別にこいつとは付き合ってませんけど?

紫蘇

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聖人様になる旅路

丸め込まれかける俺

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ミシェルから告白された翌日。
マルコさんが俺に近寄って来て言った。

「ミシェルは良い奴ですから、安心してお付き合いください。
 強姦も監禁もしませんから」

……は?

「な、何を言ってるのかなマルコさん」
「ミシェルがシゲル様に想いを告げたと聞きましたので、畏れながら援護をと」
「もうここまで知られてる!?」

だからメンバー内恋愛は駄目なんだってば!
なんで秘密にしないの!?

「付き合うも何も、俺、ミシェルの事そんな目でみた事ない…」
「それなら今からそういう目でみてやって貰えませんか」
「無理です」

そんなん言われたって、ミシェルは男だし。
そもそも経済観念が違うんだって…

節約が美徳の俺と、使うのが美徳のミシェル。
持てない者の抵抗と持てる者の義務。

使う事で社会に貢献するミシェル。
貯め込んでおかなきゃ社会に迷惑をかける俺。

金を正しく使うことへのアプローチが逆。
今までの立場が違いすぎる。

「男同士だとか以前に、育ちが違い過ぎて、ついていけないんです。
 俺はどちらかと言えば金の無い家で育って、他人に敬われた経験も無い、ただのクソガキだし。
 今のところ光の力を使えるだけの役立たずだし」

だけど俺の言葉に、マルコさんは首を傾げる。

「光の力を使えるだけで充分なのでは?」
「だって、闇の力を封じた後は、聖人の力なんて大して役に立たないでしょ?」

まあ、美肌には使えるかもしれないけど…
それも確実に使えると決まったわけじゃないしな。

「だから、浄化の巡礼が終ったら、俺、聖人を辞めるんです」
「どうしてです」
「どうしてって…、必要無いから」
「……なぜです」
「さっきも言いましたけど、祠のことが終わったら聖人って光の力を使えるだけの人だし。
 だったら次は異世界人ってことを押し出していったほうがまだ、役に立ちそうだなって思ってもらえそうだから…」

俺はマルコさんに何とか説明を試みる。
だけどマルコさんは引き下がらない。

「ですがシゲル様。
 祠を封印したからといって、闇の力は消えるわけじゃないです」
「それも分かってます。
 バランスを取るだけで、闇の力を無くすことは出来ないって」

増えすぎた闇を小さくする。
そうして光の力を取り戻して、釣り合った状態を作るのが俺の仕事。

闇は無くせない。
闇の無い世界は存在できないから。

それはラブラヴ神様から聞いた話で、確かに俺もそう思う。

「だけど、聖人でもない俺がミシェルの恋人だとか、おかしいでしょ」

ミシェルと付き合って、その見返りに養ってもらうみたいになるのは嫌だ。
光の力以外、何も持ってない俺でも、何か人の役に立てることを探してやってかないと。
幸いにして異世界人だ。
何か生きる道はあると思う…
少なくともハンバーグは作れる。

「だから、」

俺はもう決めたんだ…と言おうとしたその時。
マルコさんが言った。

「ですがシゲル様、闇と光を均衡させるだけでも相当の年月がかかると思いますよ?
 今までの聖女様や聖人様は、一生を浄化に使ったと言われていますし」
「えっ」

ど、どういう事?
なんでそんな長くかかるの?

「祠が片付いたからってそれで終わりにはならないんじゃないかって、シゲル様も言ってたでしょ?」
「…そうだっけ?」
「巡礼が終わった後、もう一回見て回った方が良いって言ってましたよ」
「あ…ああ、まあ、確かに」

あれ、その話、マルコさんにしたっけ?
覚えてないけどしたのかな…

首をひねる俺に、マルコさんは畳み掛ける。

「それに、一回で足りるかも分からないですし。
 何度も回る事になるなら、護衛としてミシェルを連れて行けば安心でしょう?
 青狼騎士団長の座は誰かが継ぎますし、問題ありません。一年に一回、王都に報告がてら戻って来てもらえれば、それだけでいいですし」
「う…うーん」

そんなにかかるの?
んじゃあ俺、ずっと聖人様なの?
俺、聖人様以外になれないって事…?

「シゲル様には、ずっと聖人様でいて頂きたいのです。国の者は全員そう思っています。シゲル様が居て下さればそれだけで安心だ、と…。
 ならばそれを守る騎士も当然、一生をあなたに捧げる覚悟の者が必要です。
 シゲル様にとって、それがミシェルです。
 ミシェルの腕はもうご存知でしょう?
 シゲル様の一生を任せられる騎士はミシェルしかいません」
「そ…そんな、一生って」

いきなり重すぎるよ!
一生一緒なんて、そんなのもう結婚じゃん!
そういうのは何年もお付き合いしてからするもんじゃないの!?

「もちろん愛を受け入れて貰えなくても、ミシェルはあなたに一生を捧げる覚悟です。
 ですが、少しでも彼を哀れだと思うなら…どうか、ご一考ください」

マルコさんはとても真剣な顔をしてる。
俺はどう答えればいいのか分からず…

固まるしか、なかった。
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