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学園3年目
婚約までのカウントダウン 3
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「殿下!!」
「どうした、そんなに慌てて…」
お菓子教室が終わってすぐ、第1砦にいる殿下のところへ駆け込む。もちろん、さっき講堂で神官長から聞いた話を確かめるためだ。
俺はゼイゼイ言ってるのにアレクさんは涼しい顔…ちくしょうめ!
「神殿から、鶏が居なくなった話!」
「ああ、騎士を派遣して確認しておいた。
神殿から物を盗むのは重罪だからな、犯人を放っておくわけにいかんだろう?」
殿下は当然のことをしたまで、という様子だ。
「鶏が居なくなった神殿は、全てダンジョンが半径10km以内にある場所だ。
マンドレイク領しかり、フリージア領しかり…但し、古龍の墓より北や東へは拡がっていない。
3つの辺境領では被害は出ていないし、西の大河の向こうにあるカメリアの事情は分からない。
どちらかというと田舎…人口が少ない場所にある神殿が被害に会っている」
「…穴は、見つかったんですか」
「ああ、徹底して探させた結果、神殿の敷地内で直径10~15cm程度のものが発見されている。土の中までは神殿の結界も及ばんようだということが分かったな」
「…ミミズですか」
「多分な。
穴には全て熱湯を注ぎ込んだ後に電流を流し、それから土魔法で埋める処置をしたそうだ」
「そうでしたか…」
大きいのが出たとかでなくて良かった。
それでも多分、ローズ王国での平均サイズよりかなり大きいはず…
「学園のアレが産んだ、卵でしょうか…」
「そうかもしれん。
ビスカリアによれば、あの糞ミミズの推定年齢は27だそうだ。生まれて2年で卵を産み始めるそうだから、相当数産んだだろうと推測されるな」
「…学園のダンジョンに開いたあのミミズの大穴を、徹底調査する必要があるかもしれませんね」
「そうだな…学外実習のおかげでダンジョン経験者も増えた事だ、彼らにも協力してもらおう」
ギルドにも何か依頼を出すか…と殿下が言うので、ダンジョン再生計画チームとも相談することにした。
丁度殿下の側近になりかけてるウィン兄とディー兄もいることだし、アレクさんに他のメンバーも呼んできてもらう。
暫くしてソラン先輩とケンタウレア先生、カイト君がやってきた。
ゴード先輩はまだ帰って来ていないそうだ…帰ってきたら四天王くらいにはなってるかもしれない。
さっきの話をもう一度3人にして、意見を聞く。
「確かに一層より下にも穴が拡がっているようだし、一度本格的に調査したほうがいいだろう。
問題は何日掛かるか読めん事だな…」
「何日かに1回、物資の受け渡しができれば…。
先生、あのホバー台車があれば補給物資を運ぶのも楽じゃないでしょうか?」
「ならば補給部隊も編成するか…」
「そういえば、熱くならない魔道灯が出来たんですよね?熱くならないなら熱を逃がすために宙釣りにしなくてすみますし、素人でも設置可能なのでは?
それなら通った場所に等間隔で置いて行けば、距離も測れるし迷子にならずにも済みます」
どんどん良い案が出てきて、これならギルドに頼まなくても自分たちで何とか出来そう…と思った矢先、ディー兄から声が挙がった。
「問題は魔力量だよな…。
ねえ、ルー。魔力量を増やすコツって無いの?」
「練習あるのみだよ!空っぽなるまで使って、寝て、回復したらまた空になるまでやる」
「魔力って寝ないと戻らないのか?」
「うん、魔力回復薬みたいなのが無いからね」
ちなみに体力回復薬はある。
ギルドや市場でも気軽に買えるエナジードリンク感覚のお飲み物で、これを作るのが薬学をやっている人たちのお小遣い稼ぎになっているらしい。
「来年度、薬学取ってみようかな…」
「えっ、師匠、まだ勉強すんのか?」
アレクさんは驚いてるけど、当たり前じゃん。
「最低限の知識すらないんじゃ、薬学の研究室に行っても話を聞くことができないでしょ?」
「あ~、まあ、そう…なんすか?」
「それに、もし魔力回復薬が作れたら、一気に魔力を放出してくたびれたときに使えそうでしょ?
俺度々やらかしてるし…あるといいなって」
それに、もし運良くエリクサー的なものができたら超儲かるじゃん!薬草とかの材料集めの依頼は、ビギナー冒険者用にもなりそうだし…。
そんなことをちょっと考えていたら、ウィン兄が俺のほっぺをつつきながら言ってきた。
「ねえルー、何だかダンジョン再生計画どころじゃなくなってきたね」
「新しいダンジョンが出来ちゃったんだもんね」
来年の夏は学園ダンジョンで実習だな。
「…でもルーは潜っちゃ駄目だからね?」
「えっ…でも」
「次期国王の正室になるんだから、今までみたいに危険に突っ込んでいくのは無し。ね?」
「でも、シャラパールのは行かなきゃ…」
「それも駄目!どんなとこか分からないのに…」
ウィン兄とディー兄が過保護なことを言い出して困っていると、殿下が言った。
「なら春休みに下見へ行くか。婚前旅行だ」
「えっ、婚前旅行!?」
何それ。
新婚旅行みたいなもん?
「そうと決まれば、さっさと談話の原稿を片付けて準備に入らねばな。
トレッド、今日は泊まりだ。それからルースも」
「あいよ~」
「えっ…あ、分かりました」
確かに今まで内容を見たことが無いもんな。
自分の事なのに知らないのはマズイ…
「晩飯はハンバーグが良い。それと夜食にチョコレートの入ったスコーンが食べたい」
「良いですね!俺も久々にコーヒーが飲みたい」
「俺はココアだ、生クリーム入りでな」
あっ、そっち!?
