当て馬にも、ワンチャンあってしかるべき!

紫蘇

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学園5年目

駄目かもしんない

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「出来ればこの3学期から生徒会の補佐をお願いしたいのですが…
 無理ですか?」

フィーデ君がプリムラ副会長をチラチラと見つつ俺に聞く。
どうやら早めに彼を「まっとうな方向へ」戻して差し上げたいっぽい……そりゃまあ横領なんて結構な罪をやらかそうとしてたのを見てるもんな。

「3学期中でも出来る限りお手伝いは致しますが…
 来客と会合の予定もありますから、それほどお力になれるかどうかは」
「こちらから出向くことも構いません」
「テナチュール様が直々に?
 宜しいのですか、わざわざ」
「もちろんです!実は、殿下のご卒業後は私が会長になる予定なのです、それで…」

そういう事情もあって、どうやら殿下からも教えを請いたいのだ…とフィーデ君は懇願してくる。

なるほど?

「それでしたら、是非ともお越し下さい。
 心の落ち着くハーブティーを用意してお待ちしております」

フィーデ君にも何か考えがあるんだろう。
すでに殿下を通じて養殖真珠ひかりのませきのネックレスを渡してあるし、洗脳されている様子も今のところ見られないから…

まあ、洗脳されてやってきても「秘儀・闇飛ばし」があるからね。

そんな事を考えていると、扉を独特の調子で叩く音がする。
アレクさんが迎えにきた合図だ。
俺はそれではまた、と言って生徒会室を出る。

今日のところはここまで…。
最終学年、何とかこの派閥争いに終止符を打って、卒業式でギスギスすることの無いようにしたい。

さて、今日は来客も無いし、クリスマスに貰った論文の残りを読んで、感想を書かなきゃ!
俺はアレクさんと一緒に研究室へ戻った……



……のは、いいんだけど。

「フィーデ君、何でいるの…?」
「今日は来客の無い日と聞いておりましたので」
「いつの間に確認したの!?」

途中購買でお昼のホットドッグを買って研究室に帰って来ると、いつの間に先回りしたのか、フィーデ君がプリムラ様と一緒に研究室の前に佇んでいた。

ただしプリムラ様のほうは完全に不本意顔…どうやらフィーデ君が強引に連れて来たらしい。

「まあ、こんなとこで立ち話も何だから、どうぞ」
「ありがとうございます」

俺は2人を部屋へ招き入れ、目の奥を見る…
闇魔法の影響は無し。
多分やけどな?

「ルースさん、早速本題宜しいですか」
「ええ」
「今後のプリムラ家の扱いはどうなるのですか」
「ご子息が活躍できなければ没落するだけですね」
「……そんな!」
「その、何とか援助頂ける方法は…」

フィーデ君はプリムラを救いたいらしい。
でも公爵派で父親が無能の烙印を押されたから王家派で何とかしてくれ、というのはちょっと…。

「王家からの援助は、国家に必ずそれ相応に寄与すると認められなければ、どんなに困窮した家だろうが認められません。例え私費でも」
「私費でも、ですか?」
「ええ、かつて当家の養育費が逼迫し、王家から援助を申し出て頂いた際に、そうお決めになられましたので」
「えっ…父、が?」
「そうですよ?」

だから陛下は「一番上の兄を外交官にすることで賃金を発生させ」て、他の兄たち全員を「就学途中で国費留学させる」という機転で対抗してくださった…と、父さんの手記に書いてあった。

多分それは、ユーフォルビア家を公爵派の私物にする作戦の1つだったたんだろう…

しっかしそれがまさかこうなるとは、因果応報もいいとこだな。

「それに、いくら援助を取り付けたとしても、お父上のほうはもう無理ですよ」
「え…どうしてですか!?」

フィーデ君が俺に食って掛かる。
俺は敢えて無表情で淡々と事実を述べる。

「王家に対する侮辱的な噂を他国で広めたからです。
 これはれっきとした不敬罪です。
 最悪の場合、死刑もありえる罪です。
 もうとっくに証拠は挙がっています」
「っ、そんな!何で…」

何で分かったのかって?
そりゃ、お脳とお口が直結してるスプーラ殿下がやらかしたからさ。
陛下の前で
「今代の王は愚鈍と聞いていたが、いやいやどうして、なかなかのやり手だ」
ってかましやがって…
んで、どういう事か聞いたら、噂を吹き込んだ人間の名前から、奴らの手口から、まあ喋る喋る。
たまにはナチュラル失礼も役に立つんだな。


プリムラ副会長は、愕然としている。
あんまり追い詰めたらヤバい方向へ行きそうなのでそろそろ止めてあげよう…
他の公爵家との釣り合いも取れなくなるしな。

「プリムラ家を救いたいのであれば、あなたが何とかするしかありません。
 、国民の為に何が出来るか必死でお考えください。
 幸いにもあと1年あります。
 きちんと努力されれば卒業までに政治学/法学/国際情勢学の上級で優を貰う程度にはなれるでしょう?
 フリージア先輩もバイオレット先輩も…存続を許された家の方は皆様そうしていらっしゃいますよ」

そう、実は2人ともちゃんと努力してたんだ。
将来国を支える人間になるという自覚はちゃんとあったんだよね…

生徒会では「良きに計らえ」してたけど。

ま、ぶっちゃけ親の差だよな。
フリージア公もバイオレット公も、自分の子に罪を犯させるようなことはしなかった。

プリムラ公と違って。

「そ…その、ぼ、ぼく、は…。
 それに、詳しい国際情勢は、内務に不要で…」
「は?本気ですか?」
「まさか…アウディ様!
 中級を履修したことも無いんですか!?」

おそるおそる頷くプリムラ様。
これにはフィーデ君もびっくり。

「プリムラ様…今まで何を履修してどの単位を持っているのか、今すぐ教えてください」
「え、えっと、その…」

問い詰めてみれば、一般棟で開講されている全ての科目を受けてはいる……が、全部初級止まり。

「…ガッデム!!!」

おいコラ、5年間何をしとってん。

学費タダとちゃうねんぞ!!
このクソボンボンが!!
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