当て馬にも、ワンチャンあってしかるべき!

紫蘇

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学園6年目

一路、カメリア

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夏休みに入ってすぐ、スプーラ殿下とゴード先輩の結婚式に出席するため、俺と殿下といつものメンバーはそれぞれ馬車に乗ってカメリアに出立。

王家の徽章を付けた馬車が連なって行く様は圧巻…
って、他人事みたいに言ってる場合じゃないんだけどね。

こうして休憩で立ち止まると、周辺住民の皆様はびっくりして隠れてしまう…
困ったもんだ。

「結構な人数ですよね~」
「みんなで行ける様に計らうって言ったじゃろ?
 まさかそれが結婚式だとは思わなんだがのう」
「これを機に両国の関係を考えねばなりませんね」
「そうですね、これを機にもう少し交流していけたら…周辺の国に脅威を感じさせない範囲内で」

特に問題が無い事を理由に、王家同士が交流してこなかったというのもスゴイよな。
まあそういう事してなかったからこそ、王家の悪口言い放題広め放題できたんだよな…
ってことは、これも帝国再興派の仕業なわけ?
ちょっとこれは根が深そうですぞ。

「カメリアに行くのは久しぶりです」
「えっ、カート、行ったことあるの?」
「兄の新婚旅行に付いて行ったんです、湖が綺麗ですごくいい所でしたよ!」
「うちもお酒買い付けに来てるよ!林檎のお酒、シャラパールでも人気ある」
「ありがとうございます、カメリアは観光と農業で成り立ってますから…特に酒類は主力ですし」

そう言って微笑むエルさまに、殿下は意味深な目を向けた。

「…あともう一つ、あるだろう?
 カメリアと言えば…」

すると、またも勝手に紛れ込んでいた薬学コンビが急に前のめりになった。

「王家の秘薬、ですよね!何とか少し分けて頂けないかと…」
「成分を分析して、ローズでも作れるようになったら…貴族の皆様の少子化対策にもなりますし」
「抱かれたいのに抱く側だったり、抱きたいのに抱かれる側だったり、貴族というのはそういう事すらままならんものですから、この秘薬で少しは楽になれるのではないかと」
「本当は製造方法を知りたいところですがね」
「…その為についてきたのですか?」
「もちろんですとも!」

拳を握る薬学コンビとは対称的に、ため息をつくエルさま。

「…ワインに入っていた分では足りない、と?」
「すみません、赤ワインだったので澱りが邪魔をしてどうにも…」
「こちらに成分を漏らさない為に赤にされたのでしょうな…残念ながら」

待て、王家の秘薬ってまさか…

「媚薬だな」
「やっぱりそうだった!?」

薬物ダメ、絶対!!!
そんな俺の叫びを無視して薬学コンビは続ける。

「あれは副作用も依存性も無い完璧な薬です!
 ローズ国内では怪しげな薬が蔓延したこともあって媚薬は禁止されていますが、カメリア王家の秘薬なら禁止薬物に指定されない可能性もあります!」
「あかんもんはあかん!!」
「何でですか!?」

何でもくそもあるか!!
駄目なものは駄目なんじゃい!!

しょーもない話をしているうちに休憩が終わり、また馬車に乗り込む。

カメリアに着く前に何とかこの薬学コンビを切り離せないだろうか…

ロクな事が起きない気がする。

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