当て馬にも、ワンチャンあってしかるべき!

紫蘇

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学園3年目

婚約までのカウントダウン 2

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学園都市の冒険者ギルドへランクシステムの草案を届けに行った次の日、俺は講堂でまたも大勢の神職相手にお菓子教室を開講している。

「本日は台湾カステラの作り方をご紹介致します。
 このお菓子は一辺が18cmの正方形の型…先ほど市場で購入したこちらを使って作ります」

今回の講習も市場での買い物からスタートし、スクエア型の購入と、卵・砂糖・小麦粉・食用油…と一通りの材料のご寄付を頂き、市場にあのイカツイ結界を掛けるのを見た。
やっぱあれスゴイな…何とか光魔法で再現できないかなあ。

「まずは材料です。
 食用油…普段使っているものでもOKです。ただし、香りが強いものは避けてください。
 これを湯せん…こうやってボウルに入れた状態で、沸騰した湯につけて温めます」

この世界、基本的に前世と食料品は同じなんだけど、太白ごま油は無かったので仕方なく大豆油で我慢だ。
実際そこまで味は変わらないからセーフ…ということにしている。

油の温度が80度になるまでの間に、神官さんから質問が出る。

「使った揚げ油を使ってはいけませんか?」
「健康に宜しくありませんので避けてください」

すると助手をしていたマグノリア教授が言った。
「石鹸でも作ったら良いんじゃないか?多少匂いは気になるけどな」
すると、途端に神職さんたちから質問責めにあう。
「石鹸ですと!?…どうやって作るんです?」
「えっ、植物の灰?かまどの灰でいいんですか?」
「配合は?え、それは分からない?」

この宗教、フードロスが相当の禁忌なのかな…皆様の「食材を無駄にしない」熱が毎度アツい。

「…さて、そろそろ油の温度が80度くらいになったようですので続きを。
 ここへふるっておいた小麦粉を入れて混ぜます…」

石鹸もそのうち神殿で売るようになるかもしれないなあ。
それにしても植物の灰で出来るのか…
今度俺もやってみよっと。


順調にお菓子教室は進む。
そういえば、最初は生徒会の人々が来たりして大変だったなあ…。
あの時のセント神官長はちょっと格好良かった。
神の前ではみな平等って、言うのは簡単だけどなかなか実践できることじゃないもんな。
正統派のMだけど。

さて、卵黄と牛乳も入れたし、次は卵白に砂糖を入れてメレンゲを作るよ!

***

「おお…不思議な食感ですな…」
「冷やすとまた違う食感になりますので、冷えたら生クリームを挟んでも美味しいですよ」

お湯を張ったバットに入れて蒸し焼きにする…というちょっと新しい焼き方に皆さん興味津々。
このやり方でプリンも焼けます、というと皆が一様に驚いていた。

「プリン…あれは冷やし固めるのだとばかり」
「そうそう、煮凝りみたいなものかと…」
「で、どのようにして作るのですか?」

途端にまた質問責めにあう。
なんでそんなにお菓子作りに貪欲なんだ?
まあ簡単だから教えるのも苦じゃないし良いか…

「卵と砂糖と牛乳でできますよ」
「なんと、ここにある材料で…」
「プリン液自体は材料を混ぜるだけですし、カチカチになったパンを切って浸して焼くだけで立派なデザートになりますから、覚えておいて損は無いですよ!
 配合は卵1個、牛乳100ml、砂糖25gが基本です」
「ほうほう…」
「じゃあ、実際に作ってみますか?」
「はい、是非!」


…というわけでついでにプリンのレシピも寄贈。
簡単!美味しい!と台湾カステラ以上に好評だ。
ただカラメルソースを作るのって、タイミングが結構シビアなんだよな…。
アイリス商会で売ってくれないかなあ。

「プリン…なんと素晴らしい」
「メレンゲを作らなくていいのが助かりますね!」
「明日、試しに祈祷場へ並べてみます。
 王宮からのご寄付で鶏も飼い直せましたから、うちも卵が気軽に使えるようになりましたし…」
「そうなんですね、良かっ………あっ!」
「どうしたルース?」
「鶏が居なくなった話、調べるの忘れてた!!」

やばい。
サンドワーム絡みじゃないかって話だったのに放置してた!

「セント神官長!鶏が居なくなった神殿は…!?」
「ああ、その話なら…」

えっ、騎士団の人が来て調べてった?
まじで?

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