当て馬にも、ワンチャンあってしかるべき!

紫蘇

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ロイ・ユーフォルビアの恋愛相談室

ワルド先輩とルディ君 1 ~ロイ父さん視点~

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その相談者は言った。

「その気になって貰えるように、頑張ってるつもりなんですけど…ぐすっ」
「なかなか手を出して貰えない?」
「そうなんです…」

彼の名はルディ君。
補佐局で古代魔法の研究者であり、その共同研究者であるワルド君と恋仲…
ではあるものの、キス止まり。
肝心のワルド君からも、その先はまだ駄目、とずっと言われ続けているらしい。

「その気にさせる…ねえ。
 いっそ襲っちゃうってのは無しなの?」
「えっ…そ、そんな、破廉恥なことしたら、嫌われる…かも、しれないし…」
「ふーん、困ったねえ…あっ」
「?」

そうだそうだ、確か記憶って消せるんだよね。
なんだ、別に取り返しがつくんじゃないか…
アルファード殿下に頼んでやって貰えばいい。

「ルディ君、取り敢えず彼を襲っちゃおう。
 その事で嫌われたら、ワルド君からその「襲われた記憶」を消去して、元に戻せばいいから」
「えっ」
「闇魔法心療でね、辛い記憶を封じて思い出させなくするっていうのがあるんだって」
「えっ、えっ」
「だからね、どんと行ってみればいいんじゃない?
 えーっと…ルディ君は、抱かれたい…んだよね?」
「はい…」
「抱かれる方が上になる技ね…ちょっと待ってて、どっかで見た…」

僕はユーフォルビアの性技を編纂した資料に手を伸ばし、その項目を探した。

「あっ、あったよ、これこれ」
「えっ、あっ、お、おおおお…」
「確か小冊子に纏めたのがこの辺に…あっ、これこれ、これ持っていきな?」
「いいんですか…?」
「うん、ただしここでこの冊子貰った事とか相談したことを言っちゃ駄目だよ」
「はっ、はい」

そう言って小冊子を大事そうに抱え、ルディ君はこの庭を出て行った。
上手く行くといいねえ、と彼を見送っていたら、ゼフさんが僕を呼んだ。

「ロイ、何してるの」
「恋愛相談…的なことかな」
「へえ…ロイって恋多き男だったっけ?」
「そんな事ないよ!
 ただ、この世で一番難しい恋を成就させた男ってだけ」
「一番難しい恋愛…?」

ゼフさんは顎に手を当てて考え込んでしまった。
どうして分からないかなあ…
でも、そういうところも好きなんだから、仕方ない。

「…ゼフさん、あなたへの恋の事だよ?」
「えっ、僕かい?
 頼まれれば誰とでも寝るような奴なのに?」

頼まれれば、というけれど、どこかの誰かが勝手にを売って、無理矢理いう事を聞かせていたのを、僕は知ってる。
僕と結婚してからも、何度か不倫
その度にごめんね、ごめんね、と僕に謝るゼフさんを、どうして責められるものか。

だってそれは、僕の命を守る為だったんだ…

父さんの時みたいに、ならないように。
僕に黙って…仕方なく。

「…体は簡単に手に入る、だけど心は誰のものにも…いや、死んだ父さんのものになってしまって、誰もそれを奪えなかったんだからさ」

僕とゼフさんが「全て終わった」と思って結婚してから後、思い出したように命令してくるあの男。
本当に人を馬鹿にしている。
僕は、あの男が燃やされるのを最前列で見ていたけれど、可哀想にという感想はなかったな。
当然のことでしょ、としか…
何ならもう少し苦しめてから火刑にすればいいのに、と不満しか覚えなかった。

だけど、天国の父さんの仇は打てたと思うんだ。

俯く僕に、ゼフさんが言った。

「心なんかが、必要だったかい?」

だから僕は自分の気持ちを答えた。

「むしろそれしか要らない…は、言い過ぎだけど。
 愛してるよ、ゼフさん」
「ふふ、どうしたの急に?」
「子どもができる可能性が無くなった今だからこそ…
 あなたを純粋な気持ちで抱ける、気がする」
「まさか、ベッドへのお誘いなの?」
「…うん、そうだよ。
 愛してる、だから抱きたい…それだけ」
「そっか…愛してるから、子ども出来なくても、抱きたいんだね」
「うん…ゼフさんが欲しい。
 いっぱい愛して、奥の奥で果てたい…
 駄目?」
「駄目、では、なぃ…ょ」

そうそう、最近殿下から「マンネリ対策に」と譲り受けた小瓶があるんだ。
数滴でも威力を発揮する、安心・安全のブレティラ印。

「それじゃ、お茶の準備をして…待ってる」
「…うん」

ゼフさんは真っ赤な顔で家の中へ戻っていった。
僕はそれの後を追って…

気付いた。

彼にも少し、この薬を分けてあげれば良かった…と。
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