当て馬にも、ワンチャンあってしかるべき!

紫蘇

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学園5年目

レッツ・パーリィ! 5 ~ルース視点~

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「ならばとしたら、少なくとも6人は用無しですね?」
予想通りに<呪いの言葉>を吐くコーラス様。

「まあ正室も用無しですから、それも合わせれば7人ですね」
不審に思われないように軽口で返す俺。

コーラス様は、殿下とその先にいる陛下に言い放つ。

「王家の血を守る事にユーフォルビアだけを頼った事、後悔する日が来るかもしれませんよ?
 まあ、その時が来たら『我々が正しい王室の在り方を教えて差し上げます』がね。
 『この国に貢献し続けてきた我々をないがしろにした愚かな王族』にも、分かりやすく」

おお、この距離から<洗脳>を仕掛けられる自信がお有りとは…。
しかも最後のは来賓客に向けてだよな。
結構やるじゃん。

でもねえ、残念ながら…
このホールの中じゃちょっと無理かな。

「3年後が楽しみですね殿
 まあ、時には、私の妾にでもして差し上げますよ」
「ふーん…なるほど?」

俺は後ろのほうでモサモサとナポリタンを喰っているロメリアのおっさんを見る。
おっさんはピースで応える…
う~んおっさんだなあ。

そろそろお開き、とばかりに殿下が言う。

「はあ…『茶番』が長すぎるぞ2人とも。
 いい加減にしないと『ただの断罪ごっこ』で終わらなくなってしまうだろう?」

そして俺は言う。

「ああすみません、コーラス様の演技が素晴らしくてつい興が乗ってしまって…。これ以上はミカ様をお待たせしてしまいますものね。
 …ところでコーラス様、ご存じですか?
 『人を呪わば穴二つ』って言葉」

「…何だと?」

いやあ神殿と仲良くしとくもんやね。
何の魔法もも効かへんで?

「こら、ルース。もう止めろと言ったぞ」

そういう殿下も半笑いじゃないですかヤダー。

まあ、おたくらがキケンな古代魔法に手を出してんのは知ってんねん。
直ちに王宮書庫へ文献を返したまえよ。
禁帯出って書いてあったでしょ?

「そうですね、すみません。
 では、本日はここまでという事で…
 ああコーラス様!『お体には気を付けて』」
「!?」

近衛騎士に連行されていくコーラス様。
王都のエリート神官と大神官長様による、豪華「祈りの結界」があって良かったね!

はははー!!

***



てな感じでコーラス様がご退場なさって、一息。

「ありがとうございます、殿下」
「やれやれ、あんなもので良かったのか?」
「まあ…断罪「劇」にはなったんじゃないかと」

俺と殿下の会話に、どうやら騒ぎは収束したらしい…と、来客はまた動き始めた。

挨拶の列は活気を取り戻し…
俺の所へはさっきの「ごっこ」の理由を聞こうと人が押し寄せる。

「実は、前々から後宮の有り方については議論がありましてね。
 無駄に税金を使わなくて済むようになるならと、コーラス様が協力してくださったのですよ」
「センセーショナルな事件と共に、私の側室になる者たちは王家の為でなく国民の為に選ばれたのだということが伝われば、改革もし易くなるだろう?」

そうして改革内容について少しだけ話して差し上げると、ゲストの皆様は口々に

「なるほど、後宮の建物を遊ばせておくのではなく、有効活用する、と」
「王宮直轄の研究所にする案ですか…」
「なら、この方々が選ばれるのも納得です」
「魔法学会で良くお見掛けしますからね」

そしてコーラス様が可哀想だと言ってくる人には、

「そうですよね…。
 ですがコーラス様は、自分のお父上がしでかした事を少しでも軽くするためにと、この茶番を引き受けて下さったのです」
「えっ、エルム公は一体何を…?」
「実はその…」
「ルース、他言無用だ。
 証言者の減刑に響く」
「あっ、そうでした…申し訳ございません」

軽い茶番を入れつつ、思わせぶりな科白で「一体どんな罪なのか」と来賓客たちの想像力を煽る。
そういえば随分頻繁に夜会を開いていたとかいう話がもうチラホラしている。

この話が広がって証言者が出てくれば、証拠はさらに積み重なっていくだろう。

そうなれば本命の首を押さえられる!

エルム両公にはすでに監視がついている。
今頃は屋敷にも捜査が入っているはずだ。

見ててよ、ゼフ父さん、ロイ父さん。
リードさんの仇は、俺が取る!
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