別にこいつとは付き合ってませんけど?

紫蘇

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世界をひもとく

王家のお墓

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キッチン馬車を見てから数日後、リンデ王子の案内で、俺はいつものメンバー(俺・トモアキ・ミシェル・クリスチーヌさん・リゲルさん・ドラコ)とともに王家のお墓が集まる場所へ来た。

「美しい場所ですな」
「お墓っていうか…日本で言えば古墳だな」
「う~ん確かに」
「闇の影響は今のところ無いみたいだな」
「それは良かった」

お墓とは言うものの、こんもりした小山の上に石碑が立っているだけのいたってシンプルなお墓だ。
近くに大きな池があって、周りには木や草が生えて庭園みたいになっている。

「どうですか、なかなか景色の良い場所でしょう?」
「はい、とてもきれいなところですね」

王様のお墓だし、古墳とかピラミッドみたいに観光名所になってるのかもしれない。
結構人もいるし、お弁当を持ってきている人たちもいるみたい…
っていうか、俺たちも弁当持参なんだけどね。

「それでは、墓の後ろへご案内します」
「後ろ?」
「ええ、そこに内部への入口があるのです」
「へぇ~」

そうして、王子様の案内でお墓だという小山の周りに沿って暫く歩くと、小さな扉が見えた。

「この山の中に空洞があり、そこへ歴代王族の遺骨が収まっております。
 結婚した者は輿入れ先の家の墓へ入る事になっております」
「じゃあ、この中に入れるんですか?」
「ええ、普段は入れませんが、是非聖人様に浄化頂きたく本日は特別に扉を開きます。
 宜しくお願い致します」

王子様が上着のポケットから大きな鍵を出し、扉の鍵穴に差し込み、回す。
ガチャン、という音がして、鍵が開いて…

「殿下、扉を開くのは私が。
 念の為、リゲル殿とドラコ殿と共に、こちら側へ」
「ああ、分かった」

クリスチーヌさんが扉の引手に手をかける。
王子様とリゲルさんとドラコは扉の影になる位置へ。
そして、一番に突入する位置にミシェルが付き、その後ろをトモアキ、そして俺が続く。

「…開けます、3,2,1」

クリスチーヌさんが扉を開け、
同時にミシェルが剣を構え突入し、
トモアキがそれに続き、

「うわっ…」
「どうしたトモ!?」
「やべぇ量の闇だ!トラさん、一旦外出ろ!
 シゲ!浄化、青い奴!」
「分かった、やってみる!」

俺は息を整え、弔いの気持ちを高める。
ここに眠る人たちの魂が、どうか安らかでありますように…
輪廻転生してもうここにはいない魂も、どうか健やかでありますように。

「…光…浄化…祈り、弔い…」

うまく光が貯まらない。
やっぱり般若心経に何か秘密があるのかも…
まだ感覚を掴めてないだけかもしれないけど。

「どうした、シゲ」
「うん…あんまりうまく行かないな…って。
 やっぱ般若心経するわ」
「そっか、じゃあ頼む」

トモアキはそう言うと、手を合わせる。
そして俺も手を合わせて、目を閉じる…

息を、ゆっくり吸う。
そして静かに…唱える。

「仏説摩訶般若波羅蜜多心経…
 観自在菩薩、行深般若波羅蜜多時、
 照見五蘊皆空、度一切苦厄…」

***

「般若、心経……」

何度目かの般若心経を唱え終わった時、納骨堂の中の空気がようやくフレッシュになった。

「…闇、祓えたかな」
「多分な!どっかへ撒き散らした感じは無いぞ」
「良かった…けど、やっぱお経無しは無理か」

結構時間かかるし。
ちゃんと心を込めて唱えないといけないからか、割と体力も使うし。
だから、出来ればお経無しでって思ったんだけどな…。

「けど『お経ありでも無理』より百倍良いよ。
 今回、入った途端全身の毛が逆立つぐらいヤバかったし…」
「まじか」

俺と同じく闇の力の影響を受けづらいトモアキがぞわっとするぐらいだから相当の濃さだ。
こんなとんでもない場所が、王都の中にあったなんて…

「私も一瞬、意識を奪われかけた」
「ええっ!?」

それって、ミシェルが魔物化するレベルで闇が溜まってるって事?

「大事件じゃん…」
「何、大した事は無い…と言いたいところだが、後で浄化を頼めるだろうか」
「うん、分かった!
 …あ、いつもの光の方でもいい?」
「勿論」

あ~、でも完全に無くすならお経の方がいいのか。
でもやり過ぎ厳禁って神様も言ってたし…

「てか、そもそも『払った』闇の力ってどこへ行くんだろ?」
「もしかしたら、こういうとこに今まで『払って』きた闇が蓄積するのかもな」

う~ん、だとすると、こういうところを探し出して『祓って』行かないと危険って事だよな。

「…隠された祠って、こういう事かもしれないな」
「確かにな…。
 今後こういうところには、俺とトモだけで入った方が良いかもしんない」
「えっ、何故!?」

俺の言葉に、急にミシェルが慌てる。
いや、別に恋人同士でしか出来ない事をするわけじゃないし…

「必死で読経するだけだからなぁ。
「異世界人の方が、闇の力への耐性があるから?」
「うん、そう。
 ミシェルが魔物になったら倒せないじゃん?
 光の力を貯めてるうちに斬られそう…」
「何を言うんだシゲル!
 私は魔物になったとしても、愛するシゲルを攻撃したりしない!!」

ミシェルはなおも言い募る。
けど、俺は魔物になったミシェルを見たくないし…
狼耳はちょっと可愛いかもしれないけど。

「次の場所も私と共に行くと言ってくれ、シゲル!」
「ミシェル殿?聞き分けが悪いですよ?」
「ぐ…ぐぬ」
「そーそー、別に浮気とかじゃねーし」
「そうだよ、別にエッチな事するわけじゃなくて、読経するだけだもん」
「でもっ!!」

ミシェルは頑なに俺と一緒に居ようと頑張る。
だけど、俺は魔物化させるかもしれない所へミシェルを連れては行けない…

「何か最初の頃の祠みたいだな」
「……あ」

そうだ、最初の3つはトモアキと回ったんだった。
って事は…?

「って、それも伏線なん?」
「…分かんねぇ、でも最初に行った3つの祠にもう一回行ってみる価値はあるかもしれないな」
「そうだな」

もうすぐ、東の街へ戻ってまた外周の祠をめぐりながら南の街へ行って、南の街から王都までの街道を浄化する旅に出なきゃならない。

けど、場所が分かっている3つを改めて調べるくらいは出来るだろう。

「ところで、ここは納骨堂スタイルだけど、一般の方々のお墓ってどうなってんだろうな」

ふと俺が言うと、クリスチーヌさんがピタリと動きを止めて、言った。

「ええ、共同墓地がございます…
 地区毎に、1つ」
「……地区?」
「はい、王都は……
 6つの地区に分かれています」
「ろくっ!?」
「はい、第一地区は王宮です」
「…なるほど、6…」

6…6か。
って事は、隠し祠3つある説は間違い…
って事で、いい…の、か?

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