「どうした、そんなに慌てて…」
お菓子教室が終わってすぐ、第1砦にいる殿下のところへ駆け込む。もちろん、さっき講堂で神官長から聞いた話を確かめるためだ。
俺はゼイゼイ言ってるのにアレクさんは涼しい顔…ちくしょうめ!
「神殿から、鶏が居なくなった話!」
「ああ、騎士を派遣して確認しておいた。
神殿から物を盗むのは重罪だからな、犯人を放っておくわけにいかんだろう?」
殿下は当然のことをしたまで、という様子だ。
「鶏が居なくなった神殿は、全てダンジョンが半径10km以内にある場所だ。
マンドレイク領しかり、フリージア領しかり…但し、古龍の墓より北や東へは拡がっていない。
3つの辺境領では被害は出ていないし、西の大河の向こうにあるカメリアの事情は分からない。
どちらかというと田舎…人口が少ない場所にある神殿が被害に会っている」
「…穴は、見つかったんですか」
「ああ、徹底して探させた結果、神殿の敷地内で直径10~15cm程度のものが発見されている。土の中までは神殿の結界も及ばんようだということが分かったな」
「…ミミズですか」
「多分な。
穴には全て熱湯を注ぎ込んだ後に電流を流し、それから土魔法で埋める処置をしたそうだ」
「そうでしたか…」
大きいのが出たとかでなくて良かった。
それでも多分、ローズ王国での平均サイズよりかなり大きいはず…
「学園のアレが産んだ、卵でしょうか…」
「そうかもしれん。
ビスカリアによれば、あの糞ミミズの推定年齢は27だそうだ。生まれて2年で卵を産み始めるそうだから、相当数産んだだろうと推測されるな」
「…学園のダンジョンに開いたあのミミズの大穴を、徹底調査する必要があるかもしれませんね」
「そうだな…学外実習のおかげでダンジョン経験者も増えた事だ、彼らにも協力してもらおう」
ギルドにも何か依頼を出すか…と殿下が言うので、ダンジョン再生計画チームとも相談することにした。
丁度殿下の側近になりかけてるウィン兄とディー兄もいることだし、アレクさんに他のメンバーも呼んできてもらう。
暫くしてソラン先輩とケンタウレア先生、カイト君がやってきた。
ゴード先輩はまだ帰って来ていないそうだ…帰ってきたら四天王くらいにはなってるかもしれない。
さっきの話をもう一度3人にして、意見を聞く。
「確かに一層より下にも穴が拡がっているようだし、一度本格的に調査したほうがいいだろう。
問題は何日掛かるか読めん事だな…」
「何日かに1回、物資の受け渡しができれば…。
先生、あのホバー台車があれば補給物資を運ぶのも楽じゃないでしょうか?」
「ならば補給部隊も編成するか…」
「そういえば、熱くならない魔道灯が出来たんですよね?熱くならないなら熱を逃がすために宙釣りにしなくてすみますし、素人でも設置可能なのでは?
それなら通った場所に等間隔で置いて行けば、距離も測れるし迷子にならずにも済みます」
どんどん良い案が出てきて、これならギルドに頼まなくても自分たちで何とか出来そう…と思った矢先、ディー兄から声が挙がった。
「問題は魔力量だよな…。
ねえ、ルー。魔力量を増やすコツって無いの?」
「練習あるのみだよ!空っぽなるまで使って、寝て、回復したらまた空になるまでやる」
「魔力って寝ないと戻らないのか?」
「うん、魔力回復薬みたいなのが無いからね」
ちなみに体力回復薬はある。
ギルドや市場でも気軽に買えるエナジードリンク感覚のお飲み物で、これを作るのが薬学をやっている人たちのお小遣い稼ぎになっているらしい。
「来年度、薬学取ってみようかな…」
「えっ、師匠、まだ勉強すんのか?」
アレクさんは驚いてるけど、当たり前じゃん。
「最低限の知識すらないんじゃ、薬学の研究室に行っても話を聞くことができないでしょ?」
「あ~、まあ、そう…なんすか?」
「それに、もし魔力回復薬が作れたら、一気に魔力を放出してくたびれたときに使えそうでしょ?
俺度々やらかしてるし…あるといいなって」
それに、もし運良くエリクサー的なものができたら超儲かるじゃん!薬草とかの材料集めの依頼は、ビギナー冒険者用にもなりそうだし…。
そんなことをちょっと考えていたら、ウィン兄が俺のほっぺをつつきながら言ってきた。
「ねえルー、何だかダンジョン再生計画どころじゃなくなってきたね」
「新しいダンジョンが出来ちゃったんだもんね」
来年の夏は学園ダンジョンで実習だな。
「…でもルーは潜っちゃ駄目だからね?」
「えっ…でも」
「次期国王の正室になるんだから、今までみたいに危険に突っ込んでいくのは無し。ね?」
「でも、シャラパールのは行かなきゃ…」
「それも駄目!どんなとこか分からないのに…」
ウィン兄とディー兄が過保護なことを言い出して困っていると、殿下が言った。
「なら春休みに下見へ行くか。婚前旅行だ」
「えっ、婚前旅行!?」
何それ。
新婚旅行みたいなもん?
「そうと決まれば、さっさと談話の原稿を片付けて準備に入らねばな。
トレッド、今日は泊まりだ。それからルースも」
「あいよ~」
「えっ…あ、分かりました」
確かに今まで内容を見たことが無いもんな。
自分の事なのに知らないのはマズイ…
「晩飯はハンバーグが良い。それと夜食にチョコレートの入ったスコーンが食べたい」
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あっ、そっち!?
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