でルースに頭を下げたのだった。
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